第18話『俺、簀巻きにされたここはどこ!?』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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うぅ……なんで、こうなった……。
体は動かない。意識はある。
でもって簀巻き。めっちゃ簀巻き。むしろ芸術的に簀巻き。
俺は震える指で、ウインドウを開いた。
【スキル:洗脳(Lv5)】
対象が「精神的に追い詰められている」または「屈服・納得・心酔状態」である場合に、その思考を支配可能。
「……え、詰んでね?」
そう――つまりこのスキル、ただのチートじゃない。
条件満たさなきゃ、ただの“でかい声で語るマン”だ。
うぅ……涙が止まらねぇ……。
「さぁ!救いを始めましょう!!」
「いーやーーーーーー!!」
* * *
2時間後。
「ぜぇ……ぜぇ……あ、あなた、なかなか……救われませんねぇ……?」
(そりゃそうだろ!)
俺は洗脳されなかった。
でも代わりに精神が摩耗してる!
ずっと叫ばれるだけの地獄。地獄って音量で作られてんのかよ。
「少し、休憩にしましょうか。信者たちを呼び集めますねぇ……」
黒川がスマホを取り出し、奥の部屋へ消える。
(……今しかねぇ)
なんとか脱出の糸口を探すと――
視界の端に、ちょこちょこ動くものが見えた。
(ネズミ……!?)
(まさか……スキルの複合で、いける……!?)
《演者》《洗脳》《威圧》《支配》――フル発動!
俺は目を見開き、ありったけの迫力と魂を込めて叫んだ。
「きょえぇぇぇぇぇ!!!」
「ちょぇぇぇぇぇぉ!!!」
「ゼェゼェゼェ!!」
ネズミはブルブル震え――その場で気絶した。
「ごめん!!本気でごめんってぇ!!」
……いや、ほんと申し訳ない。
やっぱりネズミさんに洗脳は無理だったか。
「なんだと……!? 信者が次々と警察に通報を……?!」
奥の部屋から黒川の怒鳴り声が響く。
「どういうことだ!? 馬鹿言え! くそっ……一旦身を隠す……合流地点で……!」
――ガシャーン!
(……まさか!)
俺がスキル奪ったせいで、洗脳が解けたのか!
部屋を出てきた黒川は、スマホを握り潰さん勢いで怒りのオーラ全開だった。
「……お前に構ってる暇はなくなった。だが……話されると厄介だしなぁ」
(な、なんだよその嫌な笑顔……?)
「お前、キャンプファイヤー……好きか?」
「いや待てってそれ物理的な意味のやつだろ!?!?」
* * *
黒川が火を放っていった。まさかの放火オチ。
部屋は一気に燃え上がる!
「燃えるって!マジで燃えちゃうって!!」
火の手がすぐそこまで迫ってくる。
(うぅ……せめて……童貞卒業して……普通の生活して、美味しいもん食って、ネカフェじゃない部屋で寝て、お金持ちになって……死にたくねぇえええ!!)
そのとき――
さっきのネズミが、目を覚まし、こっちを見ていた。
(ま、まさか……洗脳効果残ってる!?)
俺は必死に叫ぶ!
「頼む! その縄を! カリカリしてくれぇぇぇ!!」
……ネズミ、微動だにせず。
(そうか……人語じゃ無理か……)
「ちゅうちゅちゅーる、ちゅー!!!!」
動かない。
「ちゅうちゅちゅうーちゅーるちゅーーーー!!!」
「ぢゅーぢゅぢゅるるぢゅゆゆゆ!!!!!!」
「ぢぢぢゅーーーぢゅぢゅぢゅーー!!!!!!!!!!!!」
――そのとき。
「ぢゅう……?」
呆然と立ち尽くすエンリさんが、引きつった顔でこちらを見ていた。
口元を押さえて……見てはいけないものを見たかの様に…
「潤様! 今、すぐにお助けしますから!」
* * *
「助かったーーーッ!」
俺は、燃えた部屋から無事救出された。
「ご無事で何よりです、潤様!」
「よかったなぁ〜潤くん!ホンマよぉ頑張ったなぁ〜!」
ふたりが、ギュッと抱きしめてくれる。
(あぁ……生きててよかった……)
「ありがとう……ふたりとも……! そしてエンリさんも……!」
「いえ……まぁ……追い込まれたときの“人の行動”って、その……仕方ないですよね?」
……あの時の“ネズミ語”を思い出して
凄く気を使っているのがわかる。
俺は、静かに泣いた。
【あとがき小話】
最近さ……ネズミ、ちょっと可愛く見えるんだけど。俺だけ?
なんかこう、ちょこちょこ動いてて、手がちっちゃくて、
キョトンとした目で見上げてきたら「……えっ飼う?」って一瞬なるよね
でもよく考えたら、“現実のネズミ”って、人の家の米とかかじって逃げるからな
感情が“ハムスター寄り”に補正されてるだけで、油断したら現場は地獄よ。
まあ、そんなわけで──
ネズミを可愛いと思ってしまった人間が書いてる作品です。どうか今後もよろしくお願いします。
作者:pyoco(ハムスターには負けた)