第35話『俺、公園で詰む』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
感想・評価・ブクマ、ぜんぶめちゃくちゃ励みになります。
書く気力が120%になるので、応援よろしくお願いします!
ブックマーク&評価をいただけると、次の展開の原動力になります!
感想も全部読んでますので、お気軽に一言でも残してくれると喜びます!
.
カァー……カァー……
カラスが、やけに哀愁漂わせて鳴いている。
結局――
勢いよく飛び出してみたものの、社内で《解析眼》を乱発しては、社員を片っ端から問い詰めた結果……
なーんも出ず。
いない社員もおらず、怪しい反応もナシ。
完全に――詰み。
「はぁ……」
格好つけて出てきた手前、今さら戻るわけにもいかず。
かといって家にも帰れず。
俺は、誰もいない夕方の公園で、ひとりブランコに揺られていた。
……俺、なにしてんだ?
そのとき。
前から見覚えのある顔が、こちらへと近づいてきた。
「葉山潤さん。また何やらトラブルに巻き込まれているようですね……本当に、あなたはどうしてこうも“厄介な相手”にばかり関わるのか……理解に苦しみます」
……ビクッ!
この声は――
恐る恐る顔を上げると、そこには完璧なスーツ姿の冷たい瞳。
「九条……リアさん……?」
「ええ、そうですが? 覚えていただいていたのなら……もう少し厄介ごとを起こさない努力をしてください」
九条リア。過去二度にわたって事件のたびにみっちり説教を食らった――
あの、超真面目な女性刑事さん。
「べ、べべべつにトラブルなんて! また〜、嫌だな〜俺そんなんじゃないし?」
「……そうですか。ですが、あなたの会社で“暴力事件”が起きたとの噂を耳にしていますが?」
ギクッ!!
ま、まさか……もうバレてる!?
これ……俺が社長だから……逮捕コース!?
「……私はあなたのこと、だいぶ調べさせてもらいました」
リアは表情を変えずに淡々と続ける。
「悪徳ホストグループ、出会い系詐欺団体、自己啓発系セミナー、そして先日の半グレ集団」
「まるで正義の味方を気取って、次々に潰しているかのようですね?」
「い、いやいや! そんなつもりは! 巻き込まれたというか、頼られてしまって……!」
「普通は、頼られたからといって、そんな相手に関わったりしません。
まして、関わった直後に“組織ごと壊滅”しているなど……偶然で片づけるには無理があります」
ぐっ……
ぐうの音も出ねぇ……!
「――はっきり言いましょう。警察からすれば、あなたは“迷惑”です」
ガーン。
「ですが……あなたの行動で、結果的に救われた方がいたのも事実です」
リアは少しだけ視線を落とし、公園の風にそよぐ木々を見つめた。
「ここには、私とあなたしかいません。
どうやってあの事件の数々を“処理”してきたのか――正直に話してもらえませんか?」
「もちろん、公にはしません。ですが、それが今回のトラブルの解決に繋がる可能性もあります」
……俺は、迷った末に腹をくくった。
才能を奪える能力のこと。
そして、これまでどんな風に切り抜けてきたのか――
全てを、正直にリアに話した。
ひとしきり語り終えると、リアは沈黙したまま少しだけ目を細めた。
「……はぁ……まったく、信じられない話ですね」
「ですが……確かに。捕まった容疑者たちの“変わり様”を見ていると、全くの嘘とも言い切れません」
まぁ……100%信じろってのは、無理があるだろう。
「……はぁ。そんな、捨てられた子犬みたいな顔をされても……」
リアは眉をひそめ、微かに溜息をついた。
「……仕方ありませんね。一旦は、信じましょう」
「……!」
「うっ……そんな、露骨に嬉しそうな顔をしないでください。あくまで“一旦”ですから」
「この件が解決するまでは、です。勘違いしないでくださいね?」
いや、それでも――ありがたい。
正直、今の俺は手詰まりだった。
「ひとまず、明日。被害者の方の元へ向かいましょう。私も調べられる限り動いてみます」
それを聞いて、俺は深く頭を下げた。
――翌朝。
約束の場所に向かうと、そこには昨日とは違う服装のリアがいた。
「今日は、スーツじゃないんですね?」
「ええ、今日は非番です。……それに、この件、少し引っかかっているので」
「引っかかる?」
「はい。今回の傷害事件……現場の目撃情報も、被害者の証言もあるのに――“被害届”が出ていないんです」
……え?
そんなこと、あるのか……?
目撃者もいるのに届け出が出てないって、
それほどまでに精神的に追い詰められてるってことか……?
そんなモヤモヤを抱えたまま、被害者の家へと辿り着く。
カーテンは閉め切られ、明かりも見えない。
人の気配は――ない。いや、薄い。
インターホンを押す。
ピンポーン。
……反応が、ない。
今度はリアが一歩前に出て、ハキハキと名乗った。
「すみません、警察ですが! 少しだけ、お話をお聞かせ願えませんか?」
しばしの沈黙のあと――扉が、少しだけ開いた。
「……被害届は出していませんので、大丈夫です」
……その声に、聞き覚えがあった。
いや、間違えようがない。
「……エンリ?」
ガチャ、と扉が開く。
そこに立っていたのは――
紛れもなく、エンリだった。
【あとがき小話】
番外編 話にするほどでもないやーつ
ユズハ「……でさ〜、潤先輩、最近ちょっと鈍感すぎません〜? ユズハあれだけ甘えてるのに、全然動じないって逆にひどくないですか〜?」
カエデ「逆に、やからええんちゃう? あれで毎回意識されたら、うち照れてまうもん」
ノア「私は……潤様が他の女性に優しくされるほうが、遥かに問題です」
エンリ「ふふ……皆さん、潤さんに夢中ですね。ですが、そういうふうに言いながら、皆さん潤さんに一番近い存在になりたくて動いてる……私には、わかりますよ?」
ユズハ「うわーっ! エンリさんズルい〜! なんか全部お見通しみたいに言うの〜!」
ノア「ユズハさん。図星を突かれたからといって、騒ぐのは少し幼稚です」
カエデ「てかノアちゃんが一番独占欲すごない? 潤君の一挙一動に毎回反応しすぎやで?」
ノア「当然です。潤様は“私の”潤様ですから」
エンリ「はいはい、“私の”潤さんですね。ふふ、皆さんがそういうふうに言うなら……私は潤さんの“癒し”担当でいいです」
ユズハ「うーわ〜! じゃあユズハは“元気チャージ担当”ってことで!」
カエデ「うちは“唯一無二のツッコミ役”やな。潤君、あんだけ周り女子に囲まれてたら、誰かが冷静にツッコまなバランス崩れるで〜」
ノア「……私は、潤様の“運命”担当です」
ユズハ「なんか重いーーっ!」
エンリ「ふふ……でも、なんだかんだ言って、みんな潤さんが大好きなんですね」
全員「…………」
ユズハ「……そっか。あの人って、なんだかんだ“本気で頼りたくなる”んだよね〜」
カエデ「せやな……なんやかんや、最後には守ってくれるしな」
ノア「潤様は……優しすぎるのです。だからこそ、私たちが傍にいなくては」
エンリ「その気持ちが、絆になっていくんですね。潤さん……やっぱり、すごい人です」
こたつの上で、静かに缶ジュースを合わせる4人。
ユズハ「んじゃ……潤先輩に、乾杯〜!」
全員「乾杯!」