第128話『俺、秘境へ向かう』
皆さま、いつも読んでくださって本当にありがとうございます。
私からも、心からの感謝をお伝えさせてくださいね。
「小説家になろう」では感想欄が少し静かですが……
ご感想でなくても、「最近あったこと」や「好きなアニメのお話」、
あるいは「ちょっとしたつぶやき」でも──
どんな内容でも、気軽にコメントしていただけたら嬉しいです。
ふふっ、もしかしたら私たちヒロインズや、潤さんが反応することもあるかもしれませんね。
作品の中だけでなく、外の場所でも──
皆さまと温かなやりとりができたら、それは本当に幸せなことだと思います。
どうか、無理なく。あなたのペースで、いつでもどうぞ。
俺、葉山潤。
今回も気付いたら訳の分からない場所にいた。よりによって、世界の端っこみたいな辺境。隣にはいつものように冷静沈着なリアと、笑顔だけで人をジャングルに送り込むカエデ。
そもそもの話だ。「新入社員用のプロモーションビデオ撮影」のために、なんで国境どころか文明まで越えなきゃいけないんだよ。
「……俺、本当に行かなきゃダメ? マジで、すっごい行きたくないんだけど……」
潤は死んだ魚のような目で空を見上げる。
カエデが、その隣でにっこり肩を寄せてくる。
「潤くん、ウチらかよわ〜い女の子やで? そんな二人だけで危険なジャングルに放り込むつもりなん?」
甘えか圧か分からない声色に、一瞬たじろぐ。
「いや、ならカエデの部下達を連れて行けばいいだろ! あの戦闘バカ共!」
「無理やって。あの人ら連れてったら村ごと消し飛ぶで? 前、火起こし体験で小屋ひとつ消滅させとるんやからな?」
「……え、それはちょっと困る……」
「それに潤くんは“最後の良識枠”やろ? 現地で一番役立つのは常識人やで?」
「常識人がいちばん命の危機なんだよ、こういうイベントは……!」
ここでリアが冷静すぎる声で入る。
「心配ありません。現地の方々は非常に友好的ですし、悪徳リクルートエージェント社としてもグローバル進出の第一歩です。ここで文化的接点を築くことで──」
「いや、辺境の村が足がかりになるわけないだろ!!」
「気にしたら負けや♪ さ、行くで!」
もう、議論の余地もなかった。
──空港に着いてからが地獄の始まりだった。
まずバス。エアコンは壊れてて車内サウナ。汗で服が溶けそうになる。次は現地のトラック。なんかヤギが荷台に乗ってる。途中から馬車。どんどん文明から離れていく実感だけが加速する。
やっと辿り着いたのは、地図に「ここから先は魔境」って書いてありそうな、静かで人気の少ない場所だった。
「……なあ、現地ガイドってどこだ?」
周囲を見渡しても、子供たちが棒きれで野球っぽい何かをやってるのと、おばあちゃんがずっと謎の植物を研いでるのと──
そして、木にぶら下がって逆さまに寝てる太鼓抱えた男。
(……誰だよあれ)
「なあ、コーディネーターって、どんな人なんだっけ?」
リアがまったく動じない顔で答える。
「NHGの取材に同行経験があるらしいです。荷物持ちとして」
「荷物持ちはコーディネーターじゃねぇだろ!?ねぇ大丈夫なんだよな?!」
カエデが大きく手を振る。
「チャマさーん! こっちやでー!」
手を振る先には、もちろんあの逆さ太鼓男。
いやいや、まさかだよな……まさか……。
リアが淡々と断言する。
「彼がコーディネーターです。あの吊るされながら寝るスタイル、現地プロフェッショナルの証です」
「いや絶対違うだろ! プロフェッショナルって何!? 吊るされて寝る人種なの!?」
木にぶら下がったまま男が叫ぶ。
「ああああ! 助けてくださーい! 格好つけたら降りられなくなりましたー!」
「なんでそんなお約束みたいな展開になるんだよ……」
三人がかりで引っぺがして木から降ろすと、男は謎の達成感で満ちた顔で立ち上がった。
「よーし! ついてきて! 木で寝るコツも教えてやる! サバイバルの基本は“吊り睡眠”だ!!」
「そんな基本いらねぇから!!てかお前降りられなくなってたじゃねーーか!」
カエデが面白がって笑う。
「潤くん、木で寝たら明日には野生動物に弟子入りしてそうやな〜♪」
リアは真面目に考える。
「合理性は感じませんが、貴重な現地体験ですね」
「いやいやいや! 二人とも流されるな! 俺だけまともに焦ってるのおかしくない!?」
チャマが急に腕を組み、威厳たっぷりに叫んだ。
「では諸君、村までは全員──」
一拍おいて、周囲を見渡す。
「……あっちのトラックなら早いが、今日エンジン壊れてるんだった。あ、ジープもタイヤ抜かれてるな……馬車はヤギに持ってかれて……」
一同の期待が見る見るしぼむ。
「じゃあ、歩くぞ!」
「なんで全部用意してるのに使えねぇんだよ!!!」
カエデが爆笑しながら抗議する。
「車もトラックも全部アウトやん! 用意しただけの罠やでこれ!」
リアは静かに結論する。
「つまり……最初から徒歩しか選択肢はなかったということですね」
チャマは親指を立てて満面の笑み。
「文化とは、足で感じてこそ本物だ!!」
「感じる前に足が壊れるわ!!」
──そして、歩き始めてから1時間。
あたり一面、同じような木、土、虫、木、土、虫。湿度は100%、会話は0%、疲労はMAX。
その時だった。先頭を歩いていたチャマが突然しゃがみ込み、深いため息をついた。
「もー無理っすわ……マジで……歩くとか誰が言い出したんですかね?頭おかしいんじゃないですかね?」
「お前だよ!!」
全員の声がユニゾンで重なった。
俺は肩で息をしながらチャマを睨みつける。
「てか、あと何時間歩かせるつもりだよ!? マジでシャレになってねぇぞ!」
チャマは小首をかしげる。
「た、多分……30分ぐらい? かな? ね?そんなもんっすよね?」
「知らねーよ!お前が案内してんだろうが!!!」
怒鳴った瞬間、俺の足がつりそうになった。
そのタイミングでリアが静かにタブレットを開き、淡々とした声で宣告する。
「皆さん。信じ難い事実ですが──」
神妙な表情で、画面をこちらに向ける。
「今のところ……およそ10分ほどの距離しか移動していません」
沈黙が走った。
俺はチャマを見つめる。
チャマは小さく片手を挙げ──
「テヘ☆」
「ぶっっっっ飛ばす!!」
怒号が木霊する中、チャマが慌てて後退る。
「まぁまぁまぁ落ち着き!潤くん! ウチ、さっき歩きながら資料見ててんけど──」
カエデがタブレットを見せながら続ける。
「……あの場所、直通のバス通ってたらしいで?」
「ハァァァアアアアアーーーーーッ!?!?」
俺の絶叫をBGMに、チャマがさらに小さくなりながら言い訳を始める。
「いやでも……雰囲気? 出した方が、なんかこう、盛り上がるかなって?」
「リア……こいつ殴っていいか?」
「……はい。適切な対処かと」
「いやいやいや! 冗談冗談!遊び心だよ!? ねっ、文化交流だし?ねっ!?」
チャマが両手を合わせて命乞いを始めた瞬間、カエデがポンと肩を叩いて笑った。
「バス停、すぐそこやったから! 行こ潤くん、早よ冷房浴びよ!」
──こうして俺たちは、文明を思い出したかのように、近くのバス停から目的の村へと向かうことになった。
結局、文化なんて──文明に勝てるわけがなかった。
【あとがき小話】
作者『ツイートでも述べましたが……実はミリー リア ユズハ 潤 に関しては見た目や細かい設定は実は決まってません』
潤『はぁぁぁぁぁぁ!?主・人・公!!なんだけどぉぉぉぉ!? 俺だけフリー素材扱い!?』
リア『……呆れを通り越して驚愕です。これまでの数々の描写は、すべてフィーリングだったと?』
ミリー『え〜〜〜っ!? でもミリー、“元気でぴょこぴょこしててちょっと小柄”って言ってたじゃん! それってもう設定じゃないの〜?』
ユズハ『ちょっと〜……ひどすぎますぅ〜。私のアイラインの形すら、作者の気分次第だったってことですかぁ?』
作者『ま、まぁまぁまぁ……解釈は違うかも知れないけど、「Re:CREATORS」ってアニメのアルタイルってキャラがいて、そのキャラみたいに、読む人の解釈に委ねてもいいのかなって思ってるんだよ』
作者『前にも言ったけど、俺はこの作品を“俺の独り言”として考えてなくて……』
潤『……あー、そういうことかよ』
リア『……つまり、読者にとっての“私たち”は、常に少しずつ異なり、それでも全員が“正解”だと?』
ユズハ『ふふ〜ん……なんか、ちょっとロマンチックじゃないですかぁ?』
ミリー『うんっ! でもミリー、どんな姿でも、ちゃんと“ミリー”ってわかってくれると嬉しいの〜!』
作者『だからさ、今日も、読んでくれてありがとう。君が思い描いてくれた“ヒロインズ”、その全部が、この物語の一部なんだよ』
潤『……締めるのうまいな、クソ作者のくせに』
作者『褒めてるよね!?』
リア『褒めては……いません』
ユズハ『まぁまぁ、作者さんも形だけでも感謝してるみたいですし♪』
ミリー『みんなも、今日も読んでくれてありがと〜♡』
──ということで、見た目の設定は“あなたの中の物語”に委ねてます。
読たんだけの「リア」「ミリー」「ユズハ」、そして「潤」──
その全部が、ちょっとずつ違って、ちょっとずつ正しい。
それでいい。それがいい。




