第30話『俺、社長になる』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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いでぇぇぇよぉぉぉぉ。
いやマジで……なんで俺、あんな痛い思いして――会社クビになってんだよ。
意味がわからん。いや、意味はわかるけどさ。
あの炎上動画。SNSで拡散されすぎて、当事者も巻き込まれた会社も大問題になった結果――俺もクビ。
いや、わかるよ? そりゃそうだよ? 社内の誰もが知る有名人になっちゃって、あんな暴行シーンまで全国配信とかされたらさ?
でも痛い思いして、命がけで悪党退治した末路がこれって、どうなん? 割に合わなくね?
しかも極めつけは――またしても、あの女。
九条リア刑事さん。
めっちゃくちゃ怒られた。
冷静な口調で、理詰めで、詰めに詰められて――
「非合理的です。無謀です。あなたに危険が及ぶことくらい予想できたでしょう」
とか。
まぁ……反論できねぇ。全部正論すぎて何も言えねぇ。
正論が一番痛ぇんだわ。
(いや、それにしても……ほっぺた、超いてぇ)
何回殴られたんだ俺。右も左もジンジンするし、顔触るたびに思い出す。戸崎のゴリラパンチ。
……癒されてぇぇぇ。
こういうときこそヒロイン達の出番だろ。慰めてくれよ。甘やかしてくれよ。
だが。
「……いねぇ」
あの事件の後から、誰も顔出さねぇんだけど。
ノアも。カエデも。エンリも。ユズハも。
え? なんかあった? もしかして俺、ガチで嫌われた? それとも冷却期間? あんなダサい倒され方したから?
(……まぁ、反省はしてる)
演者切れてセリフボロボロだったしな……正直、見返したらめちゃくちゃダサかった。
途中からフィジカルがオーガニックになってたし。何オーガニックて。野菜か。
でもよぉ……あのスキルはヤバすぎるって。改めて思い知らされた。
群衆操作Lv8(憎悪誘導)
あれ、一歩間違えたら本気で死人出る。特定の一人に対して群衆の悪意や敵意を一点集中させる。
SNSの暴走と組み合わせれば、物理的に殺せなくても社会的に余裕で人が死ぬ。
自殺に追い込まれるとか普通にある。
俺だって、ネットで炎上した側だ。使った分、返ってくるリスクは当然ある。
(いやマジで……軽率に使える才能じゃねぇな)
……まぁ、それ以前に。
仕事ないんだけど。
どうしよ、俺。無職なんだけど。
はぁ……無職……。
俺は天井をぼんやりと眺めながら、口の中でもやしをモシャモシャしていた。
うん、味気ない。いつものことだ。
財布は空っぽ。社会的な地位も地面スレスレ。人生、もやし以下。
こいつだけは俺を裏切らない。安いし。優しいし。カロリー低いし。
……いや優しくはないか。寂しさは埋まらんしな。
こんな時こそ誰か来てくれたらいいのに。ノアとかカエデとかエンリとか……
……あ、ユズハはまあ……来たら来たでめんどい気もするが。
いや、でも今はそれすら恋しい。誰か俺を甘やかしてくれ。撫でろ。抱きしめろ。ついでに金もくれ。
「はぁ……誰か来ねぇかな……」
その瞬間、ガチャリと玄関の扉が開いた音がした。
……え? 嘘だろ?
鍵、閉めてたはずなんですけど? え、ホラー展開?
「潤様……お邪魔します」
ノアだった。
いや、ノアかーい。ビビらすなや。つーか鍵、どうやって開けた。
それより今のノア、完全に“完璧モード”の顔してる。微笑んでるのに目が全然笑ってない。
俺がなんかやらかした時の顔だ、これ。
「潤様……最近はお忙しかったようですね。ですが、そろそろお体を労わるべきかと」
そう言いながら、無言で掃除を始めるノア。
いや、俺そんなに汚れてないからな? 俺の生活圏、そこまで壊滅してないからな?
続いて顔を覗かせてきたのはカエデだった。
「あれー? 潤君、またもやし生活戻っとるやん。しかも安い方のやつやん?」
「安い方のもやしって何だよ。高級もやしなんてあんのかよ」
カエデはクスクス笑いながら、当然のように冷蔵庫を開け始めた。
あ、やばい。生活実態がバレる。
「うわぁ……これはあかん。潤君、食生活終わってるで。倒れる前にウチがどうにかしたる」
いや、そこまでヤバい人扱いすんのやめて?
最後に、そっと現れたのはエンリだった。
「ふふ……潤さん。今日は、ゆっくり休ませてあげようと思って、お邪魔しました」
「……ありがと……」
なんか……この流れ、完全に介護されてる人みたいなんだけど?
エンリは笑顔で、持参した保温ポットを取り出す。
……あー、もうこれは勝てねぇ。湯気すら優しい。
気づけば、俺の部屋はヒロイン達によって制圧されていた。
俺の孤独なもやし生活は、静かに幕を閉じようとしている。
……いや、これ……悪くないな。
ガチャッ、と玄関のドアが再び開いた。
「あ、潤先輩〜いたいた〜♪」
ユズハだった。やっぱりお前か。
「いや、いたいた〜じゃねぇわ……。来るなら来るって連絡しろ」
心の準備とか、もやしの残量とか、いろいろ考えがあるんだよ俺にも。
だが、ユズハはお構いなしにズカズカと部屋に入ってきた。
しかも、なぜかノアもカエデもエンリも、黙ってその様子を見守っている。
なんか……達成感のある顔してないか? え、俺だけ知らん空気?
「ふふ……潤様、ようやく落ち着きましたので」
ノアが柔らかく微笑む。怖い。
「潤君、いや〜ちょっとウチら忙しくてなぁ〜」
カエデが気楽そうに笑う。逆に怖い。
「今回の件、いろいろと動いてましたから……」
エンリが紅茶を入れながら、しれっと爆弾発言。
……はい? 何してたの? 俺だけ置いてけぼりなんですけど?
ユズハは当たり前のようにソファに座りながら語り出した。
「あ、そうそう。実はですねー……今回、私ひとりでやってたわけじゃないんですよ〜?」
おい。
「ノアさん、カエデさん、エンリさんと協力して、不良共の身元特定とか、就職先の準備とか……いろいろやってたんですよ〜?」
いやいやいや。何やってんのこの人たち。
「情報はエンリさん。脅し役はノアさん。フォローはカエデさん。あと現場の交渉は……まぁ私ですかね!」
うわ……完璧にチームで動いてる。俺だけ知らんやつ。
そして――
「はいっ!」
ユズハが得意げに書類を差し出してきた。
「潤先輩名義で警備会社、立ち上げました!」
「勝手に立てるな!!!!」
いや、え、会社ってそんなノリで作るもんじゃないでしょ!? 違うでしょ!?!?
ノアは当然のように言い放つ。
「潤様の名が世に広がるのは、良いことかと」
良くねぇよ。怖ぇよ。社長業とか未知の領域なんだけど。
カエデは楽しそうに笑ってる。
「社長やで社長! 潤君、ウチ名刺作ったるわ! 裏面に“もやし愛好家”って入れとく?」
いらんわ! 誰がもやし芸人や!
エンリはエンリで、にこにこと安心した表情で告げてくる。
「これで生活基盤は安定しましたね。私も一安心です」
いや、安定って……俺のメンタルが不安定になっとるわ!
「お前ら……勝手に話を進めすぎだろ……」
しかも元半グレどもを更生させて、警備会社に突っ込んだって……
あれか? 社会貢献か? SDGsか? 令和の半グレリサイクルか?
……いや、確かに悪い話じゃないんだけどさ。
「……マジで俺、いつからこんな人生ハードモードになったんだ……」
ふと、俺は天井を見上げる。
そこには、もはや逃げ場のない現実。
もやし生活、終了のお知らせ。
そして俺は――知らんうちに社長になっていた。
「……誰か……俺に……ブレーキつけてくれ……」
静かに、今日も現実は暴走する。俺を置き去りにして。
【あとがき小話】
潤『なあ、作者。俺のモノマネもやってみてくれよ』
作者『……いいの?』
潤『おう。ちょっと気になるし』
作者『わかった』
(※ここで堂々と鼻ほじりながら)
作者『もやし〜〜〜もやし〜〜〜。金ないけどもやし〜〜〜。
ヒロイン多いけど、精神的支柱はもやし〜〜〜(鼻ほじ継続)』
潤『……いや待て』
作者『これが俺の全力の“潤”です(ドヤ顔)』
潤『まず手を止めろ。鼻から手を抜け。あと俺そんな“もやしの妖精”みたいなテンションじゃねぇからな!?』
作者『でもさ~、潤ってもやし愛が人格に染み込んでる感じするじゃん?』
潤『やかましいわ!鼻ほじりながら言うな!!あとそのテンポ感、お前の中で俺どんな生き物なんだよ!!』
作者『人生、だいたいもやしだよ』
潤『格言みたいにまとめんな!!!』
作者:pyoco(たぶん潤のこと好き)