第113話『俺、だって男だもん』
いつも読んでくださって本当にありがとうございます!
なろうではコメント欄がちょっと静かめですが、
感想じゃなくても「日常のこと」「アニメの話」「つぶやき」など、
どんな話題でも気軽にコメントしてもらえたら嬉しいです。
いただいたコメントには、ヒロインズや潤が反応することもあります(笑)
一緒に作品の外でも、ちょっとした会話を楽しめたら嬉しいです!
分解されたテレビの代わりに──
俺はなぜか、50インチ超のモニターと爆音スピーカーを買っていた。
(いや……違うんだ……違わないけど……でも、ここまで来たら……)
夜のテンションで“ポチった”結果、翌朝届いた機材に囲まれながら──
俺は、静かに決意を固めていた。
そう、これは準備だった。
その日のための、完璧な布陣だった。
──そして!!
現在、我が家に盗聴器も監視カメラも存在しないことが確認済み。
何者も、俺を咎める術はない。
つまり!!!
今しかねぇッ!!!
この一歩は、誰にも理解されない。
だが、全男子が一度は通る闇とロマンの狭間。
これは、決して──ヒロインズに知られてはならない。
いや、むしろ知られた瞬間に命の保証はない。
よって今から始まるこれは──
──命を懸けた、【禁断の冒険】である。
起床。
布団からそっと身を起こし、息を潜めて部屋を見渡す。
(……いない)
ドアを少しだけ開け、廊下の気配をチェック。
(誰も……いない……!)
勝った。
完全勝利である。
すぐさまスウェットから着替え、顔を洗い、ポケットに財布を突っ込む。
全行動に無駄のないオペレーション。この日を何度シミュレーションしたと思ってる。
扉を開ける時も──
俺はノブを回す音すら立てず、まるで現代に生きる忍のごとく滑り出した。
(気配を断つ……音を殺す……俺は影……)
階段を下り、靴を履き、玄関を開け──
風のように通りへ躍り出る。
──目的地は一つ。
近くのDVDショップ。
俺の旅のゴール。
そこにあるのは、誰にも見せられない、誰にも渡せない──
男のロマン。
そして──
ひとつなぎの秘宝。
(……俺は、今、伝説になるッ……!!)
宝の在処には──
三つの障害がある。
まず一つ目は……俺の行きつけ、商店街。
ここは顔見知りが多すぎる。
ということは、たとえ一人に見られたとしても──
翌日には「潤くん、例のDVDどうだった?」が合言葉になってる可能性すらある。
……加えて致命的なのは。
エンリがよく出没する。
「買い物に来ました」じゃ済まされない、あの母性爆撃機に出くわしたら即終了。
ここはダメだ。
最短だが、最悪ルート。
──なら、俺の進む道は……限られる。
選ばれしルート。
それは、公園を突っ切り、住宅街を抜ける裏ルート。
一見、敵も少なく静かな道──
だが、これも決して安全ではない。
なぜなら──
カエデがよく出没する。
ピンクのママチャリにまたがり、無駄に機動力が高く、
何より“勘”が異常に鋭い。
あれに見つかったら最後。
問答無用で「膝に乗って何買ったかチェックやで?」が始まる。
だが──
俺には策がある。
あらゆるリスクを想定し、全てを読み切った男の作戦。
いまの俺の知略は──
孔明をも超える。
(ふふふ……完璧だ……)
自然と口元が綻ぶ。
『ふふふっ……ふっふっふー……』
ッ──!?
右に気配。
視線を向けると……隣で路地の先をガン見してる女の子がいた。
「……え?」
ミリーだ。
『じゅんくーん! あそぼー!』
──Holy sh*t.
なぜだ!? どうして!?
何のフラグを踏んだ!?!?!?
『ど……ど、どうしたのかなー? ミ、ミリー?』
ミリーはニコニコ笑顔でぴょんぴょん跳ねながら言った。
『あのね! 公園きたらじゅんくん見つけたから、今日はいい日だなーって♡』
(そんな出会い頭ボーナスいらねぇぇぇぇぇ!!)
『そ……そ、そうか……でも俺はな……大切な任務があるんだ! 今日は遊べねぇ……すまんミリー……』
言い残し、俺は歩き出す。
決して振り返らない。振り返ったら最後。
だが──
彼女は、振り返らずとも並んできた。
『ミリーもね! シークレットミッション、がんばる!』
『…………なぜだ』
『ミリーも一緒にがんばるー! じゅんくんと一緒だと、きっとたのしいのー♪』
『いや、いいんだミリー……これはとても危険な任務だ……君を巻き込むわけには……』
『だいじょーぶー! ミリー、全力で支えるのーっ!!』
(頼むから……支えないでくれええええ!!)
そんな俺の叫びも虚しく──
次の瞬間、地獄の扉が開いた。
キキーッ……!!
ブレーキ音が路地に響く。
『なんや? 潤くんとミリーちゃん、二人で何しとんの?』
……カエデ、降☆臨。
『カ……カエデ……!?』
(うそだろ!? ここで来る!? 孔明超えた俺を更に超えてくるのか!?!?)
ミリーが無邪気に言おうとする。
『今ね! じゅんくんとシ──』
『ああああああああミリーちょっと黙ってえええええええ!!!』
俺は慌ててミリーの口を手で塞ぐ。
『……シ?』
カエデがジト目で近づいてくる。
『なんや、面白ろそうやなあ?』
(詰んだ──!)
『あ、あぁいや……シ、シー……“ラカンス”探しててさ……はは……化石ロマン?』
苦しい。
過去一で苦しい嘘。
我ながら惨状がひどすぎて涙が出そう。
だが、カエデはそれには触れず──
『ところでウチ、今仕事でトラブル起きてるちゅーて、急いで向かっとるんや』
──それだッ!!
この瞬間、俺の脳が閃いた。
『な、なんだって!? それなら人手が必要だろ!?』
俺は隣のミリーに手をかけ、前へ押し出す!
『ならミリー! 君の出番だ!!』
『えっ……ミリー、今日おやすみ……』
『そしたら行こか、ミリーちゃん♡』
カエデが即ロックオン。ミリーにぐいっと寄る。
『た、頼んだぞミリー!! この町の平和を守ってくれ
『えっ……?』
ミリーはぽかんとした顔で俺とカエデを交互に見つめ──
そして俺はその場を全力で離脱する。
後ろは振り返らない。
今振り返ったら、すべてが終わる気がした。
(すまん……すまんミリー……君の勇気、俺は忘れない……)
その時──
公園じゅうに響き渡る、ミリーの大声が。
『じゅんくーーーーーんっ!!』
『ミリー、たのしかったよぉぉぉぉぉーーーっ!!』
……やめろォォォォォォッ!!!!
やめてくれええええええ!!!!
何もしてねぇ!!!俺は何もしてないのに!!
(泣きたいのは……こっちだああああああああ!!)
潤の足取りは、限りなく重く。
だがその胸には──
確かに刻まれた、仲間の犠牲(※勝手に加勢された)。
──男のロマンへの冒険は、まだ始まったばかりである。
あとがき小話
潤『なあ作者……仮にさ、お前が主人公だったらさ……どうする?』
作者『え? そりゃもうミリーに思いっきり抱きつかれてぇし、ノアに「私だけを見てください」って言われたいし、カエデに一晩中くっつかれたいよね?』
潤『いや重すぎるけど気持ちはわかる。で、リアには?』
作者『頭脳戦で論破されて絶望したい』
潤『えぇ……』
作者『エンリには包まれてぇし、ユズハには翻弄されたい』
潤『……で? 俺だったら?』
作者『潤? 潤は……うん、そういうのは許さない』
潤『はああああああ!?』
作者『潤がそんな甘々な展開になったら、それ“作品としての緊張感”が死ぬのよ。バランス壊れるじゃん?』
潤『俺だけ倫理委員会通してんの!?』
作者『うん。お前には、胃を痛めて地獄みたいな修羅場をくぐらせてこそ“映える”のよ。ヒロインに囲まれつつも逃げ場なし、みたいな?』
潤『それ推しにバレたら怒られるやつだろ!?』
作者『じゃあ最後に──潤推しの読者のみんなへ。
潤にいちゃいちゃ展開が来ない理由は……』
作者・pyoco『“俺が嫌だから”です!!!』
潤『最低だな!?』