第182話『俺、少しだけ近づけた気がする』
作者『……実はさ、日記で言うことじゃないかもだけど──俺、めちゃくちゃ人見知りなんだよね』
潤『えっ……バニー服で回転してたお前が!?』
作者『なにげに会話はめちゃくちゃ好きなのよ!
この前も親友と3時間電話してたら、嫁にドン引きされたし』
潤『話すの好きだけど人見知りって……どういう仕組みだよ……』
作者『いや、ほんとDMとかコメントとか……めちゃくちゃ嬉しいのよ?どんな内容でも!!
この間なんて、政治の話を車の中で独り言してたくらいには反応欲しいのよ!!』
潤『…………コイツ……やべぇ……(確信)』
作者『重力の話でも創作論でも、好みの犬の犬種でも、なんでも話そ?(圧)』
──紅陽銀行・本部。
重役会議室。
窓の外にそびえる摩天楼を背に、監査部の小川課長が静かに口を開いた。
小川「──今回の調査結果を踏まえ、堂島審査部長の評価業務に関して“正式な査問”を開始すべきと判断しました」
静まり返る室内。
その言葉は、確実に重役たちの心を揺らがせた。
取締役A「査問……それは“内部処分前提”ということか?」
小川「はい。複数企業から“評価操作の疑い”で苦情が入り、社外監査法人にも照会を依頼済みです。匿名レポートの信憑性は高く、かつ、実害も発生しています」
取締役B「……Neulogic社だな」
──あの名が、ついに“内部の議題”に乗った。
そして──それは、堂島本人の耳にも届くこととなる。
──翌朝。
堂島「……査問? 私が、ですか?」
小川「ええ。評価基準の一貫性に疑問が出ておりまして。特に“Neulogic社”や“フレクサル社”の件……すでにデータが本部に提出されています」
堂島「……あれは、私の裁量で──」
小川「“あなたの裁量が過剰だったのではないか”と、本部は見ています」
──ついに、上からの“通達”が下されたのだ。
堂島要──紅陽銀行の絶対的な融資判断者が、その地位を揺るがされる日。
堂島(……クソッ……なぜだ……誰が……?)
机を睨む彼の目に、“案件コード:オルドール”のファイルが映る。
誰かが知っている。
どこかから、裏の繋がりが漏れた──その事実に、背筋を冷たいものが走る。
──同時刻、Neulogic社。
会議室に、一本のFAXが届く。
社員「……マイさん。紅陽銀行本部から“再評価実施のお知らせ”が……!」
マイ「──っ!」
──その文面には、こうあった。
『当該企業への過去評価について、内部調整の不備が判明したため、再評価を実施します』
それは“謝罪”ではない。
だが、“向こうが動いた”という事実。
マイ「……ようやく」
──心の奥で何かが外れる音がした。
それは「諦めの錠前」だったかもしれない。
──そして、“悪徳リクルートエージェント社”オフィス。
潤「──えっ!? 再評価!? マジで!? うちの会社じゃなくて!? マイさんのとこが!?」
ノア「ええ。“御影マイ”という名を伏せたまま、企業単位で再評価が動いたとのことです」
エンリ「堂島の査問も開始されました。“出世”の道が絶たれれば、彼はもう“何もできない”」
リア「……詰みですね」
ユズハ「はーい♡ じゅんくんの“蚊帳の外座り芸”、今回もいい味出してましたね〜!」
ミリー「じゅんくん、今回も“ボーッとしてるだけで世界が動く”系男子だったの〜!」
潤「俺が何もしてないみたいな言い方すんなよ!! ……実際、してないけど……!!」
──でも、それでも。
俺たちは、マイさんを潰させなかった。
いや──俺じゃなくて、“このチームが”。
潤(マイさん……あなたが信じなくても、少なくとも──“守った”って言えるかもしれない)
──紅陽銀行・応接室。
その男は、数日前と同じ姿勢で座っていた。
だが、その表情にはかすかな“焦り”が滲んでいた。
堂島「──本日は、再度ご足労いただきありがとうございます。Neulogic社の件ですが……」
──潤、ノア、リア、エンリ、ユズハ、そしてミリー。
俺たち“悪徳リクルートエージェント社”の全員が再びこの場に集っていた。
潤(うおおお……この空気……この前の“圧”が抜けてる……!)
潤(あの堂島が、めっちゃ低姿勢になってる……逆に怖ぇ!!)
堂島「……先日までの評価は、当行の“内部処理の誤差”により、正確さを欠いていたことが判明しました。つきましては──本日をもって、融資を再開いたします」
リア「誤差、ですか。かなり大胆な“誤差”ですね?」
堂島「……本部の判断です。私は、それに従います」
──あの堂島が、完全に“矛を収めた”。
それは、“正義が勝った”わけじゃない。
“組織的に放棄された”という敗北の証だった。
エンリ「我々はこの件をもって、“Neulogic社への恣意的評価”の記録を控えます。ですが──今後同様の動きが確認された場合、躊躇はしません」
ユズハ「怖〜い♡ でもそれが“真面目な大人”の対応ですね〜♡」
ミリー「じゅんくんが何もしなくても、じゅんくんチームが全部やってくれるの〜!」
潤「“無職社長”みたいに言うな! 俺なりに空気読んで黙ってたの!!」
ノア「……その判断、正解でしたよ。あなたが出しゃばっていれば、堂島は反発していたでしょう」
──そのまま、再評価決定書にサインが入る。
堂島は、少しだけ顔を歪めて言った。
堂島「……おめでとうございます。──御影社長に、よろしくお伝えください」
潤「……え?」
──俺は、その一言に一瞬戸惑った。
だが、次の瞬間──すべてが繋がる。
潤(……知ってた。最初から、“俺たちが何のためにここに来たのか”も)
潤(──だけど、今はもう、“止められなかった”)
──その日の夕方。
Neulogic社・社長室。
マイ「……これが、正式な再評価通知……」
浅川「本当に、決まったんですね……」
──手元の書類をじっと見つめるマイ。
そして──彼女は、静かにPCを開く。
そこには、数日前に届いた一通のメール。
差出人:【潤】
本文:
「ご迷惑をかけてすみません。でも、絶対にあなたの努力が無駄にならないようにしたいと思ってました」
マイ(……本当に、変な人)
ゆっくりと背もたれに身体を預け、彼女はため息をついた。
そして──画面の向こうに向かって、言葉を零す。
マイ「……少し、驚きました」
──あの手紙の文面が、
“実行力も、戦略も、何もない”はずの男からのものだったことに。
だが、彼の背後には確かに“動く人々”がいた。
そしてそれが、現実を動かした。
マイ(──まだ信用したわけじゃない。でも、これだけは言える)
マイ(あの人は、“自分じゃない誰か”のために、本気で悩める人だった)
──その夜。
御影マイは初めて、潤の名を自分の中で“否定しない”場所に置いた。
それは、まだ“好意”でも“信頼”でもなかったが、確かな“変化”の兆しだった。
【あとがき小話】
作者『ユズハから見て作者はどんな人?』
ユズハ『え〜?どんな人かって……うーん……』
作者『(ドキドキ)』
ユズハ『まぁ……強いて言えば──』
ユズハ『“文章ではイキってるけど、実際会ったら秒で目逸らして黙りそうな人”ですかねぇ?♡』
作者『ッ!?』
潤『それは……正解寄り……っ!!』
ユズハ『あと、DMとかコメントとかも……読んだら5秒で舞い上がって、
30分かけて返信書いて、3時間見直してから送るタイプですよね〜?』
作者『ぎゃああああああやめろおおおおお!!!』
ユズハ『でも、そんな“必死すぎるところ”、ちょっと……可愛いと思ってますよ?♡』
作者『いっ……今の録音してもいい!?保存用に!!』
潤『作者、そういうとこだぞ……(真顔)』