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才能奪って成り上がる!無職の俺がヒロイン達と社会を支配するまで  作者: pyoco
第2章『作者がやりたいことやるでしょう』
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第124話『俺、スライムを倒す』

いつも読んでくださって本当にありがとうございます!


なろうではコメント欄がちょっと静かめですが、

感想じゃなくても「日常のこと」「アニメの話」「つぶやき」など、

どんな話題でも気軽にコメントしてもらえたら嬉しいです。


いただいたコメントには、ヒロインズや潤が反応することもあります(笑)

一緒に作品の外でも、ちょっとした会話を楽しめたら嬉しいです!







──霧が、地を這っていた。


風のない森。湿った空気に混ざって、土の匂いが鼻を刺す。


俺は“王”と名乗った存在に命じられるまま、山を登っていた。


目的は、頂上に眠るという“聖剣”。

そして、その近くには《何か》がいる──そう聞かされていた。


(……妙だ)


ここに来てから、時間の感覚があいまいだ。

空は曇天で、どこにも太陽が見えない。


光源のない空に、ぼんやりとした白だけが浮かぶ。

草は濡れていて、足音は吸い込まれたように響かない。


音が──ない。


 


ジャングルのように生い茂った木々の間を進むたび、足元に粘つく感触が増していく。

泥ではない。草でもない。もっと、ぬるりとした何か。


視界の端に、黒い影が動いた。


 


ズル……ズル……


(……なんだ?)


目の前に現れたのは──巨大な塊だった。

ぬめりを帯びた半透明の“何か”が、地を這っていた。


粘液の中で脈動する、赤黒い核。


(……スライム? あれが……?)


そう思った瞬間、空気が裂けた。


 


──ビュン。


目の前を、太い触手が薙いだ。


 


間一髪。

地に伏せる。触手が背後の木を破壊し、粉砕音とともに破片が飛び散った。


(逃げる……!)


身体が勝手に動いた。心臓が喉までせり上がる。

何度も足を取られながら、坂道を駆ける。


背後から、粘液を引きずる音がついてくる。


ジャングルが裂けた。


──開けた頂上。


霧の奥に、それはあった。


 


石の台座。

その中心に、一本の剣が突き刺さっている。


剣身は曇っていた。古びた銀のように鈍く光る。

柄には、どこか血管のような模様が走っていた。


俺は迷わず、それを掴んだ。


 


(これしか……ない)


 


──触れた瞬間、何かが流れ込んできた。


感情。記憶。誰かの叫び。


剣が、俺に“何か”を訴えかける。


そして、理解する。

こいつは“選ばせる”武器だ。

勇者になるか。あるいは、死ぬか。


 


俺は引き抜いた。

剣身が空を裂き、冷たい風が吹き抜ける。


 


「来いよ……ゼリー野郎」


 


その言葉に応じるように、スライムが突っ込んでくる。


 


──戦闘。


時間の感覚が消えた。


触手の軌道が読めない。地形が常に崩れる。


俺は剣で受け、跳び、躱す。


空間が歪むたび、スライムの核が一瞬だけむき出しになる。


(あそこしか……ねぇ!)


距離を詰める。触手が襲う。かわす。斬る。前進。


剣を構える。叫ぶ。


 


「くらえっ!!」


 


一閃。


剣が核を穿ち、断裂音が響く。


 


──爆砕。


スライムの身体が音もなく崩れた。

霧が晴れる。視界に光が射す。


 


俺は、ただ剣を握ったまま──その場に崩れ落ちた。


全身の力が抜けた。

指先が震えていた。呼吸が浅い。


 


“VRだ”という認識が、一瞬、どこかへ消えかけていた。


今ここにいるのが、現実なのかどうか。

俺には、もうわからなかった。


 

【現実視点】



──電柱社・地下モニター室。


 


『潤様が……歩き出しました』


ノアが神妙な声で告げた。

が、次の瞬間。


 


ガシャアアアン!!!


 


「うわぁぁぁ!?!?」


VRゴーグルをつけた潤が、久松先輩の最新鋭モニター群に正面から激突!

ラックが傾き、機材が崩れ、画面がバイオ風の警告音を最後に死亡。


 


「潤くん!?!?! うちの研究環境が!! Amazonのお気に入りリストが!!!」


 


しかし、潤は止まらない。


おもむろに足を前に出し──


 


ドガッ。


ミリーのぬいぐるみ、サッカーボールのように蹴飛ばす。

空中でスピンしながら回転して壁に激突、ぬいぐるみ2号(手足つき)が死亡。


 


バキッ!!


エンリの観葉植物、見事に枝ごとへし折られ──


 


ボトッ


鉢だけが無言で転がった。


 


『あかーん!!潤くんが道連れにしながら進軍してるー!!!』


カエデが爆笑しながら机をバンバン叩く。


 


「えーとですねぇ〜先輩は今、ジャングルを歩いてます〜。たぶん敵に見つかる前のステルス移動ですね〜♪」


『潤様……逞しいです……たとえ社内設備を全て破壊しても……』


ノア、完全に“贔屓の引き倒し”モード。


 


──と、そのとき。


 


潤が、突然ダッシュ。


 


「走った!!走ったで!! もう怖いってあれ!」


「今……スライムに追われてますね〜♪」


「見えへんから余計に怖いわ!!!」


「VR空間だと後ろから来てるんですけど、現実だとエントランス突っ切って表に出てます〜」


 


──潤、社内脱出。


そのまま表へと飛び出す。

久松先輩の悲鳴を背に、潤は駐車場を越えて、近くの雑木林の斜面へ。


 


──登ってる。


 


「やべぇってやべぇってやべぇって!!! これもう業務災害ってレベルちゃう!!」


 


草をかき分け、斜面を登り、潤がついに立ち止まる。


手には──


 


「棒持ったぁぁぁ!!!」


 


「抜きましたね、聖剣」


ユズハが冷静に実況。


「何が聖剣や!! それスーパーの裏に落ちてそうなただの木や!!」


 


──潤、天に掲げる。


ポーズ決めてる。完全に決めてる。背筋ピーン、ドヤ顔MAX。


勝手にファンファーレが聞こえてくる(脳内)。


「かっこええと思っとるぅぅぅ!!!」


 


──そして、敵。


その視線の先にあるのは──


 


「ちょっ、まさか……」


カエデが指を差す。


 


「……それ、“う●こ”やろ!!!」


 


潤、構える。


 


「やめろ!おい潤!やめとけって!!」


『くらええぇぇぇぇぇっ!!!』


 


──ズシャァッ!!!


棒が沈む。


 


「刺したあああああああああああああ!!!」


 


潤、ガッツポーズ。


腕を突き上げ、ドヤ顔1000%。


「うぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!」←本気


 


──その様子を、ちょうど通りがかった小学生3人が見ていた。


 


『あの人……』


「う●こに棒刺して喜んでる〜〜〜!!」


『やっっっばー!!』


「ママ〜〜〜〜!!!」


 


ちびっこ逃走。社会的死、秒読み。


 


「潤様……やはり貫禄が……」


「貫禄の意味よノア!!!!」


 


こうして、勇者の旅路は、

道端のう●こを貫いて幕を閉じたのである──






あとがき小話


「午後四時、溶ける気配」──ノアとユズハ


 


──窓辺のレースがゆらりと揺れた。

外から吹き込んだ風は、期待したほど涼しくない。


だが、部屋の中にいた彼女たちは、

その“期待はずれの風”すらも、どこか甘く受け止めていた。


 


ノアはロングスカートの裾を指で持ち上げ、うっすらと汗を浮かべた足首を見せながら扇子を扇いでいた。

その姿勢は優雅なはずなのに──わずかに崩れたシャツの胸元が、彼女の“理性の限界”を語っていた。


ノア『……潤様も、きっと暑さに耐えていらっしゃるのでしょうか……』


いつもはきっちり結われている髪も、今はうなじに貼りつくように乱れ、

頬に沿って落ちた一房を、ゆっくりと払う指先が……色っぽすぎるほど、艶やかだった。


シャツの第一ボタンを外し、胸元をあおぎながら、

「……ほんの少しだけ、肌を見せても……許されますよね?」

と誰に言うでもなく呟いたその声は、

昼下がりの空気よりも、数度ほど高く、そして濡れていた。


 



その隣──床に寝転んだユズハがいた。


くたびれたように頬をソファに預け、タンクトップの裾がわずかにめくれて腹が見えているが……

本人はまるで気にしていない。いや、わざとか?


ユズハ『……ねぇ、潤くん……冷房のリモコン、あと1度だけ下げてよぉ……

じゃないと……服脱ぎますよ?ふふっ、冗談ですってば〜』


口調はふざけているが、その目はとろんと焦点が合っておらず、

頬に汗が伝ったのを「ん〜……」と舌で舐めて拭う仕草には、

本気と嘘の境界が──無かった。


扇風機の風を受けたシャツがふわりとめくれ、

露わになった太ももを無意識に掻いたその指の形が……やけに生々しい。


ユズハ『でも、潤くんが見てるってわかると……やっぱり、ドキドキしますよね〜……』


そう言って、彼女はちらりと目だけをこちらに向け──


 


──ドアの隙間で、その視線を受け止めた者がいた。


作者『…………(無言で鼻を押さえる)』


ノア『……そこまでにしておきましょうか、作者様』


作者『ぬぁあああああっ!?』


──背後からマフラーを締められる音がした。

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