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才能奪って成り上がる!無職の俺がヒロイン達と社会を支配するまで  作者: pyoco
第3章『初心者の作者が本気出すでしょう』
243/262

第217話『俺、空気でも緊張する』

ここまで読んでくれて……ありがとぉおおおお!!


もうね、じゅんくんじゃないけど……作者、めちゃくちゃ跳ねて喜んでるのーっ!

ブクマ! いいね! 感想!★! DM! テレパシー!(←!?)

なんでも全部嬉しいのっっ!!


1PVでも飛び上がるレベルで元気出るから、

このままのテンションで、応援してくれたら……

ミリー、うれしくて舞い上がっちゃうよぉっ♪


(……ほんとに……助けてほしいのーっ!!)


──都内某スタジオ前、午前九時。


「……名刺交換、終わった……」

俺はスーツの襟元を引っ張りながら、思わず天を仰いだ。

こんなに“名刺が重い”と思ったのは初めてだ。


テレビ局、広告代理店、制作会社、衣装・メイク、さらに謎のオーガニックブランド代表まで勢揃い。

あれ、俺何しに来たんだっけ?


「……潤、名刺の向きが上下逆でしたよ」

「俺の社会的立場も上下逆転しかけてるよ……」


隣にはリア。

今日は“ノアのCM撮影の立ち会い”という名目で、俺とリアが代理で来ている。


普段ならエンリが全部やってくれるんだけど──最近は別件で忙しくて、比較的暇な俺とリアに役割が回ってきた形だ。


「……正直、私の読書時間を削ってまでついてくる意味、ありました?」

「おい、それを言うな……俺だって朝から“肌に優しいミネラル水”のこだわりについて3回聞かされた男なんだぞ」


「ひとりで聞けば2回で済んだのでは?」

「そんな物理演算みたいな話ある!?」


「でも……まぁ」

リアが控えめにスケジュール表を覗く。


「こうして現場を見るのも、悪くはないですね。ノアさんの“現場での顔”、気になっていたので」


「……リアって意外とミーハーだったりする?」

「違います。ただ、好奇心と観察欲が旺盛なだけです」

「なおさら怖ぇわ」


そう言っている間に、スタジオの奥からスタッフの声が飛んできた。


『──本番入りまーす!ノアさん、スタンバイお願いしまーす!』


白いレースの衣装に身を包んだノアが、ゆっくりと撮影スペースに歩いていく。

照明がふわりと灯り、セットの天蓋ベッドが浮かび上がった。


……って、ベッド!?


「なあ、あのCMって何のCMだったっけ……」

俺が動揺しながら聞くと、リアが淡々と答える。


LUVISルービスという高級スキンケアブランドの新商品。テーマは“夜の誘惑と密着の余韻”です」


「うわ、夜!密着!余韻!なんか全部アウトな単語が連打されてる!」

「ちなみに今回は“恋人未満の関係”がテーマで、演技指導にはキス寸前までの距離感が含まれているようです」


「キス寸前て……いや、あのノアがそんな大胆な演技なんて──」


その瞬間、ノアがふとこちらを振り向いた。

カメラが回っているとは思えないほど柔らかな目で、まっすぐこちらを見つめ──


微笑んだ。


──ふわぁぁぁぁぁっ!?

いやなんだ今の!?!?

空気が一瞬止まったぞ!?

スタッフの誰かが息飲んだ音したぞ!?

俺の胸も飲まれたぞ!?(語弊)


「……あれが、ノアさんの本気です」

「ほんとに!? えっ、あれ本気!?普段の何百倍も溶けかけてたぞ!?」


「ノアさんは、“潤が見ている”と認識した瞬間に演技のギアが切り替わります」

「ギアっていうか愛のド直球じゃなかった!?」


──その後、ノアは撮影の中で

「手に触れる寸前の指先」

「距離一歩の沈黙」

「喉元をそっと押さえるカット」などなど


もはや地上波ギリギリアウトな“ギリギリ芸術”を披露し、現場の男スタッフたちが全員沈黙するという事態が発生。


リアが腕を組み、ひとこと。


「……この演技を日常的に浴びている潤が無傷でいる方が不思議です」

「無傷じゃねぇからな!?むしろ心に永久ダメージ受けてるからな!?」


──そして俺たちは、CM明けに流れる“視線だけで溶かすノア”の15秒版を見て、

制作スタッフが真顔で言った「エロくないんです、これが愛なんです」という謎の感想に頷くしかなかった。



────────────


ノアの撮影現場から一歩離れたロビー。

静かな空調音と、たまに響く「休憩入りまーす!」の声だけが聞こえる。


──俺とリアは、場違いなソファで並んで座っていた。


「……で、リア? 撮影スケジュールってどんな感じなんだ?」

俺が水を一口飲みながら尋ねると、リアはタブレットを軽く操作して見せた。


「えぇ……このCMが終わった後、同じビル内でノアさんのバラエティ番組の収録が控えています。午前中はみっちり潰れると見ていいですね」


「マジか……朝から夜の誘惑CMで、そのあとバラエティって……ノア、マルチすぎんだろ……」

「……あなたがついていけてないだけです」


「ぐぅ……」


ノアが“撮影に集中できない”という理由で、俺とリアはロビー待機になったわけだが──

たしかに、現場で俺と目が合った瞬間、演技が“恋人ガチ勢”に切り替わるノアを見て、それも納得だった。


「まぁ……気長に待つかー」

俺が伸びをした、そのときだった。


──カツ、カツと足音が近づき、明らかにこちらを意識した視線を感じた。


「──あっ、あのっ!」


顔を上げると、見覚えのある少女がこっちでピタッと止まっていた。

……どこかで見たなこの子……えーと……握手会で……


「この間の……握手会の人ですよね!?」


「んあ?」


間抜けな返事と同時に顔を向けると──

そこにいたのは、Sweet Shinyのアイドル・エマちゃんだった。


「あ……あのっ、この間は本当にごめんなさいっ! ちゃんとお詫びもできなくて……!」


「ああ……いや、気にしなくていいよ、あんなの──」


「そうはいきません! わざわざ来てくれたのに……私のせいで……!」


「俺は別に──」


「潤なら大丈夫ですよ。こう見えて人畜無害な“雑草”みたいな存在なので」


「は!?」

俺はリアを振り返って全力抗議する。


「ちょ、雑草ってなんだよ!?なんか絶妙に傷つくんだけど!?それ害あるだろ!?てかお前、握手会のこと知らねーだろ!?」


「ええ、知りませんけど? でも、どうせあなたのせいなんでしょ?」


「ぐっ……ひどい……ひどいよリア……。俺たち、この間“暑い夜に語り合った仲”だったのに……。後ろから抱きつかれたし……」

チラッ。


──ささやかにリアを煽ると、リアの頬がみるみる真っ赤になった。


「っっ……! あ、あれは不可抗力でっ!そもそもその誤解を生むような表現は──っ!」


「いやーでも事実だからなぁ、記録にも記憶にも残るわー。俺の背中が語ってるわー」

「黙ってください!!」


「ええっ」


──そんなふたりのやり取りを目の前で見ていたエマちゃん。

彼女の顔が……見たことないくらい真っ赤になっていた。


「あ、あの……!実は、今日はSweet Shinyのメンバー全員で撮影があるんです……!」


「へ、へえ……そうなんだ」


「でっ、できればこの間のお詫びも兼ねて! メンバー全員と……写真撮影とか、どうですか!?」


「へっ!?」


え、それって──ファン得すぎるやつじゃん。

いや俺、別にファンってほどじゃないし……

でもここで断ったら、逆に悪い……?


リアは完全に傍観モード。

「……どうせまた流されるんですよね?」みたいな目をしてるのが悔しい。


「……まぁ、それでおさまるなら……」

俺はしぶしぶ頷いた。


こうして──

俺は、キラキラした世界の住人たちと並んで、ぎこちなくピースを決める羽目になったのだった。


「笑ってください!」

「笑えねぇよ!!緊張で顔引きつるわ!!」



「エマさん、ありがとーね! じゃ、そろそろ俺は──」


全員との写真撮影も終わり、そそくさと退散しようとしたその時だった。


「ちょっと待ったぁっ!」


ぴたっ、と俺の足が止まる。

甲高く響いたその声の主は──


ピンクのフリフリ衣装に、ぶわっと跳ねたツインテール。

キラキラの瞳をこちらに向けている。


──たしか、ユズハの推しって言ってた……ライラちゃん?


「あのさー? 私も一緒に写ってあげたのにぃ~? 感謝のひとつもなく終わり~? って、何ごっこ?」


めんどくせぇぇぇぇ!!!


「えっと……皆さん、本当にありがとうございました!楽しかったです!」


──そう。全体に対してのお礼だ。

特定の誰かに向けたわけじゃない。


だから終わりだ。


俺の中では終わったんだ……!!


だが。


「ねぇ? ちょっと待って? それって、みんなへのやつでしょ? 私には?」


「いや、あの、“皆様”って言ったし……」


「そう、“皆様”って言っただけだよね? 私には“個別”に言ってないよね?」


はぁぁぁぁ!?!?

なにその謎ロジック!!?


心の中で全力ツッコミを入れながら、俺は表面上だけ笑顔を貼りつける。


「……ライラちゃん、ありがとうございましたー! ではっ!!」


──逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ。


すると背後から、


「ねぇ、あんた名前は?」


「……潤です。潤うって書いて潤です!!」


言いながら、俺はもう斜め後ろを向いていた。


「へぇ、うるお……あん──」


何か言いかけてたけど、知らん。聞こえなかった。空気の流れにかき消された。

──そういうことにした。


──これが、“モブを極めた男”の逃げの美学である。


見せろ背中! 聞かせろ無言!

残すな記憶! 刻むな存在感!


──なぜなら、ここはノアが仕事してるビル。

この建物のどこかで「潤様が女性と親しげに会話していた」なんて報告が流れた日には──


……思考がそこで停止した。

想像だけで、全身の汗腺が全開になるレベル。


俺は息も足音も殺し、そっとリアの元へと帰還した。


──モブ、完遂。






あとがき小話


 


作者『ねーねーノアたん、この前の記念回みたいにさ〜、ほら、にゃんにゃんしてよ〜。癒しが欲しいのおおおおお!』


 


ノア『…………』


 


作者『……ノア?』


 


ノア『……頭にウジでも湧きましたか?』


 


作者『開幕からエグい!?』


 


ノア『にゃんにゃん……? いつ、私がそんなことを……?』


 


作者『いやほら、記念回とかで、あったじゃん!? ちょっと甘々なやつ……えっと……?』


 


ノア『記憶にありません』


リア『そのような記録、確認されていません』


 


作者『いやいやいやいや!? ちゃんとあったもん! ここにログも──』


 


(スマホを取り出す作者)


 


──表示:ログは削除されました──


 


作者『………………………………あれ?』


 


ノア『……“なかったこと”にしておきました』


リア『事実を捏造する方が悪いんです』


 


作者『なんで俺が歴史改変食らってんの!?』


 


ノア『作者様。にゃんにゃんを求めるその精神こそ、問題なのです』


リア『……知性の放棄ですね』


 


作者『言い方ぁぁぁぁぁあああああ!!!??』


 


──このあと、作者は反省文(4000字)を提出させられました──


 



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