第134話『俺、下心ないしぃい』
いつも読んでくださって本当にありがとうございます!
なろうではコメント欄がちょっと静かめですが、
感想じゃなくても「日常のこと」「アニメの話」「つぶやき」など、
どんな話題でも気軽にコメントしてもらえたら嬉しいです。
いただいたコメントには、ヒロインズや潤が反応することもあります(笑)
一緒に作品の外でも、ちょっとした会話を楽しめたら嬉しいです!
次に向かったのは──エンリのオフィス。
この社内で唯一、入った瞬間に“良い香り”がして、空気が柔らかくなる場所。
まさに、母性の権化。
「潤さん?」
扉を開けた俺に、微笑みと共に呼びかけるその声が──
いつもよりワントーン低くて、包み込むように甘くて、
……え、今の……香水効果か!?
「お、おう。ちょっとその……様子を見に、来ただけで……」
「まぁ……潤さんが自ら様子を見に……嬉しいです」
そう言って、ゆっくり歩いてくる。
歩幅、姿勢、視線──すべてが整いすぎてて、逆に怖い。
その笑顔すら、“穏やかすぎて逃げ道がない”。
「最近、眠れていますか? 食欲は? ストレスは?」
「え? いやまぁ、普通というか……」
「嘘をつくのが下手ですね、潤さんは」
そう言って、エンリは自然に俺の隣に立ち、肩に手を添えてきた。
「……少し、力を抜いてください」
優しい指先が、肩をぽんぽんと叩いてくる。
ポン、ポン。
ぽん、ぽんぽん……。
(やばい。これ、やばい)
脳が溶ける。
「潤さん、今日は……ずっと、少しだけ顔が赤いですね?」
「いや、そ、それは──」
「ふふっ……かわいい反応」
かわいい!?!?!?
そのまま、頭をなでてくる。
ふわ……ふわ……ふぁっ……
脳内にオルゴールと風鈴とミルクティーと猫の動画が流れ始める。
(香水効いてる!効いてるぞこれ!!!)
──いや、違う。
(エンリが強すぎるだけだ!これは香水の効果じゃねぇ!!)
「……潤さん?」
「な、なんですか……?」
「もし……今、“誰かに抱きしめてほしい”と思ったら、遠慮しないでくださいね」
ハイ思いましたぁぁぁぁぁああああああ!!!!
でも言えねぇぇぇぇぇえええええ!!!!
「私は、いつでも潤さんの味方ですから」
──優しさ100%のスマイルで見つめられると、
もう俺は疑うことすら失礼な気がしてくる。
……香水の効果なんて……本当はないんじゃ……?
「じゃあ……あの、そろそろ行きますね……!業務ありますし!」
「ふふ、潤さん。逃げなくても大丈夫ですよ?」
ぎゃぁぁぁぁぁああああああ!!!!(※理性崩壊)
もうダメだ。
頭撫でられて
肩ぽんぽんされて
「逃げなくていい」とか言われて
それでも香水のせいにしてる自分が一番ダメだ。
俺、この戦場に、甘やかされに来てしまったのかもしれない……
後ろからそっと「頑張ってくださいね」と微笑みの声が追いかけてくるなか、
俺はフラフラと逃げるように部屋を出た。
エンリの優しさが、
一番、えぐってきた。
次に向かったのは──警備部署。
カエデが取り仕切る、“うちの社の常識と理性の最前線(※本人以外)”である。
(エンリの時点で、正直もうメンタル瀕死なんだけど……)
扉を開けると、そこにはいつも通りの光景が広がっていた。
部下たちが筋トレしてる。
片手で腹筋しながら警備報告書を書いてる社員がいる。
その奥、カエデは机に座って──
いや、座ってるんだけど、もうこっちに気づいて飛んできてる!?
「潤く〜ん♡ 来た来た〜♡」
駆け寄ってくるその勢い、既にアタックモーション。
そしてそのまま、ノールック腕絡ませ炸裂。
「ふふ〜ん♪ 今日もウチの潤くんはイケてるやんな〜♪」
「い、いやちょっ……なに!?なんの用!?!?」
「え〜?別に?ただただ“甘えたい気分”ってだけ♡」
(ほらああああああああああ!!効果出てるじゃんこれ絶対フェロモンのせいじゃん!!)
「なんか今日の潤くん、あったかいわぁ〜♡ ほらほら、もっとくっつこ♡」
ピタッ……というか、グイィッ。
密着面積、増加中。体感比140%。
(やべぇ……!これは……やべぇ!)
いや、待て……カエデって、もともとこうだったよな……?
もともと距離感おかしいし、腕は絡めてくるし、俺の膝にも乗ってくるし、寝てるところにダイブしてくるし──
これ、日常だよな?いつものカエデだよな!?!?
「どしたん潤くん?顔まっかやで〜♡……もしかして、惚れ直した?ふふっ♡」
ほぉぉぉぉぉおれなおしてねぇぇぇぇええええ!!!
「ウチのこと、やっぱ意識しちゃうんやろ〜?ちょっとええ匂いする気もするやろ?♡」
(うわ、なんか言われた……“匂い”って言われた!!!)
「でも潤くんからも、なんかええ匂いするわぁ……これって……もしかして……」
(あかんあかんあかん!核心くるぞ!?!?香水バレる!?!?)
「……シャンプー変えた?」
「違うゥゥゥゥゥゥゥウウウウ!!!!!!」
誤認で助かったけど!
逆に助かってねぇぇぇぇぇぇ!!!
「なぁなぁ、ウチと一緒にお昼たべよ?ウチの弁当、ちょっとだけ……潤くん用に甘くしといたんやで?」
(ぬおおおおおおおおぉぉぉ!?!?俺、惚れてまうやろ展開入ってない!?!?)
「……っいや、今日はちょっと、社内の巡回が……!!」
「え〜、ウチのこと置いてくん〜?……まぁ、また来てな?」
にこっと笑って、指をチョンと俺の胸に当ててくる。
(※この“チョン”が一番理性に効く)
──そうして俺は、
「いつも通りの密着」という名の拷問にメンタルを削られながら、カエデのもとを去った。
(……これも、香水のせい?
いや違う、たぶん違う。……けど!けどさ!!!)
俺の中で、“わからない”が限界突破していた。
「もう誰か、あからさまに変になってくれぇぇぇぇえええ!!」
──そんなことを願いながら向かう次のフロア。
──技術フロア。
ユズハとエンリとカエデで心拍数と羞恥心を爆上げされた俺は、
最後の希望としてリアのもとへ向かった。
(リアは……違う。あいつは冷静だ。空気に流されない。
つまりここは、絶対に“平穏なフロア”なはずだ)
入室。
……シンッ。
相変わらず無音の空間。
カチ、カチと機械の処理音が響く中、リアはノールックで作業を続けている。
「……潤。どうかしましたか?」
「あ、いや。ちょっと社内回っててな。見回りっていうか、その、視察?みたいな……」
(よし、普通の会話!テンションも低い!これぞリア!)
「視察にしては……表情が緩んでいるように見えますが」
(!?)
「何か、嬉しいことでも?」
「う、嬉しいとかじゃねぇよ!?別に!?ただのテンション維持だし!」
……しまった、余計な言い訳をした!!
リアは席を立ち、俺のほうへ歩いてくる。
歩幅も速度も、いつもと同じ。なのに、なぜか足音だけがやけに大きく感じる。
(これ……来るぞ……!)
「潤。今日は……少し、香りが違いますね」
(きっっったああああああああああ!!!でも落ち着け俺!!これは事故!!!偶然!!!)
「市販の製品にしては、やや人工的な構成。
もしかして……動物系の調香素材ですか?」
「え!?いや、そういう……たまたま、すれ違いざまに、ほら、こぼれて……」
「そうですか。たまたまですね。なら、問題ありません」
……おいリア、今の間はなんだ!?
なぁ!?今の“たまたまですね”に込められた含みは何だよ!!?
「それにしても……潤」
「な、なんだよ……」
「視線が泳いでます。“誰か”を探しているように」
うわぁぁぁあああああああ!!!してる!それ完全にしてる俺ぃぃぃぃ!!!
「今日、何か……“期待している”ことでも?」
(わあああああああああああああ!!!!!!)
「べっ、別に!?なにも!?期待なんてしてないし!?そんな……なぁ!?」
……いやちょっとはしてたけど!!!
というか、してたけど!?してないって言っても、してたんだよ!!!
「……ふふ」
リアが微かに笑う。
「潤。私の予想通りですね。今日は……あなた、非常に分かりやすいです」
(ぐはっ……ッ!!それってもう読まれてるのと一緒じゃねぇかぁ……!!)
「でも、何も起きていない。それが現実ですね?」
(言うな!!それを言うなぁぁぁぁぁあああ!!!)
──それだけ言って、リアはまた席に戻っていった。
そして最後、背を向けたままこう呟いた。
「……けれど、“起きるかもしれない”と思ってドキドキしているあなたを、少しだけ、面白く感じています」
(お前が……!お前が一番地味にエグいぃぃぃぃぃ!!!!!)
【あとがき小話】
作者『いいかぁ!? 読たんの今後の方針を決めた!』
潤『おい……またヤバいテンションのやつだこれ……』
作者『語尾は “にゃん”、見た目は “子うさぎ”!それが新しい読たん像だッ!!』
潤『キメラじゃねぇか!設定バグりすぎだろ!? AIの学習失敗例かよ!!』
作者『ほら、まずはこれを──スッ』
──手に握らされるのは、極限まで布面積を削った白バニー服。
読たん『ぴゃっ……!?』
作者『さぁ着ろ!そして語尾は “にゃん” だ!ここからが本番だぞ!?』
潤『……だから本番って何!?何の訓練が始まるんだよ!?』
作者『ユズハァァァ!!教育と洗脳だ!!』
ユズハ『はぁ〜い♡ じゃあ読たん?ちょっとこっち来てもらえますかぁ?“にゃん”って言って?にゃんって♡』
読たん『……にゃ、にゃん……』
ユズハ『声が小さい〜〜ですぅ♡ やる気ありますぅ〜?♡』
作者『ミリー!!ぴょんぴょんの特訓も頼む!!』
ミリー『はぁい♡ じゃあ〜読たん、バニー服着たままぴょんぴょんしてみよっかぁ♡』
読たん『……ぴょ、ぴょん……ぴょん……にゃん……』
潤『なにこれ……見てるこっちが心の防御力削られるんだけど……!?』
──そして訓練開始から3分後。
「……なるほど、状況は把握しました」
ぴたりと響く、冷静で落ち着いた声。
そこには両手を腰に当て、いつもの微笑みを浮かべるエンリの姿があった。
エンリ『作者さん?』
作者『へ、へへ……あの、これは読たんのポテンシャルを引き出そうと……』
エンリ『読たんをキメラ化させる必要が、どこにあるとお思いですか?』
作者『ち、違っ……これは創作の探求であってそのぉぉぉ──』
エンリ『ふふ、大丈夫ですよ。お話はきちんと“理性的”にいたしましょうね?』
──その日、作者の原稿PCから「Delete」キーだけが消えたという。




