第201話『私は、まだ伝えられていない「ありがとう」を抱えている。』
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──それは、一夜にして社会の空気が変わった夜だった。
「倫理機構・代表の矢野氏が辞任」
「鳴海議員、AI法案を巡る“癒着疑惑”で説明責任へ」
「“若者代表”と名乗る討論番組の挑戦者に、視聴者の8割が共感」
翌朝のニュースは、全局がその話題で持ちきりだった。
地上波、ネットニュース、SNS、あらゆる媒体が――
“番組で放送された音声”と“討論中の発言”を繰り返し取り上げていた。
特に注目を集めたのは、再審査制度の構造的欠陥と、
それを逆手に取って企業を潰していた“倫理機構の裏側”だった。
元代表・矢野の逃げ腰の発言と、最後に絞り出された自白は、
国民の「やっぱりか」という感情に火をつけたのだ。
政治家たちは慌てて記者会見を開き、制度の見直しと再発防止を約束。
鳴海議員は“技術独裁の象徴”として一夜にして失脚。
彼を擁護していた一派も沈黙し、議会内のパワーバランスが大きく傾いた。
その一方で──
《Neulogic社、AI音声補助端末『KALMA』を正式リリース》
《“潰されかけた企業”が証明した、若き開発者たちの実力》
《“本当に必要だったのは倫理じゃない、未来だった”》
マイたちが開発していた製品は、
まさにこの事件の“シンボル”として持ち上げられた。
それは“正しさを問われたAI”ではなく──
“不正を乗り越えて世に出た真実”として、爆発的に拡散されたのだ。
リリースからわずか3日。
SNSのトレンド入り。ニュースアプリの特集。
大型家電量販店では、まさかの行列。
予約分は初日に完売し、在庫もわずか数時間で消えた。
──最初に出した試算の、3倍。
「想定を遥かに超える反響です!」
「生産ラインの増設、急ぎましょう!」
社員たちは連日バタバタと走り回り、マイは記者対応に追われていた。
でも──その表情には、確かな自信が戻っていた。
彼女の会社は、潰されるはずだった。
でも今や、未来を照らす“希望のモデル”になっていた。
……ただ、一つだけ。
その“勝利”の先頭に立っていた男の姿は、どこにも映っていなかった。
──数日後。Neulogic本社・屋上。
風が気持ちいい。
なのに、どこか胸がざわつくのは、きっと“あの夜”からだ。
「……来るなら、連絡くらいしてよね」
ポツリとつぶやいた声に返事はない。
でも……わかってた。彼は、そういう人だ。
潤が、最後に顔を見せたのはあの夜。
矢野に“とどめ”を刺したあの瞬間を境に、彼は──
「じゃ、あとは任せた」
その一言だけを残して、音もなく姿を消した。
──バカじゃないの?
報道陣も、取材も、感謝の言葉も。
あれだけのことをしたのに、全部、私に背負わせて。
……ほんと、そういうところ、ずるいんだから。
「でも……ありがとう、潤さん」
私はそう呟いて、空を見上げた。
“会社を守りたい”なんて、言葉では言ってたけど。
あの人が救ってくれたのは──きっと、私自身だった。
思えば初めて出会った日から、ずっとそうだった。
肩書きでも、地位でもなく。技術者として、私を対等に見てくれた。
無能にも、臆病にも見えたくなくて、
強がってた私を、見透かしたようなあの目。
(……なんで今さら思い出してるんだろ)
ふいに、ポケットの中でスマホが震える。
通知は、一通のメッセージ。
──《リリースおめでとう。大丈夫、あとは全部うまくいく》──
名前のないそれを、私は何度も見返した。
まるで、私の気持ちなんか見透かしてるみたいに。
まるで、何もかも知ってるくせに、あくまで他人のフリで。
……やっぱり、ずるいよ。
私はそっとスマホをしまい、呟いた。
「潤さん……次に会うときは、“ちゃんとありがとう”言わせて」
風が、ほんの少しだけ、頬を撫でた。
その温度は、涙でも寂しさでもなく──
どこか、未来を信じたくなるようなあたたかさだった。
──そう。これは終わりじゃない。
ここから先は、私たちの手で選べる未来だ。
Neulogicは立ち上がった。
そして私は──もう一人じゃない。
【あとがき小話】
作者『潤〜? ディズニーランドにある”タートルトーク”って知ってる?』
潤『ああ。あのトーク力バグったウミガメが、客いじりながら場を回すやつだろ』
作者『俺もやってみたいの!だからさ、ちょっと“客”やってよ!全部救ってやるからさァ!!』
潤『……なんでノリノリなんだよ。しょうがねぇな』
(──内心、嫌な予感しかしねぇ)
作者『おーい!そこの、もやししか食ってなさそうな貧弱モブ系男子〜〜!!』
潤『いきなり心をえぐるんじゃねぇよ!!掴みのクセ強すぎて海より深いんだけど!?』
(作者、口パクで「続けろ」のジェスチャー)
潤『……えー、今日はどんな一日でしたかー?』
作者『ちっ、つっまんねぇ質問だな。テンプレ感ハンパねぇな。
でも今日は……良かったでーーーす!!
お前ら最高だぜぇーー!!!』
潤『おい、クラッシュ(※ウミガメ)に土下座してこい』
作者『えっ?俺のがノリ良くない?本家に採用されても良くない!?』
潤『お前のはただの“暴走亀”だ。子ども泣くぞ』