第110話『俺、闇に宿る』
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お年寄りに案内され、俺とリアは宿の奥──
いや、“闇”へと進んでいった。
照明は皆無。
廊下は狭く、湿気を含んだ空気が皮膚にまとわりついてくる。
背後の空気すら、妙に冷たい気がするのは気のせいじゃない。
『……え、ちょ、リア? 暗すぎない!? ここ本当に宿!?』
「むしろ合理的ですね……電気代がかかりません」
違うだろ!? 命の危険の方がコスト高ぇよ!?!
歩くたび、床がギィ〜……ギィ〜……と呻くような音を立てる。
まるで足元から“このまま沈んでしまえ……”と囁かれているようだった。
そんな不気味な廊下の中──
先導するおじいちゃんは、笑顔全開で振り返った。
「運がよかったでしゅねぇ〜……ぎょうはぐ〜ぜん、ふた部屋、あいとりましたぁ〜〜」
『あ、空いてたんですね……!』
「ついこの間まで、三年ほどご宿泊されてるぅおぎゃぐさまが……出ていかれましたのでぇ〜〜〜」
『…………三年!?』
リアがぴたりと足を止め、眉をひそめる。
「……それはもはや“宿泊”ではなく、“永住”なのでは?」
『だよな!? 俺が間違ってないよな!?!?』
だが、おじいちゃんは満面の笑みで言葉を継いだ。
「ここのしゅくはくしゃさまは、みなさん──そうでねぇ〜〜……」
『……そう? そうとは??』
「帳簿、調べるとねぇ……長い方だと……六十年、さねぇ〜〜」
『バリバリの永住者じゃねーか!!! 何だこの“おかえりなさい感”!!』
「まぁ……十年は、姿見とらんけどねぇ〜〜」
『10年“姿見てない”って……それ……生きてますよね?……ね?』
──沈黙。
──無音。
──誰も答えない。誰も笑わない。空気が重い。重すぎる。
『いや沈黙やめろ!?そこは“元気ですよ〜”って笑うとこだろ!?』
『もしかして俺……“空いた部屋に補充される側”!?!?』
リアがそっと眼鏡を押し上げ、目を細める。
「……つまりこの施設、“稼働率”は高いが、“回転率”は……壊滅的ということですね」
『回転率の問題じゃねーよ!? 命の出入りが一方通行なんだよここ!?』
廊下の奥、うっすらと見えてきた扉が──
まるで墓標のように、静かに、立っていた。
老人が足を止める。
廊下の突き当たり──
最奥の、まるで封印されていたかのようなその部屋の前で、振り返った。
「……ここがお二人の部屋でしゅ〜〜」
リアと俺は、同時に顔を見合わせた。
『……へぇー……で、これはどっちの部屋なの? リア?』
「……興味深いですが、僅かな望みにかけて私は“次に案内される部屋”にします。
……潤、疲れているのでしょう? ここをどうぞ」
『レ、レディーファースト……という概念……ご存じない……?』
「……私には合理性がありませんでしたので……」
──そう、言わずもがな。
この突き当たりの部屋の扉には──
・くっきり残る手形
・謎の染み
・そして大量のお札
──貼られている。
明らかに「Welcome」ではない。
むしろ「封印完了しました 開けるな」と書かれてる系のやつ。
だが、そんな俺たちの恐怖をよそに、
おじいちゃんは当たり前のようにその扉を──
──ギィィィ……
静かに開けた。
「ここがお二人の部屋でしゅ〜〜〜」
『え、二人!? いや、俺たち“二部屋”って伝えましたよね!?』
リアもぴくりと肩を上げたが──なぜか目を逸らしている。
中に入ってみると──
──そこは一見、普通の和室。
だが、部屋の“真ん中”に──
■パーテーション■
『………………』
『…………これ、まさか…………』
『ふた部屋?』
「そうでしゅよ? 部屋を二つにすれば、二倍泊まれるがちょ〜〜〜〜」
『なぜ“DAYY☆”みたいなノリで仕上げてきた!?!?』
※註:「DAYY☆」=DIYのジジイアレンジ。ノリが軽すぎる。
『いやいやいやいや!! 敷居ひとつで二部屋にならんから!! なあ!? なあリア!?』
リアは硬直したまま、乾いた声で呟く。
「ひ……ひ……非常に合理的です……」
『合理的の使い方間違ってるよね!?!?』
パーテーションの奥、襖も窓もない空間。
布団が二つ──まるで見せしめのように並べられていた。
『色々な問題を……全部ゴミ箱にぶち込んで蓋しただけだろこれええええ!?!?』
あとがき小話
作者『これはマジな小話なんだけど……実はさ、あとがき小話だけは作り置きしてなくて、毎話ほかほかの出来たてです』
潤『“ほかほか出来たて”って……お前が言うと一気にキモさブーストかかるの何でだよ』
作者『えっ、なんで!?めっちゃ言葉選んだのに!?ほんわか系目指したのに!?』
潤『どの口がほんわか言ってんだよ。せめて“焼き立てパン”とかにしとけよ。蒸気出てるぞお前』
作者『パンも捨てがたいけどさぁ〜!でも出来たて感っていいじゃん!なんかこう、臨場感というかさ……』
潤『まぁまあ、確かに言ってることは分かるけど……出来たてじゃなくてギリギリで間に合ってるってだけじゃね?』
作者『や、やめて!バラすのやめて!?!?』
潤『ギリッギリで“書ききった感”を装ってるの、毎回見ててスリルあるからな』
作者『うぅぅ……じゃあ次から「命削って書いたあとがき小話」って名乗ります……』
潤『それもう出来たてとか関係ねぇな』
作者:pyoco(次回のあとがきも魂のデスロードからお届けします)




