第177話『俺、出資するか悩まされる』
作者『今から……新章の山場、書きます。ガチで震えてる……!』
潤『ああ、そうか……で?今投稿されてるのが177話だよな?』
作者『うむ』
潤『じゃあ、山場って何話目なんだ?』
作者『……204話目』
潤『へっ!? 溜めすぎだろ!? 何それ?冷凍ストック?肉じゃねーんだぞ!?』
作者『いやさ、毎日2話投稿してると、読たんの負担になってないかなって……ちょっと不安になっちゃってさ……』
潤『いや、書き溜めと関係ない悩みじゃねーか!!』
作者『でも……“読たんが追える速度”と“作者の暴走速度”って、違うんだよね……』
潤『一人で勝手にバイクのエンジン回すな!!』
──午後14時、社内会議室。
空調が妙に冷えてるのは、きっと気のせいじゃない。
リア「──結論から言えば、現時点での出資は“推奨できません”」
エンリ「ですが、私は──検討の価値はあると判断しています」
そう、今まさに俺たちは──
とあるAIベンチャーへの“出資スカウト”をめぐって、珍しく意見が真っ二つに割れていた。
机の中央に置かれたのは、一枚の企業資料。
『Neulogic株式会社』
代表:御影 舞
潤「なんつーか……名前からしてデキる女感あるな……」
ミリー「ねぇねぇ、この社長さん美人って噂だよ〜!」
ユズハ「ふふっ、先輩が手ぇ出したら炎上確定ですね♡」
潤「出さねぇよ!出資と手は別だ!」
ノア「──御影舞。元・経済産業省の技術官僚。帰国後、感情応答AIの研究で起業。……現在28歳。未婚」
潤「情報が一部ピンポイントすぎない!?」
リア「注目すべきは、彼女が“失速し始めた企業”であるにもかかわらず、いまだにV業界やSNS系からは“応援されている”こと。これはAI業界ではやや特異な現象です」
エンリ「──彼女の技術には、本物の価値があります。“人の感情に共鳴するAI”……それは、社会に希望を届けるツールになり得ます」
潤「……じゃあなんで、潰れかけてんだ?」
リア「明確な破綻要因は見つかっておりません。ですが、財務が徐々に崩れており……特にこの3ヶ月、“何かが起きている”形跡があります」
エンリ「実績はあり、技術は評価されている……それでも沈みつつある。そこに、“外的圧力”の可能性を感じます」
ユズハ「うわぁ〜、きたよこれ〜♡ “裏がある女”案件♡」
ミリー「えへへ〜でもさ、こういうのって助けたら絶対“ドラマ”生まれるよね?」
リア「……“ドラマ”の定義次第ですが。私としては、リスクは十分高いと見ています」
ノア「──ですが、“救われるべき人”がいるのも、また事実です」
ノア「潤様、どうかご判断を」
全員の視線が、俺に向いた。
そう、俺たちは今、“出資をすべきか否か”を問われている──まだ会ったこともない彼女に。
潤「……正直、決め手がない」
潤「怪しいのかもしれないし、本当に潰されかけてるだけかもしれない。技術はある。でも、信用がない」
潤「そんな時に、ウチみたいな“悪徳”が手を出したら……余計悪くなるんじゃないかって思う自分もいる」
ユズハ「じゃあ、会ってみれば?」
潤「え?」
ユズハ「本物かどうかは、先輩が一番“感じ取れる”じゃないですかぁ?……まぁ、騙されそうですけど♡」
ノア「その通りです。潤様が動くことで、きっと真実が見えます」
エンリ「人は数字や資料だけで判断できません。……直接会って、感じるべきです」
リア「会うこと自体にリスクはありません。情報取得の場としては、妥当でしょう」
潤(……結局、俺が行くしかないのか……)
潤「……じゃあ、俺が会ってみる。納得いったら出資、駄目なら止める」
──こうして、俺の次なる訪問先が決まった。
“御影 舞”──
“感情を持つAIを創った女”
そして──“社会構造に葬られかけている女”。
──都内のベンチャー街。
ガラス張りの近未来的オフィスビルの一角で、俺は肩身を狭くして座っていた。
目の前には、完璧に整えられた黒髪。鋭く知的な眼差し。スーツすら戦闘服のように着こなす、冷ややかな美人。
御影 舞──AI企業「Neulogic」代表取締役社長。
本日、俺が“出資の打診”に来た相手だ。
だが──
御影「……お帰りください」
潤「えっ、まだ名刺出しただけなんですが」
御影「十分です。“悪徳リクルートエージェント社”の方で間違いありませんね?」
まさかの即拒否!!
え、何? 俺、まだ息すら吸ってなかったけど!? 今の拒絶、呼吸より早くなかった!?
潤(こ、これは……久々に来たな、“初手で帰れ案件”……!)
ミリー「じゅんくん、追い返されてる〜!!」
ユズハ「さっすが“悪徳”の社長♡ 愛想ゼロな美人さんにも秒で門前払いですか〜?」
潤「なにをニコニコしながら実況してんだお前らは」
御影「──当社は、すでに“経済産業省”の協力枠において申請中です。“そちら”のような民間リクルート業とは提携できません」
潤「ちょ、待って!? 一応こっちも“支援型”ってことで……!」
御影「“悪徳”という名を掲げる企業に、何を“支援”されるというのですか?」
──ぐうの音も出ない。
潤(あぁ……なんかもう今、ビルのガラスが俺の人格まで透過してる気がする)
だが、その時だった。
ノア「失礼いたします──」
リア「これは……異常です。財務状態は良好なのに、直近で3社と取引解消。申請も全て差し戻し」
リアの言葉に、御影がほんのわずかに眉を動かす。
御影「……その情報、どこで?」
リア「公開情報をつなぎ合わせただけです。“見ようとしない人間には、見えない事実”ですので」
ユズハ「もしかしてぇ〜……御影さん、“見えてない側”だったんじゃないですかぁ〜?」
ピクリ、と御影の頬が引きつる。
空気が、わずかに変わった。
潤(……あれ? 今、なんか……切っ掛けが動いた……?)
御影「……一つだけ、聞いてもいいですか?」
潤「えっ、はい! どうぞ!」
御影「──あなたは、何のためにウチを助けると?」
その瞳は、明らかに試すようなものだった。
冷静で、鋭くて、でもどこかに“期待を殺しきれない人”の色があった。
潤「……いや、正直に言うと──別に正義感とかじゃないです」
潤「“必要としてる人がいて、俺らにできることがあるなら、やるしかない”ってだけで」
御影「……」
ユズハ「はいはい♡ 潤先輩、イケメンぶって〜」
ミリー「でもちょっとだけ……かっこよかったかもなの〜!」
御影「──……言ってることが矛盾してますね」
潤「うっ」
御影「“悪徳”を名乗るのに、“助けるしかない”と?……不思議な人です」
潤(……え、なに? いまのちょっと……柔らかかった?)
御影「……では、改めて。名刺、受け取ります」
潤「!!」
ユズハ「え〜!? 即帰れからの急展開♡」
ミリー「じゅんくんすごいーっ!! これ、口説いたの!?」
潤「違ぇよ!!!」
──こうして始まった。
たったひとつの企業支援だったはずの案件が、“国家と制度”を敵に回す戦いへと変わっていくとは──この時の俺は、まだ知る由もなかった。
あとがき小話
作者『いよいよ新章開幕です!!ここからが正念場!』
潤『で?それ、なんで章をわざわざ分けてるんだ?展開で区切ってるわけでもなさそうだけど……』
作者『いや、それがさ……一応、第1章は“本筋”、第2章は“ギャグ強め”、で第3章は“本筋に戻しつつちょっとビターな雰囲気”で……』
潤『……へぇ。つまり構成じゃなくて“気分”で章を分けてるのか?』
作者『うん。俺のスイッチ切り替えの儀式みたいなもんで』
潤『完全にお前の都合かい!!読者関係ねぇぇぇぇッ!!』
作者『でも!気持ちの切り替えって大事じゃん!?ほら、スポーツ選手もグローブめっちゃ叩いたりするし!』
潤『それ試合開始前の気合い入れな!作品の区切りに応用すんな!』
作者『でも見て?なんとなく“章の名前”ついてるだけで……カッコよく見えない?(ドヤ)』
潤『見えねぇよ!?気づいたら200話超えてんだぞこっちは!?』
作者『章の存在感……ゼロッ!!!(でもタイトルにはちゃんとつける)』
潤『ややこしいんだよ!!!』