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才能奪って成り上がる!無職の俺がヒロイン達と社会を支配するまで  作者: pyoco
第3章『初心者の作者が本気出すでしょう』
212/262

第188話『私、社長を選ぶ』

作者『小説書き出してから、マジでスマホゲーやる時間消えたんだけど……』


潤『そりゃ毎日スマホと睨めっこして文章書いてりゃな……で、何やってたの?』


作者『えーっと、学マス、プリコネ、スレイザスパイヤ──』


潤『最後のだけ方向性おかしくない? 急にガチ戦略ゲーじゃん!』


作者『いやいや、スレイザは魂の浄化装置なの。難しすぎて泣きながら遊んでるけど、勝った時は……昇天する』


潤『それはもはや修行だろ。で、据え置きゲーは?』


作者『フロム? 必修科目だよ?(ニチャァ)』


潤『ドMの履修表じゃん!!』



会場はざわめいていた。


ざっくり数百人規模の社員たちが一堂に会し、空気は濁ったスープみたいにどんよりと澱んでいる。


その騒然とした空間を──俺は、上階の吹き抜けから見下ろしていた。


 


(やるか……って言ったけど、割と博打だし……根拠なんてねぇんだよなー)


 


俺のスキル《才能奪取》には制限がある。


対象が“悪事を働いている”こと──それを、この目で“目撃”していなければ発動できない。


でも逆に言えば、“悪事を働いているかどうか”だけは、ウインドウで見抜ける。

何をやったのかまでは分からなくても、“やってるかどうか”は、スキルが反応する。


 


(つまり……この場にいる数百人の中から、“ヤバいやつ”だけを選別することは可能ってわけだ)


 


会場入りする社員たちを、一人ずつ──まるで人間スキャナーのごとく、ウインドウ越しにチェックしていく。


 


(んー……これも違う。

あれも……うーん、ただの無能っぽいだけか……)


 


(……おい、今のヤツ……鼻ほじった手で……そのまま握手してる……)


 


(違う違う違うそうじゃない!!! ちゃんとやれ俺!!!)


 


ここでのミスは、即ち敗北。

引き返しはできない。これは“審査”ではなく、“戦場”だ。


俺の脳内に、警報のようにツッコミと焦燥が鳴り響く。


 


やがて全社員が会場に入り、席に着き、扉が閉まる。


 


(……やっべぇ。

 それらしいヤツ、一人もいなかったんだけど!?)


 


そのタイミングで、マイが壇上へと上がる。


マイクを前に、ゆっくりとスピーチを始める彼女の姿は──俺から見ても、真っ直ぐだった。


 


(あー……やっぱマイさんって、真摯というか……愚直というか……

 不器用なくらい真っ直ぐな人なんだな……)


 


だけど、会場の空気は冷たい。

下の階から見ているだけでも分かる。

社員たちの表情が、彼女に向けられる敵意と警戒心で満ちていた。


 


その中に──目立つ違和感を放っている二人の存在があった。


 


(あれ……確か……)


一人は、俺の悪評を広めてるっていう営業部の三橋。

もう一人は、マイの直属秘書・浅川。


三橋は今にも壇に噛みつきそうな勢いでマイを睨み、

浅川は……暗い。とにかく暗い。

うまく言えないけど、目の奥が死んでるような、そんな表情だった。


 


やがてマイが、「心当たりのある方がいれば力を貸してほしい」と呼びかけたその瞬間──


三橋が待ってましたと言わんばかりに、噛みついた。


 


「責任を取るべきは社長じゃないですか! 俺たちの努力を、全部無駄にする気ですか!?」


 


怒号が飛び交い、会場は炎上寸前の空気になる。


でも──


 


(ウインドウが……反応しないんだよなぁ……)


 


三橋の行動には、怒りも妄執もある。けど、“悪事”じゃない。

つまり、スキル的には“ただの困ったヤツ”扱いだ。


 


三橋が話し終える頃には、空気は完全にマイを吊し上げるムードに切り替わっていた。


 


(やばいやばいやばい……このままだと、マイさん終わっちまう……)


 


そのとき、穏やかに場を制したのは──榊原彰人。財務担当役員だ。


静かな口調でマイの言葉に“理解”を示し、会社の安定と秩序を持ち出して、社員たちの感情を見事に反転させていく。


 


(……マイさんも、“恩人だ”って言ってたし……

 流石だな、この人)


 


──そう思ったその瞬間だった。


 


【スキルウインドウ展開】


【奪取対象:榊原 彰人】

悪事を目撃していない為、奪取出来ません

スキル:内部崩壊(Lv5)/情報偽装(Lv6)/上層誘導(Lv4)

【才能をランダムに奪いますか?】


→選択不可


 


(……ん?)


 


画面を二度見する。


ウインドウは、消えていなかった。


 


目をこすり、もう一度見直す。


【奪取対象:榊原 彰人】

悪事を目撃していない為、奪取出来ません

スキル:内部崩壊(Lv5)/情報偽装(Lv6)/上層誘導(Lv4)


 


(ん?)


 


 


はぁぁぁぁぁぁ?


 


お前、めちゃくちゃ怪しいじゃねーーーーかぁぁぁぁぁッ!!!


 


スキルの一部は“目撃していない”ため不明扱い。

でも、表示されてる3つだけでお釣りが来るレベルでヤバい。


「内部崩壊」「情報偽装」「上層誘導」──企業クラッシャーのフルセットじゃねーか。


 


(間違いねぇ……こいつ、なんか企んでやがる……!)


 


だが──


 


榊原がそのまま話し終えると、三橋が率先して拍手を送り、

会場もそれに釣られるように、次々と賛同の拍手を始める。


 


──空気が完全に掌握されていく。


 


(……くそっ。もう行くしかねぇ……!)


 


俺は、意を決して走り出した。


マイのいる壇上へ──全てを変える一手を打つために。



壇上へ駆ける途中──

目に入ったのは、マイの顔だった。


彼女は唇をきつく噛み締め、必死に何かを堪えていた。

視線は俯きがちで、それでも揺れる足を前へ進めようとしている。


その光景に、俺の中で何かが弾けた。


 


榊原がこの場を解散しようとした、その瞬間──


 


「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁッ!!」


 


会場中の視線が、俺に刺さる。


数百もの視線がいっせいに──“お前誰?”という眼差しでこちらを見た。


 


俺は壇上へ飛び乗ると、そのまま指を突き立てる。


「榊原ぁぁぁッ!! ──犯人はお前だ!!」


 


……勝った。完全勝利ッ!!


今ここで犯人を特定し、名指しで告発した。


会場は沈黙──じゃ、なかった。


 


「フザけんな!!」「誰だあいつ!?」


「恩人に何言ってんだ!!」「頭湧いてんのか!?」


 


大ブーイング。

想像を遥かに超える音圧で俺を押し潰しにかかってきた。


 


(えっ? 信じてもらえない……?)


いや、よく考えろ。

今の俺──明らかにヤバいやつだ。


会社の危機を救った“恩人”に対し、いきなり壇上で犯人扱い。


社員から見たら、ただの非常識人間だ。


 


(まずいまずいまずい! これじゃ逆効果だ!)


 


しかし──

その流れを止めたのは、まさかの榊原だった。


 


「まぁまぁ皆さん、落ち着いて」


その穏やかな声に、会場が静まりかえる。


さっきまで地鳴りのようだった怒号が、嘘のようにピタリと止まる。


 


「──で? 私が犯人だと?」


榊原は薄く笑いながら、俺を見下ろしてきた。


「いくら会社に出資し、銀行融資の橋渡しをし、会社を救った恩人でも……

その発言は、冗談としても度が過ぎていますよ?」


 


ぐっ……。


こいつ、完全に“常識人ポジション”を装って、俺を晒し者にしようとしてる。


 


(……でも! まだ終わってない)


 


あのスキルがあれば──この空気を、一発でひっくり返せる。


 


そう、《演説》。


あれなら今の空気も打ち破れる──!


 


俺はウインドウを展開した。


 


【スキルウインドウ展開】


◆現在所持スキル

・格闘(Lv8)

・自動反応無効(Lv2)

・反射強化(Lv4)

・証拠隠滅(Lv6)

パッシブユニークスキル合成中:88%


 


(……えっ)


(えっ……?)


(演説……ねぇ!?)


 


あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!


俺、演説……合成中にぶち込んでたぁぁぁぁぁッ!!!


 


(やばい!!! 喋れない!!! 口先しかないのに!!!)


 


もはや逃げ場なし。


 


「え、えーと……俺には……わかる! 榊原が……悪人ってことがぁぁぁぁ!」


 


 


……シン……


 


全社員が、静かに、深く、俺を憐れむ目で見ていた。


その中で、榊原だけがにこりと微笑んでいる。


──詰みだ。


完全に、詰んだ。


 


 


……そう思った、その時だった。


 


壇の下で、ずっと黙っていた一人の女性が、静かに手を上げる。


マイの秘書──浅川だ。


先ほどまで陰に沈むような顔だった彼女が、声を振り絞るように口を開いた。


 


「……私……この件が公になる、もっと前から……ずっと前から、不正のことに……気づいていました」


 


一瞬、会場が凍る。


浅川は震える声で、それでも言葉を紡いでいく。


 


「データに……不可解な点があったんです。

悪徳リクルートエージェント社に融資を受ける、少し前のことでした……」


 


「……私は、真っ先に財務担当の榊原さんに相談しました。

でも、“今表沙汰にすれば、これまでの努力が全部無駄になる”って言われて……」


 


涙ぐむ彼女の声が、マイクを通さずとも会場全体に染み込んでいく。


 


「……私……マイさんを一番近くで見てきたんです。

誰より早く出社して、誰より遅くまで残って……休みの日すら会社に来て……

みんなに責められても、一人で必死に、ずっと……」


 


「……その努力が……この会社が……なくなるなんて……私には耐えられなくて……だから、今……話しました……」


 


壇上のマイが、信じられないという目で浅川を見つめている。


「……浅川……?」


 


しかし──その空気を打ち砕くように声を上げたのは、三橋だった。


 


「はっ! だからって、榊原さんが犯人にはならねぇだろ!?

このタイミングで表に出したら、会社が潰れんだよ! 判断としては正しいだろが!」


 


会場が揺れた。

一部は戸惑い、一部は動揺し、空気は再び濁り始める。


 


──だが、ここで俺は迷わなかった。


これはもう一か八かだ。


合成中の《演説》がないなら、別の組み合わせを使うまで。


俺は、スキルウインドウに指を走らせ、スキルを選ぶ。


 


【スキルウインドウ展開】


使用スキル:名推理リア演者ノア

対象設定:杉下右京(ドラマ風演出)


→発動しますか?


→イエス!


 


(──勝負だ!!!)







【あとがき小話】


──リア、耐久:ヒロインズの過剰接触編──


 


リア「……“本日の記録”を開始します」


(静かに手帳を開く)


リア「午前8時、出勤──玄関を開けた瞬間、ミリーさんが飛びついてきました。

セリフは『おはよーなのーっ!!じゅんくんもリアもだーいすき〜っ♡』──“抱きつき+ほっぺ密着”のコンボです。開始0秒で接触」


潤(すげぇ……開幕即インパクト……)


 


リア「8時15分、カエデさん登場。

『おはよ〜、リアちゃん今日もよう冷えとるな〜♡』

──と言いながら背後からウエストホールド。反射的に“肘鉄”を入れそうになったのを自制。

……私の反射神経も鍛えられています」


潤(いや鍛え方の問題では……)


 


リア「9時30分、ノアさんの“間接手繋ぎ攻撃”発生。

潤が落とした書類を拾い上げた私の手を、彼女が上から“包み込む”ように抑えてきました」


ノア『潤様の物に触れた手は……温めておかないといけませんから』


リア「──論理破綻にも程があります」


 


リア「10時12分、ユズハさん。

唐突に耳元で『……リアちゃんって、意外と反応いいですよね〜♡』と囁いてくる事案が発生。

物理的な接触は最小ながら、心理ダメージが甚大。即座にカウンターで“視線だけで沈黙”させました」


潤(むしろ耐えてるのお前だけだわ……)


 


リア「12時、昼休み。ミリーさんが“となり座り密着モード”でスープをシェアしてきました。

あれは“接触”というより“甘やかし搾取”。もはや生物兵器です」


ミリー『あーん!リアもたべて〜♪』


リア「口にスプーンが来る前に、“精神が口を閉ざしました”」


 


リア「15時、エンリさん。穏やかに“肩ぽん”。

しかし、その手に込められた“包容圧”が高すぎて、“何かを許容させられる雰囲気”が発生」


エンリ『ふふ……リアさんの頑張り、ちゃんと見てますから』


リア「──もはや回避不能の“心の圧迫面接”でした」


 


潤「……なあリア、お前、1日でどれだけ“接触事案”発生してんだよ……」


リア「まとめますと、1日で6件。“完全接触型”4件、“接触未遂”1件、“精神的接触”1件。

なお、明日もこの予定は変わらない見込みです」


潤「お前、メンタル鋼かよ……!?」


リア「いえ、“他人の温度”を遮断するスキルなら、既にLv8です」


 


──というわけで、

本日のあとがき小話は、“触れたら即アウトなインテリの孤独な闘い”でした。


潤「いやむしろ、触れられすぎだろ。お前が一番“感情に巻き込まれてる”じゃねーか」


リア「……私が落ち着いているのは、慣れているからです。

──そして、誰よりも潤が巻き込まれていることも、既に記録済みです」


潤「おいそれ記録破棄しろッ!!」

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