第161話『俺、病室』
作者『今日はエーペックスをやりました。
……ランクは、全然上がりませんでした。』
潤『本当に日記やるのかよ』
作者『えーーえーえーやりますとも!
コメント5件来るまで続けますとも!!』
潤『目標ひっく!?志望動機みたいなノリ!?』
作者『……で、でも……今の宣言、逆に“誰もコメントしなくなる”パターンじゃないよね!?』
潤『自分で死亡フラグ立てにいくのやめろ』
──目が覚めた。
薄暗い天井。微かに漂う消毒液の匂い。静寂。鈍い痛み。
そして、硬めのベッドの感触と、ゆっくりと脈打つ胸の内側──
(……あれ?)
静かに視線を横に向けると──
そこには、金色のモヒカン頭があった。
「……モヒカン……?」
隣のベッドに寝ているその男は、どう見ても“悪役No.3”みたいな見た目なのに、安らかな寝顔だった。
(ああ……うちの社員だった……)
さらにその奥には──
小太りでハゲ気味のおっさんが寝ていた。
(……誰?)
──いや、よく見たらポイズンフェアリーだ。
顔が腫れてて一瞬わからなかったけど。
(ってか何この病室!?カオスか!?)
(なんで“俺+元暗殺者+社員”っていう構図なの!?)
俺はゆっくりと身を起こそうとして──
「っ……!」
ビリッと腹に痛みが走る。
下を見ると、腹にグルグル巻きの包帯。
腕にも、胸にも、何箇所かしっかりとした処置がされていた。
(……そうだ)
あのとき──
あの“黒コートの怪物”と戦って。
俺は……暗殺術を手に入れて──
(……でも、その後……)
意識が途切れた。
それ以降の記憶がない。
(……みんなは?)
(リアは?ノアは?カエデやミリーたちは……?)
ぼんやりとした不安が、胸の奥に浮かび上がる。
全身が重い。瞼も、心も、どこか鈍くて。
そのとき──
「潤さん!!」
──病室のドアが勢いよく開いた。
風圧と共に飛び込んできたのは──エンリだった。
白衣の上からエプロンを着たような姿で、手には温めたおかゆのトレイ。
「潤さん……! 本当に、良かった……!」
目を潤ませながら駆け寄ってくる。
彼女の表情には、安堵と──ほんの少しだけ、怒りが混じっていた。
「どうして……一人で突っ込んだりしたんですか……」
「いや俺もあんなになるとは思ってなかったというか……」
──と言い訳を口にするよりも早く、
「でも……無事でよかったです、本当に」
エンリはそっと俺の手を握りしめた。
柔らかくて、あったかくて、包み込むようで──
──そして、ドアがもう一度、全力で開かれた。
「じゅんくーん!!」
ミリーだった。
今度はバンっと飛び込んできて、まるで弾丸のように俺に抱きつく──
「ちょ!? いった!! お腹!! お腹にミリーーーーッ!!」
「えええっ!? ごめんっ!? えっ!? 死ぬ!? じゅんくん死ぬの!?」
「今のでまた病院送りになるのは嫌だぁぁぁぁぁ!!」
(すでに病院にいるわボケェ!!)
──さらに、またしてもドアが音を立てて開く。
「潤様、お加減はいかがですか?」
ノアだ。
すでに病室の椅子を独占しているポーズで、なぜかティーカップを傾けていた。
「潤様が目覚めた瞬間から──私はここにいました」
「いや、今入ってきたの見たよね?リア、録画してたよね今の」
「……ええ。入り口のモーションセンサーが反応した記録、残っています」
リアも来た。パッド片手に淡々と入室。
俺の病室、完全にフリーパス状態なの!?
──そして。
「ごっめーん♪遅れちゃったぁ〜」
最後に現れたのは──カエデ。
病室のドアを片足で器用に開けつつ、両手いっぱいに差し入れを抱えて入ってくる。
「潤くんの好きそうなもん、めっちゃ買ってきたで? プリンとゼリーと、あとカレーと牛丼と──」
「多いわ! セレクトの振れ幅もでかすぎだろ!!」
気づけば、病室は満員。
いや、もう定員オーバーで消防法に違反してるレベルだ。
でも──
どこか、安心した。
それぞれがそれぞれの形で心配してくれて、こうして集まってくれて。
身体はまだ痛むけど──
心だけは、妙に軽かった。
──と思ったのも束の間。
「では、誰が一番潤様のそばにいたか、順番を明確にしましょう」
ノアが不穏な空気を放ち始め、
「うちは昨日の夜から病院の前に車泊してたで?」
カエデが火に油を注ぎ、
「ミリーはずっと病室の前でねてたのー!」
「潤さん、私が包帯替えしてたんですからね?」
「私はモニタリングと監視カメラの解析を──」
「──ああもう!!やめろ!!病人の前でバトるな!!」
病室は一気に修羅場モードへと突入した。
──静かな目覚めなど、どこにもなかった。
あとがき小話:外部戦力、猫耳にゃんモード突入
潤『……で、なんで俺の原稿に、猫耳つけた3人が追加で出てくんの?』
久松先輩『いや〜噂っすよ?“猫耳つけたらランキング伸びる”って。
てことで、潤くんもやっぱり男の子っすよね〜にゃん♡』
潤『やめろおおおおおお!?その“すね〜にゃん”って語尾、性癖に突き刺さる音してるんだけど!!』
ツバキ『くだらない……実にくだらないわ……。
猫耳だの、媚びだの、こんな低俗な文化……品性を疑うにゃん』
潤『なんでお前がノリノリで装着してるんだよ!?“猫耳すら引き立てる”じゃないのよ!!』
ツバキ『当然よ。私レベルなら、装飾すら格上げするにゃん』
潤『何その“逆・猫耳補正”……!お前の自己評価どこまでインフレしてんだよ!!』
──すると、後ろからひょっこり現れたのは──
サイレントアサシン『ふぇぇ……なんで猫耳にゃん……。
ステルスミッション中なのに、耳がピコピコ動くにゃん……』
潤『いや一番かわいそうなの来たーーーーー!!!』
潤『っていうかお前、暗殺ターゲットの家に“ふぇぇぇ”って泣きながら侵入してんの!?』
サイレントアサシン『ご主人様に言われたにゃん……「猫耳装備しないと反応率下がる」って……』
潤『誰だその命令したやつ!!出てこいよ!!──アイツだな!?(原作者)』
【潤の心の叫び】
「猫耳の影に、地獄あり。」