第172話『俺、理性を守る為の戦い』
作者『皆様……今日は……いや、この二日間……更新をサボり申し訳ございませんでしたーーーー!!』
──その姿は土下座。
しかし普通のそれではない。
作者の背中にはモコモコの読たん。
さらにその頭には……グラサンをかけた読たんが仁王立ちで片足を乗せていた。
潤『……なんか、これだけで一周まわってギャグになってるぞ……?』
作者『心より反省しておりますっ!!読たんに許されるまで這ってでも戻って参りますっ!!』
読たんA『じゅるり……♪』
読たんB『次サボったら靴なめてもらうからね♡』
※表情は一切笑っていない
ノア『読まれているということの重み……その“尊さ”を再認識させるため、キツめのお仕置きを施しました』
潤『きっ、キツめって……ど、どんなことを……!?』
ノア『例えば──“更新されないことで、どれだけ読たんたちが不安になったか”を一時間かけて読み上げる拷問とかですね』
潤『メンタルにくるやつだぁぁぁ!!』
作者『“あなたが止まると、私たちの朝も止まる”って言われましたぁぁああああ!!!泣いていいですかぁぁあ!!!』
ノア『駄目です。あと9ページ分残ってます』
潤『鬼か!!いや天使か!!どっちだよ!!』
──旅館特設、卓球場。
畳とラケットとラブコメが同居するこの空間で──
今、“潤争奪卓球大会”が、静かに幕を開けた。
『第1回戦──ノアさん vs リアさん』
審判エンリが名前を読み上げると、空気が凍る。
──ノア vs リア。
ヒロインズの中でも特に“理性”を武器にするふたりが、
まさかの1回戦で直接対決。
『……まさかこの組み合わせとは』
『潤様が我々を“公平に見てくれる”機会と捉えれば……悪くはありません』
お互い、穏やかに……しかし目だけは戦場だった。
俺はというと、
卓球台の向こう側、“添い寝券”の現物と共に用意された座布団に座らされていた。
……どこからどう見ても景品の置き場です。本当にありがとうございました。
「……いや俺、いま“争奪対象”なんだよな?」
「試合内容で“添い寝の権利”が動くって、何その地獄ギャンブル」
『それでは──プレイ、スタートです』
エンリの号令と同時に、リアがサーブ体勢を取る。
『……失礼します』
スッ──パシュン!
低く、鋭く、完璧なコース。
──なのにノアは一歩も動かず、肩で角度を合わせて、スッと返す。
『……なるほど、理想的な初速ですね。ですが──』
リアがすぐさま返す。
──二人のラリーが加速する。音が軽い。
無駄な動きが一切ない。機械のような応酬。
『このまま、無音で終わるのか……?』と誰もが思ったその時──
『潤様は、どちらの“添い寝”をご希望でしょうか?』
ノアが返球しながら口撃を開始。
『まさか……静かな夜をご希望なのに、リアさんを選ぶとは思えません』
『理性を保ちたいのなら、私一択でしょう』
リアが即座に切り返す。
『夜通し語らう知的な会話。それこそが、“本物の繋がり”なのでは?』
『……潤様に睡眠を与えずに、何が添い寝ですか?』
「ちょっと待て!?添い寝ってそういう意味じゃないだろ!?なんで“話す派vs寝かせる派”になってんだよ!!」
『しかし、“膝枕+睡眠時頭なでなでプラン”を提供できる私の方が──』
『その“なでなで”で潤の自我が崩壊する可能性について考慮されましたか?』
『崩壊するくらい甘やかして差し上げます』
「俺がいま人として“取引対象”にされてる……」
観客ヒロインズの誰も止めない。
審判すら頷いてる。ていうかその“添い寝券”って本当に誰が作ったの!?
──そして。
ラリーはついに20本を超え──
『……潤様、もうすぐです』
ノアのスピン付きスマッシュ!
『おっと……ですが、そこは読んでいます』
リアがカウンター!
──からの、返球ミス!
ポンッ……球がネットに引っかかる。
『……ポイント。ノアさんの勝利です』
エンリの宣言が静かに響いた。
『……ふふっ、当然の結果ですね』
ノアが振り返る。その目は潤を真っ直ぐに射抜いていた。
『潤様。今夜は、おそばにおりますので──ご安心ください』
「やめろォォォォォォォォ!!!俺の睡眠を安心で塗りつぶすんじゃねぇぇぇ!!」
──俺の尊厳を守る戦いは、まだ始まったばかりだ
──第二試合、潤 vs カエデ。
『潤くんと戦うとか……うち、勝っても負けてもご褒美やわ〜♡』
対戦前から頬を赤らめてラケットをスリスリしてる。
……それ俺じゃないからな!?感情移入しないで!?
観客席のヒロインズはわりと真顔。
『……潤様、怪我だけはしないでください』
『せんぱい、無理だったら途中で泣いてもいいですよぉ〜?』
『潤さんに勝つ意味とは……』
『ふぁいとーじゅんくーん!』
「え、なにこの空気!?“頑張っても無駄”みたいな応援混じってなかった!?!?」
──試合、開始。
エンリの「プレイ!」と同時に、カエデがラケットを構える。
『んふふ〜……うちはなぁ、普段から体動かしとるからな〜?』
カエデの体勢が、やたらとセクシー。
……っていうか浴衣風の軽装のせいで、しゃがむたびに危険な領域がチラつく。
やめてほんと。布地の圧がすごい。
「おいこれ試合になんねぇよ!どこ見りゃいいんだよ!!」
球が飛ぶ。
俺、レシーブ。
が、ラケットの下から**“揺れ”が視界に入ってくる。**
「見ちゃダメ見ちゃダメ──ってうおおおおお!?」
返球失敗。
『あら〜?潤くん、見とれてもうた?』
くっ……この女、天然と見せかけて“狙って出してる”な……!!
俺の反応に、観客席の反応がザワつく。
『潤様、集中を……!』
『これはこれで面白いですねぇ〜♡』
『情けない……』
──これは……もはや、“見る地獄”との戦い。
だったら……!
(静かに、内心で唱える)
【スキルウインドウ展開】
【反射強化(Lv4)】
──発動!
視界がクリアになる。
まるで……目にフィルターがかかったみたいに、
“危険エリア”だけ、自然と視界から除外される。
ラケットが走る。
返球、完璧。
カエデの角度狙いもすべてカット。
『あれっ!?潤くん、ちょっと強ない!?』
『せんぱいが急に動き良くなってません!?』
『潤様のくせに……!』
そして──
最終ラリー、跳ね返し、角へスピン、そして──
「っしゃあああ!!決まったあああ!!!」
『ポイント、潤さんの勝利です!』
カエデは床にへたり込み、
『……潤くん……すごかった……でも……目は泳いでたで……♡』
「見てない見てない!!ほんとだって!!」
──誰にも気づかれずに、
こっそりスキルで尊厳を守った男──潤。
この勝利だけは、
“景品”じゃなくて“男としての誇り”だと……俺は思いたい。
──第3試合。
ユズハ vs ミリー。
エンリの「プレイ!」の声が響いた瞬間から──空気は、完全におかしかった。
『えぇ〜? ミリーちゃんって……卓球って何打で決着する競技か知ってます〜?』
『え? え? ん〜……じゅんくんに勝ったら終わり♡』
『あーあーあー、やっぱり知らなかったぁ〜♡ スポーツIQゼロ〜♡』
ユズハ、開始3秒で揶揄いモード全開。
「なんだこの試合、始まってすらいねぇのにもう情報戦だ……」
観客席(という名の潤スペース)で、俺は静かに呟いた。
『でもでもぉ〜♡ せんぱ〜いが“胸が揺れた方を応援する”って言ってたの、ミリー聞いちゃったも〜ん♡』
『なっ!? そんなこと一言も言ってないからな!?!?』
『えーでも〜、SNSに書いてありましたよ〜?』
ユズハがスマホをかざす。
『「潤、温泉旅行で“動きのある方が勝ち”と発言」──って♡』
「どこ情報だよそれ!?お前が投稿したんだろ!!?」
『ミリーね〜? じゅんくんに勝ったら、だっこしてもらうの♡』
『えっ……えっ……ずるくないですか?』
ユズハが初めて動揺した。
『その……じゅんくんのほっぺにちゅーもつけちゃおっかな〜♡』
『待って!?ちょっと待って!?そういうプラン聞いてない!!』
──空気が、完全にミリーのターンに傾いた。
彼女は技術も戦略もない。
けど、純粋に「潤と触れたい」ってだけで動いてる。
その本能が、ユズハの小悪魔フェイクを粉砕しはじめてる。
『せんぱいは〜♡ やっぱ“素直な子”が好きなんですよねぇ〜?』
『うんっ!!ミリー、素直っ!!』
「てか試合して!?ラリーしてくれ!!情報戦だけで終わらすな!!!」
──その瞬間!
ユズハのサーブ!
ポン!
スカッ!
ミリー、空振り。
『……あれぇ〜? 今のって〜、“わざと”ですかぁ〜?』
『……ううん、違うっ!!』
ミリーが、ラケットを両手で持ち直す。
『ミリーねっ、じゅんくんと会った日から、譲らないって思ってたのっ!!』
──ズドンッ!!
サーブ!! 今度はヒット!!
ミリー、吠える。
『ミリー、勝つ!!だってっ……潤くんに!ぎゅー!されたいからぁぁぁあああ!!!』
「うぉおおお!?いきなり感情のラッシュきた!!?スキルかこれ!?」
──そこからはもう、スーパーミリータイム。
トン、トン、ズバッ!!
打つ!走る!叫ぶ!叫ぶ!回る!
そして──
『ポイント! ミリーの勝利です!』
「はっやぁあああ!!!展開速ッッ!!」
勝利が決まった瞬間、ミリーはラケットを放り出して一直線に走ってきた。
『じゅんくん!!ミリー勝ったぁぁあああ♡♡♡』
「ちょっ……!やばっ──あっ、うわっ──!?」
ぎゅううううううっ!!
完全ノーガードの俺に、全力ミリーロケットが直撃した。
『ミリーね〜、トロフィーじゃなくて、潤くんがほしかったの♡』
「……これ、何の大会だったっけ……?」
──卓球台の向こうで、ユズハが小さく肩を落とし、ぽつりと。
『……感情特化型ヒロイン、強すぎ……』
あとがき小話
作者『聞いてよー読たん』
読たん『………………(コクッ)』
※すでに嫌な予感がしてる顔
作者『これからさ〜、夏じゃん?』
読たん『(コクッコクッ)』
※まだ普通の会話だと信じたい様子
作者『つまり水着じゃん?』
読たん『……?』
※微妙に警戒モードに入る
作者『つまり〜〜〜〜?』
読たん『………………』
※沈黙がすべてを語る
作者『バニー服じゃん?』
読たん『!?!?!?!?!?!?』
作者『ほらぁー!水着ってさー、肌面積はバニー服と大差ないでしょ?ね?ほぼ等価交換ってやつ?』
読たん(なに言ってんのこの作者ーーーーーーー!!(床バンバン))
作者『もちろん浴衣もアリだけどぉ〜〜?』
読たん(何で“夏=正装=バニー”の方程式が成立してんの!?)
※心の中で叫びながら後ろに脱兎のごとく逃げる
作者『でも今年の夏は、**“バニーと浴衣の二刀流”**で行こうと思います!!』
読たん(誰が!?誰の許可で!?誰に着せる気でぇぇぇ!?!?!?)
──その日、作者の部屋には大量の着せ替え案が貼られたホワイトボードが立てられたという……
潤(……マジで誰か止めてくれ)