第166話『俺、入院生活』
作者『今日は1話書きました……が、2話目が詰まっててハゲそうです』
潤『なにその報告。もはや病状やん』
作者『脳がバグってて、さっきから「登場人物全員クローンなら楽じゃね?」とか言い出しててヤバい』
潤『バッドエンド一直線かよ!てかもう書くなその案!』
作者『全体の構成まだ固まってないのに書き始める→後半で自爆……このループ何回目なんでしょうね……』
潤『お前それ毎回やってるけど、ガチで“脳内にラスボス住んでる”からな!?』
作者『ちなみに書いた文字は50万。消した文字は……倍ある説。』
潤『俺の努力、全部地中に埋められてるってこと!?掘り起こしてくれよ!マジで!』
作者『はぁ……誰かネタくれ……神よ……ヒロインよ……ミリーよ……』
潤『いきなり娘を頼るな!あと神も今、別の作者に付き添ってるわ!』
「あなたねぇ!? 死にたいの!?」
病室中に響き渡る怒号──医者の怒りである。
俺はベッドの上で、ヒロインズ6人に囲まれながら、完全に板挟み状態だった。
「昨日、出血性ショックで緊急搬送されたばかりなんだよ!?」
「なのに今朝──廊下で組体操してたってどういうこと!?」
「違うんですっ!潤様が『ちょっとストレッチを』と仰ったので……!」
「で、ミリーが嬉しくなって上に乗ってみたら──」
「ご主人がぎゅーってされるの好きやからなぁ~って、ウチが更に──」
「ユズハが『潤先輩が潰れてるの超ウケる~♡』って笑いながら動画撮ってたぞ」
「…………私じゃありません」
……あの時点で俺、すでにベッドと壁の隙間でミルフィーユ状態だったんだけどな?
ていうか──“潰れてるのがウケる”って、どんな看病だよ!
「あなた達は……っ!! 一体……っ、どんな関係なの!!?」
医者の叫びに──
「彼女でーす♡」
「婚約者です」
「保護者であり、恋人です」
「社の責任者やから、健康管理義務ありやねん」
「ちょっと世話焼いてるだけだよ?」
「……観察対象です」
一糸乱れぬ地獄の即答6連打──!!!
「6人も……!?」
「もはや医療より深刻な問題じゃないか……!!」
医者が震える手でカルテを抱えながら、絶望したように呻いた。
いや、俺もだよ!?
一番震えたいのは俺なんだよ!?!? 人間関係の圧に物理的に押し潰されてるんだよ!??
「全く君は……一体何者なんだい……?」
小刻みに頭を振る医者の視線が、病室全体をさまよい──最後に俺へと注がれる。
そして、名もなき医師は静かに告げた。
「──当分、面会は断らせてもらうよ」
(……うん、あのさ)
(俺、今たぶん“世の中で一番幸せな強制隔離患者”だと思うんだけど)
(誰か俺の意思も尊重してくれませんか……!?)
というわけでヒロインズは全員、強制退去処分──
病院側の判断は**「回復に支障をきたす環境」**だった。
いや、ほんとそれな……俺も薄々気づいてたよ……
そして、俺はようやく──
久しぶりに……久しぶりにだよ……?
静かな入院生活を送る……
──はずだった。
「問診のお時間でぇ〜す♡」
病室のドアが開いた瞬間、
やたら軽快なイントネーションが空気を切り裂いた。
白衣……じゃない。
ナース服姿の、謎の茶髪小悪魔が登場。
「んーこれはユズハちゃんに会えない、恋煩い?ですねぇ〜♡」
「…………お前、何やってんの?」
「ふっふっふ〜♡ ユズハちゃんは今から先輩の──
専・属・ナーース☆として、
つきっきりで!看病をしちゃいまーす!」
「いや、勝手に制度つくんな」
「どうですか〜? この白衣姿♡ ドキッとしちゃいましたぁ?」
ユズハが、スカートの裾をひらりと揺らしてウインク。
なお、背景には音楽とキラキラエフェクトが無許可で流れている。
「……うん、帰れ」
「えっ!? えぇ〜!? せんぱーいひど〜い!
ユズハちゃん、心配で心配で……昨日は寝れなかったのにぃ♡」
「お前昨日、焼肉行ってただろ」
「うっ……!?」
(※SNSにアップしてた焼肉写真、全公開済)
そのとき──
ガラッ
ドアの向こうに立っていたのは──
鬼の形相の看護主任(筋トレ趣味・身長180)
「…………あなた、面会謝絶ですよね?」
「………………あはは☆ ユズハちゃん、ちょっと用事思い出したかも〜♡」
ユズハ、即Uターンしようとするが遅い。
襟を鷲掴みにされ、ズルズルと音を立てて廊下に消えていった。
「先輩ぃぃいいい!?
ユズハちゃんの愛がぁあああ!!!」
──廊下に響く悲鳴を背に、俺は深く溜息をついた。
静かな入院生活(開始5分)──終了。
まぁいい、気を取りなおして──
とりあえずテレビでもつけて、静かに療養しよう。
ピッ。
画面に映ったのは、深夜の情報番組の再放送。
健康食品の特集で、やたらテンション高い司会者が喋っている。
『いや〜マヨネーズって、なんにでも合うんですよ! ご飯にかけても最高!』
『うわ、出た……万能マヨネーズ教信者……』
思わず口に出してツッコミを入れてしまう。
完全に……ヒロインズとの生活のせいだ。
ひとりでも黙ってテレビを見られない体になってる……!
『個人的には、お味噌汁にマヨネーズ!』
『だからなんで汁物にまでマヨネーズをぶっこもうとすんだよ!! 味噌に謝れ味噌に!』
『……少し疑問ですね』
『えぇ……マヨネーズだけというのは脂質が過多ですね。栄養バランス的にも推奨されるものではありません』
「…………え?」
不意に聞こえてきた、妙に冷静な分析ボイス。
って、あれ? 今テレビにそんなナレーターいたっけ?
いや、違う。
この無機質な知性──聞き覚えがありすぎる。
「おいリア、お前……いつからそこに?」
ベッドの横、点滴スタンドの影から、リアがすっと姿を現した。
「……愚問ですね」
「……いやいやいや、愚問じゃねぇよ!? そもそも入ってくんなよ! 面会謝絶だぞ!?」
「ええ、承知しています」
「開き直った!? あっさりすぎない!?」
「ですが、あなた一人でいるのは危険です。何より──他の人が邪魔をしに来る可能性も高い」
「いや、お前が一番その“他の人”なんだが!?」
「……潤」
「ん?」
リアが一瞬だけ視線を伏せ、わずかに声を落とす。
「……私は、いや……ですか?」
(な、なんでそこでヒロイン力を発動してくるんだよ……!)
(タイミングがずるい! ってか、何そのちょっと拗ねた感じ!!)
「いや、まぁ……その……嫌じゃないけど──」
『潤様ァァァァァァァァ!!!!』
耳を劈くほどの声と共に、ベッドの下から勢いよく飛び出してくる影!
「の、ノアァァァァァ!?!? お前どっから現れた!? ってかいつからいた!?!?」
「最初からです! リアが入ってきた時点で、私は既にベッド下にて潜伏しておりました……!」
「お、お前は何の訓練受けてんだよ!? スパイかよ!?」
「潤様が、もし他の女性に気を許しそうになったらと思うと……いてもたってもいられず!」
「……で、どうする気なんだよ……」
「当然、添い寝を!」
「聞いたことないわそんな看病スタイル!? ここ病院だよ!? 公的施設だよ!?」
「心と体、両方のケアが必要かと……!」
「潤様はいや……ではないのですか?」
またしても、上目遣いで詰めてくるノア!
「うっ……いや、そういう問題じゃ……!」
「では、私と──一緒に……」
「ちょ、ちょっと待て!」
リアが一歩前へ出る。
「ここは、回復のための場です。添い寝は……非効率的です」
「では、リアもお引き取りを。ここは潤様と私だけの空間ですので」
「違います。あなたが退室すれば、より回復効率が上がります」
「……挑みますか?」
「……受けて立ちます」
「潤様を、私のものに……!」
「落ち着け!! 二人とも戦場を間違えるな!! ここ病院だからな!?!?」
──そのとき。
「あなたたち、何してるの!!!???」
病室の扉がバーンッと開かれた。
現れたのは──怒りの形相を浮かべた、看護主任。
肩で風を切る勢いでズカズカと歩み寄り、リアとノアの襟を
からわしづかみにして──
「外で待機って言いましたよねぇぇぇえええ!!!!!」
「い、痛っ……」
「潤様のそばに……!」
ずるずると引きずられていく二人。
廊下にまで響く悲鳴と、「離してっ……潤様ァァァァァァ!!」の声が、残響のように消えていった。
(……マジでなんなんだこの入院生活)
(安らぎとは……)
俺は、ふぅ、と深いため息をついた。
【あとがき小話】
潤『なあ、俺の《スキルリンク》さ──
リンクスキルにユズハだけいないの、何で?』
作者『えっ!?いや、それ本編で聞いて!?ここあとがき!雑談タイム!!』
潤『いやもうさすがに我慢できんて。
ユズハ加入してから……もう100話は経ってるよな?』
作者『あー……うん……それは……』
潤『……“実は”?』
作者『……“実は”。』
(しん……と静まりかけたその時──)
ユズハ『あっ、もしかしてそれ、私の“スキルが迷子”になってるパターンですかぁ?♡』
潤『お前どこから出てきた!?あとスキルが迷子って何!?』
ユズハ『えへへ〜♡ だって私ってほら、雰囲気とフィーリングで生きてる系じゃないですかぁ?』
潤『知らんわ!スキルも帰ってこい!!てかお前だけリンクしてないって地味に傷つくんだけど!?』
ユズハ『じゃあ今ここでリンクしますぅ? “先輩の♡膝枕依存症”とかぁ〜?』
潤『誰が使えるかそんなスキル!!』
作者『(……ちなみに“演出の都合”ってメタ事情です)』