表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
才能奪って成り上がる!無職の俺がヒロイン達と社会を支配するまで  作者: pyoco
第3章『初心者の作者が本気出すでしょう』
263/263

第236話『俺、ダーリン』



──どのくらいの時間が経ったんだろう。


窓もない。光もない。

昼も夜も、感覚が剥がれ落ちていく。

ただ、じわじわと──時間だけが、俺を削っていく。


 


ギィ……

唐突に扉が軋む音。差し込む光。


そして──


 


「元気ぃ? ダーリン♡」


 


逆光の中、コハルがシルエットだけで立っていた。

その一歩で、空気の温度が変わる。


 


「……なぁ。そろそろ、外に出してくれよ」


 


「キャハハ♪ だーめ♡」

コハルは首を傾げ、鈴を転がすように笑う。

「まだ“コハルのお部屋”にいてもらわなきゃ。ね?」


 


「どうして……俺なんだよ」

声がかすれる。

「世の中には、俺よりずっとすげぇやつが、いっぱいいる」


 


コハルはゆっくりと近づいてくる。

ひとつ、またひとつ、足音を刻みながら。


笑ったまま、俺の顎に細い指を添える。


 


「ん〜……ダーリンが、特別だから♡」


 


「……俺のスキル、“才能奪取”のことか?」


 


「へぇ〜、“才能奪取”って言うんだ?」

目を輝かせて、コハルが囁く。

「ねぇ、それ……とっても残酷で、とっても素敵♡」


 


コハルが顔を寄せてくる。

吐息が頬を撫で、唇が──


 


「ちょっ、やめ──っ」


 


寸前で首を反らし、なんとかかわす。


 


「な、なにすんだお前!?」


 


「んふふ♡ 恥ずかしがるダーリンも……だぁいすき♡」


 


その瞬間だった。

コハルの笑みが、ふっと──消える。


目の奥に、黒い炎が燃えていた。


 


「ねぇ……ダーリンが、コハルのものにならないのってさ」

声が低く、濡れたように落ちる。

「──“あの子たち”のせい、でしょ?」


 


「……おい、まさか……お前──」


 


「エマちゃんと、デートの約束してたよねぇ?」


 


背筋が、凍った。


 


「まさか……エマの両親の、あの事故……」


 


「うん♡」

あっけらかんと、コハルは頷いた。

「すっご〜〜〜〜〜く、嫉妬しちゃったの♡」


 


「……お前、ふざけんな……」


 


「ふざけてないよ?」

その声は、冷たく、甘い。

「ダーリンには、コハルだけがいればいいの♡」


 


コハルの指が、胸元を這う。

「だから、ダーリンの世界から……“それ以外”を、ぜーんぶ壊せばいいでしょ?」


 


プツン。


どこかで、何かが切れた音がした。

俺の中で、怒りが──静かに、飽和する。


 


「……ッッ……ッざけんな……」


 


歯を食いしばる。

声が出ない。拳が震える。


 


「……あぁ♡」

コハルがうっとりと瞳を細める。

「怒ってるダーリンも……最高に愛おしい♡」


 


その笑みは、完全に──壊れていた。


甘く、狂って、真っ直ぐで。

この女は、本気で“俺”だけを欲している。


俺という人間を、“所有物”として。




──────




──都内・高層レジデンス。夜。


 


ツバキは静かにソファへ腰を下ろす。

カーテン越しの灯りが、グラスの縁を鈍く照らしていた。


 


「……なるほどね、コハル……」


 


手元のカップを回しながら、ぼそりと呟く。

顔は笑っていない。どころか──ほんの少し、引きつっていた。


 


「よりによって、“あれ”に好かれるなんて……潤、ほんと運がないわね」


 


氷がカランと鳴る。

苦笑しながら、ツバキはグラスを口元に運ぶ。


 


「……ま、元を正せば──私が、あの子の前で潤の話をしたせいか」


 


ウイスキーの苦味が喉を刺す。

だが、ツバキの瞳はむしろ冴えていた。


 


「……ほんっと、バカみたい」


 


テーブルに肘をつき、額に手を当てる。

そのまま、数秒間──目を閉じた。


 


「……けど、許せないのよね」


 


ぽつりと漏れたその声には、冷たい熱があった。


 


「“私のおもちゃ”を奪われたままなんて──癪だわ」


 


そう。問題はそこじゃない。

もっと厄介なのは──**“お父様”の動き**。


 


「……バレたら終わり。何もかも、台無しになる」


 


グラスをそっと置き、ツバキは立ち上がる。


一歩ずつ、まっすぐに──

壁際のサイドボードから、1台のスマートフォンを手に取る。


その指先は、まるで手術を行う外科医のように正確だった。


 


画面に触れる。通話アイコンをタップ。


ワンタッチで番号を呼び出し、相手が出る前に、口を開いた。


 


「……私よ。えぇ、やるわ」


 


声は、鋭く。

語尾には、決意よりも──命令があった。


 


「──“レグルス”を奪う」


 


窓の外に広がる夜景を背に、

ツバキはゆっくりと背筋を伸ばした。


その背には、確かな“牙”の気配があった。


 


本気のツバキが、動き出した。





【あとがき小話】

ずるずるずる……


作者がノアに襟を掴まれ、床を引きずられていく。

顔はイタズラ書きと虫刺されで腫れ上がっていた。


 


ノア「では……作者さん? 説明をしてもらえますか?」

エンリ「これだけ注意したのに……ほんと悪い子さんですね?」(※目が笑ってない)


ユズハ「へいへ〜い♡ ここまで手首ぐるんぐるんは、ちょ〜っと情けないですよぉ〜?」

リア「非常に不快です。よくもまぁ、ここまで……」

カエデ「まぁ……しばくだけで許したるわ」

ミリー「ドーーン! もう許さないんだからっ!」


 


作者「ご、ごめんなふぁい……いや、サボってたわけじゃないんだ……執筆はしてて……!」


 


潤「……それ、俺らの話か?」


作者「:(;゛゜’ω゜’):」


 


一同「タダで済むと思うなよ?」


───そしてその日、才能奪取チーム史上最悪の“あとがき裁判”が開廷した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ