第102話『俺、伝説扱いされ始める』
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いただいたコメントには、ヒロインズや潤が反応することもあります(笑)
一緒に作品の外でも、ちょっとした会話を楽しめたら嬉しいです!
──会場の空気が、まだざわめいている。
潤のスピーチが終わって数分、拍手の余韻は完全には消えていなかった。
「……ねぇ、今の聞いた? 『寝て起きたら、ここにいた』って……」
「うんうん、あれ絶対“組織の無意識的再構築”のメタファーだよね」
「え、マジでそう思ってる? ……いや、私は“運命の流れ”の受容って捉えたけど?」
「彼はきっとストイックな人間なんだ。たぶんポテチも塩抜きで食べてるに違いない」
(普通にコンソメ派です)
潤はパーティー会場の壁際で、無言で紙コップのアイスティーを口に運ぶ。
味がしない。というか、思考が止まっている。
そこに──
「潤くん潤くん潤くーん! 見て見てっ!」
ミリーがスケッチブックを持って走ってくる。中には潤の似顔絵と「伝説の語り部・潤様」と金色で書かれた謎のロゴ。
「ミリー、潤くんのグッズ作ってみたのー! これ缶バッジにしよっかな〜♪」
(おお……絵が可愛いせいで文脈めっちゃ危ない……)
「潤くん! 潤くんの“変わりたいなぁ”が名言化されてバズっとる!」
カエデがスマホを見せる。画面には #潤スピーチ #潤なぁ とタグが並び、動画が再生されていた。
しかも字幕とBGMが入っている。
「え、これ……俺の演説!? なんでエフェクト乗ってるの!?」
「うふふ〜、ユズハちゃんがちょちょいと編集したんですよぉ〜♪ ユズハちゃん名物、“爆誕☆感動系スピーチ映像”ですっ」
「“名物”!? そんなシリーズあってたまるか!!」
「でもね? 内容は全部実際の発言ですし〜、ただちょっとだけ……“補足字幕”を付けたのですよ」
「どこが補足だよ!? 『あえて沈黙する潤氏』って出てんだけど!?」
「しかも、潤くんの発言はスロー再生の方が深く刺さるんですよね〜。“……変わりたい……なぁ……”ってね!」
(いや俺そんな湿度高く言ってないから!)
「ちなみに、あと20分以内にあの動画をメディア関係者50名にDMで回しますね〜☆」
(いや怖いな!? SNS運用がプロすぎるだろ!?)
そこに──
「潤くん、プロフィール勝手に加工しといたで?“身長185cm、IQ180、料理もできる”って感じで!」
「なんでどこまで盛ってんだよ!! 全部嘘だよ!!」
その間も、ノアは黙々とメモを取っていた。
「……株主のうち、少なくとも三名は“潤様の思想に共鳴した”という内容でブログを更新しています」
「え、ちょっ、思想!? 俺、なにか言ってたっけ!?」
「“なぁ”の一言が、心を動かしたそうです」
(それただの語尾だよ!?)
会場の一角では、別の投資家たちが潤の話を再解釈していた。
「ポテチ──あれは“安易な快楽”を象徴している。彼はあえてそれを選び、“飾らない日常”を提示したんだ」
「“寝て起きたらここにいた”……組織社会における無意識の再生プロセス、だよな」
「そう。“変わりたいなぁ”というあの語尾の曖昧さが、我々に“共犯性”を投げかけている。共に変わる、という意思表示だ」
「ちなみにそれに気づけてたの、私だけでした」
(うわ、勝手に気づいた気になってマウント取ってるやつもいるー!!)
その瞬間、エンリが潤の隣にすっと立つ。
「……あの場にいた“光村産業”の堂島氏と、“一ノ瀬ホールディングス”の木暮氏から、“再考の余地がある”との連絡がありました」
「えっ……え、今の流れで!?」
「中立に傾きつつある、ということです。今後の印象次第で、社長から離れる可能性があると」
(ちょ、急展開すぎない!?)
「……あなたの“無自覚”が、誰かを動かしたようです」
「待って、待って……無自覚が武器って、もうそれスキルですらないじゃん!?」
「スキル以上の“人間力”──そう捉えられているのですよ、潤様」
(いや違う……今のはただの事故……)
だが、流れはもう止まらなかった。
ノア、ユズハ、カエデ、ミリー、そしてエンリ。
全員が自然に動き、潤の“伝説”を作り上げていく。
まるで──
本人だけが、その中心にいる理由をまったく理解していないままに。
潤はポテチをひとつまみ、静かに口へ運ぶ。
(……塩味しか、信じられねぇ)
あとがき小話
作者『実は……』
潤『実は?(どうせまた妙な告白だろ……)』
作者『下書きもう20話ぐらい溜まってんの……!』
潤『え、めっちゃ良いことじゃん!? 本編の俺にもちょっとそのやる気分けてくれよ!』
作者『でもさー、ばーって書けるときは一気に書けるんだけど……そのあと全然書けなくなっちゃうんだよね』
潤『あー……それ“創作あるある”の波だな。俺も波に飲まれてセリフ失いかけたことあるもん』
作者『ちょっとガチで癒しが必要でさ……最近ずっと子猫の動画ばっか見てる』
潤『かわいっ! もう脳みそ完全に猫吸いモードじゃねぇか』
作者『「あっ……こっち来た……うわ〜手に乗った〜♡」って言いながら3時間消し飛んだ日あるからね……』
潤『本編の構成はその“肉球タイム”の裏で進んでたのかよ……!』
作者『ちなみに今日は“3匹がくっついて毛布で寝てる動画”でHP全回復しました』
潤『創作の裏で繰り広げられる癒しエネルギー、もはや“才能共有(ネコver)”じゃねぇか……』
作者『次回もがんばるにゃん!』
潤『……オチが軽すぎんだよ』