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才能奪って成り上がる!無職の俺がヒロイン達と社会を支配するまで  作者: pyoco
第3章『初心者の作者が本気出すでしょう』
232/262

第207話『私と太陽』

【読たんへお願い!】


作者の夢──

ヒロインの薄い本です!!(ドン!!)


え?真面目な目標じゃないって?

うるさいっ!!

作者は本気なんです!!!(大事なことなので3回目略)


この夢を叶えるためには──

もっともっと!この作品が知られなきゃダメなんです!!



評価

ブクマ

コメント(なんでも嬉しいです、雑談感覚でOK)

リアクション


あなたのアクション、全部が……

“読たんの一押し”が、作者の魂の着火剤になるんです!!

あなたが思っている以上に──

あなたのリアクションやコメントに、作者は救われています。


ブクマ、評価、コメント、リアクション。

その一つ一つが、

「ちゃんと届いてるんだ」って教えてくれるんです。




可愛いけどやべー子たち!

愛しいのに社会壊すヒロインたち!


このバカで全力で尊いヒロインたちを、

もっと世界に広めるために──


お願い!

あなたの「読んだよ」が、作者のエネルギーになるんです!



今後の目標:

「薄い本、ください」って言われるくらいのヒロインズを育てたい!


その第一歩を、あなたの一票で……!



──児童養護施設。


昼下がりの中庭。

私はポツンと座っていた。

誰とも話さず、ただじっと、陽の光を見つめていた。


 


「なーなー、なんでそんな暗いん?」


 


──鬱陶しい。


私と同じくらいの年齢の、関西弁の少女が話しかけてくる。


 


「……放っておいてください。あなたと話すつもりはありません」


 


少女はむぅっと唇を尖らせた。


 


「暗いままやと、誰も助けてくれへんで?」


 


その一言に、私の中の何かがプツンと切れた。


 


「……あなたになにがわかるんですか?どうせそのめんどくさい性格のせいで、親から捨てられたんでしょう?」


 


 


──言った直後に、しまったと思った。


でも……止められなかった。


彼女は一瞬、ぽかんとしたあと、ゆっくり顔を伏せた。

そして何も言わず、踵を返して歩き去っていった。


 


(……当然です)


私だって知っている。


この施設がどういう場所かも。

あの言葉が、どれだけ鋭利で、どれだけ許されないかも。


でも……誰かに優しくする余裕なんて、私にはなかった。


 


私の両親は──もういない。


 


──あの日から、私は壊れたままだった。


 


誰とも話さず、ただ静かに毎日をやりすごす。

他の子たちが笑って騒いでいても、私は遠巻きに見ているだけだった。


 


あの少女──彼女は、いつも誰かの中心にいた。


笑って、走って、時には抱きついて。

鬱陶しいほど人懐っこく、皆から「カエデちゃん」と呼ばれていた。


 


……まるで太陽のようだった。


 


(……大嫌い)


誰からも愛されて、明るくて、笑っていられるあの子が、心底嫌だった。


 


──夜。


布団の中、目を閉じると浮かぶのは、あのクリスマスの惨劇。

お父様の笑顔。

お母様の優しい声。

そして……鉄の匂い。


 


「……お父様、お母様……なんで、ノアも一緒に……連れてってくれなかったんですか……?」


 


声にならない嗚咽だけが、枕を濡らした。


 


 


──数日後。


施設の裏庭で、騒ぎが起きた。


 


カエデと同い年の男の子が喧嘩になり、取っ組み合いになる。

カエデが突き飛ばすと、男の子が床に尻もちをつき、叫んだ。


 


「この暴力女! お前を捨てた親とそっくりじゃねーか!」


 


その瞬間だった。


カエデの笑顔が消えた。

彼女は何も言わず、そのまま駆け出して行った。


 


──どうでもいい。


最初は、そう思っていた。


でも──


 


(……トイレ……)


 


施設の裏手へ向かった私の目に、偶然それは映った。


 


ポツンと座る少女。

……彼女だった。


カエデが、ただの子どもに戻って泣いていた。


鼻水を垂らし、ぐしゃぐしゃな顔で、誰にも見せたことのない姿で。


──驚いた。


あれほど笑っていた彼女が、こんなにも深く泣くなんて。


 


まるで……かつての自分を見ているようだった。


 


「……そんなに泣いていても、誰も助けてはくれませんよ?」


 


思わず、言葉が口をついた。


カエデが、涙と鼻水まみれの顔をこちらに向けて、睨む。


 


「……はぁ」


呆れたふりをして、私はポケットからハンカチを取り出し、彼女の顔を拭ってやった。


 


「っ……ありがと……」


「みっともないですね。お母様が言ってました。レディはいつも綺麗に、と」


 


 


──その時、初めて彼女は私の目をじっと見つめた。


 


「へぇ。あんたのママって、優しかったんやな?」


 


「……はい。とても綺麗で、優しくて、温かい……そんな母でした」


 


「なんで? そんなら、施設に来たん?」


 


「……両親は……強盗に……」


 


沈黙。


彼女は一瞬だけ目を伏せ、でもすぐに、笑って言った。


 


「うちはな、親に捨てられた。毎日、殴られて、飯は残飯。

夏も冬も、ベランダで寝てた。知ってるか? ゴミ袋、あつめると意外とあったかいねんで?」


 


……ひどい過去を語るその口調は、まるで笑い話のようだった。


 


「うちはカエデや。……あんた、名前は?」


 


「ノ……ノアです」


 


「そっか。ほんなら──よろしくな、ノア♪」


 


──太陽だった。


泣いても、笑っても。

傷ついても、また笑って。


──それでも人に手を差し伸べる。

誰にも手を差し伸べられなかったあの子が、それでも誰かのために笑う。


……あの子は、間違いなく本物の“太陽”だった。


 


それからの日々は、まるで季節が変わったかのようだった。


私の止まっていた世界が、カエデという名の風に揺らされて、音を立て始めた。


 


毎日一緒に、将来の夢を語り合った。

二人してかけっこして泥だらけになって、大人に叱られた。

からかってきた男の子には、結託して立ち向かった。──ちょっとやりすぎてしまったけれど。


 


夜、涙が止まらないときも、カエデは「寒いからや〜」なんて言い訳して、私の布団に潜り込んでくる。


「くっつかないでください」なんて言いながら、心のどこかでは、それが嬉しくて──

私の夜は、あの頃だけ“泣かずに済む夜”だった。


 


ある日、施設で上映されたヒーロー映画。

勇者が魔王を倒し、捕らわれた姫を救う──誰もが知る、予定調和の物語。


でも、私には……まぶしすぎた。


隣にいたカエデが、ぽつりと呟いた。


 


「うち……いつか必ず、どんな悪い奴でもやっつける王子様、見つけるんや!」


 


「王子様……?」


 


「そうや。うちの親も、ノアのこと泣かせた奴も、そんで世界中の悪いもんも、ぜーんぶやっつけてくれる──最強の王子様!」


 


──その時、私は心から願った。


そんな“理不尽を全部ひっくり返してくれる存在”が、この世に本当にいるなら。

私は──きっと、その手を離さない。


 


「わ、私のほうが先に見つけます!」


「ならうちは、もっともっと強い王子様見つけたるわ!」


「な、なら私も……もっともっと、もーーーーっと強い王子様見つけます!」


 


──それはまるで、子供のような夢物語。


でも私にとっては、その夢こそが、唯一未来を信じられる“お守り”だった。


カエデと過ごしたあの時間は、私の中で唯一“心が溶けた季節”だった。


 


……やがて高校生になった私は、カエデの“親”について調べた。


理由は──たった一つ。


「あなたが捨てた子は、こんなにも素敵な人間になりました」

──そう、皮肉でも告げてやりたくて。


 


でも、彼女の両親は既に亡くなっていた。


死因は、薬物の過剰摂取。

中毒死。

──あまりにも、呆気なく。


 


それでも私は止まれなかった。

彼女の“過去”を、知っておきたかった。


あの明るさの裏に、どれほどの涙があったのか。


 


──彼女は助けを求めていた。


毎日殴られ、残飯をあてがわれ、夏も冬もベランダで凍えて。

それでも助けは来なかった。


近所の大人も、教師たちも──彼女の親の前科を理由に、“見て見ぬふり”をした。


 


彼女が救われたのは──

家賃を滞納した結果、警察立ち合いで踏み込まれたその日だった。


玄関の向こうから漂う異臭。

その扉が開かれたとき、誰もが知ったのだ。


“この家は、もう終わっていた”と。


 


──それでも、彼女は。


明るくて、眩しくて、誰よりも優しくて。

私の、たった一人の、光だった。


 


そして──

話を終えた私は、いつの間にか、涙を流していた。


 








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