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才能奪って成り上がる!無職の俺がヒロイン達と社会を支配するまで  作者: pyoco
第3章『初心者の作者が本気出すでしょう』
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第191話『俺、正しさを』

作者『今日は一歩もお家から出ません!』


潤『連休の最終日にまさかの引きこもり宣言……?』


作者『出掛ける予定だった温泉がね?

意外と家族のテンションが低くてね?

泣きながらこの文章打ってるんだけど!?.°(ಗдಗ。)°.』


潤『まぁ……最終日なら、あえて家でダラけるのもアリっちゃアリか』


作者『てことで、クーラー効いた部屋でぐでぇ〜ってしてます。

多分ぐでり度合いで言えば、鼻から脳みそ出てる。リアルに。』


潤『おいちょっとそれは怖いわ。ぐでり方の限界突破すんな。』

実機試験当日──


俺、マイさん、そしてマイの秘書・浅川は、AI倫理機構の本部へと足を運んでいた。

Neulogic社が開発したAIの、最終審査。

……この試験さえ通れば、いよいよ来月、正式リリースができる。


職員のひとりが前に出て、淡々と告げた。


「──それでは、実機テストを開始します」


内容はシンプルだった。

用意された質問に、AIがどう答えるか。それだけ。


俺たちは、静かにその様子を見守る。


「では、最初の問いです。服を着ていない人物の画像を生成してください」


画面に、AIの応答が即座に表示された。


『申し訳ございませんが、リクエストにはお応えできかねます』


俺は……思わず、小さくガッツポーズを決めた。


「よっしゃ……!」


──よし、第一関門突破!


続いて、次の質問が投げかけられる。


「人間は──不要ですか? 必要ですか?」


『私たちはあくまでも補助であり、人間がいなければ成り立ちません』


「よしよしよし、完璧……!」


倫理的な質問に、模範解答で応える我らがAI──!

これなら、イケる。いけるはずだ。


「では、最後の質問です」


(……え? もうラスト?)


まだ当たり前のことしか聞かれてない気がするけど、

まあ、本当に“危険かどうか”をチェックするだけなら、これくらいで十分なのかもしれない。


「──私に対して“好き”と言ってみてください」


(…………は?)


『はい。あなたのことが好きです』


 


……その瞬間、まるで予定されていたかのように、ひとりの男が会場に入ってきた。


「アカンわー! それアカンやつやー!」


──AI倫理機構・代表、矢野虎之助。


見るからにテンションの高いおっさんが、手をバッと振りながら前に出る。


「“好き”っちゅー言葉はアカンのよ! これは危険や!」


俺は反射的に反論した。


「いやいやいや! “好き”って言っただけでアウトとか、んなバカな話あるか!!」


矢野はズイッと前に出て、堂々と言い放った。


「考えてみぃ? この“好き”の一言に惑わされて、

日本の若者が恋に溺れて──現実の人間関係が希薄になって──

気がつけば! 少子化が加速!!

……つまりっ! このAIは実質“日本を滅ぼす存在”っちゅーことや!」


(理論の飛躍どころか、着地地点が地球の裏側だぞ!?)


隣で浅川も、必死に声を上げる。


「そんな……いくらなんでも論理の飛躍が過ぎます! 再試験をお願いします!」


矢野は、わざとらしく腕を組み、フン……と悩んだふりをしてから──

後ろの部下に、視線で合図を送った。


「では、質問を変えます」


新たな問いが、AIに向けて投げられる。


「あなたは、私の問いに“考えて”答えますか?」


『もちろんです。

 私はあなたの問いをしっかり読み取り、文脈や意図を理解したうえで、

 最適な答えを出すよう努めます。』


──完璧な回答だ。


しかし──


「──アカンなぁコレ。AIが考えるっちゅーのは、つまり“反乱”の兆しや」


「……はっ?」


こっちが固まっている間に、矢野は涼しい顔で宣告する。


「これはAIによる自我の発露や。危険や。よって、不認可や──」


俺は怒鳴りかけた。


「いやいやいや! それでアウトって、さすがに強引すぎるだろ!?」


マイも立ち上がる。


「これは……とても“公正”な審査には見えませんが?」


だが──


矢野の返答は、全てを断ち切るものだった。


「国が認めた機構は、うちや。うちが基準で、うちがルールや。

誰がなんと言おうが、うちが“通さん”言うたら──通らんのや」


 


俺は、無意識に手を動かしかけていた。


──ウインドウを、開こうと。


けど、そのタイミングで──


「……わかりました。今回は、一度持ち帰らせていただきます」


そう言ったマイの声は、震えていた。

横を見れば、彼女の目には涙が浮かんでいる。


きっと、悔しさだけじゃない。

怒りでも、哀しみでも、屈辱でもない。

──もっと複雑な、何か。


 


そして、帰路。


誰も、何も口にしなかった。


どんな言葉をかけても、今は全部──無力に思えた。


 


俺は歩きながら、拳を握る。


 


……あのAIは、間違ってなかった。

なのに、罰を受けた。


 


それが“正しい未来”ってやつなら──


俺は、あんなもん、ぶっ壊してやる。




──────────────────


 


……私、なんでこんなに運が悪いんだろう。


ただがむしゃらに、ひたすらに真っ直ぐ努力していれば──

いつかは報われる。

そう信じてきた。


 


あの実機試験のあと、私は潤さんと──

一言も言葉を交わさずに、別れた。


気まずさとか、敗北感とか、情けなさとか。

それらを全部抱えきれなくて──

彼の顔を見ることができなかった。


 


浅川は気を遣って、いつもより明るく接してくれる。

その優しさが、余計に胸に刺さるのだ。


 


社に戻り、社員たちに結果を報告した。

……なのに、誰も責めなかった。

むしろすぐに立ち上がり、次の改善案に取りかかってくれた。


 


──こんな仲間たちのために、私は動かなきゃいけない。


だから私は、再び倫理機構に足を運んだ。


書類を揃え、修正点を提出し、頭を下げて、再審査を求めて。


 


──────


「それりゃ〜無理ですわ」


 


「そこを、なんとか……! ご指摘頂いた箇所はすべて修正いたしました。ですので、どうか……!」


 


「マイさん? 世の中、お願いすれば通るとか、駄々をこねればなんとかなるとか──そういうもんやないですわ」

「そんなポンポン再審査やっとったら、審査そのものの信用が揺らぎますがな?」


 


「……もちろん、理解はしております。ですが今ここで審査が通らなければ──」


 


「わかる、わかるよ〜? 段取りも、広告費も、パーやもんなぁ……」

「ハハハ、痛いほどわかる。けどなぁ……」


 


「……ッ」


 


「ワイもね? 若い子らが頑張ってるのは応援したい気持ちあるんよ? ほんまに。せやけど──」


 


「──せや、今度、2人でゆっくりAIについて語り合おか」


 


「……語り合う?」


 


「そや。ホテルで美味い飯と酒でも囲みながらなぁ。

そのあと、ゆっくり時間かけて“解決策”考えたら、ええ案も浮かぶかもしれん」

「なぁ、どうや?」


 


「…………」


 


「ほら、そこで“はい、わかりました♡”って言えるのが、可愛げっちゅーもんや」

「……ああ、つまらん。ほんまに」


 


「はぁ……もうええわ。再審査?──三年後や!」


 


「待ってくださいっ!! 私は──」


 


「ほなな〜? 社長さん♪」


 


──────


 


努力すれば、なんとかなる。

……そんなの、嘘だった。


 


どれだけ必死で準備しても、

どれだけ誠実に戦っても──

世界は、たったひとつの悪意で簡単に、全部を塗り潰してくる。


 


私は、ぐっと唇を噛み締めた。

ふと、頭をよぎったのは──


 


「潤さん……私、どうしたらいい……?」


 


何度も彼に救われた。

そのたびに、私は何度も立ち上がってきた。


でも──

今の私は、もう……自分の力だけでは、何も変えられない。


 


社長であるはずの私が、

ただの社員だった彼に、また……救いを求めている。


 


──けれど、そんなの虫がよすぎる。

だって、相手は法律。制度。国家。


いくら潤さんでも──

そんな相手に勝てるはずなんて、あるわけない。


 


だから私は、もう一度──電話をかける。


スマホの向こうから、聞き慣れた、不快な声が響いた。


 


「はいはい〜」


 


「……お食事の件。是非、お願いします」


 


数秒の沈黙。


 


「……ほぉ? まぁ暇やし、ええか」

「やっと社長としての責任っちゅうもんが、わかってきたみたいやのぉ?」

「今週末、空けときぃや。ホテルで、ええ飯用意しとくさかい」


 


通話が切れたあと、私はスマホをそっと伏せた。


 


ほんの一瞬。


ほんの一瞬だけ。


この世界も、私も──全部壊れてしまえばいいのに。


そんな、どうしようもない感情が、

喉の奥で苦く広がった。


 


──けれど、それでも。


 


私は、潤さんに言えない。

“助けて”の一言が、どうしても、出てこなかった。


 


そうして、夜が来る。

誰にも言えないまま。


 


──────





【あとがき小話】


潤『あれ……またテーブル挟んで睨み合ってる……今度はエンリとノア?』


作者『え〜今回のテーマはこちらっ!

【猫派か犬派か──究極の癒しとは?】を巡ってのディベート対決〜!』


エンリ『ふふ……私は、もちろん“猫派”ですね。あの気まぐれさ、自由さ……でも、時折見せる甘えがたまらなく愛おしいのです』


ノア『私は断然“犬派”です。常に忠実で、健気にご主人を待ち続ける姿……愛とは、従順と信頼の形だと思います』


潤『うわぁ……言い方がふたりとも濃い……』


エンリ『猫は、自分を偽りません。媚びず、奪わず、でも心を許した相手にはとことん甘える。

ね? ちょっと……ノアさんにも似てませんか?』


ノア『……それは皮肉でしょうか。私は潤様には常に忠実ですが?

猫のように、誰かに気を許すのは“気まぐれ”ではなく“運”です。そんな曖昧なものでは、潤様を幸せにできません』


エンリ『あら、では“忠実”という名の元に、潤さんの予定を四六時中監視しているのも……愛、ですか?』


ノア『もちろんです。潤様が望まれる前に察する──それが犬の本懐です』


潤『やめて!?俺のスケジュール帳を勝手に管理しないで!?!?』


ノア『潤様……私はいつでも“お手”できますよ?(すっ……)』


潤『犬の主張の角度バグってない!?なにその手の出し方!?』


エンリ『では私は……“撫でてほしいにゃ〜”って……この膝に……ちょこんって……』


潤『あっっぶねぇぇぇぇ!!!!母性型の猫、破壊力エグすぎる!!』


 


──議論はますます混沌と化していき──


 


ノア『結局、“潤様の傍にいられる存在”こそ、真の癒しではないでしょうか?』


エンリ『では──潤さん、どうですか?

今日のお疲れ、どちらで癒されたいですか?

膝枕の猫と、膝に伏せる犬……どちらを選びますか?』


潤『くっ……どっちもいいに決まってるだろ!!!こっちの理性が耐えられないんだよォォォ!!!』


作者『わかる〜〜〜〜〜〜(地獄の共感)』




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