第213話『それでも隣にいると、君が言ったから』
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『じゅんくん!!』
『せんぱ〜い? そんな思い詰めた顔して、どうしたんですかぁ?』
『あなたは全く……何かあるなら、ちゃんと話してください』
夜の路地。
潤はフードを深く被ったまま、わざと視線を逸らして歩き出そうとする。
その腕に、ミリーが飛びつく。
『ダメだもんっ! 今の潤くんなんか、怖いのっ!!』
潤はほんの少し目を細めて──口元だけで答える。
『怖い? なら……いいことじゃないか』
『よくないですぅ!!』
横からユズハが回り込んで、潤の腕にしがみつく。
『ワイルドな男気取っても〜ダメですよ? 先輩は先輩なんですから!
ほらほら〜いつもみたいに、のほほんとしててくださいよ〜?』
『そんな暇は──ない』
冷たい声と共に、潤が再び歩き出そうとしたその瞬間。
リアが一歩前に出て、道を塞ぐ。
『……はぁ。まったく、相変わらず融通の利かない人ですね』
『そんな行き当たりばったりな行動……まるで、自分に“罰”を与えようとしているかのようです』
潤が、ぴたりと足を止める。
『……罰? 俺が?』
一拍の沈黙のあと、潤はぼそりと呟く。
『……それも、仕方ないのかもしれないな……』
『でも──止まるわけにはいかない』
『じゅんくんの、ばかぁ〜〜!!』
ミリーが叫ぶように声を上げる。
『なんで、なんで話してくれないの!?』
『そーですよぉっ! ユズハたちそんなに頼りないですかぁ!?』
潤は2人の手を振り払い、背中を向けて歩き出す。
──だが、リアがその背に手を回して、抱きしめるようにして引き留めた。
『ダメです……! 行かせません!』
潤が低く唸るように答える。
『……止めるなよ、リア』
『悪人が減る。それだけだろ。誰かがやらなきゃならない。
──なら、俺がやる。それでいいだろ?』
リアの表情が、確かに曇った。
そのすぐ横で、ユズハの声が強くなる。
『先輩……っ! なんでそんなに、1人でやりたがるんですかっ!?』
──いつもならふざけた声。
でも今のユズハは違った。
真剣な目で、真正面から潤を見ていた。
『……じゃあ聞きますけど?』
潤が初めて振り返り、少し声を荒げる。
『お前らに──何ができるんだよ!?』
『確かに……お前らは俺より優秀だ。俺がどれだけ無能だったか知ってるだろ?』
『スキルなんてなけりゃ、今ごろフリーターで、先輩にペコペコ頭下げて生きてた。
でも今は違う。俺は、“才能奪取”って力を持ってる。』
潤の拳が震えながら握り締められる。
『だから……だからこそ、“俺がやるしかない”だろ……!!』
──その言葉に、ユズハが口を噤み、唇を噛んだ。
『……じゃあ……』
ミリーの声が震える。
『じゅんくんにとって、ミリーたちは……何なの!?』
潤が目を見開く。
ミリーは怒っていた。涙を浮かべながら、それでもまっすぐに──
『力があるから、助けてくれたの!?』
『力がなかったら……ミリーのこと、見捨ててたの!?』
『……っ、それは……!』
潤が言葉を詰まらせる。
『……助けたいとは思ってた……けど──
この力がなかったら、助けられなかった……』
『だから俺は、“持ってる側”として──責任がある。
“助けられる奴”が、“助けるべき”なんだ……!』
潤の拳が、今にも血が出そうなほど握りしめられていた。
『べきって──先輩は、いつからそんな“すごい人”になったんですか?』
ユズハの声が震える。
けれどその目は、真っすぐ潤を見据えていた。
『私の知ってる先輩は、からかうとすぐ顔真っ赤にして、
情けなくて、でもちょっとかっこよくて──
大体は、ダサくて、でも愛される人なんです』
『そんな先輩は……“力があるから”生まれたんですか?』
『そうだよ!!』
潤が叫ぶように返す。
『俺は……昔、何もできなかった!
先輩に怒られてもペコペコして、
不良を見かけたら道を譲って、
誰かを助けるなんて、できるわけがない』
『そんな俺が、ようやく“変われた”んだ……!』
『この才能奪取って力を手に入れて──
俺は、力を持つ者として、やるべきことをやる。
たとえ、誰から責められても! たとえ、全部の罪を俺一人が背負うことになっても……』
リアが一歩踏み出し、潤を正面から見据える。
その声は静かだった。でも、強かった。
『……力の責任、ですか』
『確かに私たちは、その力を持っていません。
あなたがどれほどの重圧を背負ってるか、本当の意味では分からない』
『ですが──なら、なぜそんなに……苦しそうな顔をしているんですか?』
『俺がやらなきゃ──誰もやらないんだよ!』
潤が叫ぶ。
『苦しいに決まってんだろ! やめたいよ!
でも、誰かが傷つくくらいなら、俺がやるしかないだろ!?』
潤は言葉を止めない。もう止まれなかった。
『……この際だから、言わせてもらう。
今までありがとう……でも今日は、1人でやる。
レグルスも、悪人も、全部──俺が潰す。
俺だけが悪者になればいい。お前らは──』
──パァンッ!!
ミリーのビンタが潤の頬に音を立てて響いた。
『じゅんくんは、それで……本当に幸せなの?』
ミリーの瞳が濡れていた。怒りと、涙と、悲しみで。
『悪い人を倒したら、それで終わり?
誰かを助けたら、それで満足?』
『……それは……』
『じゅんくんの思い描く未来に、私たちは──いるの?』
『私はね……じゅんくんがいない未来なんて、絶対にイヤなの……』
潤の目が揺れる。
何かが、胸の奥で音を立てて崩れたようだった。
『先輩……』
ユズハが静かに言う。
『私たちのこと、置いていっちゃうんですか?』
『先輩の辛さも、悩みも……
私たちには、全部分けてくれないんですか?』
『私たちだって、誰かを助けたいんです。
でもそれは、“先輩が笑ってくれてる”ことが前提です。』
リアがそっと涙を拭う。
『あなたの持つ力を、私たちは持っていません』
『でも──あなたが背負うものを、“一緒に担ぐ”ことなら、できます』
『それでも、あなたは……私たちを、邪魔だと言うんですか?』
『邪魔……?』
潤が小さく呟く。
『そんなわけ……あるかよ……!』
『でも俺といると、危険な目に遭うかもしれない。
巻き込まれて、傷つくかもしれない。』
『それでも──それでも、いいって言うのかよ……?』
『俺は、“正義のヒーロー”みたいにカッコよくて、
誰からも好かれて、みんなを救えるような存在じゃないんだぞ……?』
──返事は、まだなかった。
でも潤の声は、もう誰かを突き放すものではなかった。
心の中で張っていた糸が、今、切れかけていた。
『だからね?じゅんくん……』
ミリーが、手をそっと伸ばす。
それは触れそうで、触れない距離。
『私たちは、潤くんのこと──ひとりにさせたくないの』
(俺だって……みんなと笑っていたい。
でも……俺が隣にいることで、誰かがまた……
ユカリちゃんの時みたいに──)
『先輩、もしかして──“私たちが傷つくかも”って心配してるんですか?』
ユズハが、あきれたように笑いながら前に出る。
『なら逆に聞きますけど、“自分がダメダメだ”って言ったのは先輩でしょ?』
『だからこそ、私たちがいるんですよ! カッコよくて強いから、じゃない。
ダサくて、心配性で、でも……見捨てられないから。』
『でも……』
潤が、ぽつりと呟く。
『……俺は、ユカリちゃんのとき、動けなかった……。
きっと、なんとかなるって……結局、何もできなかった……
そのせいで──みんなが……』
リアが、静かに前に出てくる。
その表情には、冷静と温度の両方があった。
『私たちは、その出来事を知りません。
でも──その時、潤がどんな想いでいたか、少しは想像できます』
『……エンリ、ノア、カエデ……彼女たちが、なぜあんなにも傷ついているのかも、きっと──』
『“誰かを救いたかった”からじゃないですか?』
『そして、その“誰か”の中には──
潤、あなたも含まれていたと思います』
潤は、目を見開く。
『……俺も、救われる側だった……?』
ミリーが、弾けるように笑う。
『あたりまえだもんっ! じゅんくんが苦しんでたら、助けたいって思うし!』
『間違っても、傷ついても、それでも──一緒にいられたら、幸せって思える。』
──その時。
風が、街角を吹き抜ける。
静寂の中──ビルの影から、3つの影が現れる。
『……ごめんな、潤くん』
カエデだった。
『ずっとウチらが“背負わせてた”んや……』
『私達は、あのとき……動けませんでした』
エンリが俯きながらも、確かな足取りで近づく。
『あの選択が、正しかったかは今でも分かりません……でも──』
『これからは、違います』
ノアが潤のすぐ傍まで歩み寄り、その手をそっと取る。
『潤様──あなたがどんな道を進もうとも……
私は、必ず隣におります。
孤独にはさせません』
潤が、驚いたように全員を見る。
『……お前ら……』
リアが前に出て、真っ直ぐに潤を見上げる。
『見えませんか、潤? あなたは、もう“ひとり”ではありません』
『あなたが“力”を持っているから、私たちがついてくるんじゃない。
“あなた”だから──ついていきたいんです』
沈黙が落ちる。
けれどその沈黙は、今までのように重苦しくない。
──温かい、決意の静けさだった。
潤の唇が、ほんのわずかに震える。
そして──ようやく。
『……ありがとう』
その言葉が、かすかに夜の風に溶けた。
あとがき『重要なご相談』
⸻
作者『え〜今回は、ちょっとだけ真面目なご相談です!』
潤『おっ、珍しく真面目モードだな?』
作者『現在、才能奪取は【1日2話更新】を続けてますが……
読たん的には「追うの大変かも?」って気になってまして。』
潤『俺らは勢いで走ってるけど、読たんには他にも読む作品あるしな。』
作者『なので──ちょっとしたアンケート代わりに、
この話に【リアクション】や【感想】をもらえたら、
“2話更新でも楽しみにしてくれてる”って受け取って続けます!』
潤『逆に、反応が無いようなら1話ずつに切り替えて、
ゆっくり読みやすくしようかなって思ってるらしい。』
作者『形式は問いません!バットでもグットでも!
どんな反応でも励みになりますし、判断の材料になります!』
潤『いつも読んでくれてるだけで嬉しいけど……
よかったら、ちょこっとでも応えてくれると作者が跳ねて喜びます。』
作者『本当です。跳ねます。バインバインします。』
潤『……急にふざけるなよ』
※この話に一つでもリアクションが付きましたら毎日2話を続けて参ります
最新を追って下さってる猛者たんに委ねますので8月3日まで様子見致します