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才能奪って成り上がる!無職の俺がヒロイン達と社会を支配するまで  作者: pyoco
第3章『初心者の作者が本気出すでしょう』
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第187話『私、悪者だ』

作者『……なあ潤、今って、夏だよな?』


潤『間違いなく夏だろ。7月後半だぞ?』


作者『……なのに、蝉いなくね?』


潤『あっ、言われてみれば……たしかに。今年、まだ一回も聞いてない……』


作者『いつもなら「ミィィィィィ!!」って爆音響いてたのに……静かすぎて逆に怖いわ。数年前なんて、ポケGOしながら歩いてると、それぞれの木に蝉びっちりで……』


潤『もはや虫の巣だな。』


作者『今年の夏、どうなってんの……』



──悪徳リクルートエージェント社・社長室。


 


その日の社長室には、珍しく全員が揃っていた。

中心にあるのは、マイから届いた一通のメール──


 


重苦しい沈黙の中、全員がその内容を見つめていた。


 


リアが、鋭く口を開く。


 


「……さぁ。馬鹿馬鹿しいですね」


 


眉ひとつ動かさず、冷ややかに切り捨てた。


 


「この状況で“警察に任せて製品のリリースを優先する”など、正気の判断とは思えません」


 


俺は、その言葉にひっかかりながらも──素直に思ったことを口にした。


 


「え、でも……別に良くない?

 製品自体は完成してるし、もう販売始めちゃえばいいんじゃないの?

 売上で繋げば、その間に解決も狙えるし──資金さえ回ればさ」


 


その意見に、ミリーとユズハがすかさず乗ってくる。


 


「そうだよー!じゅんくんの言う通りっ♪

 製品そのものはバッチリなんだし、リリースすれば企業イメージもアップ〜〜!」


 


「それにぃ、今さら止めても、もう流れ止められないですよね?

 だったら逆に“売れてます”って実績出しちゃえば、信頼って後からでも……」


 


俺は一瞬「それな」ってなりかけたが──


 


ふと、エンリの声が、静かに割り込んだ。


 


「……いいえ。

 “コミュニケーションAI”とは、信用が命なのです」


 


その言葉に、ミリーとユズハが小さく口を閉じる。


 


「ユーザーは、自分の思考や会話を預けます。

 ときには社内の機密、あるいはプライベートの全記録まで……

 その“最奥”を扱うものに対して、たとえ技術が優れていても──信用がなければ誰も使わないんです」


 


リアが、眼鏡越しに俺を見据えながら続けた。


 


「つまり──“自社の資金すら管理できない企業”に、

 あなたは個人情報や戦略データを預けられますか?」


 


「…………」


 


俺は、言い返せなかった。


 


(……確かに……

 どれだけ機能が良くても、“盗まれる可能性がある”ってだけで──全部パーじゃん……)


 


俺の表情から察したのか、ノアが口を開いた。


 


「問題は、Neulogic社がこの深刻な状況にも関わらず、

 “警察への依頼”という静観策を選んだ点にあります」


 


「外から見ればそれは、一見安全な対応に見えるかもしれません。

 しかし──“企業としての自主調査能力が無い”とも解釈されてしまいます」


 


俺「……それ……マイさんに言った方がいいんじゃ……?」


 


ノアは少しだけ目を伏せて、静かに答えた。


 


「……伝えたところで、動けない。

 ──それが、正直なところではないでしょうか」


 


「犯人の特定もできず、“誤って外部に情報が漏れた”となれば──

 最悪、“銀行の審査自体が打ち切り”となり……

 AIの販売どころか、企業そのものが沈む可能性があります」


 


──ズゥン……と、部屋全体の空気が重くなる。


 


誰も口を開かず、息を潜めるように沈黙が続いた。


 


俺は、ため息をひとつだけ吐いた。


 


「…………なんとかするしか、ない……か」


 


誰に届くでもないその言葉が、

小さく、部屋の中心で転がった。




──────




Neulogic社・メインホール。


壇上を見上げる会場に、数百人もの社員が整列していた。

空調の音すら気になるほど、空気は重く張りつめている。


その中を、社長であるマイが一歩ずつ壇へと向かう。


社員たちの間を縫うように、財務担当役員の川合が前に出て、慌てたように声を張った。


「マイ社長!? 一体どういうおつもりですか!?

先日の役員会で、“今回の件は警察に任せて静観する”と決まったばかりでしょう!?

今からでも遅くありませんから! こんな場で社員全員に『誰が盗ったのか』なんて問いかけたら……

学校の犯人探しじゃあるまいし、馬鹿げてますって!」


それでもマイの足取りは止まらなかった。


「……ええ、わかってる。……本当に馬鹿げてるって、自分でも思ってる。

私、どうかしてるわ……」


だが、その歩みには迷いがなかった。


川合はその言葉に少し安堵した様子で微笑む。


「ですよね? 榊原さんもおっしゃってましたし……あの人の言う通りにしておけば、また何とかなりますって。だから──」


その言葉を遮るように、マイは振り向いた。


「──でもね、それでも……あの潤とかいう男に、賭けてみたくなったの。

本当に、私どうかしてるわよね」


川合の笑みが凍りついた。

その顔から血の気が引き、そしてようやく悟る。


もう、誰にも止められない──と。


 


壇上に立ったマイに向けられる社員たちの視線は、それぞれに違っていた。


疑念。不審。不安。怒り。希望。

そのすべてが入り混じり、言葉にできない重さとなって場を包んでいた。


 


「──本日、皆さんにお集まりいただいたのは、我が社の存続に関わる重要な事案について、正直にお話しするためです」


マイの声がマイクに乗り、ホールの隅々まで響く。


「……すでに噂として耳にされている方もいるかと思います。

社内で運用されている一部の資産について、不正に引き出された痕跡が発見されました。

さらに、複数の取引先との見積もり書についても、“不正なかさ増し”の証拠が──」


会場がざわめく。

あちこちから小声が漏れ、沈黙を破るように一人の男が声を上げた。


三橋だった。


「それって……社長の責任問題じゃないですか!?

しかもこのタイミングで!? 俺たちの今までの努力を、台無しにするおつもりですか!?」


同調するように、あちこちから怒号が飛ぶ。


「ふざけんなよ!」「何考えてんだよ社長!」


 


マイは一瞬だけ口を閉ざした。

しかし、すぐに顔を上げて言葉を重ねる。


「……この会社に懸ける想いは、誰にも負けないと、私は自負しています。

それは“社長”という肩書きだからではなく、一人の人間として──

この会社と、ここにいる皆さんと共に歩んできた私だからこそです。

だからこそ、私はこのまま見て見ぬふりをしたくありません。

……どうか。この件について何かご存じの方がいらっしゃれば、力を貸してください」


 


マイの言葉が終わった瞬間、再び場に沈黙が戻った。


……だが。


それを引き裂くように、柔らかな声が壇に届く。


「──マイ社長の熱い想い、我々も、よく理解していますよ」


榊原彰人。財務担当役員。

この件のキーパーソンでもある彼が、マイクなしでゆっくりと歩み出た。


「ですが、社長。困難を乗り越えてきたのは、何も社長お一人ではありません。

社員一人ひとりが、毎日必死にこの会社を支えてきたんです。

だからこそ、今こそ冷静になるべきです。

銀行からの融資判断が迫るこの時期に、社内で混乱を広げるのは、得策ではありませんよね?」


榊原の言葉は静かだが、会場の空気を一気に傾けた。


「すでに方針は決まりました。“警察に任せる”と。

今は、それを信じるべき時ではありませんか?」


すると、先ほど反発していた三橋が真っ先に拍手を送る。

それに釣られるように、社員たちからも賛同の拍手が広がっていく。


──まるで、導線が張られていたかのように。


 


その中心で、ただ一人。

顔を引きつらせながら、会場の片隅で小さく呻いた男がいた。


 


はぁぁぁぁぁぁ?


潤だった。




【あとがき小話】


最近、作者の破天荒キャラが崩れつつある件について


ミリー『被告人・作者〜っ!!あなたは……えっと……なんだっけ?』


リア『はぁ……“キャラがブレブレで方向性迷子罪”です』


ミリー『そうっ!ムレムレ迷子罪っ!判決、アウトーーーーー!』


潤『ちょっ!雑すぎるだろ!?てか“ムレムレ”って何だよ!?おい作者!?これ、いいのか!?』


作者『いやぁ……最近バニー服出しても誰も驚かないし……

変に真面目に語っちゃったせいで、ふざけづらくなって……』


潤『あーあーあー!作者が反省し始めたぁぁぁ!?』


ユズハ『異議ありっ♡裁判長!作者は迷子なんかじゃありません!

“ド陰キャのくせに、勘違い陽キャを拗らせた痛いやつ”なだけです♡』


作者『ゲフッ!!』


潤『おいおい、クリティカル入ってるから!?』


ノア『はい。弁護人として申します──この者は“黒歴史の自爆テロ”を繰り返し、

自分語りの末に人生を供養しようとしております。

もはや……救いようがございません。』


作者『ゲフッゲフッ……ッ……!』


潤『もうやめてあげてっ!作者のライフはとっくにゼロよっ!?』


カエデ『……せやけど、最後に決めるんは読たんやろ?』


潤『おお!そっか!読たんは絶対──』


カエデ『読たん、聞くで?──“作者って……痛いやつ?”』


読たん(…………コクリ)


作者『グハァッ……ッ!!ピクピク……』


潤『トドメ刺されたァァァァァ!!』


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