第96話『俺、ポテチの塩気を感じ取る』
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一緒に作品の外でも、ちょっとした会話を楽しめたら嬉しいです!
俺の部屋。
いつも通りの、質素なテーブルに、コンビニで買った座布団三枚。
そして今──その座布団を、電柱社の副社長が踏んでいる。
向かいにはエンリとカエデ。
俺? 端っこでポテチを抱えてる。
テーブルの上に置かれたのは、ペプシ、ペプシライト、そしてビッグサイズのポテチ。
……これ、女子会か?
副社長という肩書きにはあまりにもミスマッチな空間。
正座するその姿すら、逆に“ただのおじさん”っぽく見えてくる。
「電柱の副社長さんやな? よろしくな〜、ウチ、カエデや!」
「私はエンリと申します。本日はお時間、感謝いたします」
二人とも自己紹介は完了。
問題はその後だった。
「……君たちは、ふざけているのか?」
副社長が鋭い視線を向ける。
「先程の電話──“不正の報道”だの“告発”だの……私を脅すつもりか?
目的はなんだ?……金か?」
その視線が痛すぎて、俺はポテチをひとつまみ。
「ちゃうちゃう、そんなんちゃうって」
カエデはニコニコしながら、まるで知り合いと喋るみたいに言った。
「ウチらが欲しいんはな、副社長に“社長”になってもらうことやねん」
「……っ!?」
副社長の眉がわずかに動く。
「ええ、そういうことです」
エンリが静かに続けた。
「今の体制のままでは、パワハラ問題・リコールの隠蔽──報道されれば、企業としての信頼は致命的です。
ですので、“社長交代”という形で、刷新の意思を示す必要があるのです」
俺はポテチをひとつまみ。
……いや、これ、俺の部屋だよな? 何の会議?
「簡単に言うな! 不正の報道……内部のパワハラ告発……
たとえ事実でなくても、世間がどう反応するかは決まっている!
我が社は、必ず叩かれる。それで終わりだ!」
確かに。俺にも話が見えてこない。
だからポテチをひとつまみ。
「それがなぁ、そうはならへんのよ」
カエデが、俺のほうをチラッと見た。
「潤くんにはな、ちょっと不思議な力があんねん。
なんかこう……“民衆の悪意”を、一定の個人に向けさせる……みたいな?」
へー……俺、そんな力あったんだ。
って思いながらポテチをひと──……え?
「そんなバカな話があるか!」
副社長の声が一段高くなる。
「そんな与太話を信じて、社員の生活を賭けろと?
社員は我が子同然だ! そんな無責任な提案に乗れるか!」
席を立とうとする副社長。
その瞬間だった。
「……“我が子”ですか?」
エンリの声が静かに響いた。
副社長の動きが止まる。
「ならば副社長。
今の“パワハラ体制”も、あなたは“我が子のため”だと、本気で仰るのですか?」
副社長の肩が、微かに揺れた。
「貴様に何がわかる」
拳を握る。
「何百人も抱える企業だぞ。
一部の犠牲で全体が守れるなら、それが現実だ!
大多数の我が子を守るためには、綺麗事では生きていけない!」
「……私には、その“正論”こそが綺麗事に聞こえますが」
エンリは、目を逸らさない。
──俺はポテチを落とした。
いや、無理だってこの空気。
もう誰もポテチ食ってねえよ。
カエデはぽいっとポテチを放り込み、もぐもぐしながら副社長を見た。
「なぁなぁ副社長さん? ウチちょっと思っててんけどな〜」
「……なんだ?」
「もしかしてさ〜、うちらのこと“脅迫グループ”とか思ってるやろ〜?」
「……違うのか?」
カエデはぷくっと頬をふくらませ、ペプシをちゅーっと吸った。
「ひどぉ〜い。ウチらはなぁ、ただ〜……副社長さんに“お願いしに来た”だけやで?」
「ふざけてるのか……」
「んーん、けっこうマジやねんけどな〜。でも、こうやって副社長さんと一緒にポテチ食べてんの、なんか変な感じやな〜って思って」
横で、エンリがふわりと微笑んだ。
「ふふ、でも……その“変な感じ”が、案外一番まともだったりするのかもしれませんよ」
「そやそや。今の電柱さん、変なことばっかりやし〜。ほんで、それを見て見ぬふりしてる人も、いーっぱいおるしな〜?」
副社長がわずかに目を伏せる。
カエデはその視線を追いかけるように、身を乗り出した。
「……あんた、ほんまはムカついてるんちゃうん?」
「……何をだ」
「社長とか。会社の今の雰囲気とか。自分でも“これアカンやろ”って思ってるけど……でもどないもできへんまま、ここまで来てもうたんちゃう?」
副社長の目が、一瞬だけカエデを見た。
だがカエデは、ニコニコしたままだ。
「せやからな、副社長さん。ウチは“お願い”しに来たんや。あんたに……社長になってもらいたいって」
「……なぜ、私なんだ」
「だって〜……一番まともそうやもん。ウチの感覚ではな!」
もぐもぐしながらニコッと笑うその顔は、いつもの甘えん坊そのまんま。
でも、空気は確かに──少しだけ、変わっていた。
俺はというと、ポテチの塩気で喉が乾いてきて、ペプシに手を伸ばしつつ……
この場の“話し合い”とやらは、二人に任せポテチを楽しむ俺であった
【あとがき小話】
作者『禁断の妄想やるか……』
潤『それはいつも通りだろ? 何を今更。特に何が来ても最早驚かないけどな』
作者『いやいや今回はちょっとレベルが違う。これはな──“五感で感じるヒロインズ”編だ!!』
潤『あーやべぇやつだ。逃げとこ。じゃ』
作者『待てコラ。キャラってさ、まず“喋ることで”魂と性格が伝わるじゃん? で、見た目はイラストや描写で補完されて──』
潤『うん。そこまではまだいいよ。健全に創作してる感あるし』
作者『で、あとは……香りとか……』
潤『出たよ。急に“距離ゼロ”の妄想ぶち込んできたな。きっっっっっっしょ……』
作者『いや考えてみて? ノアはたぶん白檀と石鹸の香りだよ? カエデは甘めのヘアミスト、ミリーは柔らかい綿菓子系……』
潤『やめろ。その道に踏み込んだら戻れねぇぞ……! あと作者が妄想してるってのが一番きついわ!!』
作者『でも!でも!“ユズハは夜の街の誘惑の香り!”って言いたかった!!』
潤『言うな!!しかもお前が言うと全部アウトになるんだよ!!』
作者『……潤よ……男にはやらねばならない時がある……』
潤『ねぇよそんなもん!!俺のあとがきなのに“嗅覚”の支配権まで奪われてんじゃねーか!!』
──作者pyoco(次回、聴覚・触覚・味覚編……は誰か止めて)




