第115話『俺、尊厳を捨てる』
いつも読んでくださって本当にありがとうございます!
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どんな話題でも気軽にコメントしてもらえたら嬉しいです。
いただいたコメントには、ヒロインズや潤が反応することもあります(笑)
一緒に作品の外でも、ちょっとした会話を楽しめたら嬉しいです!
全てはこの一言から始まった──
『あらあらせんぱ〜い♪ 床おいしいですかぁ〜?』
画面の中。潤のキャラは地面に突っ伏し、画面外からザンギエフの巨体が仁王立ち。
『ぐ…………言わせておけばぁぁぁぁぁぁッッ!!
いつまでも見下ろせると思うなよォォォォ!!』
──KO!
『これで〜ユズハの100連勝ですぅ〜☆』
勝てるかァァァアア!!!!!
このザンギエフ、近づけば
『はい♪ ガチッ⭐︎』で即掴まれるし──
逃げて遠距離から球を飛ばしても、
ジリジリ詰めてきて『はい♪ ガチッ⭐︎』で掴まれるし──
いやいやいやいや!!!
それ反則だろおおおおッ!!
そして、気づけば午前4時。
──俺は寝不足だ。
(……悔しい……俺……昨日泣いたもん)
『はぁ……』
『どうなされたのですか?潤様?』
振り返ると、ノアがティーカップ片手に佇んでいた。
『あぁノア……ゲームでユズハに勝てないんだよ……
あの煽りに翻弄されて……俺……俺……』
ノアは、静かにティーカップをソーサーに置いた。
カチャ……。
──そして、スッと立ち上がる。
『……負けて落ち込む潤様も尊いですが──』
『私が鍛え直して差し上げます!!』
(え?)
『対・ユズハ用“心理干渉無効”戦闘訓練──これより開始します!』
──5分後。
潤は、ノアの作った“特訓部屋(※ただのリビング)”に座らされていた。
机の上には、ノートパソコンと格ゲー用アケコン。
『ではまず、ユズハさんの口調に対する耐性訓練から始めましょう。』
ノアが再生したのは──
ユズハが過去に潤を煽ったセリフをまとめた“名言集(音声)”。
\せんぱ〜い♡ 今のはマグレ勝ちですよねぇ?/
\あれ?あれあれ?さっきのジャンプ、操作ミスでしたぁ?/
\ユズハちゃんに勝てないなんて、ど〜思いますぅ〜?/
潤『うがあああああああああああああああ!!!』
ノア『いけません潤様!耳を塞いではいけません!これも訓練です!』
ノア『次、“空中投げ対策”。潤様のスティック操作が曖昧です。
今から“3Dモデルでザンギエフが空中から迫ってくるVR”を再生します。』
潤『いやそれトラウマ再発するやつゥゥゥゥ!!!』
──そして、ノアの表情はどんどん厳しくなっていった。
『潤様。勝てないのは、あなたが“愛の重み”を技に込めていないからです。』
(なんの話だよ!?!?)
『よろしいですか? ゲームとは──“愛と尊厳の投影”です。』
潤(もう話が哲学なんだよ!!!)
俺はノアとの特訓を続けた……。
それはもう──血の滲む、どころか精神が削れる修行だった。
ボタン入力に──一つでも無駄なコマンドが混じろうものなら。
『潤様、今の──左斜め下の入力が0.02秒遅れました』
ノアは無表情でそう告げると、
**「鬼の様な反復練習(900セット)」**が始まる。
それはもう……
完全にゲームの枠を超えていた。
朝──
『潤様、お目覚めですか?ではコマンド確認です』
昼──
『“めくり中段→弱中強→昇龍”コンボ、500セット目、いきます』
夜──
『寝る前に“対ユズハ煽り耐性音声”を流しておきますね』
空いてる時間は、ひたすら──
「中→中→キャンセル→強→弱→弱→昇龍拳」
「下→前→中→下→後→小足→中足→ガード割り」
「ユズハの煽りに負けない……ユズハの煽りに負けない……」
お経のように唱え続けた。
(なんで俺……格ゲーやるだけで悟りの境地に入ってるんだ……?)
だが──その甲斐はあった。
ノアの鬼特訓から3日後──
俺は、再びあのコントローラーを握っていた。
『さあ〜?せんぱ〜い?今度は何連敗から始めますぅ?』
ユズハが“格ゲー配信者ムーブ”で俺を煽ってくる。
だが俺は、動じなかった。
呼吸は静かに。
指はまるで、舞うように。
心はまるで──修行僧の如く、無心。
(落ち着け……お前はザンギエフじゃない……ユズハだ……ユズハは“ユズハ”なんだ……)
──その時だった。
『じゅんくーん? なにしてるのー?』
カーテンの隙間から、ひょこっと覗き込むように現れたミリー。
彼女は俺に駆け寄るでもなく、ただ画面の前に立ち──
じーっとモニターを見つめる。
まず、ユズハの“どや顔”。
次に、画面端で突っ伏す俺のキャラ。
またユズハ。
また俺。
ユズハ。俺。ユズハ。俺。
『…………』
視線だけでなく、顔ごと左右にブンブン振って、
まるで“脳内にハテナマークを生やしながら”何かを考えている──
そして、ぐるりと振り向いて、俺と現実のユズハを交互に確認する。
俺→ユズハ→俺→ユズハ→俺
まるで**“この2人、どっちが強いの?”って比較中のミリー……
『……あっ』
ビビッと光ったような顔。
目がキラーンと輝く。
そこには確かに、“とんでもない何かを思いついた子供”の笑顔があった。
『じゅんくーんっ! じゃあ今度は〜ミリーが特訓してあげるーっ!』
(え……?)
ノアに続いて、ミリー流修行ルート突入……!?
いや、待て、ミリーに格ゲーなんて──
だが俺は……もう、どこにでも賭けるしかなかった。
このままじゃ、ユズハの煽りで人格崩壊→社会的死が不可避。
『ミリー……頼んだ……!』
──数分後。
特訓スタート。
俺の前に現れたミリーは、
いつも通りの笑顔だった。
だが──その奥には、何か……得体の知れない悪意の香りがあった。
『じゃあ〜じゅんくん対戦しよ〜♡』
『ミリーハンデいる? たとえば片手とか目隠しとか?』
『いっきま〜す☆ はい♪ガチッ♡』
──KO!
またしても負けた……。
あれだけ血の滲む努力をしたのに……
俺は、また……床を舐めていた。
『あらあらせんぱ〜い♪ おかわりですかぁ〜?♡』
ユズハは画面越しに満面の笑みで煽り倒してくる。
あぁもう、床が俺の居場所になってきた……
──その時だった。
『じゅんくーん? なにしてるのー?』
カーテンの影から、ミリーがひょこっと顔を出した。
(なんでいんだよ!?)
しかも、俺の“土下座KO”と、ユズハの“どや顔”を、
顔をくるくる動かしながら──交互に、何度も、楽しそうに見比べてる。
まるで回転寿司を見る猫のように──
『ん〜……あっ』
目を輝かせ、何かを閃いた顔。
『じゃあ今度は〜ミリーが特訓してあげるーっ!』
(マジか……!?)
ノアに続いて、ミリー修行編突入!?
いや、もはや何でもいい。
このままじゃ俺の精神がユズハの煽りで炭化する。
『ミリー……頼んだ……!』
──そして数分後。
俺は再びコントローラーを握った。
対戦相手はミリー。
正直、格ゲーの腕なんて彼女にあるわけ──
『じゃあ〜じゅんくん対戦しよ〜♡』
まぁ……負けはしないだろ?
『ミリーハンデいる? たとえば片手とか目隠しとか?』
『だいじょーぶー♪』
──10秒後。
『ざぁーこ♡ざぁーこ♡ またお昼寝してるの〜?』
えっ。
『うわ〜、じゅんくんのキャラ……ぴえん顔してるよ〜?♡』
おい待て。
『あれれ〜? じゅんくん、ミリーより弱いんだぁ♡ よっわ〜い♡は〜と♡』
なにこの子。
『え〜? それが全力〜? うっそ〜、ぷぷっ、信じられな〜い♡』
完全に舐めプだ!!!!
そこには、**愛くるしい笑顔で潤の精神を完膚なきまでに破壊する“無邪気な煽りの魔女”**が生まれていた。
『じゅんくん、また床なめちゃってるの〜? えへへ〜♡ 今日も床と仲良し〜♡』
『うわああああああああああああああああああああ!!!!』
──叫びながら崩れ落ちた俺の横で、
ノアが静かにメモを取り出す。
『……“新型心理干渉型・感情破壊ユニット”。発見。』
──だが、煽られれば煽られるほど。
折られれば折られるほど。
潤の操作は研ぎ澄まされていった。
(……煽り……負け……煽り……煽り……煽り……)
(俺は……“何と”戦ってるんだ?)
(ユズハじゃない……ミリーでもない……)
(──違う。“俺”だ)
──煽りを越えた者だけが、辿り着ける場所がある。
潤、覚醒間近。
“人格崩壊寸前”と引き換えに、格ゲー力だけが異常進化していく。
あとがき小話
作者『今日ガチでネタ思いつかないから、ヒロインズに質問します……コスプレするなら何がいい?』
潤『投げやりすぎる……!もうそのまま本文にしそうな勢いだな……』
⸻
ノア『……潤様にお仕えするメイド服以外、ありえません。』
作者『出た!王道にして殿堂入りのメイドッ!!』
ノア『フリルは清楚に。丈は短すぎず、でも潤様の前でだけは……“動きやすい仕様”に。』
潤『なんか怖ぇよ!?仕様って何!?』
ノア『……そして、他の誰にもその姿を見せないよう、撮影は禁止でお願いします』
作者『(え、撮影ダメなの!?!?)』
⸻
カエデ『ウチはな~、やっぱチャイナ服やろ!ピッタピタのやつ!!』
潤『即答!?』
カエデ『横からピッて裂けとるやつで、足をガッと見せるねん。もちろん“ご主人……じゃなくて潤くんだけ”に♡』
潤『いや絶対それ村中の男が見るやつだろ!?!』
カエデ『……それ見た瞬間、潤くんが他の男殴り出してくれたらサイコーや♡』
作者『独占欲が物理に転化しとるぅ!』
⸻
エンリ『ふふ……私は“ナース服”でしょうか。潤さんに「体温測りますね?」って耳元で……♡』
潤『やめてくれ、俺の体温計爆発するから……!』
エンリ『でも……注射は痛くないですよ?潤さんの痛みは、全部、私が引き受けますから──』
潤『エモいのか怖いのか判断に困るんだけど!?』
⸻
ミリー『ミリーはねぇ〜〜♡ 着ぐるみ!!うさぎさんの、モフモフの!』
潤『安心感だけはある!』
ミリー『潤くんに「えへへ〜♡なでて〜♡」ってしながら……中でチューするの!』
潤『着ぐるみの中で!?どんな高度なプレイ!?!?』
作者『読者全員今、頭の中「???」だよ!』
⸻
ユズハ『ん〜……やっぱりバニーガールですかねぇ?』
潤『即答でバニーはやばいって!!』
ユズハ『だってぇ〜? 潤様が「その格好で外出るな!」って焦る顔、見たいんですよぉ?』
潤『お前らマジで俺の心臓いじめて楽しいの!?!?』
⸻
リア『……私は着ません』
潤『ぶれねぇな!?』
リア『ただし──潤の心拍数が測れるデバイス付きの「白衣」なら、着る価値はあります』
作者『え、それってつまり、コスプレという名の人体実験……!?』
リア『“検証”です。……問題、ありますか?』
潤『1000個ぐらいあるわ!』
⸻
作者『はぁい、ということで今回は各ヒロインの“もしもコスプレ”でした!』
潤『うっかり本文で採用しそうな濃度だったな……』
作者:pyoco(俺は……男装ヒロインが意外と好きです)