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才能奪って成り上がる!無職の俺がヒロイン達と社会を支配するまで  作者: pyoco
第3章『初心者の作者が本気出すでしょう』
255/262

第228話『結城と言う名の歪み』

ここまで読んでくれた奇特なあなた!


ブクマ・いいね・感想・★・DM・テレパシー、なんでも嬉しいです!

作者は1PVでも跳ねて喜ぶタイプなので、反応があるとガチで次の原動力になります。

どうかこのテンションのまま、応援いただけると助かります!


(いや、助けてください!!)




 


「──あんた達? なんで余計なもんまで連れてきてんのよ?」


 


 その声に、男の手が止まる。


 ミリーの目の前、振り上げられた工具が宙で凍りつく。


 


「はぁ……ほんっっっと、バイト君たちって、使えないわねぇ〜?」


 


 場に響いた声とともに、奥から現れたのは──結城だった。


 


 その姿を見たエマが、反射的に叫ぶ。


「結城さん……!? どうしてこんな──」


 


「──どうして?」


 結城の声がピクリと跳ね上がる。


「よく言えたわね……! 私から、居場所を奪っといて!!」


 


 ヒールの音を響かせ、結城がエマににじり寄る。


 そして──バチンッ!


 乾いた音が倉庫に響く。


 エマの頬を平手で叩いた。


 抵抗もできず、ただ俯くしかないエマの髪を、結城は無造作に鷲掴みにした。


 


「ねぇ……私から全部奪っておいて……さぞ、楽しい日々だったんでしょうねぇ?」


 耳元で囁くように、吐き捨てるように。


 


「でも安心して? もっと人気者にしてあげる。

 ──“現役アイドルの羞恥動画”、ネットに公開するの!」


 


 その顔は、完全に“アイドル”ではなかった。


 ゆがんだ笑み。濁った瞳。口元だけが笑っている。


 


「バズるわよぉ〜? 良かったわね? 人気者さんっ♡」


 


 場が、凍りつく。


 異常な空気に、すぐさま雇われのバイトたちが言葉を失う。


 


「お、おい……俺らの仕事、終わったよな? 金を早くくれよ」


「そ、そうだ。そしたら、俺らはもう帰るから……な?」


 


 3人を拉致したバイト連中は5人。


 全員が──目の前の女に関わりたくないという本能的な恐怖を滲ませていた。


 


「──ああ、バイト君たち?」


 結城がゆっくりと振り返る。


「お疲れ様っ♡」


 


 ブシィッ!!


 その瞬間、バイトのひとりの顔面に向かって、催涙スプレーが噴射された。


 


「がっ……あああああ!? 目がッ……!!」


 のたうち回る男の腹を、結城はヒールで蹴り飛ばす。


 そのまま、スマホを取り出し、何かを操作する。


 


 ──ドアが開いた。


 ズラズラと入ってくる影。


 


 ざっと30人。全員が同じ黒バンダナを額に巻いた、半グレの群れ。


 


「ねぇバイト君たち? “1人拉致”って言ったよね?」


 結城は、くるりと回りながら両手を広げた。


「3人も連れてきたら……契約違反だよね〜?」


 


「ま、待ってくれって! し、仕方なかったんだよ!? 通報されたらヤバいと思って……!」


 


「うーん、言い訳は聞き飽きた♡」


 舌を出しながら、笑う。


「そんなんだから、あんたら“闇バイト”止まりなのよ?

 ねぇ、“お金もらってバイバイ〜”で帰れると思った?」


 


 そう言って、スマホを掲げる。


「今から動画回すから、免許証と学生証、ぜんぶ見せて♡」


「!?」


「それから、“反省の言葉”もねっ!」


 


 男たちの顔が引きつる。


 その時──背後から、半グレの一人が笑いながら言い放った。


 


「お前ら逃げたら……家、行くからな。

 お前の母ちゃんと、ねぇちゃんと、妹の動画……**俺らで撮影会な。**わかってんだろ?」


 


 ──その一言で、バイトたちの心は、完全に折れた。


 


 絶望の中、何も言えず、全員が倉庫を後にした。


 代わりに残ったのは──3人の少女と、30人の地獄。


 


 結城は、くすくすと笑いながら振り返る。


「ま、そういうことだから? 楽しみにしててね、エマちゃん♡」


「それと、残りの2人も──運がなかったわねぇ?」


 


「エマちゃん。ほんと、良かったわよね?

 “デビューもできて、またユニットも組めて。”」


 


 その言葉を最後に──結城は、踵を返して部屋を出て行った。


 


 


 ──残された3人。


 


 その場に崩れ落ちるエマ。


 


「……ごめん、なさい……私の、せいで……」


 


 涙がぽろぽろと溢れる中、誰も責める者はいなかった。


 ただ──倉庫に響くのは、エマの嗚咽と、足音の遠ざかる音だけだった。



「……ごめんなさい……二人とも……」


 エマが、震える声で謝る。ぽろぽろと涙が頬を伝って落ちていく。


 


「だいじょうぶだよ!」


 ミリーがにぱっと笑って、明るく言った。


「じゅんくんがきてくれるもん!今もぜったい、みんなと一緒に探してくれてるよ!」


 


「そ〜ですです♪ うちの先輩、意外と頼りになるんですからぁ〜」


 ユズハも、口元を緩めて笑った。


 


 その言葉に、エマは不思議そうな顔をする。


「……潤さんが? ……どうして、そんなに彼を信頼できるんですか?」


 


「えへへ、それはね〜」


 ミリーが胸を張る。


「じゅんくんはね! 絶対、周りの人が困ったら、なんだかんだでいつもバーンってやっちゃうの!」


 


「うんうん、私達も最初は“え?この人で大丈夫?”って感じだったんですけどぉ〜」


 ユズハが目を細めながら、少しだけ笑う。


「……のほほんとしてるくせに、やるときはちゃんとやるっていうか〜……ずるいんですよね、そういうとこ」


 


 エマはしばらく黙って、それからぽつりと聞いた。


「その……お二人は、潤さんのことが……とっても好きなんですね?」


 


 その瞬間、ミリーとユズハの視線がぴたっと重なる。


「うーん……でもね〜?」


「別に、“頼りになるから好き”ってわけじゃないんだよね〜」


 


 ミリーが指をくるくる回しながら言った。


「じゅんくんって、ダサダサなとこがまた可愛いのっ!」


 


「……それ、良いところ……なんですか?」


 エマが戸惑い気味に聞く。


 


「うんうんっ!守られてるはずなのに、こっちが守ってあげたくなるっていうか!」


「直ぐテンション上がるのに空回って、必死なのにスカッと抜けてて、でもなんか気づくと心配になっちゃうっていうか〜……」


 


 ユズハのテンションが少しずつ上がる。


 


「……うわ〜ユズハちゃんがじゅんくんにデレデレしてる〜♡」


「ち、ちがいますからぁっ!!せ、先輩が私に夢中なだけですからーっ!!」


 


 慌てふためくユズハの横で、エマはほんの少し笑った。


「潤さんかぁ……確かに、不思議な方ですよね」


 


「げっ……もしかして……ライバル、増えた!?」


 ユズハがビクリと跳ねる。


 


「ち、ちがいます!そんなんじゃなくてっ!その……ちょっと……だけ……」


 


 顔を赤くしてうつむくエマ。


 


 ほんの少しだけ温度が戻った倉庫に、3人の笑い声が小さくこだまする。


 


 


 ──でも、それは嵐の前の、わずかな静けさだった。







(あとがき小話)


──社長室・深夜。


一人静かに椅子に座ったリアが、書類の束を閉じ、ふと天井を見上げた。


「……猫、ですか」


ぽつりと誰に聞かせるでもなく呟く。


「猫とは非常に興味深い動物です。

 あの肉球の形状は衝撃吸収構造として優れており、静音性能においても極めて理に適っています」


指を組みながら、淡々と続ける。


「加えて、まん丸な瞳──あれは夜行性動物としての機能性を備えつつ、見る者に“庇護欲”を喚起させる造形です。

 つまり、“守りたくなるように設計されている”ということ」


「無意識に人間の感情回路へアクセスし、優位性を保つ。

 ……実に戦略的ですね。猫という種は」


なぜかドヤ顔気味で語るリア。


「さらに、あの“スリスリと身体を擦り付けてくる行為”──

 あれはフェロモンマーキングの一種ではありますが、実際には“信頼関係の確認動作”でもあります」


「甘える、というより、“この人間は私のものだ”と再確認しているのです」


「つまり猫は……」


一拍置いて、目を閉じる。


「──支配者です」


その瞬間、社長室の片隅。

なぜかひとつ、封筒に入った小さな箱が置かれていた。


そこには走り書きのメモ。


「リアへ:仕事のご褒美に。

from ノア(この前の発注、まだ生きてました)」


リアは静かに中身を開け──

そこには黒い猫耳カチューシャが、ちょこんと。


しばし無言。


「……これは。

 単なるファッションアイテムに過ぎません。

 私のような知性の象徴たる存在が装着しても、別段──」


カチッ


装着された。


鏡を見る。


「……ふむ」


リアは顔を伏せ、腕を組む。


「これは、あくまで理論の実証です。

 人類がなぜ猫耳に敗北するのか、その根源に迫る──」


そして静かに、誰もいない部屋で。


「……にゃん」

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