第133話『俺、香水のせいにしすぎる』
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一緒に作品の外でも、ちょっとした会話を楽しめたら嬉しいです!
──昨日のこと。
「潤君も男の子っすよね〜?」
あの不吉な言葉がすべての始まりだった。
電柱社の資料室。俺は久松先輩に呼び出されて、まんまと罠にハマっていた。
「なんすか久松先輩、また変なモン見つけたんですか……?」
「変とか言わないでほしいっす〜。これ見てくださいよ〜」
と、取り出されたのは──緑色の液体が入った、怪しすぎる小瓶。
「絶対ヤバいモンでしょこれ!?あからさまに毒物感あるんですけど!」
「いやいや、これは他の動物のフェロモンを人工合成した──海外製の“魅惑香水”っすよ」
「なにその詐欺サイトの紹介文みたいな響き!?!?」
「試してみたらわかるっすよ。百聞は一見にしかずってやつっす」
そう言うが早いか──
「って、うわっ!?ちょっ……シュッ」
「うげほっ……!何これ!喉にくる!喉が焼ける!!」
「いや〜効いてる証拠っすねぇ〜。これつけて社内歩いたら、ワンチャンあるかもっすよ?」
「ワンチャンってなんだよ!?そんな軽率にハーレムの扉開けようとすんな!」
「いや〜。潤君、実はそういうの求めてたりしません?偶然の事故ならセーフ的な?」
「そ、そんなわけ……そんなわけ──」
──うわ、否定しきれない自分がいる。
「お、おれはそんな……ラッキースケベとか、求めてないし……!」
……でも“事故”なら、ほら、仕方ないっていうか?
──そして、今。
俺はその香水をうっすら残した状態で、自社のビルに足を踏み入れていた。
「ま、まぁ……社長だし。視察、視察ってことで……うん」
(誰も俺が香水つけてるなんて知らないし、バレるはずないし……)
まず向かったのは広報フロア──つまり、ミリーのいる部署。
「た、たまたまだよ?社員の様子見るのにちょうどいいだけだからな!?」
すれ違う女性社員に軽く会釈される。
「社長、おはようございます〜」
「お、おはよう……ございます」
(よし、普通。反応普通。誰も俺のフェロモンに気づいてない……)
やましさゼロ! 事故ゼロ! 平和!
……よし。
「ミリー、動画編集間に合ってるか?」
「じゅんくぅぅぅ〜〜〜んっ!!」
──ドゴッ!!
「ぐぇっ!?!?!?!?」
出会い頭、ノールックで飛びついてくるミリーの頭突きが、腹にクリーンヒット。
「きてくれたの〜!?ミリー、めっちゃがんばってるとこだったのぉ〜!えへへ〜♡」
俺の腹部に頬を擦りつけながら、上目遣いで笑ってくる。
そのまま腕を絡ませてきて、距離感ゼロ。
「ほらほら〜これ見てっ!今日の新作の編集なのっ!」
ミリーが画面を操作して動画素材を見せてくる。
いつも通りの元気さ、明るさ、無邪気さ。
この密着っぷりも……まぁ、ミリーなら、ある。あった。前にもあった。
(けど……いつもより5%くらい……感情が、重い……気が……)
「じゅんくん、今日ちょっと緊張してる〜?なんか顔がぷるぷるしてるよ〜?」
「い、いや、別に?普通だけど?」
(やばい、香水バレた!?効果出てる!?でもミリーは……いつも通り!?いやむしろ……“いつも以上にいつも通り”!?!?)
「ミリーもじゅんくんにくっつけて嬉しいの〜♡ミリーがんばれちゃう〜♡」
(ぐぅっ……!これが……これがフェロモン効果なのか……!?)
……いや違う。ミリーはいつもこうだ。いつもこうだった。はず。
……よし。落ち着け。
ここは問題ない。正常だ。セーフ。うん、セーフ。
「じゃ、じゃあ、俺そろそろ次のフロア行くから……またあとでな!」
「うんっ!じゅんくん、がんばってね〜♡」
背中越しに手を振るミリー。
俺は内心で理性のHPバーを確認しながら、エレベーターへと向かった。
……たぶん、今のは香水のせいじゃない。きっと。おそらく。……たぶん。
次に向かったのは──ユズハのフロア。
演出・企画・社外との広報まで担当する、うちでも一番空気がエンタメ寄りな部署。
(大丈夫だ……大丈夫。ミリーがあの調子だったなら、ここも何もない……はずだ)
とはいえ、ユズハの存在自体が“フェイクニュース”みたいなもんなので油断はできない。
そっと扉を開ける。
……と、すぐに視線が合った。
「おや?潤先輩~♡」
(来た……ッ!この声のイントネーション、やばいときのやつだ!!)
ユズハが、ガラス越しの会議スペースからこちらに歩いてくる。
なんか今日……足取りが妙に優雅なんだけど!?モデル歩きなの!?てか視線逸らさないのやめて!?!?
「わざわざこんなとこまで~……もしかしてぇ、会いに来てくれたんですかぁ~?」
「ち、ちが……今日は、まぁ、社内視察っていうか……その、業務の一環で……」
「ふぅ~~~ん?」
ユズハ、ニッコリ笑いながら一歩前進。
いやいやいやいや、近い近い!明らかにパーソナルスペースに進入してきてるよね!?
「……あれぇ~……なんか今日の潤先輩、いつもと違う感じしますねぇ……?」
(来た!来た来た来た!匂いバレてる!?!?)
「もしかしてぇ~……なんか、つけてます?匂い。……香水とかぁ?」
ぐいっと、顔を寄せてくる。
距離、10cm。いや、5cm。もうこれスープンの一歩手前。
(やばいやばいやばい!効果出てる!?マジでフェロモン的なアレが!?!?)
「ん~~~……♡」
鼻をクンクンされて、耳元で小さく息を吐かれる。
潤の心拍、限界突破。
「……わたし、こういう匂い……嫌いじゃないですよ?」
(ヒィィィィィイイイイイイイ!!!なにその“わたし匂いで恋に落ちるタイプ”みたいなフレーズ!!)
「……でも」
「え?」
「これ、誰かのためにつけてます?」
(し、指名!?指名制!?今俺、誰か一人にターゲット決めたみたいな空気になってない!?)
「ミリーちゃんとかぁ~、ノアちゃんとかぁ~……♡
それとも、全部のヒロインに効果ある系男子ですかぁ?」
「ちがっ!そんなんじゃねぇよ!?!?」
「ふふふっ♡冗談ですよ~、冗談冗談。ね?」
──そう言って、すっと後ろに下がるユズハ。
でもその瞬間、
「あ、でも“ちょっとだけドキドキした”のは……ホントかもですよ?」
と、**とどめの一言だけ残してスタジオに戻っていった。
(……な、なんなんだよ……!)
香水は効いてないのか?
いや、今のは……明らかに罠だっただろ!?でも罠っていうには証拠がねぇ!
(ていうか、俺がドキドキしただけで、なにも起きてねぇ!!!)
スキンシップゼロ、接触ゼロ、物理距離ゼロ。
なのに──
心拍数だけ、3倍。
……俺、このあとどうなっちまうんだよ……
【あとがき小話】
作者『やっぱりこの作品の哲学としてはっきりさせておこうかと……!』
リア『哲学……。ようやく知的な議論が交わせるのですね。どんな主題です?』
潤『ほらきた。どうせロクでもない奴がロクでもない主張始めるぞ』
作者『ズバリ!猫派かうさぎ派か……ッ!!』
リア『……は?』
潤『……お前の“哲学”って、動物の話なん?』
作者『いや違う違う、ただの動物論じゃないのよ!?
例えば作者は良くバニー服を着て登場する。つまり、うさぎ成分高めじゃん?』
潤『成分!?おまえバニー服着て出てきた過去、そんなに誇らしげに語るなよ!?』
作者『かと思いきや、語尾に「にゃ」ってつけるのも好き。可愛いし。
つまりこれは根源的問題なのよ!うさぎ属性か猫属性か、どちらを人は求めているのかという──』
リア『無駄に言い回しだけ哲学風……』
作者『なぁ!?読たん!?どっちが好きなんだよぉ!!答えてくれよぉぉぉぉ!!』
(バンッ!と机を叩いて詰め寄る作者)
──その瞬間。
読たん、怯えた目でガタガタ震えながら、
壊れた玩具のようにカクカクと上下する首──
潤『おい壊れてる壊れてる!完全にパニクってんじゃん!』
リア『……恐怖によって自我を保つため、肯定と否定の両方を繰り返す反復運動に逃げてますね』
潤『コレ、読たん絶対夢に見るやつだよ……』
作者『……どっちも選ばれないって、どういうことぉぉ!?(号泣)』