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才能奪って成り上がる!無職の俺がヒロイン達と社会を支配するまで  作者: pyoco
第3章『初心者の作者が本気出すでしょう』
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第221話『俺、叱る』



その日の夜──悪徳リクルートエージェント社。


ロビーのソファ前にて、俺は無言で腕を組んでいた。


目の前では、ユズハが正座していた。


いや、正座“させられていた”。


「おい……お前……」


低く、静かに──しかし確実に怒りを滲ませて言う俺に、


ユズハは、目を潤ませながら口を開いた。


「お願いです! せんぱぁ〜い変わってぐだざいぃ〜……!」


「お前のせいで! 面倒事巻き込まれただろおおおおお!!」


俺の怒声がロビーに響く。


──ああ、疲れてんだよこっちは。


潜入でスーツ汗まみれになって、ラアラに脅されて、仕事どころか護衛任務増えたってのに。


なんで、こいつだけ館内放送で“お連れ様”呼ばれしてんだよ!!


「反省しろゃぁぁぁ!!」


「反省したら変わってくれるんですかぁ!?反省!はいっ!今しましたっ!」


即答。


──こいつ、まじで反省って言葉の意味わかってねぇな。


「お前ってやつは……いいだろう……カエデさん、やっておしまい!」


「ウチの出番やな〜♪」


にゅっと現れたのは、ほんわか関西娘──ではなく。


背後にゴツいおっさん数人(※弊社警備部)を従えたカエデである。


「ユズハちゃん、さっ、いこか〜? 筋肉って、ウソつかへんねんで?」


「ひぇ……それだけは……それだけはーっ!!」


ガシィッと両脇を固められ、ユズハはそのまま“地獄の地下室”へと連行されていった。


──名付けて、魂の《マッスルブートキャンプ》。


社内懲罰の名にふさわしい。


……っていうか、お前のせいで俺までマネージャーに謝ってんだぞ。


 


「……終わりましたか?」


聞き覚えのある穏やかな声が、背後から届く。


振り向けば、うとうとしながらソファに座っていたエンリが、眠そうに目をこすっていた。


「最近なかなか忙しくて……ふぁ……」


「お疲れ……んでどうよ? AIとか電柱社とか、全て投げちゃってるけど?」


俺の問いかけに、エンリはすっと姿勢を整える。


「心配なほど順調ですよ? 電柱社とマイさんのところの会社の業務提携も完了しましたし、このまま成長を続ければ、日本の上位も夢ではないですね〜」


「そんなに!?」


素で声が出た。


エンリは微笑みながら、指でデータパッドを操作しつつ続ける。


「それはそうですよ? 特にAIの部門が大きいですね。市場はほぼ未開拓ですのでスピード勝負。

幸い、元々電子機器に強い電柱社、そしてゲンジさんのバックアップ……今までの全ての出来事が力になっているんです」


──今までの全て、か。


まさかゲンジや電柱社、果てはアイドル事務所まで繋がってくるとはな。


「そうだな〜……」


何気なく口をついて出た言葉だったが──


リアの視線が、冷たく突き刺さる。


「……なんですか? その間抜けズラは」


「いや……なんか、ここまできたのかって……」


少しだけ感慨に浸ってただけだ。


だが、リアは一切容赦しない。


「油断してると足元掬われますよ? 大きくなったって事は、それだけ“守るもの”が増えたってことですし。

何かあった時の世間の風当たりも、当然厳しくなります。──くれぐれも、問題を起こさないように」


「は……はい…………」


──問題を起こしてんの、俺じゃなくて“お連れ様”なんだけどな。


心の中でそう呟いた俺の前で、地下室の扉が軋む音を立てた。


……まさか、ユズハが筋肉に目覚めて帰ってくるとか、ないよな?


 


俺は小さくため息を吐きながら、天井を見上げた。


 


──俺、やっぱこの会社でやってける気がしねぇ。


そのままリアの睨みを浴びたまま固まっていると──

社内奥から、再びドタバタと足音が響いてきた。


「いややあああああ!腕がもげるぅぅぅぅ!!」


声の主は言うまでもなく、あの小悪魔。


「ユズハちゃん?まだ30回やで?」

「ダメですぅ!それ以上は髪型に悪影響がぁぁぁ!」


どうやら現在、サーキットトレーニング第5種目らしい。


俺はそっと目を逸らし、溜め息と共にエンリに問いかけた。


「エンリ……あれ、ほんとに更生プログラムなのか?」


「ええ。実際、運動で気分がリセットされる方は多いですから。……一部、破壊的な方向にリセットされる場合もありますけど」


「完全にそっちのパターンじゃねぇか」


エンリはふわっと笑い、再び膝に手を乗せてソファに座り直す。


「でも──潤さんのおかげで、私たちは前に進めているんですよ」


「俺、何もしてないぞ……?」


「“巻き込まれてくれる人”って、貴重なんです。止まらず、逃げず、ただその場にいてくれる。……だから、ありがたいんですよ」


「……そりゃまた、都合のいい役回りだな」


そう言いつつも、胸の奥が少しくすぐったくなった。


 

──その瞬間だった。


廊下の奥から、ぶっ倒れたユズハが担架で運ばれてきた。


「せんぱぁいぃ……筋肉って……敵……だぁ……」


担架の上でうわ言のように呟くユズハ。

それを見届けた俺は、全てを諦めた表情で、呟く。


「……やっぱこの会社、おかしいわ」


 


俺は紙袋を手に取り、黙ってその場を後にした。


ジラーチのカードが、首から外れて床に落ちた。


──ああ、今日も一日、お疲れ様でした。






あとがき小話


~ノアの趣味は……支配です?~


 


作者『ノアはさ、趣味とかないの?』


ノア『はい。潤様のスケジュール管理と監視が趣味です』


作者『怖っ!!』


ノア『他にも、通話記録の確認や、他ヒロインズとの接触時間の記録など……』


作者『ガチの監視じゃん!? 趣味っていうか業務内容じゃん!?』


ノア『趣味と実益を兼ねております♪』


作者『ブラック企業の人事部かよお前!?』


ノア『ちなみに……今日のカエデ様との接触、3時間12分──長すぎませんか?』


作者『いやちょ、まっ──』


ノア『潤様……誰とどれだけ過ごすかは、私が決めるべきだと思うんです』


作者『なんでお前がそんな独裁国家みたいなことを!?』


ノア『では、今後はすべての会話に私を通していただくルールで……♪』


作者『俺がノアの秘書なの!? 立場どっち!?』


ノア『ふふっ……潤様を誰にも渡さない。それが私の人生ですから♪』


作者『趣味の話どこ行ったよ!?!?!?!?!?』


──ご清聴ありがとうございました。


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