第211話『私、シークレットの範囲がわからないの』
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『昨日はユズハちゃん、あんな事言ってたけどぉ〜〜……』
『いいですか!? これは“シークレットミッション”です〜!!』
──という高らかな宣言を思い出しながら、
ミリーは玄関前で、むーーっとほっぺを膨らませていた。
「ん〜〜〜〜〜〜〜……」
悩んでいる。
その表情は完全に“考えてる時の顔”だ。
ただし、周囲から見れば、単に寝起きで止まってる人に見える。
「……ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」
問題はこれだ。
──シークレットミッション。
「……どこまでが、シークレットなのかな?」
たとえば、尾行するのは秘密。
でも、尾行することを他の人に聞くのは秘密?
でも、ユズハちゃんは「張り込み用にパンケーキ買う」とか言ってたし、
それってすでに秘密じゃないような……
「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
考えるミリー。
悩むミリー。
止まるミリー。
──数分後、自然な流れで“いつもの場所”へ向かう。
◆
『ねぇねぇエンリ〜〜〜!』
「あら、ミリーちゃん。どうしたの?」
ソファで本を読んでいたエンリが、顔を上げて微笑む。
ミリーは勢いよくぴょんっと隣に座り、
何やら“真剣”な顔で身を寄せる。
「ユズハちゃんがね、“シークレットミッション”って言ってたの!
でもね、どこまでがシークレットかわかんないの!
誰にも言っちゃダメってこと? でもエンリになら言ってもいい?
ていうか、これを聞くこと自体がもうアウト? 教えて?」
質問の一秒後に質問が上書きされる。
流石のエンリも、きょとん。
「……シークレットの中身、聞いちゃってるのね?」
「えへっ♡」
「ふふ。ミリーちゃんらしいですね」
エンリは少しだけ目を細めて、
それから、そっとミリーの頭を撫でる。
「“秘密”っていうのはね、その言葉を使ってる人の信頼に関わるの。
“ここまで話してもいい”って思ってくれるかどうか──それが大事なんですよ」
「うぅ〜……じゃあ、エンリは話しても怒らない?」
「私は怒りませんよ?」
「……なら、じゅんくんを尾行するって話してもいいの?」
「尾行……!?」
エンリの笑顔に、わずかなひび。
ミリーはちょこんと首をかしげる。
「だってね、なんか最近、じゅんくんが夜な夜な悪人を自首させてるって噂で〜……」
──その一言で、エンリの表情がわずかに曇った。
「えーと……ミリーちゃん?」
「私には、その……ちょっと、どうしたらいいのか、上手にアドバイスできそうにありません……」
なんか、いつものエンリと違う。
優しいのは変わらないけど、どこか──寂しそう?
悲しそう?
「あっ……ご、ごめんなさいエンリ! ミリー、他の人に聞いてみる!」
「ちょっと待ってミリーちゃん──」
エンリの声を背に、ミリーは走り出した。
「う〜〜〜〜〜〜ん……」
頭の中はぐるぐるだった。
エンリちゃんが悲しそうで、
潤くんは何かに巻き込まれてる気がして……
でも、それが“シークレット”で……?
「うーーーん!!」
──謎は深まるばかり。
でも、こんな時、ミリーには“相談する相手”が決まっていた。
◆
「カエデちゃーーーんっ!!」
『おおっ!? なんやなんや!? どしたミリー!?』
「潤くんがね! 大変で! エンリちゃんが悲しくて! シークレットミッションなのっ!」
『ええから落ち着こ!? な? 一回深呼吸しよか!?』
「す〜〜〜〜……はぁ〜〜〜……」
『……よし、んで、どないしたん?』
「じゅんくんのお話したらね、エンリちゃんがしゅん……ってなって……どうしたらいいのか分からないの!」
カエデは、一瞬だけ黙って──小さく眉を寄せた。
『……うちにも、わからへんな……』
「え?」
『それで……エンリは、なんて言うてたん?』
「“上手に出来ない”って……言ってた……」
『……そっか……』
カエデは鉄棒の前で立ち止まるように言葉を選んだあと、
ゆっくり、ミリーの頭をぽん、と撫でた。
『ごめんな? うちも、なんかアドバイスしたいんやけど……うまく言葉にできへん』
「……ううん、ありがとカエデちゃん……」
──いつもなら元気に跳ねてる2人の間に、静かな風が吹いた。
“誰かのために動いてるはずなのに、なぜか心が苦しくなる”。
そんな不思議な空気が、確かに流れていた。
でもミリーは、そこで止まらない。
彼女の頭の中には、すでに“次の相談相手”が浮かんでいた。
「……ノアちゃんにも聞いてみよっ!」
即行動。スマホを取り出し、タップ、発信──
『ノアちゃん! じゅんくんシークレット! カエデちゃんエンリちゃん悲しい! なんだよ!?』
……もはや謎の暗号。
リズムだけは元気だが、意味は1ミリも伝わらない。
電話越しのノアが一拍おいて、低く応じる。
『……やはり、そういうことでしたか……。わかりました……。
ただ本日は撮影がございますので、明日、会社に寄りますね?』
その直後、背後からスタッフの声が入り──
『ノアさん!次スタンバイです!』
『申し訳ありません、ミリー様──』
──プツッ。
「……切れちゃった」
しょうがない。
ミリーは静かに画面を伏せて呟いた。
「最後の砦……」
◆
「リアちゃーーーん!」
『……なんですかその顔は』
「シークレット! ノアちゃん! カエデちゃん! エンリちゃん! 悲しいっぽい〜?」
……もはや呪文。
だが、リアは冷静だった。
いや、冷静すぎて──ちょっと怖い。
『……あなた、よりによって今回の核心に関わってる3人にだけ聞いて回ったんですか?』
「うぅ〜〜〜〜」
ミリーの頬が、リアの指でぐに〜っと引き伸ばされる。
『せめて順番を考えるとか、探偵としての動きがあまりに無防備すぎます』
「だってぇ〜〜〜〜シークレットって〜どこまでシークレットかわかんないんだもん〜〜〜!」
『……はぁ』
リアはため息をつきながら、ようやくミリーのほっぺを解放した。
『……でも、これで確信に変わりました』
「え?」
『ノア、エンリ、カエデ……そして潤。
この4人の間に“何か”があり、潤の現在の行動の引き金になっている可能性が高い。
3人はそのことに対して──少なからず後ろめたさを感じている』
「え!? えっ!? みんな喧嘩中なの!?」
『いえ、恐らく違います』
リアは一瞬間を置いて──静かに結論を口にする。
『潤は、罪の意識で動いている。
そして3人は、その行動を止められない。
自分たちのせいで潤がそうなってしまったと──そう“思い込んでいる”。』
「……う〜〜〜ん。よく分かんないけど……」
ミリーが両手をぶんぶん振ってから、元気に言った。
「みんなを仲直りさせればいいってこと!?」
『……強引な解釈ですが、まあ方向性としては否定しません』
リアは端末を開いて時間を確認し、静かに立ち上がる。
『とりあえずは潤。
彼がなぜ“1人で責任を背負っている”のか──
問い詰めましょう、今夜』
──そして、夜が来る。
彼女たちの“追跡劇”が、今まさに幕を開けようとしていた。
【あとがき小話】
『語りたい曲があるんだよ』
作者「小説好きな人ならわかってくれると思うんだけどさ、ストーリーがある曲ってめっちゃ良くない?」
潤「突然どうした。“物語を語る者”の顔してるけど……どのへん?」
作者「たとえば……『痛いの痛いの飛んでけ』とか『カルマの坂』とか……」
潤「……やめとけって。最近ちょっとシリアス続いてんだからさ……読たんがダークサイド落ちかねないぞ?」
作者「え、でもあの救いのなさが良いんだよ……聴いた瞬間に脳内で“エンディングロール”流れる感じというか……」
潤「ほらもう始まった。語りの温度差が夏と冬」
作者「でもさ、癒される系で言うと『アオノハコ』1期のOP、あれ最高じゃない?」
潤「お、急に柔らかい方向来たな」
作者「アニメーション込みで観てたら、思わずキュンってなってさ……
なんなら一瞬、作者も心の中で少女になってた」
潤「知らんがな」
作者「“誰かにとっての物語”が、音楽になると爆発力増すよね……
ああいう曲に出会うと、小説書いててよかったって思える」
潤「……それは、ちょっとわかるかもな」
作者「というわけでみんなも、音楽から燃料もらって、また創作がんばろーぜ!」
潤「綺麗にまとめたつもりか?」
作者「当たり前じゃん。あとがきだもん」
──おしまい。