第171話『俺、景品扱い』
作者『昨日は……青春ブタ野郎を見ました……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)』
潤『朝から感動の余韻引きずってんなよ……』
作者『心が……洗われたんだよ……例えるなら──』
作者『心を業務用洗濯機でブン回されたような……ゴウンッゴウンッって……(遠い目)』
潤『なんで洗われた感想がそんな脱水モードなんだよ!?』
──チェックインして、とりあえず一風呂。
部屋割りはもちろん、俺だけ別室。
ヒロインズと同室なんて、物理的に“死”のフラグでしかないから当然っちゃ当然。
……でも。
「なんかこれはこれで寂しいんだよな……」
静かな六畳間、荷物も少なく、テレビの音だけが空気を埋めている。
この孤独感、なんか……修学旅行で置いてかれた転校生みたいな……
『じゃ、夕飯までは自由行動!』
『まずは一風呂浴びにいきましょう!』
──ということで、俺も露天の大浴場へ。
湯気が立ち込め、檜の香りと静かな自然音。
はぁ……ようやく……
癒され……
「……って思ったけどやっぱり聞こえるよねーーーッ!?」
──女湯から、わりと大音量のヒロインズトーク。
ここは……聞くしかない。
男として、いや主人公として、いや単なる流され型社長として──
「聞き耳」という選択肢は“運命”だ。
──ズザザ……
俺は縁の岩に頭を寄せ、静かに耳を澄ませる。
『うちが一番かと思っとたら……こんな反則やろ!』
いきなり爆弾発言来たあああぁぁ!!
『ひゃっ、やめて下さいカエデさんっ!』
『ちょっ、どこ触って──!』
待って!?
今、どこかを触って揉めてる系のリアクションじゃなかった!?
『うちが一番やと思ってたのに……くぅ〜〜!!』
『あはは♡ これは……嫉妬しちゃいますねぇ〜♪』
『下品ですねカエデ、私は“形美しさ”に価値があると考えます』
『ノアちゃん綺麗〜♡』
『ふふ……けれど、サイズで言えばミリーさんにも……ぷっ……失礼……』
『ミリーいっぱい牛乳飲んでるもん!』
何の話してんだお前らァァァア!!!
サイズって何!?形って何!?
温泉でボディチェックからマウント合戦してんのかよ!!
『でもでも〜♪ ユズハちゃんだって、意外と“小悪魔なところ”以外も“小悪魔”ですよねぇ〜?』
『え?ちょ……待って、それどういう意味ですか!?』
言い方ぁぁぁあ!!
ていうかこれ、ヒロインたちが互いのアレを評価し合う地獄の格付け大会じゃねぇか!!
『はぁ〜〜小さい方にも需要はあるんですよぉ〜?』
あっ、なんか背後から刺さりそうな気配が……
『しかも、本当に小さいリアさんはどうなんですかぁ〜?』
うわ……言っちゃった……
『……くっ。そんなものは、合理的に見れば単なる脂肪の蓄積であって……!』
「リアァァァ!!理屈で返すなぁぁああああ!!」
『まぁまぁ♪ 皆〜うちらに嫉妬せんでも〜?』
『『あのー……大きさだけじゃないですよ……?』』
──そして揃って口を開いた二人に対し──
『お前が言うなや』
『お前が言うな!』
ツッコミ一致!!
空気が一瞬だけボケ・ツッコミの連携に成功する稀有な瞬間が生まれたぞ今!!
そして俺は、ポツンと湯に浸かりながらこう呟く──
「……あー女子風呂にも格差ってあるんだ……」
──そう呟いた直後、まだ戦いは終わっていなかった。
『でもでも〜♪ ユズハちゃんも駆け引きなら負けませんよぉ〜?』
湯船のふちでポーズを取るユズハが、ニヤッと笑う。
『皆さんみたいに突撃しないですから〜。押して、引いて……“考えさせる”んですよ』
『潤様のみを愛し、潤様の隣に寄り添う──』
ノアがバスタオルを整えながら静かに言う。
『引いてしまっていては、潤様に失礼です。私たちに許されるのは、ただ“寄り添う”ことだけ』
『ウチはな〜、引いてるうちにとなり、取ってまうで?』
カエデがにんまり笑いながら、隣の湯から身を乗り出す。
『遠慮しとるフリして、ちゃっかり腕とか組んでな〜♡』
『ふふっ……私は、疲れて帰ってくる場所になれたら、それで構いません』
エンリは湯の中で目を閉じたまま、静かに笑う。
『潤さんが何も考えずに帰ってこられる距離。私は、そこにいたいですね』
『ミリーはね〜、ずっと一緒にいたいのっ! ぎゅーして、手ぇつないで、いっぱい遊ぶのっ!』
ミリーが湯の中でバシャバシャ暴れながら宣言する。
『いちゃいちゃ最優先っ! だって、じゅんくんだもん!』
『非合理です』
リアがすぐさま切り返す。
『言葉もスキンシップも、過剰になればただのノイズです。必要最低限の対話と、相互理解──それこそが“大人の関係”ではないでしょうか?』
『でもさー? リアさんさっきのロビーで──ウチらが潤くんと腕組んでた時、めっちゃこっちチラチラ見とったで?』
カエデがニヤリと攻めに転じる。
リアがビクッとする。
『……あ、あれは……観察です。関係性の……観察……』
『観察って言い訳すんのダッサ♡』
ユズハが煽るようにウィンクする。
『ていうか〜♡ リアさんも本当は、潤先輩に頭撫でてほし〜んじゃないですかぁ? 甘えちゃいなよ?』
『べ、別に……そんなことは……』
『ほらー♡ 照れ屋さん♪ てーれーやーさーん♡』
『てーれーやーさーんっ♡』
ミリーがぴょんぴょん跳ねながら合わせてくる。
『照れ屋さんー♪ リアちゃんもぎゅーしてあげよっか〜?』
『……結構です。』
リアは視線を外しながらも、頬だけがほんのり赤い。
でもそれを誰も突っ込まず──それぞれが、ほんの少し、互いを意識しはじめていた。
湯気の向こうで、カエデがニヤッと笑う。
『まぁ……ウチら全員、潤くんにとっては“可愛い”のは間違いないけどな?』
『可愛い、ではなく……“必要”なのは誰かという話ですよ?』
ノアが目を細めて返す。
『どっちでもいいです〜♡ どうせ最終的に選ばれるの、私なんで〜♡』
ユズハがクイッと髪をかき上げる。
『ミリーはね〜?選ばれるとかじゃなくて、もう“いる”の♡』
ミリーは湯の中でくるくる回りながらにっこり笑った。
エンリがその様子を、静かに見つめながら言う。
『……皆さん、潤さんの隣を狙っているんですね』
『……違います。』
リアが、ぽつりと呟く。
『隣を“守りたい”だけです。誰にも、譲る気はありません』
──一瞬だけ、湯けむりの中の空気が変わる。
だが次の瞬間──
『ふふっ、じゃあ……“勝負”ですね?』
その言葉に、誰かがふっと笑い、誰かがふっと肩を揺らし、誰かがほんの少しだけ距離を詰めた。
──その地獄のような声が、俺の岩陰まで──ハッキリ聞こえてきた。
(俺、まだ一言も喋ってないのに……)
(なんか……トロフィーみたいに扱われてない?)
【あとがき小話】
作者『読たんの皆様に……一つお詫びを……』
潤『また何やらかしたんだよ……』
作者『……この第二章、“本筋には関係ない”って言ったじゃないですか?』
潤『ああ言ってたな。……んで?』
作者『あれ……嘘でしたっ!てへっ☆』
潤『はぁーーーーーーー!?!?』
作者『いや、正確にはね? “関係ない風”にしようとしたんだけど、そしたら中身がスカスカになっちゃって……つい……ちょこちょこ本編要素を混ぜざるを得ませんでしたっ!』
潤『いや完全にお前都合だろ!!埋めるために混ぜたって何だよ!!』
作者『まぁでも、こんな風にゆる〜くて、各話の雰囲気で揺れまくってる構成もさ?』
作者『“ああ、作者がやりたいことやってる作品なんだなぁ”って、生暖かい目で見てもらえれば……ね?』
潤『いや読者の慈悲を前提にすんなよ!!』