第141話『俺、ネットで殺害予告される』
エンリ推しのコメントいただきましたぁーーーー!!!
ありがとう……ありがとう読たん……
その一言だけで、三年はコメントだけでご飯食べて生きていける気がしてきました。
(※実際には栄養が足りないのでエンリに管理されます)
作者、今──
光に包まれながら、くるくる回ってます。
「これは幻覚ではありません。愛です」
……というわけで、そんな魂のぷるぷるを受けて執筆した今回のお話!
今日もヒロインズが暴れます!潤が振り回されます!
そして……世界がちょっとだけ、エンリの管理下に近づきます。
ぜひ最後まで、楽しんでくださいね!
──朝。
いつものようにコーヒー片手に、業務メールの未読数と無言でにらみ合っていた俺のもとに、足音が駆け寄ってくる。
「潤さん!大変です!」
声の主はエンリ。
その表情は珍しく──焦っていた。
「……どうせまたミリーがはしゃぎ回って社内で踊り出したとか、カエデが“やっぱ唐揚げは揚げたてや!”とか言って給湯室で油温めてるとか、ユズハがポスター貼りすぎて壁面全部顔になってるとかだろ? もう慣れたよ、俺の日常カオスには」
「違うんです。今回はその……比になりません」
「え?」
エンリがスマホを取り出し、無言で俺に画面を向けてきた。
そこには、見慣れないアカウント名と──
『我が刃は、今宵お前を喰らう──』
ターゲット:悪徳リクルートエージェント社 社長・葉山潤
投稿者:@silent_assassin_777
ハッシュタグ:#今夜行くぞ #五影始動 #おまえを殺す
「…………………………え?」
画面を凝視したまま、脳内で全力で現実逃避する俺。
文字は読める。意味も理解できる。
でも繋がらない。暗殺と、SNSが。
「ちょっと待って……え? 暗殺者って……アカウント持ってんの!? え? 宣伝スタイルなの!? なにこの“殺しのブランディング”?!」
「ええ……表には出ませんが、裏社会では“死の宣告アカウント”として一部で恐れられています」
「いやいやいやいやいやいや! ふつうに違法! 通報されろよ!!」
「……サイレントアサシン。成功率100%。誰もその姿を見た者はいない。……ですが、殺す前に予告するのが“流儀”だそうです」
「おかしいでしょ!? 気配消してるくせにバズりたいの!? どっちなの!?」
「つまり、これは“決定事項”です。既に動いています」
「やだやだやだやだ!! 嫌だってエンリ!助けて!? これもう嫌なフラグしか立ってない!!」
「ご安心を。皆で対策を講じますので……ひとまず会社から出ないでください」
「うわあああああぁぁぁぁぁ!!!」
──こうして、俺の“いつものカオス”は、
またしても新たな地平へとぶっ壊された。
──その後、俺の部屋にはヒロイン全員が集合し、
いつもより真面目……な雰囲気で作戦会議が始まった。
いや、始まるはずだった──
「では現状の分析を行います」
最初に口を開いたのはリア。タブレット片手に淡々と話し出す。
「ターゲットは明確です。暗殺チーム『五影』の一員である《サイレントアサシン》。
彼は気配、存在感、視線認識、物音、衣擦れ──全てを消し去る才能を有しており……」
「要するに……良い意味でも悪い意味でも“空気”ってことか」
「はい。あまりに気づかれなさすぎて、本人のSNSアカウントすら一度も通報されたことがありません」
「怖ッ!? ってかあいつ、実はめちゃくちゃ良いやつなんじゃねぇのか!?」
「よって、彼に対する直接的な対策は──非常に困難です……」
リアが言葉を切った瞬間、部屋の空気がズシリと重くなる。
が──その空気を一発で台無しにするやつがいた。
「そんなんあかんわー!ウチら見えん敵とか一番苦手やで!?
見えんってことは、殴るとこすら無いんやろ!?それただのストレス発生装置やんか!」
カエデが机をばんばん叩きながら半ギレ。
「じゅんくんがずっとミリーにぎゅーされてれば、敵なんか近づけないもん!」
「それ〜♪うちの胸ん中に隠れとったらいいやん!」
「カエデ!ミリー!落ち着いてください……!そこは私の隣、私の定位置です」
「また出たよノアの“潤様シート争奪戦”……!」
「あのさぁ! 誰か言ってくんない!?」
「俺、今、“命”狙われてるからね!?!?
なのにみんなで“潤様どこに座るか会議”してるの何なんだよ!?」
──心の叫びが抑えられなくなって、思わずこぼれた。
「俺……まだ……童貞なのに……」
「えっ!? 潤……!?!?」
「先輩!?!?」
「じゅんくん!?」
その場が一瞬で静まり返る。
「え、なに? そんなに意外だった? それとも想定通りすぎて逆に悲しいの!?」
──ま、まぁ気を取り直して──
「先輩、だったらですね♪ カメラで監視しとけばいいんじゃないですか〜?
ほら、“真上からなら気配消しててもワンチャン映る”みたいな?」
ユズハが笑顔で謎理論を展開してくる。
「……それは対策にはなり得ません」
即座にリアが打ち捨てるように否定した。
「過去のデータによると、同じ発想をした依頼人がいましたが──
映像には誰も映っておらず、次のフレームでは既に絶命していたそうです」
「怖ッ!!!」
「え、リア……今それ普通に言った!? 感情どこに置いてきたの!?」
「そんなん言われても……どないせーっちゅうねん……」
「ほんとそれな……」
──対策もままならず、全員の顔が曇っていく。
俺は思わずウインドウを開いて、所持スキルとステータスを確認した。
この中に、何かヒントがあるかもしれない……!
──その時だった。
ふと、表示欄の下に、見慣れない名前が浮かび上がった。
【奪取対象:影我薄イヨ】
悪事:不法侵入(※目撃していないため条件未達)
スキル:気配遮断(Lv7)/存在感抹消(Lv5)/音無殺(Lv4)/認知阻害(Lv6)/自動反応無効(Lv2)/自己影踏み(Lv1)/影殺一閃(Lv5)
【才能奪取】:発動できません ※悪意ある行動を目撃していないため、奪取条件を満たしていません。
「…………誰だよ」
「今の、誰だよ!?!?!?」
──確かに部屋には6人しかいない。
誰も入ってきた気配はなかった。
扉も、窓も──閉じたまま。
でも表示されてる。**“今ここにいる”**って。
──怖えええええええええ!!!
なにこれ!?
なにこの状況!?!?
誰か居るんだけど!?!?!?
いや“居る”じゃねえ、“居た”んだよさっきからずっと!!
俺んちの椅子に!俺んちの空間に!勝手に存在してたんだよ!!!
「……気づいたってことは、つまり“目が合った”ことになる……?」
(ってことは、俺、今……ターゲットロックオンされた!?)
ヤバい。
リアクションしたら殺されそう……!
動いたら終わる。喋ったら刺される。心臓動かしただけで察知されそう。
──クルッ。
……いや、おい。
クルクルクルッ……。
「なんで……お前、ペン回ししてんだよ!!!!」
見えねぇけど分かる!!
指の間でシャッ!シャッ!って音してんの!!
ペンの軌道だけ、空中でチラッチラ光反射してんの!!
しかもやたらうまい!!!
人の部屋で黙ってペン回しするな!!!
くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!
声は飲み込んだ。
全力で叫んだ心の中で。
もうツッコむ余裕もねぇよ……命かかってんだぞこっちは!!!
──でも。
ヒロインたちは、俺の周囲で「潤様の椅子は私が!」だの「カメラ設置しよ〜♡」だの、まるで何も感じていない。
そりゃそうだ、存在感ゼロ。感知不可。
今この瞬間も、みんなのすぐ近くに“殺し屋”が座ってるのに、誰も気づいてない。
──だからこそ。
(巻き込む訳には……いかねぇ)
どんなに不安でも。どんなに無理ゲーでも。
ここでヘタレて叫んで、ヒロインたちに危険が及ぶなんて、それだけは絶対にイヤだ。
──目の前に奪える才能が並んでるのに、取れない地獄。
──静寂の中でペンだけクルクル回ってる地獄。
「……俺は、自分の力でなんとかする」
気配が消えた空間に、そう決意だけがふつふつと燃え上がった。
【あとがき小話:ぷるぷるの真実と、光る作者】
──静寂のあとがき空間に、突如異変が起きた。
ビィィィィィィィィン!!!
作者『\✨✨✨あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!✨✨✨/』
潤『っうおあぁぁぁ!?!?!?』
──作者が全身から光を放ちながら、高速回転しながら登場した。
その姿は──
もう“キモい”とか、そういう次元じゃない。
リア『……この回転速度、音速を超えてますね。あと、見てはいけないものが見えてしまいました。』
カエデ『あかんてこれ、視界に入れるだけで胃がやられるやつや……』
ミリー『ちょっ、みんな見ちゃダメ!目がぁ!目があああぁぁぁぁぁ!』
ユズハ『グラサン!グラサン装備ォォ!!』
ノア『……潤様、こちらを。』スッ(サングラス)
潤『まっ、眩しい……!やばい、俺の中の何かが浄化されて……溶けるっ!!』
──ヒロインズ全員がサングラスを装着したその時、作者は叫んだ。
作者『読たんからッ!!“エンリちゃん推し”コメント来ましたァァァァァァァァァァ!!!(大爆発)』
潤『死ぬほど喜んでるぅぅぅぅぅ!!てかもう質量失ってるぅぅぅぅ!!!』
作者『エンリだよ!?あのエンリだよ!?神なの!?読たん神なの!?もはや宇宙の収束点なの!?!?』
──そんな狂喜乱舞を見て、エンリがそっと一歩前へ出る。
エンリ『ふふ……コメント、本当に嬉しいです。私を見つけてくれて……ありがとう、読たん』
エンリ『ですから、これからは──』
エンリ『あなたの生活、健康、思考、すべて……私が“完全に管理”しますね?』
ヒロインズ『……』
潤『……』
リア『……出ましたね、“完全管理”発言。』
カエデ『終わったな。読たんの自由、今ので消えたな。』
ノア『これは由々しき事態です。潤様の管理権限まで危険です。』
ユズハ『えぇ〜〜!?完全ってことは“恋愛対象の思考”も管理しちゃうってことじゃないですかぁ〜?♡』
ミリー『じゅ、じゅんくんが管理されたら……ミリーも管理されちゃう!?えぇぇ〜〜!?』
潤『待って、エンリの管理って“家電より正確”とか言われてたやつじゃなかった!?逃げろ読たん!それマジで世界が変わるからァァァ!!』
──読たん、震える。
いや、もうぷるぷるどころではない。
ガタガタ。バタバタ。ゴロゴロ。
作者『さあ、エンリ管理生活へようこそ……!!』
潤『こえぇよ!!!あの発光回転体が勧誘してくるってだけで怖さ倍増だよ!!』
──こうして、“応援コメント”から世界は一歩、狂気へと進んだ。




