第200話『俺、知らん間にトドメ刺してたらしい』
ここまで読んでくれた奇特なあなた!
ブクマ・いいね・感想・★・DM・テレパシー、なんでも嬉しいです!
作者は1PVでも跳ねて喜ぶタイプなので、反応があるとガチで次の原動力になります。
どうかこのテンションのまま、応援いただけると助かります!
(いや、助けてください!!)
──番組開始、10分後。
画面はすでに、絶望的な空気に包まれていた。
「結局あなたたちは、感情論を振りかざしているだけなんですよ」
スーツに身を包んだ鳴海卓郎議員が、冷笑を浮かべながらマイクに向かっていた。
「この国の制度がどうしてこうなっているのか、その“過程”を一切知らずに、『不公平だ』『おかしい』とだけ叫ぶのは──ただの愚痴に過ぎません」
会場から小さく拍手が漏れる。
そして──画面下部のコメント欄は、すでに火の海だった。
若者代表がこのザマ
議員の方が100倍正論
髪色でIQわかる説爆誕w
リアってやつも顔だけで中身空っぽだな
何が問題か分かってないじゃんこの人ら
ユズハは笑顔を貼りつけたまま、額にうっすら汗を浮かべていた。
「……ですけどぉ? 現場の声って、めちゃくちゃ大事だと思いませんか〜? 実際に困ってる人がいて、その声が届かないなら……制度って何のためにあるんですかぁ?」
「それを言うなら、“個人の声”にすべてを委ねる国家など、存在しませんよ」
鳴海の言葉は冷徹だった。
理屈は常に整っており、表情一つ乱れない。
それが──余計に、腹立たしい。
「……潤」
ステージ上の隣で、リアが小さく呟いた。
視線は正面を見据えたまま、だがその眼差しは、どこか痛々しいほどに苦しげだった。
「私の言葉が、届いていない……そんな感覚があります。まるで、論破ではなく──“拒絶”されているような……」
鳴海の論法は、すべての主語を「国」や「制度」に置き換えることで、個人の意見を“的外れ”に見せる話術だった。
正論と見せかけた、実質の門前払い。
しかもそれが、世間一般の「冷静な意見」として機能してしまう。
視聴者の大半は、そこまで論理の中身を精査しないのだから──。
マジで感情だけで喋ってる
中学生の弁論大会かな?
アンチAIってだけで思考停止してんだろ
つーかその服装なんなんだよ…
言えば言うほど、火は大きくなっていく。
ユズハもリアも、決して間違ってはいない。
ただ──相手の土俵に立たされ、そこで“言いくるめられているように見える”だけだ。
──────
カエデ「──っ!アカン、このままやと……!」
遠隔で討論番組を見守っていたカエデの眉が一瞬にして険しくなる。画面の中では、ユズハとリアが言葉を放つたびに──コメント欄が燃え上がる。
《若者代表ってこの子たちなの?笑》
《論点ずれてるし語彙力なさすぎ》
《はいはい感情論乙》
カエデ「……なんか、手は……手はないん……っ!」
ふと、彼女の手元の通信端末に、マイの部屋で収録された音声データが届く。
送信者──潤。
一瞬だけ躊躇いが走る。
だが──その先の言葉を見た瞬間、カエデは目を見開いた。
「……これや……これ、流そ……っ!」
すぐさま、カエデはその音声を数秒で編集し、潤の声が最も強く響くパートと、矢野の“暴露”が明確に入った部分だけを抽出。
そのまま──ゲンジへと送信。
カエデ「頼んだで、ゲンジさん……!」
──────
数秒後。
生放送中のスタジオに、異変が起きた。
突然、司会者のイヤモニに何かが伝えられ、慌てたようにスタッフが映像を切り替える。
モニターに表示されたのは──
ホテルの一室で録音された、潤と矢野の“生のやりとり”。
───
「こ、こんなことしてタダで済むと思ってるんか?!ああん!?」
「ワイを殴るんか?!け、警察に突き出してみぃ!その時は、お前の会社も──そのバカ女の会社も終わりや!!」
「ワイはなぁ!誘われたから来ただけや!はめられたんや!なあ!?マイちゃん!お前も悪いやろがああああ!!」
「ヒィッ……っ!!お前は知らんやろ……この国には、個人の意見やら正義やら、そんなもん通らへんのやっ……!」
「この法案もなぁ!!全部、AI市場の独占のための国絡みの陰謀なんや!!」
「い、いくらワイをここで殺しても止まらんぞ!?鳴海がおる限り、この流れは止まらへんのや!!」
───
鳴海議員「……っ!?」
───
「ひっ……ひいいぃぃ!わ、ワイだって鳴海に脅されてたんや!わいかて、ただのトカゲの尻尾やぁ!!なあ!!ワイを──」
───
音声が終わった瞬間、スタジオが凍りついた。
司会者の顔がひきつり、スタッフが慌てて動き回る。
鳴海議員の顔色が、真っ青に染まっていく。
──スタジオに、不自然な“無音”が流れる。
誰も言葉を発さないまま、中継モニターには先ほどの音声が繰り返されていた。
『この法案もなぁ!!全部、AI市場の独占のための国絡みの陰謀なんや!!
い、いくらワイをここで殺しても止まらんぞ!?鳴海がおる限り、この流れは止まらへんのや!!』
鳴海「…………っ!!」
その名が、明確に発された。
──瞬間、議員の顔から血の気が引く。
周囲のパネリストや司会者も動揺し、スタジオは一気に混乱へと変わった。
鳴海「ち、違う! 今の音声は捏造だ!私がそんな指示を──!」
リア「“命令されてやった”という発言。しかも、その“命令主”があなたの名前だったと──それは偶然でしょうか?」
鳴海「ぐ……っ、で、でも!この法案は“未来のための改革”だ!国民の安全と発展のために──!」
リア「その“未来”とやらは、“あなたの企業だけがAI市場を牛耳る”未来のことですか?」
鳴海「だ、誰がそんなことを……!証拠は!?証拠なんてあるわけが──!」
彼の言葉は、次第に狼狽の色を深め、声量だけが不自然に上がっていく。
視聴者はそれを見逃さない。
──コメント欄が、爆発したように動く。
「音声やばすぎだろ」
「名前出た時点で詰んでる」
「矢野=倫理機構のトップ。つまり法案自体が出来レース」
「てか鳴海マジで黒幕じゃん…」
「逃げんなよwww」
鳴海はついに立ち上がる。
鳴海「……私はこんな侮辱には付き合えない!放送を止めろ!!これは名誉毀損だ!!」
──しかし、その背後から甘く刺さる声が届く。
ユズハ「えぇ〜〜? じゃあ認めちゃうんですかぁ?♡
しかも、私たちみたいな“可愛げのある女の子”に論破されて、捨て台詞だけで逃げるんですかぁ〜?」
挑発と煽りが、完璧に刺さった。
鳴海は勢いよく椅子を蹴飛ばし──だが逃げられず、乱暴に座り直した。
リア「議員。“説明責任”は、逃げることでは果たされませんよ」
ユズハ「せっかくの生放送ですし? 全国のみんなが“ちゃんと聞いてる”んですから〜♡」
ここからは、一方的だった。
リアは事実と論理で鳴海を囲い込み、ユズハは感情と世論を代弁するように煽る。
「倫理機構と癒着してたって話、どう説明するんですか?」
「承認制度を強化して独立企業を潰したのは、審査に口出ししてたから?」
「音声が捏造でないなら、議員の言う“未来”は、自社のためだけの未来じゃないんですか?」
コメント欄は最早、視認できない速度でスクロールし続ける。
「論破完了」
「チャラそうな子、煽り天才www」
「この議員、次の選挙終わったな」
「論理ガチで完璧」
「スカッとジャパンの比じゃねぇ」
──鳴海は顔を伏せたまま、反論もできず沈黙する。
その姿を見て、リアはマイクに向かって一言。
リア「……それが、政治家の答えですか?」
──生放送終了のタイマーが点灯する。
討論番組は、完全に若者チームの“逆転勝利”で幕を閉じた。
【あとがき小話】
作者『異世界転生物書きテェー』
潤『唐突ゥ!!何?今の雄叫び!?』
作者『現代物書いてたらさ、あれもやりたいこれもやりたいって出てくるのよ……異世界!魔王!スライム!ちょろイン!』
潤『最終的にジャンルじゃなくて欲望が口から漏れてんじゃねーか!』
作者『でもほら、異世界行ったことある系とか、帰ってきた設定もあるし……いいかなって……』
潤『なにその“近所のコンビニ行ってくる”テンションで異世界提案するやつ!?』
作者『……異世界、いこっか?』
潤『ぜってぇぇぇ行きたくねぇーーーーーー!!今俺、現代でも満身創痍だからな!?』