第119話『俺、大会出る』
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──その頃、俺は。
ノア邸の女子会が修羅場と化しているとも知らず、
のんきに商店街を歩いていた。
目的はただひとつ。
「コロッケ〜コロコロ〜ケッケッー♪」
そう。
“例の激安揚げ物屋”の1日限定セールコロッケを買うためだ。
(あのサクサク衣と甘辛ソースの黄金コンビ……あれのためなら命賭けられる)
脳内が完全に芋と脂で支配されていたその瞬間だった。
「頭!いましたぜ!!」
「間違いねぇ!あいつっす!」
(ん?)
突然、横道から現れたジャージ&金ネックの集団に──
俺は囲まれていた。
(ちょ、え、待って。俺ただのコロッケファンだよ!?)
見るからにアウトな雰囲気の男たち。
全員、目つきがバリ硬い。
そしてその中心には──
「よう、久しぶりだな」
出た。見覚えのある顔。
かつてノアの件で一悶着あった某組織の、元締めクラスの人間。
(あーーー……やったわ俺。喧嘩の才能ぶっこ抜いたやつや……!)
思い出した瞬間、足がガクガクしてきた。
『えーと……何の御用で……?』
「ビビんなって。あの時の件は水に流したって言ったろ?」
(言ったな?ホントに言ったな!?その場のノリじゃなかった!?)
「でもなぁ……」
男は肩を回しながら言った。
「うちのエースがよ、あんときボッコボコにされてから調子悪くてよぉ?」
(それ、俺が“喧嘩の才能”ごと奪ったからですぅうううう!!)
「で、ちょっと頼みがあってな……」
突然──頭が土下座した。
「頼む!!お前の腕を見込んで、代わりに地下闘技場に出てくれ!!」
(は!?)
「今回の試合、組のメンツがかかってんだ!
あのエースは無敗だったが、今は見る影もねぇ。
けど親分には“まだいけます”って言っちまってよぉ……
もし負けたら、俺らまとめて海に沈むコースなんだわ!!」
(なんで俺、そんな死活問題の継承者みたいになってんの!?)
「頼む!うちの名義でエントリーしてっから、もう逃げられねぇ!」
(え?待って、名義って何!?名前貸した覚えないんだけど!?)
「お礼もする!コロッケでも何でも買ってやる!!」
(買える命の代償、安すぎんだろ!!)
──次の瞬間。
俺は──強引に連れていかれた。
問答無用。
コロッケ片手に問答してたら腕ごと引かれて、ズルズルズルと。
(これってもう……誘拐だよね!?)
「急げ!もうすぐ開幕だ!」
「ワンダフル・ジュン、控室へ!」
(テンション明るいけど内容重すぎるんだよ!!)
──しばらくして。
到着したのは、国立競技場の地下──ではなく。
「……ここ、公民館じゃねぇか!!」
看板には**“〇〇第4地区公民館”**
入り口には「ご自由にどうぞ・本日の予約:格闘技ごっこ」
(“ごっこ”じゃ済まない血の気がリングで飛んでんだけど!?)
階段を下るとそこには、
こぢんまりとしたリング、10列程度のパイプ椅子観客席。
そして──
ガラの悪そうな奴らがギュウギュウ詰めで盛り上がっていた。
「うおぉぉぉ!殺せぇぇ!!」
「次は右フックだろがあああッ!!」
──やだ、怖い。
やりたくない。絶対無理。
(流血してる……!てかあいつ泡吹いてる!?てかさっきの選手倒れたまま動いてないけど!?)
心の中で叫んだが、足はリングに向けて押されていく。
『いやいやいやいや!俺帰りたい!マジで帰りたい!ごめんなさい帰らせてくださいってばぁああ!!』
「おいあんちゃん。俺らが魚の餌になってもいいってのか?」
『うんいいよ!?むしろ俺がこのまま出たら“人間ミンチセット”確定だよ!?見てよあの選手!腕ポパイなんだけど!?』
「だいじょぶだ!お前、あの時の動きはキモかったけど……強かったじゃねぇか!」
(褒めてんのかディスってんのかハッキリしろよ!!)
「それに……な?」
『……それに?』
「逃げたら……な?」
──何も言ってないのに、背後のドアが閉まり鍵が回された音がした。
『いーやーーーーーー助けてぇえええノアああああああああああ!!!』
⸻
──その頃、ノア邸では。
ユズハ「せんぱ〜いっ♡ このスープ、スライムっぽく仕上がったんです〜!」
カエデ「潤くんが戻ってきたら、三杯はいけるようにしとくで〜?」
ミリー「ミリーの宝箱どんぶり、さらに具材追加したのーっ♪」
リア「潤は今どこに……ふむ、帰宅予定時刻を過ぎています」
エンリ「……もう少しで煮えるはずです♪」
ノア「ふふ……潤様は必ず戻ってきます。私たちの元へ──」
──料理選手権は、
さらに混沌を深めながら続いていた。
あとがき小話
エンリの部屋にて(深夜0:12)
──作者、そっとドアを開ける。
静かな照明。窓辺のカーテンがゆっくり揺れている。
エンリはデスクに座っていて、ノートパソコンと睨めっこ。
エンリ『……ふむ……この予算だと、来月の機材調達に無理が出ますね……』
(手元には資料の山、コーヒーとチョコが常備)
エンリ『でも……潤さんの負担は極力減らしたいですし……』
(ふぅ、とため息をつきながら、ペンをくるくる回して)
──そのとき、画面端に映るとある通知に目が止まる。
エンリ『……潤さんの……歩数計、ですね? 今日は……えっ、200歩?』
(わずかに目を見開き、無言で立ち上がる)
エンリ『あの人はまた……デスクから一歩も動いてませんか……』
──スマホを手にして、キッチンへ。
エンリ『……夜食、届けた方が良さそうですね……カロリーは控えめで……栄養バランスも整えて……』
(トマトスープを温める手際がやたら早い)
エンリ『……もう、仕方のない方です』
(保温ボトルに注ぎ終わると、小さな紙を添えて)
──「あまり夜更かしなさらぬように。あなたの体は、私が守りますから。」
──作者、そっと扉を閉める。