第29話『俺、殴られる』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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夜の空き地。
漂う煙草と酒の臭い。悪意と暴力の塊みたいな連中が、群れをなしてたむろしている。
その中心に座っているのが――今日のターゲット。
戸崎ユウジ。
目の前にウインドウが浮かぶ。
【戸崎ユウジ】
・犯罪:暴行/恐喝/薬物所持
・スキル:喧嘩Lv4/暴力支配Lv3/威圧Lv4/肉体増強Lv2
(……スキル奪うのは後でいい)
今、俺がやるのは――儀式だ。
セレモニー。
俺はただ、真っ直ぐ歩き出した。
案の定、取り巻きどもがワラワラと寄ってくる。
「おいコラァ、何様のつもりだ?」
「どこ見て歩いとんじゃ、死にてぇのか?」
「あっちで可愛がったろか、ボケェ」
(はいはい、テンプレテンプレ)
俺は無言で“演者”を起動。
モデルは――ドラマで見た胡散臭い男。
そこに威圧Lv4を重ねて、じっと奴らを睨み返す。
ビクリと、不良どもが足を止める。
そして。
「最もフィジカルで――」
「最もプリミティブで――」
「そして最もフェティッシュなやり方で――」
「戸崎ユウジさんを――ぶちのめさせていただきます」
沈黙。
意味不明な異質さに、半グレどもがザワつく。
――儀式は成功だ。
戸崎「……あ?」
静寂の中、戸崎が立ち上がる。
だが俺は、ゆっくりと奴の目の前まで歩く。躊躇いはない。
俺はさらに重ねる。
「今からあなたを――最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュなやり方で――いかせていただきます」
その瞬間。
ゴシャッ!!
戸崎の拳が、俺の頬を吹き飛ばした。
(いてぇ……)
演者が解除される感覚。
(でも、これでいい)
戸崎「ふざけやがって……調子に乗りやがって、ぶっ殺すぞコラァ!」
ガシッ、と胸ぐらを掴まれる。俺は殴られながらも、歯を食いしばり立ち上がる。
……ここからが本番だ。
(演者は切れた……セリフ? もう適当でいいや……)
「い、今から……最もフィジカルで……最もパーソナルで……そして最もファンタスティックで……」
戸崎「おい、何訳わからんこと言うとんねん」
「最も……オーガニックなやり方で……いかせていただきます」
半グレ「うわ、怖ッ」
半グレ「な、なんやコイツ……」
ボコボコに殴られながら、俺は待っていた。
最後の仕掛けが動く、その瞬間を。
そして。
ピコン――
夜の空き地に、不釣り合いな電子音が響いた。
一台じゃない。二台でもない。
全方向から、一斉にスマホの通知音が鳴り響く。
(……きた)
俺は殴られたまま、口元だけでニヤリとする。
半グレ「お、おい……なんや? なんか鳴ってね?」
半グレ「え? うわ、スマホ……めっちゃ通知来てる……」
手元のスマホを見た半グレが、引き攣った声をあげた。
半グレ「お、おい! これ……俺ら映っとるやん!!」
そこからは早かった。
連鎖反応みたいに、次々とスマホを取り出す取り巻きども。
「うわ……マジか……」
「これ全国で流れてんのか?」
「Xで拡散されてる……やば……」
俺の耳にも、かすかに届いてくるネット民の言葉。
『これ戸崎ユウジ確定』
『動画まわってきたww』
『地元最悪の半グレ発見』
『暴行シーン生配信中』
『誰か通報してやれ』
(あー、うん。やっぱネット民容赦ねぇな)
別に正義感とか、俺に味方してるとかじゃないんだろうけど。
それでもいい。
今この状況は、俺が張った罠。炎上劇場の幕開けだ。
戸崎「おい! なんやコレ……!? 誰が撮っとんねん!!」
ようやく異変に気付いた戸崎が、取り巻きに怒鳴る。
半グレ「ちょ、ちょっと待ってください戸崎さん! なんかもう……動画めっちゃ回ってて……」
半グレ「拡散止まんないっす……」
半グレ「しかも……タグで名前まで特定されて……」
戸崎「はぁ!? ふざけんな!!」
怒鳴ったところで、拡散は止まらない。
ネットはそういう場所だ。
(……今さら焦っても遅いんだわ)
【スキル発動】憎悪誘導Lv8
もうトドメだ。
俺が仕込んだ怒りの火種は、今やネット民の手によって爆発的に燃え広がっている。
戸崎「てめぇぇぇええ!! ふざけやがってぇぇぇ!」
あー……はいはい、暴力しか脳がねぇのね。ありがとさん。
戸崎はブチギレ顔で俺の胸ぐらを掴み、振り上げた拳を叩き込もうとしてくる。
(……来いよ。お前が殴った瞬間、全部終わりだ)
俺はもう、Xに投稿済みだった。
『これから俺、戸崎ユウジに殴り殺されるかもしれません』
『拡散希望』
『#戸崎ユウジ』
ネットは速い。
現実より速く、残酷に、容赦なく。
(全国デビューおめでとう、クソ野郎)
戸崎が振り上げた拳が、俺の視界を覆い隠した――その瞬間。
パトカーのサイレンが夜を引き裂く。
キィィィィィ――ッ!!
複数のパトカーが空き地に雪崩れ込んできた。
警官「戸崎ユウジ!! 暴行の現行犯で逮捕する!!」
戸崎「は、はぁっ!? おい……!? なんやこれ……誰が……」
半グレ達も、一斉に顔面蒼白。
「お、おいマジで警察やん……」
「やべぇやべぇやべぇ……」
取り巻き共は蜘蛛の子を散らすように逃げようとするが、既に警察に包囲されている。
(あー……これがリアルだよ)
ネットで燃やして、現実で刈り取る。
シンプルな手口だけど、これが一番効く。
警官「抵抗するな!! 手を頭の後ろに回せ!」
戸崎「ふざけんなぁぁぁ!! 俺が誰やと思っとんじゃぁぁぁ!!」
最後まで暴れてた戸崎も、数人がかりでねじ伏せられ、手錠をかけられる。
SNSのコメントはまだ止まらない。
『ざまぁwwww』
『現行犯逮捕きたーwww』
『炎上は正義w』
『戸崎ユウジ終了w』
(あー……これぞ、俺の暴力カウンター)
……いや、ぶっちゃけ。
俺自身が痛い思いしてんのは納得いかんけど。
(でもまぁ、勝ちは勝ち……か)
ボロボロの顔で空を見上げながら、俺は静かに息を吐いた。
最悪の夜だった。
でも――最低な奴には、最低な終わりがお似合いだろ。
俺の暴力は、ネットと群衆と、ほんのちょっとの嫌がらせ。
……それで十分だ。
次は静かに帰って、もやしでも炒めよう。
【あとがき小話】
作者(小声)『……えっと……潤さん、疲れたでしょう?
ふふ……私が、そばにいますから……安心してくださいね……(超警戒モード)』
潤『……お前、今めちゃくちゃ周り見回しながらエンリの真似したよな?』
作者『いやっ違う! 違うんだよこれは! “練習”! そう、ただの自主練! 本番じゃないからセーフ!』
潤『お前、さっきから視線が“後ろにいる誰か”を警戒してるんだけど』
???『……作者さん』
作者『ひぃっ!?』
エンリ『そんなに周りを気にしなくても……私は怒りませんよ?』
作者『え、あ、はい……ありがとうございます……(震)』
エンリ『でも、そうですね……“私の声”を使って、潤さんに近づいたのなら……』
作者『まってそれどういう意味ですかこわいこわいこわいこわい』
エンリ(微笑)『……あなたの喉、休ませて差し上げますね?(にっこり)』
潤『お前、なんでわざわざ逃げ道塞がれるような真似したんだよ……』
作者:pyoco(静かに詰まれてます)