第203話『俺、たこ焼きパーティを行う』
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──夕暮れの街角にて。
「最近……エンリ、帰るの早いよな」
ぽつりと漏らした俺の言葉に、横のカエデがぷくーっと頬を膨らませた。
「うわぁ〜ん、潤くんがエンリに愛想尽かされた〜!!」
「待て!なんで俺が捨てられてる前提なんだよ!」
「第六感がピコーンて!ほら、ちょっとだけ寂しい時期ってあるやん?……くしゅっ」
「くしゃみで台無しだよ! 風邪ひいてんじゃねーか?」
手にはスーパーの袋。カエデは今夜の鍋用に特売品を攻め尽くしたらしく、白菜と豚肉で袋がパンパンだ。
「いやでもさ、ほんまエンリ最近は帰るん早いよな〜。……って、あれ?」
カエデが指差す先、ちょっと離れた歩道のベンチ。
そこにはエンリがしゃがみ込んで、小さな女の子の髪を整えている姿があった。
「……あっちや」
「ほんとだ。あれ……近所の子か?」
ふわふわのスカートに大きなリュック。女の子は嬉しそうに笑いながら、エンリに何かを話していた。
「ごはん、ちゃんと食べましたか?」
「うんっ! 今日はエンリお姉ちゃんのカレーだもん!」
「ふふ、よかった。明日は、シチューにしましょうか」
「うんっ!」
──平和そのものだ。
風が吹いて、夕陽が落ちて、
エンリが結び直す小さな靴紐に、優しさがにじんでいた。
「エンリお姉ちゃん、ママに怒られないかなぁ……」
「きっと大丈夫ですよ。ママも、あなたのこと大好きなんですから」
「えへへ〜、ママね、お仕事がんばってるの!」
「それなら偉いですね。ママに、よく頑張ってるねって言ってあげてくださいね」
女の子がぱたぱたと手を振って帰っていく。
エンリはその背中を見送ってから、俺たちに気づいて小さく手を振った。
「エンリ! 今の子は?」
「はい、近所の子供です。お母さんが帰り遅い日が多いので、最近ちょっとだけ……お世話してるんです」
「めっちゃいい姉じゃん……カエデも見習えよ」
「むぅ〜、ウチも頑張ってんで!? 鍋用の特売豚バラ、争奪戦勝ってきたんやで!?」
「戦場どこだよ!?」
「よっしゃ決めた、あの子にタコパや! ウチのたこ焼き、めちゃ美味しいんやで〜?」
「それはいいですね。きっと喜びますよ」
「ってことで潤くん!明日はみんなでたこ焼きパーティーや!!」
「勝手に予定組むなよ……まぁ、別にいいけど」
「ふふっ、人数が多い方が楽しいですからね」
──こうして、
小さなお客さんを迎えたサプライズたこ焼きパーティーが決まった。
笑顔と笑い声と、
あったかい鉄板のにおいが似合う、ただの平和な夕方。
──────
──翌日。
俺とカエデとノアは、エンリの家でたこ焼きパーティーの準備をしていた。
……なんでノアがいるのかって?
『潤様が女子小学生とたこ焼きを囲む──そんな背徳的な空間に悪い虫がつく未来、断じて見過ごせません!私もお供いたします!』
流石に小学生にそんな感情は抱かねぇよ!?
てか“背徳的”って単語のチョイスが完全にアウトだよ!?
まぁとはいえ、断る理由もなかったので自然とメンバーに加わっていた。
「ちょっとカエデ! そのタコは潤様専用に私が愛情込めて捌いた“特別製”です!皆様用はこっちの市販品でお願いします!」
「はあ!? タコに上下関係あるんか!? 食材にまで階級制度持ち込まんといてや!」
「あります!潤様の口に入るものは私の愛情が濃縮還元されていなければなりません!」
「それもうただの呪物やないか!!」
──こいつら、他のメンバーも一緒にいるときはわりと落ち着いてんのに……
2人きりだと途端に“仁義なきたこ焼き抗争”始まるの何なの?
「なぁ、2人って同郷だったよな? 昔からそんなケンカしてたの?」
「ウチは喧嘩しとらへんで? ウチがずっと正しいだけや」
「えぇ。私はただ“しつけ”が必要だな……と感じる場面が多かっただけです」
「誰がしつけ対象や!! 今日こそは白黒つけたるからな!」
「望むところです……この戦いに決着を──」
「ちょお待て!! たこ焼きより先に火ぃついとる!エンリさん早く来てえええ!」
そんな俺の悲鳴が届いたのか──
ガチャッ
「ただいま戻りました〜」
「おじゃましまーす!」
玄関から、エンリと近所の女の子が入ってきた。
女の子は俺たちを見るなり、ぱたっとエンリの後ろに隠れる。
「あらあら……びっくりしちゃいましたね」
まぁ初対面で大人3人って、怖いよな。
「初めまして、俺は潤。エンリお姉ちゃんと一緒に働いてるんだ!よろしくな」
「ウチはカエデや! “カエデちゃん”って呼んでな〜!」
「私はノアです。潤様の妻であり、人生の伴侶であり、唯一無二の理解者であり、そして潤様を護る者……」
「待てや! いつからノアだけの潤くんになったんや!? ウチかて抱きつき・じゃれつき・スキンシップMAXなヒロインやで!?」
「それ、ただの接触癖では?」
「お前こそ近寄るだけで精神拒絶反応出るタイプやろ!! そんなんで勝てると思うなよ?」
「……カエデ。今日こそは……ハッキリさせましょうか」
「ええで、売られた喧嘩は三割増で返す主義や!!」
「やめろって! 子供の前だぞ!? タコより煮えとるのお前らの感情だからな!?」
俺の叫びにようやく空気が戻り、
エンリが女の子の背中を優しく撫でた。
「ユカリちゃん、大丈夫ですよ? この人たちは──色んな人を助けてきたスーパーヒーローなんですから」
「スーパーヒーローって……エンリさん、それ盛りすぎじゃない?」
「潤様は弱きを助け、悪を裁き、たこ焼きにも誠実な正義の味方です……その全てが尊いのです」
「じゅんおにーちゃん、かっこいい〜っ!」
「でしょ? では今から潤様の魅力について────」
「もういいって!! たこ焼き焼こう! 腹減ったから!!」
──そこから始まった、たこ焼きパーティ。
最初は緊張していたユカリちゃんも──
アツアツのたこ焼きを頬張る頃には、すっかり打ち解けていた。
「それであの時、潤様が悪の集団を──こう、バッサバッサと薙ぎ倒してですね……!」
「わーすごーい!」
ノアが俺の活躍を超・誇張バージョンで語っている。
俺自身が横にいるというのに、勝手に伝説を量産中だ。
「おにーちゃんって、ほんとにすごいんだね!」
「せやで? 潤くんはな、すごいんやで? ……まぁ、普段は間抜けでアホ面やけどな〜」
「それ貶してるよね!? ほめ下手すぎんだろ!?」
「でもね? 初めて見たときは、すっごく怖そうって思ったの。でも今はぜーんぜん!」
「へぇ〜、不思議やな〜? 潤くんは近くで見るとアホ面やからやろか?」
「だから褒めろって!! 褒めてから貶すな!!」
──とは言え、ユカリちゃんのこの言葉に、少しだけ引っかかるものがあった。
(怖そう……か)
そう言えば──最近あんまり考えてなかったけど。
──【スキルウインドウ展開】──
【パッシブユニークスキル】
《咎人の玉座》
◤正しさを否定した者にこそ、王座は似合う◢
・周囲に“威圧感”や“支配者的な雰囲気”を錯覚させる
・静観しているだけで“何か裏がある”と深読みされやすくなる
・本人にその気がなくても「圧」のある存在として映る
→ スキルは常時発動中。
──なんつースキルだよ。
子供から見たら「不思議な怖さ」になって当然だよな。
ちょっと気をつけて距離感調整しないと……
──そんなことを考えていたら。
「……あら。もうこんな時間ですね」
エンリが時計を見て、小さく微笑んだ。
「いけないっ! ママが心配しちゃうっ。帰らなきゃ!」
「では、私が送っていきましょう。……行きましょう、ユカリちゃん」
「うんっ!」
エンリが優しく手を引き、ユカリちゃんと並んで玄関へ。
その背中を見送りながら、カエデがほっこりと呟いた。
「ほんまええ子やな〜……ウチと潤くんも将来、あんな子ができたら……」
「カエデ? その発言、聞き捨てなりません」
「なにがや! 妄想ぐらいええやんけ!」
「潤様に関する未来設計図は、私がすでに練りに練っております。提出順ではこちらが先行です」
「なんで結婚の順番に整理券あんねん!?」
「はいはい、やめろやめろ! 片付けるぞ!? 鉄板まだ熱いからな!!」
──そんな、
アホみたいに賑やかで、どうしようもなく幸せなひととき。
最近何かと激務続きだった俺にとって、
これは間違いなく──“癒し”だった。
あとがき小話
作者『読たんって可愛いじゃん、響きが』
潤『……まぁ半ば強制だったけどな』
作者『俺も可愛くして欲しい』
潤『は?』
作者『作たん、作ちゃん、作次郎! どう!?』
潤『止めねぇけど……』
作者『なんだよ?』
潤『今度から自分のこと“作たん”って呼ぶんだぞ?』
作者『うっ……』
潤『想像してみろ? バニー服着たゴリラ作者が「作たんです♡」って……特級呪物だわ』
作者『ぐ……グロい……ッ!!』