第21話『俺、癒しの三重苦に包まれる』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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「今日も……酷くお疲れのようですね。
ほら、膝枕……してあげますから」
エンリさんの膝枕――天から差し伸べられた救済。
優しさの極み。
吸い込まれるように頭を傾けかけた、その瞬間――
「潤様……?」
背後から刺さる、鋭利な視線。
振り返ると、ノアがぴたりと正座していた。
「膝枕は……わたくしがいたします」
「い、いやあのこれは別にその……」
「じゃあ、うちがしてあげるわ! ほら潤君、こっちおいで〜♪」
カエデがニコニコしながら、膝をポンポンと叩いて誘ってくる。
「ちょっとカエデ!? 潤様に何してるんですか!」
「んふふ〜、潤君がええならええやろ? せやろ?」
「……あらあら♪」
エンリさん、微笑まないで! 助けて!!
俺の頭がどの膝に落ちるかで世界が割れそうなんですけど!?
「それより潤様、その……新しい職場のことですが」
(あ、話題変わった!助かった!)
「どうなんですか? うまくやれていますか?」
「それがさぁ……」
俺はため息まじりに、ここ数日の地獄を語り出した。
「最初は超優しくて、褒めてくれるし、“助け合いの職場”って聞いて安心してたのに……」
「ちょっと確認しようとしたら“手間をかける存在”扱いされて……
昼休みに席立とうとしたら、“仕事残ってるでしょ?”って笑顔で止められて……」
「結局、昼飯も抜きで仕事詰め。
“アットホーム”って何?って毎日問いかけてる……」
「それは……潤様が“仕事に対して誠実”だからです」
ノアが、静かに断言する。
「どんな理不尽な状況でも、真面目に取り組む。そんなあなたの姿勢が、逆に利用されているのです」
「潤君……えらいわぁ。ちゃんと頑張ってるやん」
カエデがふわりと寄り添って、俺の背中をとんとんと優しく叩く。
「えへへ……今度、甘〜いお菓子でも持ってってあげよっか?」
「私は……あまり無理なさらないでほしいです。
潤さんが壊れてしまったら、意味がありませんから」
エンリの手が、そっと俺の頭を撫でてくる。
ああもう……癒される。
でも。
「いや、癒し過多! 過剰供給! お前ら全員、心が優しすぎんだよ!」
「じゃあ誰の膝に甘えんねん?」
カエデが、無邪気に聞いてくる。
「わたくしですよね、潤様?」
ノアがすでに膝の上にハンドタオルを敷いて待機している。
「えっと……その、みなさん交代制とかで……」
「潤様が一番最初に私の方を見てくださったので、わたくしが先です!」
「え〜ウチが先や思うけどな〜?」
「まぁまぁ……順番なんて、私が一晩中付き添えば関係ないですよ♪」
(あっこれ……逃げられないやつ……)
――今の俺に必要なのは、癒しじゃない。
癒しを制御する、“権利と制度”だ。
俺の心は完全に、疲弊しきっていた。
「仕事より疲れるハーレムって、何なんだ……」
――そして翌日。
目覚めた瞬間、俺の身体は全身が重かった。
いや、物理的にもメンタル的にも。
(なんか……ぐっすり寝たはずなのに、ぜんっぜん回復してねぇ……)
昨日の“癒しの三重苦”は、ある意味でブラック企業より消耗が激しかった気がする。
でも――それでも、俺は行く。
この現実を変えるために。もやしのために。未来の潤のために!
「行ってきます……」
誰もいない部屋で、そっと呟いて玄関を出た。
* * *
出社した瞬間、地味な空気が胃にのしかかる。
(なんか……今日、空気が重くね?)
職場の雰囲気は昨日と変わらず“ニコニコ笑顔”が飛び交っている。
けど、その裏にある“ピリッとした空気”が異常に濃い。
あの“アットホーム”の皮を被った圧力社会――
俺だけが敏感に、それを察知しているような気がした。
「おはようございま〜す……」
「……あら、葉山くん。今日はちょっと遅かったんじゃない?」
時計を見た。8時58分。
始業は9時。
(いやいやいや! 早いし普通やろ!?)
「ご、ごめんなさい。電車が少し……」
「ふぅん。そう……まぁ新人さんだもんね。仕方ないかぁ」
その“笑顔”、まるで“もう次は許さないわよ”って書いてあるんですけど!?
「これ、今朝の分ね。急ぎだから、午前中までによろしく」
(山盛り)
俺のデスクに、書類という名の地獄が降臨する。
「……はい、頑張ります……!」
カタカタカタカタ――
(……この会社、やっぱおかしいよ)
(あの亀山エツコさんの“笑顔”も、“仕事の山”も、“空気”も)
(なにか、異常だ。……才能的な何かを、感じる)
俺は、直感的に思った。
ここには、スキルがある――
人を“気づかせないまま”支配する、“才能”が――。
(ウインドウを開けば、見えるのか?)
(でも……スキルを使うには“悪事”の確認が必要だ。まだ断定はできない)
だからこそ――もう少しだけ様子を見るしかない。
(……ま、でも今日の昼は絶対もやしラーメン食ってやる)
(それだけは譲れねぇ!!)
* * *
そしてその頃――
「ふふっ……潤さん、ちゃんと今日も頑張ってますね♪」
エンリが笑顔でスマホの位置情報を確認していた。
「って何で監視してるねんエンリ!」
カエデがソファの上からツッコミを入れる。
「だって……心配なんですもん。潤さん、放っておけないから……」
ノアは黙って、湯気の立つ紅茶を見つめていた。
「潤様……もし泣いて帰ってきたら、すぐに慰めます。
膝枕も、ハグも、独占的に、すべて……!」
【あとがき小話】
作者『……癒しが……足りない……』
潤『また始まったよこの人。あとがきで何回叫ぶんだよ』
作者『潤はいいよな、ヒロインたちに囲まれて癒されて。俺なんか毎日…毎日…』
カエデ『んふふ~? 作者さん、ウチの膝で寝てええよ? でも潤くんの方が柔らかいで?』
ノア『癒しを求めるのは構いませんが……潤様に対して“癒されている側”でいてください』
作者『え、なにその意味深で怖い圧』
エンリ『ふふっ、よければ、私が紅茶でも……でも、癒しというのは、時に“距離”が必要ですよ?』
作者『なんで全員微妙に突き放してくるの!? 甘やかしてくれる流れじゃないの!?』
潤『お前、癒されるよりまず働けよ』
作者『圧がすごいよこのあとがきッッ!!』
作者:pyoco(癒されたい欲、未解消)