第105話『俺、しゃべっただけで伝説になるとか聞いてない』
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一緒に作品の外でも、ちょっとした会話を楽しめたら嬉しいです!
──プレゼン開始5分前。
(台本が……ない。どこにも……ないッ!!)
控室。俺は鞄の中身をぶちまけて、半狂乱になっていた。
シャツは汗でべちょべちょ。震える指先から紙が滑り落ちる。
「ユズハ……お前、まさか……!」
「せんぱ〜い? 台本って、“過去の自分”に縛られるって知ってました? アドリブ、最高なんですよ〜?」
「それを“捨てた”って言うんだよ!!」
「え〜、でもカエデちゃんも言ってましたよ〜?
『潤くんやったらなんとかなるやろ〜』って♪」
(裏切り者が増えたーーーッ!!)
「じゅんくん、ファイト〜! ミリー特製・お守り唐揚げ、詰めとくねっ!」
「今そういうのいらねぇ!!」
──そのとき。
ズンッ
重低音と共に流れ出す荘厳なBGM。
まるでラスボスの登場。
(……なにこの緊張感、RPGの最終決戦か!?)
スクリーン下には、でかでかと字幕が出る。
《潤様の沈黙は、深き思索の証》
《潤様は、すでにすべてを見通しておられます》
──観客席では一瞬ざわめきが起き、すぐに静まり返る。
誰もが言葉を失い、字幕の意味を測りかねて固まっている。
気まずそうに視線を逸らす者、真顔で頷いているふりをする者──
そのどれもが、「何が始まるんだ……?」という戸惑いに満ちていた。
俺「……ノアだな?」
ノア「はい、ノアです」
俺「即答かよ!!」
ノア「潤様に相応しい“神格化演出”を。完璧でしょう?」
(完璧にカオスだよッ!!!)
司会「それでは──株式会社悪徳リクルートエージェント、葉山 潤様のご登壇です!」
(ああ……始まってしまった……)
──俺はスキルをそっと発動する。
【スキル発動:《会見演出(Lv4)》】
効果:スピーチ時、構成・抑揚・印象が自然最適化される。
※ただし演技力が低いと逆効果。
(……博打だな)
壇上から見下ろす会場。
100人近い投資家が、全員“沈黙”で俺を見ている。
(緊張しすぎて吐きそう……)
「ど、どうも……葉山です……」
──マイクの高さが合っておらず、無様な中腰。
(あ、これ完全に“やばい人”扱いされてる)
「こ、こちらが……会社の……概要になります……」
──1枚目スライド。
白背景に社名とスローガン。
「未来の可能性を広げる技術革新」
投資家A「……よくあるやつだな」
投資家B「無難すぎる」
(滑ってる……ヤバい……)
「そ、そしてこちらが……提携後の……シナジー効果を……」
──2枚目。数値・フロー満載。内容、俺にもよくわからない。
投資家C「ふむ……」
投資家D「まあ、定番だな」
(ユズハ、今からでも台本返してくれない?)
──次のスライド。
突然の柴犬
(いや、誰だよこの犬!?)
ステージ袖でテヘペロしてるユズハが目に入る。
(犯人、見〜っけ☆じゃねぇぇ!!)
投資家たちがざわつく。
「こ、これは……柴犬です」
「この柴犬は……た、多分……イメージキャラクター……的な……?」
──どよめきが強くなる。
次のスライド。
棒グラフ。タイトル:『しっぽの角度と社員のやる気』
また柴犬がコスプレして登場。
(また犬!?)
ノア「皆様。これは潤様の“遊び心”を形にした演出です。仕事に必要なのは、数字と情緒。違いますか?」
投資家E「……意外と深いな」
投資家F「ユーモア、大事だな」
(……え、評価されてる……?)
──空気が少しずつ変わっていく。
──スライド8枚目。
グラフと英語と数字がびっしり詰まったスライドが現れた。
(えっ……なんだこれ。読めねぇ……俺でも意味わかんねぇ!!)
「えーーと、こちらはですね……その……“フルミュルゼ効果”を……応用した事業戦略の一端となります」
(……言った!? 適当に言っちゃった!!今“フルミュルゼ”って言った!?!? なにそれ!?)
──ざわっ。
投資家たちがざわつく。
投資家A「まさか……フルミュルゼ効果ですか……」
投資家B「博識だな。私レベルでもうろ覚えだが……確かにこれは、その文脈に沿う」
投資家C「おお、私は知ってるぞ。あれだ、脳と環境の相互作用による……その……なんとか」
(えっ!?!?!?!? あるの!? 俺だけ知らないやつ!?!?)
──会場の空気が、一気に“理解者モード”に切り替わる。
「そう、“選択と統合のパラダイム転換”を、現場の直感に昇華する──これが、フルミュルゼ効果です!」
(うわああああああ!!! どうなってんだよこの会場!!)
最後のスライド。
「僕たちは、誰もが“もう一歩”を踏み出せる世界を作ります」
──沈黙。
投資家たちは、しばらく無言でスライドを見つめ──
投資家A「……その言葉、面白いな」
投資家B「こいつ……できるぞ?」
(……なんでだよ!?)
──プレゼン終了。控室。
ユズハ「せんぱ〜い、ね? アドリブ、クセになるでしょ〜?」
カエデ「潤くんが変な空気に包まれた瞬間、ウチ、ちょっとときめいたわ〜」
ミリー「じゅんくんの唐揚げ、会場でも配ればよかったのにぃ〜」
ノア「潤様……次回も演出、任せていただけますね?」
俺「いやマジで全員謹慎だよ!?」
──ネットでは翌日、こう呼ばれるようになる。
「沈黙で空気を支配する男」
「柴犬と契約しそうな社長」
「#潤様 #柴犬社長 #しっぽのグラフ」
「あの“しっぽのグラフ”、忘れられない」
──“しゃべっただけで伝説”と呼ばれた男の、最初の伝説だった。
あとがき小話
作者『潤……俺、禁忌犯そうかな……』
潤『やめとけ!!お前は普段から禁忌で構成された人型ナニカだろうが!!』
作者『でもさ〜、ヒロインたちの“背の順”って気にならない?読たん的に』
潤『まだわかる。そこまでは情報としてギリわかる!』
作者『ならば俺はその先へ行く……!次は“バストサイズ公開”だァ!!』
潤『何を超えてんだよ!?越えていい一線と崖の先を間違えてんぞ!?』
リア(すでに真横に)『対象:倫理コードD-2違反。処分プロトコルを起動します』
潤『うおおお!処分早い早い早すぎる!もう目の前いたんかい!!』
ユズハ『でもぉ〜♡私のサイズって、潤先輩から見てどうなんですかぁ〜?わりとイケてる方だったりしますぅ〜?♡』
潤『俺に聞くなぁぁぁ!!この場で一番発言に爆発力あるの君だからな!?』
カエデ『えっ、それやったらウチも気になるわ〜!潤くん、ウチどやろ? こう、ちょうどええ感じちゃうん?な?なぁ〜?』
潤『うるせぇ!!ノリと勢いで煽ってくんな!!こっちは何一つ“ちょうど”じゃないから!!』
ノア『潤様……この件、明確な順位をつけていただく必要があります。でなければ、私は“再教育”を行います』
潤『出たよ女神の皮をかぶった最終兵器!!怖すぎんだよ毎回圧がァァァ!!』
ミリー『ミリーね〜♡こう見えてね〜、けっこーあるんだよ〜?むにむにってしてて、じゅんくんが安心できるくらいなの〜♡』
潤『何で全員自分から戦場に飛び込んでくるの!?てか安心の使い方間違ってるからな!?』
エンリ『皆さん、穏やかにいきましょうね。潤さんは、きっと“サイズではない部分”を見てくださってますから』
潤『うん、エンリが一番まともなこと言ってる!けど若干の圧が逆に怖いんだよなぁ!?』
作者『やっぱり公開は無理があるかな……?』
潤『無理があるどころか首が飛ぶわ!!お前もうこの話忘れて、牛乳飲んで寝ろ!!』
作者『でも読たんのために……!愛と善意と奉仕と──』
リア『その言葉、地獄で使ってください』
(ボンッ!!)
潤『燃えたァァァァァ!!!!!』
作者『うわああああああああああ!!!』
──そして今、作者はヒロイン全員からの正座指導を受けながら、原稿用紙に「二度と調子に乗りません」と書き続けているという──
作者pyoco