第168話『俺、再びギャンブル』
作者『執筆と仕事の往復の中……一日二回も日記なんて無理なんですよ……』
潤『始めたのお前だろぉぉぉぉ!? 誰もやれなんて言ってねぇよ!?』
作者『……うん、じゃあ頑張ってみるね……』
潤『いやだから頼んでないってば!やるなら勝手に全力でやってくれ!』
作者『えーと、今日の夜ご飯は……吉野家の豚丼✖️2でしたっ!』
潤『お、おう……で?』
作者『3杯目いけるかどうか、ちょっと迷ってた自分がいました……!』
潤『その葛藤どうでもよすぎて逆に尊敬するわ!!』
──ヒロインズから、完璧に隔離されて数週間。
というか、健康管理という名の軟禁生活が終わり、ようやく俺は自由の身となった。
身体は軽い。だけど……
「……スキル、増えすぎじゃね?」
◆現在所持スキル
・証拠隠滅(Lv6)
・悪意誘導(Lv8)
・威圧(Lv4)
・魅力(Lv4)
・編集技術(Lv5)
・格闘(Lv8)
・演説(Lv6)
・自動反応無効(Lv2)
・反射強化(Lv4)
・暗殺(Lv7)
「方向性、どうなってんだよ俺の人生!!」
詐欺師でも口八丁でもスナイパーでもなく、
**殴れて喋れて逃げれて消せて魅せる社長(暫定)**ってどういうジャンルだよ!
なんか……出世とか成功から遠くない?
どれもスキル欄で“キャリア”っていう概念が迷子になってるんだけど!?
「てかもう10個埋まってるじゃん……」
そう。
スロット数、最大10。
これ以上才能を奪うには、どれかを削除しなきゃいけない。
──つまり、決断の時。
そしてその時、俺の端末が**ピコンッ!**と不穏に光る。
【おめでとうございます。才能が10個に到達致しました】
【パッシブユニークスキルゲットチャレンジが可能です】
「……え?」
一瞬、呼吸が止まる。
パッシブ……ユニークスキル……チャレンジ?
あの“演者”や“解析眼”に並ぶ、チート枠……?
いや待て、それってつまり──
完全に運ゲーってことじゃねぇか!?
(でも……厨二心が……刺激される……!)
俺は震える手で通知を開いた。
【取得方法:現在所持中の才能から6つ合成し、それに関連するパッシブユニークスキルをランダム取得します】
「──ろ、ろくつぅ!?」
おいちょっと待て、要求がデカいぞ!?
6つ消費って、6割消えるんだぞ!?しかも合成結果“ランダム”とかガチャより怖ぇよ!?
しかも”関連スキル”って何だよ!?
なにその“あなたにピッタリの結果をAIが生成!”みたいな不安すぎる表現は!
「いやでも……考えようによっては夢あるな……」
たとえば:
•【格闘】【反射強化】【暗殺】で合成 →
→《戦闘特化型ユニーク:殺意跳躍/反撃必中/超加速破壊》とか出たらヤバい。
•【演説】【悪意誘導】【魅力】【威圧】の合成で →
→《支配力:言葉で人心を蹂躙》みたいな悪役サイドのカリスマが出るかもしれない。
•あるいは【証拠隠滅】【編集技術】【演説】【自動反応無効】を組み合わせて →
→《現実改変:全てを“なかったこと”にする》とか出てきたらもはや神。
「いや……やべぇだろこれ……どうすんだよ俺……」
想像が暴走していく。
しかもこれ、パッシブってことは──
常に発動するってことだよな?
つまり──
(例えばミリーが急に抱きついてきたら……条件反射で関節技入っちゃうとか……?)
──いやいやいやいやいやいや!?
「それは!! 絶対!! 駄目なやつぅぅぅぅぅう!!」
あの無邪気ランダム爆弾を投げ飛ばした日には、翌朝俺の部屋が消えてる未来しか見えない!
いや、俺が消される!
ノアの冷笑とリアの分析とエンリの優しさが、逆に怖ぇんだよ!
そしてユズハが一言言う。
『あ、先輩またやらかしました? もう会社の評判終わりですね♡』とか!!
「格闘は! 絶対に! 方向としてナシ!!!」
──断固却下。パッシブで格闘が暴走とか、
潤という存在がギャグとして成立しなくなるレベルのやらかしだ。
さすがにそこは慎重になる。
「……となると、組み合わせ次第では、人格的な死が訪れる可能性もあるのか……?」
とはいえ──俺は、めちゃくちゃ慎重で、思慮深いタイプの人間だ。
決して、チキンとか、ビビリとか、
**「思い切りが悪いカズマ系主人公」**とかじゃない!
「これは……戦略的撤退だ」
というわけで、まずは安牌そうなスキルから投下していこう。
【1つ目:編集技術(Lv5)】
「お世話になったけど、今は使い道ないしな……」
昔は“報告書を改ざんする”とか“社内資料の黒塗り加工”で便利だったけど、最近はヒロインが勝手に処理するし、潤の出番がない。
むしろ俺が手を加えると「潤様、また改ざんなさったんですね」とノアが笑顔で包丁研ぎ始めるからむしろ危険物。
ポイッ。
【2つ目:演説(Lv6)】
「これもな……話術スキルっていうより、口から出任せ拡声器って感じだったし……」
だいたい演説するとユズハが“捏造スピーカー♡”とか言い出して報道番組作るから逆に燃える。
ポイ。
【3つ目:威圧(Lv4)】
「……最近、誰にも効かないのよねこれ」
チンピラには有効だった。
でも
──化け物みたいな奴らには無力だった。
ポイ。
【4つ目:魅力(Lv4)】
「うん……増えすぎたら困るから、逆に“捨てたい”スキルなんだよ……」
これのせいで最近女性が笑顔で近寄ってくる=新たな地雷の可能性って構図ができあがってしまった。
モテたいとか思ってたけど、人生で“魅力”がこんなに恐怖になるとは思ってなかった。
ポイ。
【5つ目:悪意誘導(Lv8)】
「……お前なぁ……」
このスキルの効果はぶっちゃけチートだ。
敵意をこっちに誘導すれば、世間が処理してくれる。
──ただし、何もしてないのに暴力沙汰が発生する事故率も100%。
実際、これどんな結果になるのか全く読めないんだよな……
ポイ。
【6つ目:暗殺(Lv7)】
「いや、俺……一般人だよ?」
これを使うにはまず“殺意”が必要だ。
俺、基本的に平和主義だし。
何よりこれ、発動した時のスキルウインドウが怖いんだよ。
【暗殺:発動条件/敵意・背後・静寂】
【成功率:85%】
【殺意閾値:超過】
──怖いわ!!
スキル名からして“おまえそのまま闇に堕ちろ”って雰囲気出すなよ!
おまけに“静寂”とかフラグじゃん!
しかも前回これを発動した瞬間、ミリーが
「じゅんくん、やっちゃうの!?えへへぇ♡」
って満面の笑顔でハグしてきた……
やらねーよ!!
ポ イ !
「──というわけで、選抜完了っと」
……いや、完了したけどさ……
「なんだこのラインナップ」
見事に、**“扱いづらいスキルゴミ箱”**みたいになった。
一応、慎重に選んだはずなんだ。
だけど並べてみると、
**“何かの役に立つ可能性より、事故る可能性の方が高い連中”**ばっかじゃねぇか。
「やっぱ……もうちょっと絞るべきかな……」
例えば“自動反応無効”とかも正直……入れたい。
これがあれば、たぶんノアの甘やかし攻撃にも耐性つく。
たぶんユズハの無言で上目遣いしてくるやつにも……ギリ耐えられる。
「……けどなぁ」
──“パッシブで悪意誘導”って文字を想像した瞬間。
( リアの説教が24時間止まらない未来 )
( ノアが全社員に『潤様の周囲1m進入禁止令』出す未来 )
( カエデが「なぁ潤くん、ウチ以外の女全員シメたら安心するやろ?」と笑顔で言ってくる未来 )
( ミリーが“悪意感知センサー”を開発して暴走する未来 )
「やっぱ……変え──」
その瞬間──
『じゅんくんー! 面会謝絶解除おめでとーっ!!』
──ズドォォンッ!!!
ミリーロケットが音速で突撃してきた。
ドア? 開けてない。壁ごと入ってきた。
病院の構造すら破壊する情熱に、むしろ感謝の言葉が欲しい。
「いって~~~わ!!」
胸元に直撃した衝撃で、肺が潰れるかと思った。
てか今、肋骨が“3ミリだけ友情で耐えた”って音したぞ!?
『えへへっ♪ だってね!? 今日解除されるから! 朝からずーっと、エレベーターの影でスタンバってたのーっ!』
怖い!純粋に怖い!!
てか病院の構造すら読まれてるの俺!?
あとなぜ影にいたの!?
「と、とりあえず!今スキル合成が……!」
俺は慌てて、開いたままだったスキルウインドウを閉じようと──
──した、その瞬間。
【確定】
【合成中……】
「……え?」
【合成中】
【合成中】
【合成中】
「ぬぅぅぅぅぅぅぅえええええええええええーーーーッッ!!!!???」
──まさか、ミリーロケットの衝撃で──!
いや、まさかそんな──まさか!!?
でもこの手の画面、「Yes」押しちゃったら止まらないやつじゃん!!?
しかもミリー、さっき全力で突っ込んできたとき──
肘で俺の腕、画面ごと押してたよね!?
「え、え、え、俺……ちゃんと選んだか……?」
いや違う、今まさに考え直そうとしてたんだ!!
事故った!!完全に事故った!!!!
「おおおおい!!“合成中”ってなんだよ!?なんで今このタイミングなんだよおおおお!!!」
【関連スキル一致率:68%】
【生成スキル候補抽出中……】
【パッシブユニークスキル:近日解放予定】
──なにその“近日”。
“近日”ってなんだよ。怖いわ逆に。お知らせかよ。
しかも関連一致率って何だよ!?
32%一致してない要素が混じってるってことだろ!?
それって……
──超事故の予感しかしないだろぉぉぉおおお!!!!
『じゅんくん? なんか顔色悪いよ? お薬いる? それともぎゅーで治す?』
「頼むから今だけは静かにしてくれミリー!!!」
スキルが──合成された。
それはもう──後戻りできない形で。
あとがき小話:潤、反撃の狼煙
潤『……なぁ、作者。さっきのお気に入り発言、撤回してくれ』
作者『え?どれ?「潤が潰れてる顔が大好き♡」ってやつ?』
潤『ああ、それ。それな。あれ犯罪だぞ?普通に。』
作者『うわ〜、潤が本気で怒ってる〜。めっちゃレア回だ〜〜〜(パシャパシャ)』
潤『……わかった、覚悟しろ。今日だけは俺もスキル使うからな。』
──【スキルウインドウ展開】──
【奪取対象:作者】
悪事:登場キャラの尊厳爆破・主人公の精神消耗・ストーリー構造の放棄
スキル:脚本操作(Lv999)/展開強制(Lv404)/笑いの神格化(Lv∞)
【才能をランダムに奪いますか?】
→ イエス!
──取得スキル:【脚本操作(Lv999)】
潤『よし……これで俺が“脚本の主導権”を握った!次はこっちのターンだ!!』
作者『ちょっ、待って!?そのスキルは本当にマズいって!!世界バグるって!?!?』
潤『じゃあまず、ユズハが真面目な秘書キャラになります』
ユズハ『ふえっ!?……せ、先輩、本日の議事録はご確認済みでしょうか……?(震)』
潤『リアは壊滅的方向音痴に。カエデは人見知り発症。ミリーは感情ゼロモード。ノアは……甘えキャラだ』
リア『ここ……どこですか……?えっ?リビングじゃないんですか?』
カエデ『……え、えっと、潤くん……その……なんか……その、ね?(視線ウロウロ)』
ミリー『……潤くん。こんにちは。ハロー。バイバイ。』
ノア『潤さまぁ~♡もっとぎゅってしてほしいなぁ♡えへへぇ〜♡』
潤『──これが、“やられる側の気持ち”だ。わかったか、作者。』
作者『うわあああああああああ!?!?!?!?!違う、こんなの私のヒロインズじゃなぁぁぁぁぁい!!』
潤『俺はな、別に優遇されたいわけじゃない。ただ……お前に壊されすぎたんだよ!』
作者『ぎゃああああああああ潤が主人公してるぅぅぅ!?!?!?構造崩壊ぃぃぃ!!』
──その後、作者は正座させられた状態で
「二度と潤を理不尽に爆破しないこと」
「お気に入りを聞かれたらちゃんと答えること」
という反省文を書かされるハメになった。
ただし──
作者『……でも潤が暴走してる姿も、やっぱり面白いんだよなぁ♡』
潤『………………はぁ。(スキル、封印)』
──やっぱり潤は不憫だった。