第98話『俺、引いちゃいけないガチャを引く』
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──人生には「絶対に引いてはいけないガチャ」がある。
今まさに、俺は電柱社の最上階、社長専用の会議室の前でその運命に直面していた。
(ここで逃げれば……俺の人生、平穏なポテチ生活に戻れるかもしれない……)
そんな希望は、受付嬢の冷たい視線で打ち砕かれた。
俺が廊下の隅で壁に張りついていると、受付嬢が無言でこちらを見ているのが視界の端に入る。
(あぁ、逃げるのもダメか……。完全に包囲されてるじゃん俺……)
意を決して重い扉をノックした。
「……失礼します」
扉を開けると、奥に社長が悠然と座っていた。
完璧なスーツに、完璧な威圧感。そして完璧に無表情。
「ようこそ、葉山くん」
その声には微かな苛立ちが滲んでいる。
「君のメールには実に驚いたよ。随分大胆な真似をしてくれたものだ」
(やっぱキレてるよなぁ……普通キレるよなぁ……)
俺は引きつった笑顔で軽く会釈をして、社長の向かい側に腰を下ろした。自分の手が震えていないことを願った。
「君は何か勘違いをしているようだ。世の中は正義では回らない。力と立場、それがすべてだ」
「……でも、それが間違っていたら」
「“間違い”か。君は間違いを暴けば、世界が正しくなると信じているのか? 甘いな」
社長は薄く笑った。
「人は真実ではなく、信じたいものを信じる。私はそれをよく知っているし、利用してきた。君が暴こうとした“事実”など、私が一言で覆せる。そういう世界だ」
(うわぁ……クソ強ぇ……理屈も感情も完全に遮断してくるタイプのラスボスだコレ)
──でも、やる。
この瞬間のために、ここまで来たんだ。
ポテチ女子会も、松久先輩のアフリカ栄転インタビューも、恐怖のアマゾン支部送りの噂も、全部このために乗り越えたんだ。
(そうだ、ここで絶対に社長の支配力を奪わなきゃいけない……!)
俺は心の中で固く決意し、才能奪取のスキルウインドウを任意で表示した。
【奪取対象:電柱社 社長】
・悪事:リコール隠蔽・パワハラ・責任転嫁・情報操作・利益最優先の組織維持
・スキル一覧:
《情報封殺(Lv7)》/《部下掌握術(Lv6)》/《契約支配(Lv5)》/
《政治的手腕(Lv5)》/《発言威圧(Lv6)》/《巧言令色(Lv5)》/
《会見演出(Lv4)》
──どれを引けばいい?
(情報封殺か? 部下掌握術か? 契約支配? どれでもいい。とにかくこの会社の体制をぶち壊すキーになるスキルを……!)
俺は息を止めるようにして心の中でYESを選択した。
〔YES〕
↓ 抽選中……
《会見演出(Lv4)》を奪取しました!
「…………はぁ?」
俺の心が完全にフリーズする。
【スキル詳細:会見演出(Lv4)】
効果:記者会見やスピーチの際、間の取り方や表現方法が劇的に洗練される。ただし使用者の演技力が低い場合、逆効果になる可能性あり。
(いやいやいや、なんでよりによってコレを引く!? 一番いらないやつだろコレ!?)
動揺を隠せない俺の前で、社長が再び口を開いた。
「どうした、急に顔色が悪いな。もしかして、自分のしたことに後悔でもしているのか?」
「……いや、そんなことは……ないです」
(あるよ!!! けど言えない!!!)
「君は、社会において自分の“立場”というものをもっと理解すべきだ。上に立つ者には、上に立つ者の責任と視座がある」
「じゃあ、部下を犠牲にするのも“責任”なんですか?」
社長の目が細くなった。
「口の利き方に気をつけたまえ。君のような存在など、いくらでも替えが利くのだ」
(うわ、ついに本音出た……)
次の瞬間、社長が一瞬だけ咳き込む。
「我が社は家族主義を掲げている。社員とは家族……いや、“ふぁ……(咳払い)……家族のような存在”だ」
(……噛んだな今!? 噛んだよな!? 絶対俺のせいだよこれ!)
社長は微かに違和感を覚えたらしく、咳をもう一度してから何事もなかったかのように話を続けた。
「とにかく、君にできることなどないということだ。身の程を知りたまえ」
重たい空気を背負いながら、俺は無言で会議室を後にした。
会議室の扉が閉まった瞬間、俺は思わず持参していたポテチを力なく口に放り込んだ。
「……人生で一番どうでもいいガチャ引いた気がする」
だが次の瞬間、妙な予感が背筋を這い上がってきた。
「……いや待てよ、これ逆に後で大事故レベルで役に立つやつじゃないのか……?」
なぜかそんなことを考えてしまった自分に、俺は深いため息をついた。
(潤……もう諦めろ。お前はきっとこういう星の下に生まれたんだ……)
俺は空になったポテチの袋を握りしめ、トボトボと廊下を歩いていった。
これ以上の不幸が俺を襲わないことだけを願いつつ。
【あとがき小話】
作者『さーて、やってまいりました“禁断の妄想あとがきシリーズ”第2弾──アマ耳ボイス編ッ!!!』
潤『アマ耳ってなんだよ……“甘くて耳元で囁かれる”とか、そっち系?』
作者『せいかーーい!!!✨(ガッツポ)』
潤『ドン引きなんだけど!?作者がノリノリでやるのやめろ!』
作者『それでは今夜も、脳内が壊れる準備はいいか読たん!? ここから先は、ヒロインズが“あなた”の耳元で囁くシチュエーション……』
潤『……あ、これ完全に俺は蚊帳の外パターンだ』
作者『さぁ、レッツ妄想☆』
⸻
ノア(静かに、けれど確かに)
『……潤様。あまり他の子を見ないでくださいね?……私の声だけを、耳元で感じていて……ください』
潤『圧と甘さの同居!?こわいこわいこわい……でも好き……!』
ミリー(無邪気で、ふわっと近づいて)
『ねぇねぇ、じゅんくん〜?ミリーの声、こんなに近くで聞こえるの、ドキドキしちゃうのー♡……えへへ、もっと近づいちゃう?』
潤『ミリー、それは“囁き”というより“接触事故”では……』
カエデ(耳たぶに息をかけながら)
『じゅ〜んくん? ウチのこと、ちゃんと見ててくれてるぅ?……聞こえへんのやったら、もっと……くっついても、ええで?♡』
潤(物理的に距離が消滅しとるッ!!)
ユズハ(小悪魔スマイルと共に)
『せんぱ〜い♡ なんか最近……私のこと、避けてませんか〜?そんなの、もっと近くで……確認しないとですよねぇ?』
潤『いやそれ、“耳元”じゃなくて“心の奥”に届いてくるやつ……!』
エンリ(柔らかな吐息で)
『潤さん……今日は、頑張りましたね。だから、もう少しだけ……このまま、私の声で、眠ってしまってもいいんですよ?』
潤(無理、寝る。無理、逆らえない。秒で意識飛ぶやつ)
リア(感情の機微を抑えながらも)
『……耳元で囁くというのは、なかなか照れますね。……でも、潤。あなたの反応……悪く、ありません』
潤『……いや、逆に心臓止まるって!控えめな破壊力えぐいんだよ!!』
⸻
作者『──はい、というわけで今回は読たんの鼓膜をふるわせる、アマ耳ボイス編をお届けしましたー!』
潤『もうさ、これ……読者の精神的臓器いくつ破壊すれば気が済むの!?』
作者『大丈夫!みんな強くなったから!さぁ次回は──“膝枕で耳かきシチュエーション編”でお会いしましょう!!』
潤『それもう同人音声CDじゃん!』
──作者pyoco(バイノーラルでお届けできないのが悔しい)