第38話『俺、女優になる』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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俺は今――リアとカフェで優雅にお茶を楽しんでいた。
……いや、まあ、優雅ってほどじゃないけど。
普段の情報戦とか修羅場に比べたら、これくらい平和なら御の字だろ。
向かいに座るリアさんは、いつもよりもどこか柔らかい表情で。
それがなんかこう……普通に、綺麗だった。
「リアさん、その後どうですか?」
「そうだね……やっと今日から動き出せる、って感じだね」
「ノアさんが仕掛けてくれたおかげで、多分……向こうも食いつくはず」
ノアは事前に、“一人デート自撮りツイート”をちょこちょこ上げていた。
撮影地・カフェ・スポット情報……それを追ってくるやつがいれば、それが釣り針にかかった証拠だ。
俺たちは、その最終地点に――いる。
そして。
「SABAKIチャンネルです! 本日の緊急配信は……!」
後ろから聞こえてきた、例の甲高い声。
声だけでわかる。
こいつが今回の元凶、炎上系YouTuber SABAKIチャンネルの現場担当。
「今話題沸騰中の女優ノアさんが! 密会デート中との情報をキャッチしました〜!」
「おっと〜いましたね! カフェに座ってます! 向かいには……男の影が!?」
バカみたいなテンションで近づいてくるSABAKIチャンネルの配信スタッフ。
俺の肩に手をかけ、嬉々として声を張り上げた。
「ノアさん! 男と密会デー――」
……そして、次の瞬間。
「ヒィッ!? だ、誰だお前!?」
ヒィッ、て。
失礼すぎるやろ。
今の俺は、“大人気女優ノア”なんだぞ?
――まあ、顔面は俺だけど。
後ろ姿と仕草だけは《演者》スキルで完全に再現してる。
……正面から見たら俺です。
それは認める。
俺自身、鏡見た瞬間ヒィッって言ったし。
固まってるSABAKIチャンネルの男のウインドウを開く。
【奪取対象:鳴神ショウ】
・悪事:誹謗中傷・脅迫・情報捏造・印象操作
・スキル一覧:印象操作(Lv6)/編集技術(Lv5)/演技(Lv4)/SNS拡散誘導(Lv6)/話術(Lv5)/共感誘導(Lv4)/群衆心理理解(Lv4)
……よし。
配信をつけたまま、こいつをこの場に釣り出すことには成功した。
あとは――最大の難関。
その時だった。
――聞こえたんだ。震えるような、けれど真っ直ぐな声が。
「ミリーは……殴られてなんてないもん!」
俺は振り返る。
そこには――顔を上げ、震えながらも必死に声を張り上げるミリーの姿があった。
(……やるな、ミリー)
当てにしてたネタ――ノアの独占スクープが潰されたことで、鳴神ショウの顔色が変わる。
だが、配信はもう始まっている。
視聴者は見ている。
引っ込みは――つかない。
そして、鳴神は次のターゲットを“あいつ”に定めた。
「これは新たな特ダネです!」
わざとらしい口調で、鳴神がカメラをミリーへ向ける。
「今まさに話題の悪党リクルートエージェント暴力事件! その被害者とされる女性が、私の目の前に! しかも……なんと!」
「これだけ世間を騒がせておきながら、噂とは違い――大した怪我はしていない様子!」
鳴神はカメラ越しに煽りながら、声を張り上げた。
「これは被害者ヅラ……ですかぁ〜?!」
イラッとくる。
その瞬間、ミリーが――震えながらも、必死に声を上げた。
「ミリーは……そんなこと言ってないもん!」
怯えながらも、ちゃんと言葉にする。
あいつ、よく頑張ったな。
「……確かに、否定する勇気は出せなかった……怖くて……違うって……そんなことされてないって……言いたかったけど」
「どんどん騒ぎが大きくなって……言い出せなかっただけで……!」
それでも鳴神は続ける。
燃やせれば何でもいいという下衆な笑みを浮かべて。
「おやおや〜つまり! 被害者を装って悲劇のヒロインとして、皆さんを騙したと?」
「これはかなりの悪女の匂いがしますね〜!」
そのとき――スマホ画面に、見覚えのあるアイコンとツイートが流れた。
『あれれ〜? おかしいですねぇ〜?』
カエデの声。
『ここにSABAKIチャンネルの人と〜黒いTシャツの人の〜ツーショットの画像が〜』
続けてユズハ。
『ほんまやぁ! しかもこいつらツイッターでご飯食べに行きましたぁ〜とか写真上げとるなぁ〜。仲良しなんかなぁ〜?』
鳴神の顔が、引きつった。
「ち、違う! そんなのデタラメですよ皆さん!」
必死の弁解。
だが、リアが――冷徹に断罪する。
「悪は、あなたです」
「調べました……過去の動画も、全て。あなたのやってきたことは――全部ヤラセだったのでしょう」
「人の心を、自分の承認欲求のために弄ぶ……そんなあなたを、許せません」
エンリの声が響いた。
視聴者の空気が――完全に変わる。
鳴神は、それでも悪あがきを止めない。
「あ、あはは……きょ、今日の配信はここまで……とりあえず続報は、後ほど〜」
慌てて動画を切る。
その瞬間――
俺はスッと目を閉じ、スキルウインドウを起動する。
目の前に、冷たい電子音と共にウインドウが浮かぶ。
【奪取対象:鳴神ショウ】
・悪事:誹謗中傷・脅迫・情報捏造・印象操作
・スキル一覧:印象操作(Lv6)/編集技術(Lv5)/演技(Lv4)/SNS拡散誘導(Lv6)/話術(Lv5)/共感誘導(Lv4)/群衆心理理解(Lv4)
この対象から、ランダムに一つスキルを奪取しますか?
〔YES〕 / 〔NO〕
迷いは――ない。
俺は静かに〔YES〕を選択する。
【スキル奪取完了】
・保持スキル:《編集技術(Lv5)》
・試用期間:24時間(残り 23:59:59)
・ストックスキル:威圧(Lv4)/魅力(Lv4)/憎悪誘導(Lv8)
・ユニークスキル(リンクスキル):演者/解析眼/精神干渉耐性
あとは――仕上げだ。
俺はスッと目を閉じ――ストック内から、あのスキルを選び出す。
《憎悪誘導(Lv8)》
対象:鳴神ショウ
(発動)
今はこれで十分だ。
鳴神は俺を睨み――捨て台詞を吐く。
「お前ら……俺をハメやがって……タダじゃ済まねーからな」
「お前ら動画のネタにして……社会的に殺してやるからなぁ!」
俺は静かに立ち上がった。
「……お前のそのネタ帳、今ごっそり白紙だけどな」
スッ――と。
《威圧(Lv4)》発動。
鳴神は、俺の目を見て。
わかりやすく後退りし――逃げるように走り去った。
……あとは、様子見だな。
【あとがき小話】
ユズハ『エンリさーんっ、お疲れ様ですぅ~♪ 今日も落ち着いた癒しの空気、助かりまーすっ』
エンリ『ふふ、ありがとうユズハさん。あなたの明るさにも、いつも助けられていますよ』
ユズハ『え~? ほんとですかぁ? ユズハの“明るさ”って、時々“うるさい”って言われるんですけど~?』
エンリ『……私はそんなふうに思いませんよ。むしろ、“賑やか”なほうが、潤さんも退屈しませんしね』
ユズハ『あらぁ? それってちょっと遠回しに“私は癒してるから、あなたは賑やか担当”って言ってますぅ?』
エンリ『いえいえ。私はただ、役割はそれぞれ、って……
潤さんを想う気持ちは、同じですから』
ユズハ『うわ~……今の、めっちゃ穏やかなのに圧、ありましたよぉ?』
エンリ『……ふふ。あなたの“牽制”も、なかなかですよ?』
ユズハ『じゃあ勝負ですね~、どっちが潤さんを癒せるかっ♪』
エンリ『ええ、受けて立ちます。……正々堂々と』
作者:pyoco(このバチバチ、音が聞こえそう)