第42話『俺、買い物の荷物じゃないんだけど?』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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休日――のはずだった。
普通に寝て、普通に起きて、冷蔵庫に残ってた納豆パックを確認して、コンビニで白飯だけ買ってきて、納豆ごはん食って昼寝して――
そんな平和な1日を想定していた、俺は。
「せんぱ〜い♡、そろそろ出発しませんかぁ〜?」
「……は?」
起きたらユズハがいた。俺の布団の横で仁王立ちしていた。
え、なに? 朝っていうか、今何時? いやそれ以前に、どうして人の家に当然のようにいるの?
「お出かけ日和っ! 先輩っ、準備はバッチリですねっ!」
「バッチリじゃないし、何ならまだ寝巻きだし……俺、今の今まで寝てたし」
「そんなの、ユズハ知ってますけど〜? だからこうして直撃しに来たんですよ〜♪」
「いや知ってて来たのかよ……」
カーテンを開けると、さらに衝撃の光景が。
ベランダにノアがいた。マグカップ片手に、朝日を背にして。
「おはようございます、潤様。ミルクティー、お作りしておきました」
「えっ、俺の部屋に紅茶を淹れる文化あったっけ?」
「潤様の食生活が“白米・納豆・もやし”で固定されていたため、緊急措置です」
「……そこはまあ否定しないけどさ……」
「潤くん、そろそろ着替えてな〜?」
今度は玄関からカエデの声。ドアが勝手に開いてて、荷物がわんさか積まれてる。
「買い出し係やからって、ウチだけで運んでくるのほんまキツかったんやから~!」
もうすでに俺の部屋、人口密度が異常。
玄関もベランダも塞がれてる。これ、どうやって脱出するんだ?
「潤さん、おはようございます。着替えはこちらに……シャツは私が畳んでおきました」
「え、畳まれてる!? てか、なんでエンリまでいるの……?」
「昨夜、明日の下見を兼ねて宿泊しておりましたので」
「いや俺、寝てる間にどんだけ人入れ替わってたんだよ……」
とどめを刺すように、
「じゅんくん、おっはよ〜っ!! ミリー、楽しみすぎて寝られなかったよ〜っ!」
玄関からダイブしてきたのは、テンションMAXのミリー。
そのまま突撃してきて、俺の胸元にバフッと突っ込んできた。
「じゅんくんとみんなでデートとか、最高の日に決まってるよねっ♪」
「いや違う違う、俺、デートの予定も記憶も何もないからな!?」
そして、そのまま押し切られる形で――
俺は、ショッピングモールへと連行された。
――というわけで。
気がつけば俺は、巨大ショッピングモールの真ん中で、ヒロイン5人に囲まれていた。
人の波、喧騒、叫び声。休日のショッピングモールって、こんなに修羅の国だったか?
「先輩っ! まずは服でしょ〜!? ユズハ、先輩に似合いそうなパーカー見つけちゃった〜♪」
「えっ? いや、俺の服探す流れだったっけ? 俺、何一つ買う予定なかったけど……」
「大丈夫です、潤様には“もやしTシャツ”があるので、私たちの服優先で問題ありません」
「いや、もやしTに全幅の信頼寄せるな!? あれ日替わりで着てるけども!」
カエデがグイッと俺の腕を引っ張る。
「潤君、ちょっとウチの荷物持ちになってくれる? ほら、そこのカートに詰めてって!」
「あー、なるほどね。俺、今日“人間キャリーケース”の役割だったわけか……納得いかねぇ!!」
ミリーがスキップしながらこっちに来る。
「じゅんくん〜、ミリー、この服どう思う? このへそ出しのやつっ!」
「……え、ミリー? それ子供用じゃないよね? ってかミリーに“露出”の概念あったんだな……」
「じゅんくん、どういう意味〜!? あっ、照れてる〜? 照れてるよねぇ? やっぱミリーって大人だもんねっ☆」
「いや、“大人だもんね”の発言がすでに子供なんだよ……! というか誰か止めてこのテンション……!」
「潤さん、これなどいかがでしょう?」
エンリが差し出してきたのは――
ド真っ赤な勝負下着だった。
「いやおかしいよね!? 俺の服の話、どこ行った!?」
「……ちがいます。これは、ミリーさんが“潤さんに似合いそう!”と……」
「ミリーぃぃぃぃ!!!」
「じゅんくんには、情熱の赤が似合うと思うのっ♪」
「誰が情熱の荷物持ちや!!」
そのとき、ノアがしれっと隣に来て――
「潤様、ネクタイを新調なさっては? 来月、投資関連の方との打ち合わせがありますし」
「えっ、そんな予定俺初耳だけど!? ていうか俺の職業って今なんなん!?」
「もやしTシャツ広報部長、兼、Vtuber編集長、兼、社長です」
「肩書きが地獄みたいな詰め合わせになってる!!」
歩くたび、荷物がどんどん増えていく。
気づけば、両手に紙袋、背中にはリュック。なにこれ、登山? もはや修行?
「先輩〜♪ あっちにマカロンの専門店あったよ〜!」
「マカロンて……あんなカラフルでオシャレな菓子、俺一度も食ったことないんだけど……?」
「先輩には“モヤロン”って名前で特別に提供されますね〜♪ ほら、“もやし”と“マカロン”の融合!」
「誰が生ゴミ系スイーツの実験体だよ!」
「うち、ちょっと帽子見てくるから潤君これ預かってな〜」
「え、カエデ? 今渡された袋、重さ的に米10キロぐらいない?」
「せやろな〜! 安かったからまとめ買いや!」
「どこ情報だよ!? 帽子売り場になんで米売ってんだよ!?」
そして俺は悟る。
――このままだと、確実に死ぬ。
「よし……一回休憩入れよう。俺、限界です……」
「じゃあ、フードコート行こっか♪ じゅんくん、今度は席取り担当ねっ!」
「ついに“席取り”か……! お前ら俺を何段階のモブとして扱うつもりなんだ……」
――そして、地獄は第二形態へと突入する。
舞台は、フードコート。
カオスを極めたヒロイン5人の空腹状態である。
「せんぱ〜い、ユズハはタピオカ飲みたいですぅ〜! あと、チーズハットグと、唐揚げと、焼きそばとぉ〜……」
「はいはい、あとでな〜って無理ィィィィ! 胃袋どうなってんだお前!?」
「じゅんく〜ん、ミリーはね〜、このクレープと、このアイスと……これとこれとこれと……あとこれ〜♪」
「メニュー指差すスピードが早すぎて見えないんだが!? てか財布持ってきた? え、俺持ちぃ!?」
カエデが、どかっと俺の隣の席に座る。
「ふぃ〜、潤君〜、とりあえず席確保ありがとな。で、注文はお願いな?」
「え、そっち? 俺が? みんなの分を? はい?」
「せやせや、潤君、編集もやってるし、段取り慣れてるやろ?」
「なんでVtuberの編集技術がファストフードのオーダー処理に応用されてんだよ!!」
「……潤様。ちなみにですが、私は“和風きのこクリームパスタ”がよろしいです」
ノアがさりげなく注文を挟んでくる。
「お、おう……ってかノア、あんま食べるイメージないけど?」
「大丈夫です。潤様の横で見ているだけで満たされますので」
「それはそれで重いよ!? でもまぁ食費浮くから……って考えてる俺も最低か!!」
エンリがにっこり微笑みながら、トレーを手渡してくる。
「潤さん、私の分はもうお支払い済みです。こちら、引換券です。あと、皆さんの分も……」
「うわぁ、エンリさんだけ唯一の良心……天使……」
「ついでに、トレー片手で三枚持てますか?」
「急に現実に引き戻さないでぇぇ!!」
俺は全員分の引換券を握りしめ、フードコートの混雑地帯へ突撃。
トレーを重ねて持ち、呼ばれた番号を回収しながら、人混みを避け、バランスを取り、汗をぬぐい――
……なんだろう、俺、なんかの修行してる?
「先輩〜? 遅い〜! ユズハ、もうお腹ぺこぺこですぅ〜!」
「すまんって! こっちは列が戦争だったんだよ! てかユズハ、今あんパン食ってなかったか!?」
「え〜? あれは“間食”ですぅ〜。メインディッシュはこれからですからっ♪」
「この子……人間じゃないかもしれない……」
「じゅんく〜ん、ミリーのアイスとクレープどっち先〜?」
「溶ける方にしろ! それか先に一口ずつだけ食っとけ!!」
「潤君、ナイスファイトやで。ウチは褒めたる。よしよし〜」
「褒められてもトレー3枚持ちで指ちぎれそうなんだけど!?」
ようやく全員分を配り終え、俺も自分の席に……座ろうとした、そのとき。
「潤様、こちらをどうぞ」
ノアが、ストローを指したドリンクをそっと差し出してくる。
「……え?」
「皆様の注文で大変お疲れでしょうから。こちら、私の“気遣いジュース”です」
「ノア……! ありがとう、俺……俺、今日初めて救われた気がする……」
「ちなみにそれ、潤様がこぼした炭酸の残りを再利用して作りました」
「気遣いじゃなくて“ケチ”の発想だこれぇぇぇぇ!!」
「じゅんくん、はいっ! あ〜んっ♪」
「って、ミリー!? アイススプーンいきなり顔面に突き刺してくんな!」
「えへへ〜じゅんくんの反応、かわいい〜!」
「お前の“かわいい”の基準どうなってんだ!!」
「潤君、カエデの唐揚げいる? あーん」
「いや、なんでいきなり女子の波状攻撃が始まってんの!? お前ら“連携”取るな!!」
「あっ、潤さん……ごはん粒が頬に……取ってあげますね?」
「エンリさん!? あ、それは流石に照れるか――」
「……ふふ、取れました。これで、今日も潤さんの栄養バランスは完璧です♪」
「いや怖っ!? なんで栄養管理までされてるの俺!?」
「……潤様」
ノアがすっと俺の隣に座り、耳元で囁く。
「……あなたは、やはり誰にも渡せません」
「え、あ、えぇ!? こわ、なんか背筋が……!?」
「さ〜て、そろそろ次の買い物行くで〜!」
「って、もう休憩終わり!? 嘘やろ……!?」
「潤君、今度はウチとバッグ売り場や♪」
「バッグの前に俺の精神が崩壊する!!」
俺の休日が、また一歩“終焉”へと近づいていくのであった……。
【あとがき小話】
潤『なあ作者、言いたいことがある』
作者『なに? 俺に隠しごとはないぞ?』
潤『本編の物語回がだいたい2000字前後で収まってるのにさ……
デート回だけ毎回4000字くらいあるのおかしくね!?』
作者『……えっ、いやそれはその……会話のテンポとか……情景描写とか……』
潤『ってことは!? デート回では!? “力入れてます”ってことですかァァァ!?』
作者『うわああああ!!違うの!!全部同じくらい大事なの!!
でもこう……ヒロインが近づいてきたら筆が勝手に暴走して……!!』
潤『完全に筆の性癖出てんじゃねぇか!!』
作者『でも読者も喜ぶじゃん!? ノアに甘えられたり、カエデに抱きつかれたり、
エンリが手を引いてきたり……そういうとこで心が動くんだよ……!』
潤『そりゃ読者は喜ぶだろうけど、俺のデート、毎回命削ってんだぞ!?』
作者『つまり需要と供給は一致してるのでセーフ!!』
潤『うるせぇ! 次回は俺の胃薬描写に2000字割れ!!』
作者:pyoco(次のデート回、4000字予定)