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才能奪って成り上がる!無職の俺がヒロイン達と社会を支配するまで  作者: pyoco
第3章『初心者の作者が本気出すでしょう』
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第189話『俺、論破する』

作者『いつもお読み頂ける猛者たん、そして新たにお読み頂ける読たん──改めてよろしくお願いします』


潤『うん、まず“猛者たん”って何?新語?』


作者『いや……作者が闇堕ちしてもついてきてくれた人たちだから“猛者”かなって。で、愛を込めて“たん”』


潤『ギャップすごいな!?重戦車にリボンつけてんの!?』


作者『みてよ、あの出立ちを──』


作者『キュートなモコモコを纏いし子猫、子犬、小熊、子うさぎ……

そして中央にどっしり構えて短い足を組み、葉巻をくゆらせる歴戦の猛者たんが……』


潤『待て待て待て、急に画面の温度差おかしくなってんぞ!?』


作者『うちの猛者たんは、なかなかよ……一緒に地獄も戦場も潜ってきたんだから』


潤『その“うさ耳の奥に狂気を宿す感じ”やめろ。読たんが震えるわ』


作者『あ、ちなみに猛者たんも読たんも、“たん”は共通だけど……』


潤『方向性が天と地なんだよ!!!』


俺は一歩前に出て、静かに咳払いをした。


その所作からして、すでに“俺”ではなかった。


 


「私はですね──些細なことが、どうしても気になってしまう性質でして」


その瞬間、会場の空気が変わった。


さっきまで冷笑と嘲笑に満ちていた視線が、今は戸惑いに染まっている。


何が始まるのか、誰も予想がついていない。


 


「榊原さん……あなたはこの会社に“途中入社”されたと伺いましたが──

前職はどちらに?」


問いかけた俺の声は、どこまでも穏やかで理知的だった。


榊原は少し眉をひそめながらも、すぐに答える。


「……あなたに答える義務があるとは思いませんが。

まぁ構いません。以前は、OSの開発を行う企業におりましたが?」


彼の口調は余裕そのものだった。

不正の気配など微塵も見せない、完璧な表情とトーン。


 


「なるほど、ありがとうございます」


俺は会場を一望するように顔を上げ──次にマイへと視線を向けた。


「では、マイさん──榊原さんとは、どのようにして知り合われたのでしょう?」


突然の指名に、マイは戸惑いながらも答える。


「えっ……その、会社の資金調達を進めている中で、投資家の方を通じて紹介を受けました」


「ふむ。ではそのとき、スカウトしたのは──マイさんから?」


「いえ、私はあくまで資金調達が目的でしたので……」


「では、なぜ榊原さんは“社員”ではなく、“役員”として社に加わることになったのでしょうか?」


「……事業について相談した際に、融資だけでなく、役員として支える立場を希望されたので……」


「つまり、資金と引き換えにポジションを確保された、と?」


「……それだけではありません。

榊原さんのことは、投資家の方から“優秀な方”だと紹介されました。

何より……話していて、この人なら何とかしてくれるって……そう思えたんです」


 


「……そうでしたか。ありがとうございます」


俺は静かに頷いたあと、ゆっくりと視線を榊原に戻す。


 


彼は微笑みながら、言葉を紡いだ。


「だから申し上げたはずです。

自己資金をも投じ、この会社のために尽力している私が──たかだか小銭のために不正を働くなど、滑稽な話だと」


 


「なるほど……ならば、別の視点から──」


俺は、三橋に顔を向けた。


「三橋さん。あなた、随分と榊原さんにご執心のようで」


「はぁ? ……そりゃあんた、恩人だからな。

困ってる時に助けてくれた人だ。慕うのは当たり前だろ?」


榊原は含み笑いを浮かべながら口を挟む。


「まさか、私が彼に不正を手伝わせたとでも?」


「いえいえ、それは違いますよ。

三橋さんは、何も“していない”──ただ“可愛がられていただけ”ですから」


「……は? だからなんだよ」


「例えば──高級な料理をご馳走してもらったり、高価な腕時計をもらったり……心当たり、ありませんか?」


「……ああ? あるけど、それがどうしたってんだよ」


 


「不正で得た資金──榊原さんにとっては“持っているだけでリスク”でしかない。

ですが、現金をそのまま社員に渡すのは危険。

なら、奢りや高級品という形で“処理”し、その人間を恩で縛る。

結果、“忠実な信者”を作り出すことができる。

……違いますか?」


 


「出鱈目言ってんじゃねえ!」


 


榊原も声を上げた。


「そうだ! 私が不正で得た金を、わざわざ捨てるだと!?

そんな馬鹿な話があるか!」


 


「──ええ、確かに馬鹿げてます。

ですが、もしあなたの目的が“金”ではなく“技術”だったとしたら?」


 


その一言で、榊原の笑みがピクリと止まる。


俺は静かに続ける。


 


「あなたの過去の職歴と──その会社が辿った“倒産の理由”を調べれば、おそらく繋がるはずです。

あなたの本当の狙いは、この会社が持つAI関連の技術──

資金洗浄も、信用操作も、そのための準備だったのではないですか?」


 


会場が一斉に息を呑んだ。


確かな証拠は、何もない。

だが──全員が、三橋の“はぶりの良さ”と、異常なまでの忠誠心を思い返していた。


 


そして今──その三橋本人が、呆然とした顔で、自分の腕時計を見つめていた。


 


誰も──反論しなかった。


 

榊原彰人は、翌日──

何の説明も残さぬまま、Neulogic社から姿を消した。


 


数日後────


その“逃亡”という事実こそが、今回の件を何より雄弁に物語っていた。


そして今、俺はマイのオフィスを訪れていた。


 


「やばい……どうしよう……」


 


手は尽くした。

犯人は突き止めたし、社員たちもマイへの信頼を取り戻し始めている。


……でも、それで全部が解決かと言えば──違う。


 


「ありがとう、潤。よくやってくれたわ。……でも、もう十分よ」


 


マイは、どこか清々しく、けれど少しだけ諦めの色を混ぜた笑顔を浮かべていた。


 


そう──たとえ内部の不正が明らかになったとしても、

それが“銀行”という巨大な組織にとって好材料になるかは別の話だ。


むしろ、あのまま黙認していたら、榊原が“融資判断そのもの”を捻じ曲げて、会社ごと技術を奪っていた可能性だってある。


だけど今は──犯人が去った代わりに、銀行の審査はまた白紙。


会社の命運は、まだ何一つ保証されていない。


 


(……結局、全部手放すしかないのか……)


 


そんな重苦しい空気の中──


 


「しっつれいしま〜〜〜す♡ き☆っ」


 


景気よく開いたドアの向こうから、ユズハが元気いっぱいに登場した。


 


「……なんだよ“好き☆”って。今そういう空気じゃ──」


 


「先輩、いいから♪ テレビつけまーす♪ ポチッとな☆」


 


「おい待て、勝手に──」


 


──映し出された画面。


そこに流れていたのは、Neulogic社の特集番組だった。


 


──不正に揺れながらも、懸命に業務を続ける社員たち。

──先頭に立って走り続ける、マイの姿。


──社員たちが、マイ社長を信じ、支えようとするインタビューの数々。


 


ナレーションが語る。


「今、再び動き出したAI企業・Neulogic。

未曾有の混乱の中で、信頼と技術を取り戻そうとする人々がいる──」


 


「え……なにこれ……?」


 


「ふっふ〜ん♡ ゲンジさんにお願いして、

“正直すぎる社長が不正に巻き込まれても前に進むドキュメンタリー”作ってもらいました〜♡」


 


「ゲンジさん、ノリノリで編集してくれて〜♪ めちゃカッコよく仕上げてくれたんですよぉ♡」


 


「なっ……」


 


続いて、扉が次々に開き──他のヒロインたちもなだれ込んでくる。


 


「ミリーもSNSで宣伝したの! 『AIって難しいけど、なんかすごくない!?』って!」


 


「私も……潤様に報いるために、エンリさんと共に銀行に通い詰めてまいりました」


 


エンリも静かに頷く。


「ええ……何度も説明を重ねて、ようやく融資に前向きな返答をいただけました」


 


カエデがずいっと前に出る。


「ウチもリアちゃんと協力して、今後必要になりそうな資金の調達先探してきたで〜」


 


リアは眉を寄せて、ため息混じりに一言。


「……もう足が棒です。……比喩ではありません」


 


「お前ら……なにしてんだよ……」


 


ここにいないはずの人間が、全員で俺の知らないところで動いていた。

一言の相談もなく──でも、迷いもなく。


 


「ふふ〜ん♡ あれあれ〜? 先輩もマイさんも泣いてるんですかぁ〜?」


 


「泣いてないっつの……! 花粉症だっつの……!! 俺は年中アレルゲンに反応すんだよ!!!」


 


そこへ、勢いよく扉が開く。


「社長ッ!!」


息を切らせて飛び込んできたのは──浅川だった。


 


「……銀行の融資、通りました! これで……これでようやく……!」


 


言い終わらないうちに、浅川の目からも涙が零れた。


マイは立ち上がり、言葉もなく、その肩を抱く。


 


そして、俺は思った。


 


(……なんだよ……俺、何もできなかったのに……)


 


 


──でも、もしかしたら。


今日なら、言える気がする。


こいつらに、“やっぱりお前ら最高だ”って。







【あとがき小話】

作者『ちなみに今回の3話……タイトルで気づいた方います?』


潤『「私、このままでいいのかな?」→「私、悪者だ」→「私、社長を選ぶ」ってやつな』


作者『そう、それ全部──社長秘書・浅川の心情だったんですよっ』


潤『マジかよ……』


作者『しかも「社長を選ぶ」って、マイ社長のことだけじゃなくて──』


作者『潤のことでもあるんですねぇ……』


潤『やめろ、その“ドヤァ……”の間が一番ムカつく……』


作者『え?今さら言わなくても気づいてたって?ほんとにぃ???』


(振り向く)


作者『……ねぇ読たん?ここ、あえて驚いてくれない?リアクションだけでいいから!』


読たん『…………Σ(๑ °꒳° ๑)ビクッ)』


作者『うおぉぉぉおぉぉぉっっっ!!!ありがとう読たん!!!天使!!!!!!!』


潤『おまえ今、ストーリーの深みを自分で吹き飛ばしたよな?』


作者『後悔してない(即答)』



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