第111話『俺、眠れない夜を過ごす』
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どんな話題でも気軽にコメントしてもらえたら嬉しいです。
いただいたコメントには、ヒロインズや潤が反応することもあります(笑)
一緒に作品の外でも、ちょっとした会話を楽しめたら嬉しいです!
リアと二人きりの部屋……気まずい。
いや、パーテーションがあるとはいえ──いや、あるからこそ、距離感がおかしい。
『……ねぇ、リア? 風呂、どっちが先入る?』
パーテーションの向こうから、少しだけ声が返ってきた。
『では……私から、頂きます……』
『おっけー、お先に──』
『……覗かないで下さいよ……?』
『覗かないわ!!』
いやいや、そんなことしてる場合じゃないんだよ!?
そんなもん万が一にもヒロインズにバレたら──
(ノア→処刑、カエデ→正座パンチ、ユズハ→動画拡散、エンリ→引き攣った笑顔でキッチン道具持ってくる)
想像するだけで奥歯がカタカタ言い出した。
俺は布団にうつ伏せながら声を張る。
『ちゃんと伏せとくから! お先にどうぞー!』
リアが、パーテーションの向こうから静かに移動していく気配。
──ちなみにこの部屋、風呂はある。
“あの宿”なのに、風呂場だけは──わりと綺麗だった。
(どうやら、三年間住み着いてたお客さんが退去したあと、
風呂だけ“部分リフォーム”されたらしい)
逆に怖いが。
俺は風呂が終わるまで暇なので、部屋にあるテレビをつけてみる。
ちなみにテレビは俺の側。リアの側には何もない。
……代わりに、布団の下にシミがあったが、俺はテレビを選んだ。
(犠牲の上に成り立つ娯楽……)
テレビは、古い。いや、超古い。
“箱型”というより“棺桶型”。画面は若干ゆがみ、ノイズも走る。
──だが、それでも。
明るいスタジオ。派手なテロップ。笑い声。
それらが流れてきた瞬間、なぜか俺の目に涙が滲んだ。
(ああ……眩しい……この世界、文明がある……)
俺、今まで何を見てきたんだろう。
──そんな文明に浸っていたその時だった。
ジジジジ……
テレビ画面が、ノイズまみれになった。
ジジジジジ……
(え……?)
画面がザザザ……と砂嵐に覆われ、映像が消える。
(古いテレビだからな……仕方──)
──その瞬間。
ガタン!!
『うおっ!?』
バスタオル一枚のリアが、血相を変えて風呂場から飛び出してきた。
『ちょちょちょちょリアァァァ!?!?』
慌てて布団に顔を突っ込む。いや、あらゆる意味でヤバい。
風呂上がりにこんな演出ある!?
『リ……リア? なんか、色々と危ないんだけど!?』
リアはガクガクと震えながら、しかし“知性を取り戻すように”話し始めた。
「潤……この風呂……最新鋭です……おそらく……きっと……多分……絶対……」
『ぜんっぜん確信持ててねぇぇぇ!!!』
明らかに怯えてる。いつもの“論理的余裕”が見る影もない。
『何が最新鋭なの?』
「ええ……頭を洗っていたのですが……その時──
アシスト機能が作動しまして……私の頭に……別の“手”が……」
──沈黙。
『“別の手”?!?!?』
「ええ……どこにも機械は見当たらないのに……
それでも……的確に、私の頭を撫でながら、泡立てを……」
『それ心霊エステだよね!? “的確に洗ってくれる”ってポジティブ変換すんな!!』
「し、しかし……非常に……合理的な構造でした……
……何も見えずとも、洗ってくれる。まさに……最新鋭のアシスト……」
『“見えないものに洗われる”はホラーの筆頭だろうが!!!』
リアは震えたままバスタオルを握りしめ、
それでも言葉を絞り出すように口を開いた。
「じ……実に合理的ですね……」
『“合理的”をホラー用語に変換すんなああああああ!!!』
ーーー
リアの話を聞いたあと、俺の内心は決まっていた。
(絶対、入りたくねぇ……)
だが──
それでも俺は、“風呂に入らないと寝れない”体質。
この宿がどれだけ呪われていようと、風呂に入らないと、俺の精神が死ぬ。
……仕方なく、浴室へ向かった。
入ってみると、やっぱり綺麗な風呂。
不自然なほどに新しい。床も壁もピカピカで、変に明るい。
『……強いて言えば、風呂の電気は無機質な白より、
もうちょい暖かい色味のほうが落ち着くよな……』
ワカリミ~
(……今、何か聞こえたか?)
いや、疲れてるだけ。うん。
(明日帰ったら、ちゃんとみんなに謝ろう……俺、悪くないけど……)
ぺこぺこする未来が見える。
でもそれで平和が戻るなら、それでいい。
──ただ、それにしても……視線を感じる。
壁のどこか。天井のどこか。水面の裏。
何かが“俺の全行動を見ている”感覚。
『……はぁ……なんだかんだ言っても、やっぱ風呂は落ち着くわ……』
エイエンニハイッテイイヨ
(おい今のは幻聴じゃないだろ!?)
落ち着くって言った瞬間に“永遠に入っていい”ってどういう意味!?
褒めて伸ばす呪いってある!?
『……さ、あったまったし、体洗って出るかなー……』
コッチニオイデー
(やめろやめろやめろやめろ)
俺は頭を洗う──が、目はガン開き。
瞬きすら信用できない。絶対に閉じない。閉じたら終わる。
鏡の中も、排水口も、蛇口の影も全部監視してる。
──けど。
何も起きなかった。
……何も、起きなかったんだよ。
体も洗い終えて、ゆっくりと浴室を出る。
──本当に、何もなかった。
……あれ?
なんで……なんで涙が……?
頬を伝う、理由のない涙。
そして奥歯が……ガタガタ言ってる気がする。
……本当になんもなかった。
どう見ても、誰かの手が一緒に頭洗ってくれるとか──
独り言に返事が返ってくるとか──
電気がチカチカして“目が合う”とか──
そういうの、一切なかった。なかった。絶対なかった。
……でも、なんで泣いてんの?
『あら……? 潤、早かったですね』
パーテーションの向こう、リアの声が平然と響く。
『入ってられるかあああああああああ!!!』
『なんでだよ!? どうしてだよ!? ホラーの密度高すぎて感覚バグるレベルだぞ!?』
『なに!?“フレンドリー系怪異”って流行ってんの!? “コッチニオイデー”ってどこだよ!? “永遠に入っていい”って誰が許可出したんだよ!? 怖すぎだろバカァァァァ!!!』
「…………疲れているんですね……」
(何その慈母みたいな笑顔!?)
(“私にはわかりますよ”みたいな表情、今一番ムカつくからな!?)
(てかさっきお前も震えながら飛び出してきたじゃねーか!? なんで急に達観してんの!?!?)
『……っつーかさぁ、お前も出てきたよな!?
風呂から! 震えながら! バスタオル一枚で!』
「記憶にありませんね」
『こっちはあるわ!!!』
リアは布団に横たわり、柔らかい声で言う。
「さぁ、潤……今夜は寝ましょう……疲れました」
『あぁ……』
──俺は、布団に入った。
(……寝れるわけがねぇ……)
ーーー
いやッ!!
ぜんっっっっぜん寝れないんだけど!?!?
俺は、布団の中で目をガン開きにしたまま天井を見つめていた。
(ダメだ……この部屋……生きてる)
静寂──と思わせて、次の瞬間──
「ズルッ……ズル……ズ……ズ……」
(音がしてんだよ!!)
何かが、廊下を這ってる。
絶対なんか引きずってる。
マジで一回聴いたら一生耳に残る“ゾワッとするやつ”。
そして──
「びゃあ゛ぁ゛うまひぃ゛ぃぃ゛……」
!?!?!?!?!?!?!?!?!?
「なんか言ってるううううううう!!」
誰!? 誰が今“びゃあうまひぃ”って言った!?!?
なに?ナニを?誰が?何語!?!?
美味しいの!?苦しいの!?魂食ってる最中!?
(……寝れるかボケェェェェ!!)
そろ〜っとリアの布団の方を見ると──
爆睡。
「うそ……だろ……?」
月明かりの中で、無防備に眠る彼女の顔は、どこまでも穏やかで──
むしろ、微笑んでる。
(いやいやいやいや……!!)
(今、“びゃあうまひぃ”って聞こえた直後なんですけど!?!?)
(この人、心臓に銀のナイフでも刺してんのか!?)
その時だった。
「ガタガタッ!!」
……扉。
扉が“開こうと”してる。
ドアノブがガチャガチャと震え、ゆっくりと“何か”が押してくる音。
(うわぁあああああああああ!!)
俺は反射的に毛布を被る。
が──
視界の端で、“お札”が見えた。
扉の上に貼られた、“護符”みたいなもの。
それが……パタパタと揺れている。
(揺れてる!?お札揺れてんの!?なに!?警報装置!?)
(ってことは!?来てるってこと!?ってか、最初から“来る前提の対策”!?)
──死ぬ。
俺は咄嗟にリアにしがみついた。
『リア!!リア!!起きて!!ねぇーーーってば起きてよぉぉ!!』
「……ん……ふっ……」
──微笑。
「なんで笑ってんのぉぉぉぉ!!?」
リアは、眠たげに俺の顔を見たまま、こう言った。
「大丈夫ですよ……私がついてますから……」
「寝てんじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そのまま、また静かに目を閉じ、再爆睡。
(おいおいおい……このやろぉぉぉ……)
(こっちは命がけで叫んでんのに、“優しく寝言”って何!?ヒーリング怪異!?)
(てかお前、風呂では震えて飛び出してきた側だろうが!!!)
ーーー
チュンチュン……チュンチュン……
朝が来た。
俺は、壁にもたれながら天井を見つめていた。
リアは爽やかに伸びをしながら、俺に言う。
「ふ〜あ〜、よく寝れましたねぇ……♪」
「潤はなんだか死人のような顔をしていますが……
枕が変わると眠れないタイプですか?」
『そんな次元じゃねーわぁぁぁぁぁああああああああああ!!!』
あとがき小話
作者『ヒロインズに新メンバー出したいなーって』
潤『やめとけって、絶対収集つかなくなるから。今の人数でもバスケどころか野球に片足突っ込んでんだぞ?』
作者『でもさ〜新キャラのワクワク感ってあるじゃん!?こう、化学反応的な!』
潤『作者の反応が化学じゃなくて化物じみてんのよ……』
作者『でね!そのために用意しました!!こちらッ!ヒロイン属性ガチャガチャ〜〜!!』
潤『……なんかもう、嫌な予感しかしない』
作者『この中には、無数のヒロイン属性が入っている!
それを三つ引いて……組み合わせて生まれる!今週の新ヒロイン!』
潤『ちょっと待て、毎週増やすつもりか!?』
作者『いくぞっ!ピッピカチュー!今週のヒロインは〜〜〜!!』
潤『急にオーキド博士!?テンションどうなってんだよ!』
作者『……でました!ひこう! ほのお! ドラゴン!!』
潤『リザードンじゃねぇか!!』
作者『うおおおおお!!羽はえてて火吐いてて伝説級に強いヒロイン爆誕ううううう!!』
潤『いや完全に某任天堂社の炎飛行ドラゴンなんだよ!!てか人型ヒロインじゃねぇのかよ!』
作者『ふふふ……次回からは!“人語を解するリザードン系ヒロイン”が参戦だッ!!』
潤『さすがに燃やされるわ!!何かに!!』
作者:pyoco(流石に登場しません)