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才能奪って成り上がる!無職の俺がヒロイン達と社会を支配するまで  作者: pyoco
第3章『初心者の作者が本気出すでしょう』
233/262

第208話『俺、悩んでる間に壊れてしまう』

ここまで読んでくれた奇特なあなた!


ブクマ・いいね・感想・★・DM・テレパシー、なんでも嬉しいです!

作者は1PVでも跳ねて喜ぶタイプなので、反応があるとガチで次の原動力になります。

どうかこのテンションのまま、応援いただけると助かります!


(いや、助けてください!!)



ノアとカエデの過去の話――


それを聞いた時、俺はただ、黙って立ち尽くしていた。


目の前にいるはずの“いつものノア”と“いつものカエデ”が、一瞬だけ遠く感じた。


いや、違う。


俺が、ちゃんと見てこなかっただけだ。


いつも明るく笑っていたカエデ。

俺を“潤様”って呼んで、どこまでも尽くしてくれたノア。


そんな彼女たちの裏に、誰にも見せなかった痛みと過去があったなんて。


──けど、俺は。


そこまで思い至って、ふと疑問が頭をよぎる。


いや……そもそも、俺は“知ろう”としてたのか?


自分が情けなくなった。

笑ってごまかして、流されて、寄りかかって。

それっぽく関わってきた“つもり”になってただけじゃないか。


カエデの明るさも、ノアの独占欲も──

あの過去から来ていたのかもしれないのに。


俺は、ずっと何も知らずに、のうのうと――


 


そのとき、俺の手をノアがそっと握った。


まるで、何かを遮るように。

あるいは、赦すように。


「潤様……」


ノアの声は、いつになく優しかった。


「潤様は、潤様です」


「私達の過去を知っても……それを無理に変える必要など、御座いません」


 


その言葉に、胸が締めつけられた。


俺が何を言うより先に、ノアが俺の気持ちを受け止めてくれる。


それがまた、苦しかった。


──それでも。


「それと……」


ノアは視線をそっとエンリに向けた。


「エンリさんも、あまり……お気になさらず」


「カエデも、あんな態度を取ってしまいましたが……彼女なりに、ユカリちゃんを思ってのことです」


「そして、それはエンリさんも同じ……」


「……私は、どちらが“正しい”のかは分かりません」


「でも──どちらも、“間違い”ではないと思います」


 


その言葉は、エンリの胸に静かに届いた。


ほんの少しだけ、彼女の表情が和らぐ。


何かを許されたような、あるいは肯定されたような、そんな微かなぬくもり。


 


──そして翌日。


まるで何もなかったかのように、またユカリちゃんが遊びに来た。


 


俺たちは、彼女に悟られないように。


あの日の話も、昨夜の涙も、すべて隠して、いつも通りの空気を演じた。


 


カエデも、あれから一晩寝て、頭が冷えたのか……いつものように笑っている。


「おっはよ〜!潤くん、またお菓子買ってきたで!今日こそ食べさせたるんやからな〜!」


……どこからどう見ても、いつものカエデだ。


(けど……あの時の顔、忘れられるわけねーよ)


 


エンリも、静かに微笑みながら、様子を見ている。


たぶん、カエデに謝るタイミングを、ずっと伺ってるんだろう。


でも、その距離感すらも、きっとあの二人にとっては大切な“歩幅”なんだ。


 


──俺は、まだ何も答えを出せていない。


──翌日。

俺たちは、いつも通りエンリの家でユカリちゃんを待っていた。


時間はもう、とっくに約束の時刻を過ぎている。


でも、玄関のチャイムは鳴らない。


 


「ユカリちゃん……今日はこーへんのかな?」


カエデが、テーブルの上のプリンをじっと見つめながら、ぽつりと呟く。


「そうですね……いつもなら、そろそろ来ている時間なのですが……」


エンリの声も、どこか曇っていた。


時計の針の音が、やけに大きく響く。


 


(……いや、考えすぎだ。たぶん、今日は誰かと遊ぶ予定があるだけだろ)


無理にでもそう思いたくて、俺は言った。


「まぁ……友達と遊びたい日もあるんじゃないかな」


 


「それもそうやなぁ。ふふっ、心配しすぎやなウチら!」


カエデがそう言って、明るく立ち上がる。


「ならとりあえず、ウチは会社戻って──」


 


その時だった。


 


──ガチャッ!


玄関の扉が、乱暴に開かれる音が響いた。


「っ……!?」


反射的に全員が振り返る。


そこには、ノアが血相を変えて立っていた。


その表情は……普段の冷静沈着な彼女の面影すらない。


「ユカリちゃんが……!」


荒い息を整える間もなく、ノアが叫ぶ。


「ユカリちゃんが……病院に、運ばれたらしいです!!」


 


その言葉が落ちた瞬間、部屋の空気が──凍りついた。


 


カエデの笑顔が、すっと消える。


エンリは、静かに拳を握りしめた。


俺は……立ち上がったまま、動けなかった。


 


(……どういうことだ?なんで?)


昨日までは、普通だった。


たった一晩で、何が──


 


「詳細はまだ確認できていませんが……近所の方が救急車を呼んだそうです」


ノアの声が震えている。


「搬送先は、◯◯市立総合病院です。今すぐ、向かいましょう」


 


「……っ、わかった!」


エンリが駆け出し、それに続くようにカエデも玄関へ。


「うち、運転する!行こ、潤くんも!」


 


「……あぁ!」


ドアを蹴るように開けて、俺たちは外へ飛び出した。


 


エンジン音が、焦りのように唸りを上げる。


この胸のざわめきが、ただの思い過ごしであってくれと願いながら──


俺たちは、ユカリちゃんの元へ向かった。



 


──病院に着くなり、俺たちは受付に駆け込んだ。


看護師に名前を告げると、すぐに案内された部屋。


扉を開けると、そこには――


 


「……あっ! おにーちん達!」


ベッドの上から手を振る、小さな声。


「えへへ……くら〜ってなって、気がついたらここにいたの!」


 


ユカリちゃんは、いつもと変わらない笑顔でそう言った。


まるで何事もなかったかのように。


 


カエデとエンリが、その言葉に反応するよりも先に、駆け寄った。


「ユカリちゃんっ!」


「よかった……ほんまに、無事でよかったぁ……!」


二人は、もう言葉にならないような声で、彼女を強く、強く抱きしめた。


 


──そんな中、俺だけが別の方向へ呼ばれる。


「すみません……ユカリちゃんのご親族の方ですか?」


白衣の看護師が、遠慮がちに尋ねてきた。


「いえ……最近、彼女のことを見ていた者で……それで、容態は……?」


 


「……長時間、外にいたようですね。脱水症状と貧血、それに過労による一時的な意識障害です」


「正直、あの年齢の子どもがこの状態になるのは……ありえません」


 


看護師の口調は、あくまで穏やかだったが、言葉の裏にははっきりとした怒りが滲んでいた。


 


「連絡を取ろうとしたのですが……ユカリちゃん、保護者の連絡先を知らないようで……」


「……そう、ですか」


胸の奥がずしりと重くなる。


 


「とりあえず、手続きが必要ですよね? 俺が代わりにやります。親御さんの連絡は……一緒に来てる子たちが分かるかもしれないので、聞いてみます」


 


そう伝え、俺は手続きを進めた。


保険証もない、保証人もいない――

すべてが“異常”だった。


そして、エンリに母親への連絡を任せたが……電話が繋がることはなかった。


 


病院側の判断で、今日は一日、絶対安静。


ユカリちゃんはそのまま入院となった。


 


「じゃあ、また明日も来るからな」


帰り際、俺が言うと――


「うん!ユカリ、まってる〜!」


小さく手を振るユカリちゃんに、全員が何も言えなかった。


 


 


──帰りの車。


車内は、ひどく静かだった。


エンジン音だけが、妙に耳に残る。


 


その中で、ぽつりと泣き声が落ちた。


 


「……私が……私が、もっと早く……っ」


振り返ると、エンリが両手で顔を覆い、堪えきれずに泣いていた。


「カエデさんの言ってた通り……無理矢理でも、救っていれば……こんなことには……っ」


 


あの完璧主義で、優しくて、誰よりも大人なエンリが──


泣いていた。


崩れるように、声を押し殺して、肩を震わせて。


 


俺は何も言えなかった。


 


(それで言うなら、俺も同じだ)


(俺だって──悩んでる間に、なにもかも、取り返しのつかないところまで……)


言葉が喉につかえて出ない。


 


本当はわかってたはずだ。


こんな社会、こんな制度、こんな家庭。


“正しさ”だけでどうにかなる世界じゃないってことくらい――


 


でも、俺は。


“才能奪取”というスキル。


そして、頼れる仲間たち。


それがあれば、きっと自然とうまくいく。


そう、どこかで“甘えて”いたんだ。


 


──でも違った。


奪えば済む問題じゃない。


変えればいいわけでもない。


 


母親の才能を奪ったところで、心まで変えられるわけじゃない。


正義のヒーローのように、誰もが救われる結末なんて――


そんな都合のいい話、あるわけがない。


 


思わず、スキルウインドウを開いていた。



【スキルウインドウ展開】


【パッシブユニークスキル】


【咎人の玉座とがびとのぎょくざ

◤正しさを否定した者にこそ、王座は似合う◢



咎人――か。


俺が持ってるスキルは、「正しさ」の裏側にあるものばかりだ。


悪意、脅し、隠蔽。


それを武器にしてる時点で、俺はもう……ヒーローなんかじゃない。


 


(……皮肉だな)


思わず漏れたその声は、泣きじゃくるエンリの嗚咽と、エンジン音にかき消された。


 


“正しさ”じゃ、守れないものがある。

“強さ”でも、届かない場所がある。


 


だったら俺は──


この手で、“正しさを否定する力”を使ってでも。


この子を守るために、“悪”になるしかない。


【あとがき小話】


作者「暗いお話の後は……お待ちかね!

あとがき小話でヒーリングタイムだぁーっ!!」


潤「…………」


作者「さぁ!元気出していこう!

フォーエバーフォーチュンラビラブびぃーむ☆」


潤「やめろ。死んだテンションの読者を無理やり起こすな」


作者「なにぃ!?

癒しってのは勢いで押し通すものだろ!?

脳が処理する前に愛と狂気で上書きだ!」


潤「逆に脳が拒否反応起こすパターンだよそれ」


作者「よし、次は踊るぞ!!

“チョコもなかジャンプ”で読者の涙を吹き飛ばす!!」


潤「やめろって!!

お前のテンション、真面目な読後の余韻を破壊してんだよ!!」


作者「え……でも……

悲しい話のあとって、なんか無理にでも元気になりたくならない……?」


潤「…………」

潤「……読者の反応見て、次回で謝っとけ」


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