第178話『俺、探りを入れられる』
作者『昨日は土砂降りだったからか、たくさん読んで頂きありがとうございました!
皆様大丈夫でしたか?今日は蒸し暑くなるらしいので、くれぐれもご自愛くださいね』
潤『(΄◉◞౪◟◉`)』
作者『……なに、その顔? 真面目モード発動した私への感想?』
潤『いや、そりゃお前だわ。
そんな爽やかコメントが似合うキャラじゃないだろ!?』
作者『でも……たまにはそういうのも──』
(スッ……)
バニー服を静かに取り出す作者。
潤『やっぱりお前だわ。バニー脳が蒸し返してんじゃねぇか!!』
御影「……では、せっかくなので──三十分だけお時間を取ります」
潤「えっ、いいの?」
御影「“時間”は差し上げます。“信用”は、まだです」
潤(……はい、出た。そういう系のキッパリワード……!!)
──というわけで、俺は彼女のオフィスに通された。
モニターだらけの空間。無駄のないデスク。観葉植物すら“シンメトリー”。
この女、部屋の空気すら緊張感で構築していやがる。
御影「では、御社の“出資理由”を伺います」
潤「うぐっ……いやその……俺、あんまりこういうの慣れてなくて……」
ミリー(小声)「じゅんくん頑張れ〜♪」
ユズハ(耳打ち)「“不器用な方が信じられる”ってパターンもありますよぉ?」
潤「静かにしてくれお前ら!!」
潤「──ウチの会社は、“異物の価値を引き出す”ことに向いてると思ってる」
潤「あなたの会社は、たしかに今“評価されてない”。でも、それは価値がないって意味じゃない。もし、あなたが……」
御影「……感情論ですね」
潤「っ!」
御影「私は、そういう“美辞麗句”に数え切れないほど裏切られてきました」
御影「──“あなたの技術、素晴らしいですね”」
御影「“一緒に社会を変えましょう”」
御影「“政治にも味方はいます”」
御影「……結果、残ったのは“打ち切られた助成金”と“連絡が取れなくなった担当者”だけです」
潤「……」
潤(……ああ、これは……“希望にすがって、全部潰された人の目”だ……)
エンリ(小声)「……彼女は“信じたいけど、信じたくない”矛盾の中にいるんです」
リア「現在、社外との接触も大幅に減少。“信頼障害”の傾向が強くなっています」
御影「──ただ、あなたが他の支援者と違うのは……」
潤「……え?」
御影「“悪徳”と名乗ってること、です」
潤「…………褒められてる?」
御影「いえ。興味があるだけです。……“何者なのか、判断できない人間”には、少しだけ引っかかりますので」
潤(うわ、これ“話はするけど信用しない”やつだ……!)
──だが、そこでリアが画面を切り替えた。
リア「失礼します。……こちら、御社の過去三ヶ月の契約データの傾向と、それに同期する“特定法務法人の動き”です」
モニターには、ある“顧問弁護士法人”が映っていた。
リア「この事務所、“過去に潰れた4社”にも同じように出入りしています」
御影「……っ」
エンリ「……やはり、潤さんの“違和感”は、間違っていませんでした」
御影「………………どういうことですか?」
潤「──あんたの会社、“中から潰されかけてる”可能性があるってことだ」
御影「…………それは、確かな情報ですか?」
潤「それを確かめるために、俺たちが動く」
御影「……なるほど。“悪徳”の動き方、ですね」
──その瞬間、彼女の目が、ほんのわずかに“光”を宿した気がした。
──数時間後、社に戻った俺は、背もたれに全体重を預けながら思いっきりため息をついていた。
潤「……疲れたぁぁぁああ……」
ノア「潤様、お疲れさまでした」
エンリ「大丈夫ですか? 水でもお持ちしましょうか」
ミリー「じゅんくん、おつかれぎゅーっ!!」
ユズハ「スカウトされたのは……先輩の方でしたねぇ♡」
潤「うるせぇ! 一人で交渉してたんだぞ俺は!!」
──あの女、御影舞。
美人で、クールで、論理的で、頑なで……何より“信じたくないけど信じたがってる”のがバレバレすぎて面倒くさい。
潤(でも……だからこそ、放っておけなかったんだよな……)
リア「──早速ですが、先ほど提示した弁護士法人について調査を進めました」
潤「マジで?はやっ」
リア「“法務オルドール”──外資系と見せかけて実質は国内資金のみ。設立からの取引先に、“直近で倒産したAIベンチャー”が五社。全て“推薦状絡みの契約”を結んでいます」
ノア「そして、全ての会社に共通していたのが──“資金の流れが断たれたこと”です」
エンリ「助成金・投資・そして──融資。特に融資面で、ある一社が鍵を握っていました」
潤「……ってことは、やっぱり来たか。金融だ」
ノアがホログラムを展開する。
ノア「──紅陽銀行。大手都市銀行のひとつにして、“最もAI関連に消極的な融資方針”を持つ機関です」
ユズハ「名前からして、燃え尽きそうじゃないですか♡」
ミリー「炎上系銀行〜!! って感じなの!!」
潤「真面目にやれ!!」
リア「注目すべきは、その中でも“AI企業の格付けを連続で引き下げた人物”──」
ノア「紅陽銀行 融資審査部長──堂島 要」
潤(……ここからか。まずは“資金”を止めてる奴を叩かないと──)
潤「ノア、アポ取れるか?」
ノア「もちろんです。……ですが、潤様には“正装”をお願いする必要があります」
潤「へっ?」
ノア「潤様の普段のスーツでは、“銀行との対話”に“誠意”が伝わりません。わたくし、三着ほど勝手に仕立てましたので」
潤「うわああああ余計な仕事が速ぇぇぇぇぇ!!!」
──こうして、“名刺を渡しただけ”のはずだった俺は、
いつの間にか“大手都市銀行の審査部長”とガチンコ交渉することになった。
あとがき小話
作者『ここから……』
潤『……何だよ、急に深刻そうな顔して』
作者『この章から登場人物が増えるので……
文中の“潤は言った”とか“潤『発言』”とか、表記のスタイルがちょっとブレます!』
潤『え? 統一しないのかよ?』
作者『ええ、混乱を避けるために、あえてブレさせます!わかりやすさ優先で!』
潤『ブレることを“あえて”正当化するなよ……!』
作者『もし気になる方がいらっしゃいましたら──』
(すっ)
作者『指で隠してお読みください!』
潤『原始的すぎる解決策ぅぅぅ!?』