第91話『俺、過去のデータで現在を叩く』
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どんな話題でも気軽にコメントしてもらえたら嬉しいです。
いただいたコメントには、ヒロインズや潤が反応することもあります(笑)
一緒に作品の外でも、ちょっとした会話を楽しめたら嬉しいです!
──翌朝、地調第3課。
「……さて、と」
俺は前日の夜、スキャンして整えた資料を開いた。
営業見込みリスト、2017〜2019版。
ファイル名も控えめに変えてある。
《営業再アプローチ用:過去記録整理(試案)》
俺は営業課の連絡リストを検索して、一番若手っぽい名前に絞り込む。
──“篠崎 駿”。
22歳。去年の新卒。社内報に顔写真が載ってた。
「……頼んだぞ、しのぴー……!」
俺は恐る恐るメールを打ち込む。
俺が整理した“営業資料”──
じつは数字以外にも、古い手書きメモや備考欄を参考に、**「得意先の趣味」「昔ウケた話題」「相手が好きな食べ物」**なんかも追加していた。
「……まぁ、正直使うやついねぇだろとは思ってたけどな……」
菱岡重工 → 「社長:観葉植物が趣味/週末は将棋喫茶に通う/旧車マニア」
備考:「清水さん、昔“将棋の駒の産地”の話で10分粘ったらしい」
「なんで俺、営業資料で“将棋トーク”拾ってんだよ……」
でも、削るのも惜しくて──そのまま残した。
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件名:営業補足資料(再送)
お疲れ様です。
地域調整第3課の葉山と申します。
過去の営業記録を整理していたところ、一部再アプローチに使えそうな顧客履歴が見つかりました。
念のため、篠崎さんの担当エリアを含んでいたため、情報共有いたします。
不適切でしたら、破棄いただいて問題ありません。
よろしくお願いいたします。
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……ポチ。
「送ったぁぁぁ……!」
俺は椅子に深く沈んだ。
脈拍がバグってる。
今、人生で一番汗かいてるかもしれない。
──そして数時間後。
俺が倉庫でホコリにまみれながら封筒整理していた頃──
カタッ。
メール通知が鳴った。
差出人:篠崎 駿(営業2課)
件名:【ご連絡】本日共有資料について
「……へ?」
本文にはこうあった。
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件名:【ご連絡】本日共有資料について
葉山様
お世話になっております。営業2課の篠崎です。
本日午前に共有いただいたリストの中から、
過去に担当していた案件を一件、試しに電話してみたところ、再アポイントが取れました。
明日午後、訪問予定となりましたので、ご報告までに。
ありがとうございました。
⸻
「……え?マジで?」
実績、1件。
たった1件。でも──
この会社で、俺が“数字を生んだ”のは初めてだった。
背筋がスッと冷える。
うわ、マジでこれ当たるやつだったのかよ……!
「俺、今……営業の役に立った……?」
“窓際の葉山が営業案件に成果出した”──
この1件が、あとでとんでもない波紋を呼ぶとも知らず。
俺は椅子に沈みながら、小さく呟いた。
「……一発、当てちゃったかも……」
──昼過ぎ。
地調第3課の片隅で、俺は淡々と“引き続きファイル探索”していた。
なんかデータ出すと運気上がる気がしてきたんだけど、まぁ根拠はゼロ。
「……あれ?通知きてる」
Slackのアイコンに赤いバッジが点いてた。
──開くと、営業2課のチャンネルにこんなスレッドが。
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【営業見込みリスト(再アプローチ用)】
篠崎「葉山さんって方から資料共有あり。実際1件、再訪問決まった」
高橋「これ、リスト精度高くない?」
佐野「ってか、葉山って誰だ?」
宮前「どこの課の人?」
篠崎「地調3課らしい」
佐野「まだあったの!?地調3課!!?」
高橋「マジかよ!あそこ都市伝説じゃなかったの!?」
宮前「ていうか、なんでこんな資料作れるのに島流しされてんの?」
佐野「怖くね?裏があるやつ?」
篠崎「静かに凄いやつっているのかも……」
⸻
「いやいやいやいやいや!!やめろ!!」
慌てて画面閉じた。
なんか俺の名前が“伝説の錬金術師”みたいな扱いになってる。
「怖いわ!!1件当てただけで何が“静かに凄い”だよ!!中身、掘っただけだぞ!!」
……でも、既に遅かった。
資料のPDFにしっかり“作成者:葉山潤(地域調整第3課)”って載ってた。
「俺の名前……載ってんのかよ……!!!」
スッと顔が青ざめた瞬間──
──ピロン。
メールが届く。
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差出人:営業統括部 課長代理 宇野
件名:【お時間頂戴できますか】
本文:
突然のご連絡失礼します。
営業統括部の宇野と申します。
先ほど篠崎から共有を受けた「再アプローチ資料」、確認しました。
もしお時間があれば、本日16:00より第2会議室にてお話できればと思います。
ご都合いかがでしょうか。
⸻
「いやいやいやいやいやいやいやいや!!!」
ついに営業統括部から“お呼び出し”来たーーー!!!
「やべぇ!“提出したらバズった”とか、なにこのネットみたいな事態!!!」
椅子から転げ落ちそうになる俺。
いやもう、実際落ちた。
その瞬間、後ろからぼそりと。
「……バズってんの、良いことじゃないっすか?」
松久先輩が、唐突に現れて、
タピオカミルクティー片手に言った。
「え、先輩……あれ?今飲み物……?」
「差し入れもらったっす。売店の前で立ってたら“あげます”って言われた」
それ営業じゃねぇんだよ!!!!
でも、先輩はにやりともせず、ただ淡々と。
「良かったっすね。こっちにも“生きてる”人がいたって」
「いや、俺今むしろ“死にそう”なんですけど!?」
「でも、“見つけてもらえた”じゃないっすか。
あとは、ちゃんと自分の声で説明するだけっすよ」
……火種、また投げられた。
「……やれってことっすか?」
「うん。がんばれ」
即答。
その背中を見ながら、
俺は胸ポケットの名札をぎゅっと握りしめた。
「……営業統括部、行ってくるか……!」
──営業統括部・第2会議室。
「失礼します……」
俺は恐る恐るドアを開けると、眼鏡越しに視線を投げてきたのは、営業統括部・課長代理──宇野。
空気、冷蔵庫より冷たいんですけど。
「座って。君が葉山くん、だね」
「は、はい……」
背筋ピンッ。猫背で生きてきた人生が後悔された瞬間だった。
机に置かれた一枚の資料。
見覚えがある。──俺が昨日、提出したやつだ。
「君が作った“営業再アプローチ資料”──この中に“菱岡重工”があったね」
「はい、あの……過去の取引履歴を整理してて、たまたま──」
「その“たまたま”が、今日“再訪問アポ”になった」
「……えっ?」
俺の目が見開く。
まだ情報が入ってこない。
「うちの営業2課が、この備考欄──」
宇野はペンでぐるっと囲む。
【社長:観葉植物/週末は将棋喫茶通い/旧車マニア】
「これを“話のつかみ”にして雑談したらしい。“将棋の駒は一手一手に意味がある”って話を振ったら──」
「“それ、清水くんもよく言ってたな”って副社長が反応したんだってさ」
俺の脳が、しっかりフリーズした。
「……それ、俺が“削るのもったいないから”って残した欄で……」
「それが、復縁のきっかけになった。取引断絶から3年、初めて菱岡側から“会ってみようか”と連絡が来たんだ」
「…………は?」
「それと──」
宇野は別の資料を差し出す。
──日曜プロジェクト、選抜候補者リスト。
「お前の名前、入れておいた」
「それはつまり……!?」
「君が菱岡重工との復縁を決められればプロジェクト入りを推そう」
宇野の言葉が、ズンッと胸に落ちる。
「営業は、心を掴んでなんぼ。“人を覚えてくれる会社だ”って思わせるのは、数字より効くことがある」
「君の資料は、データじゃなく、“人間”だった」
……やべぇ。
かっこいいけど、資料を見つけただけなのに気が引ける……
「いや俺、ほんとに、ちょっと昔のメモ拾っただけで……」
「拾っただけじゃない。“磨いた”だよ、葉山くん」
──ドンッ。
突然、会議室のドアが開く。
現れたのは、営業部の若手──篠崎。
「あ、あの……すみません宇野さん!潤さん、次ちょっと同行営業お願いできませんか!?」
「はあ!?」
「さっきの菱岡の件、マジで今週中に挨拶したいって話になってて……で、“その資料作った本人も来てくれるなら”って……!」
え、なにそれ、俺行くの?
「……それと、できればあの──第三課の、例の“情報の人”も一緒に……」
「松久先輩!? おいそれ勝手に外に出すと山の生態系壊れるぞ!?」
「いや……あの人が言ってた“将棋のコマには順序がある”って話で社長、完全に食いついてて……!」
なにそれ怖っ!
──そのまま俺は引きずられるように、外へ連れ出された。
エレベーターに乗ると、隣には──
あの松久先輩が、タピオカ片手に平然と立っていた。
「行くっすよ、葉山くん。営業部、初出陣っす」
「なんであんたも来るんだよ!!部署違うだろ!!」
「社長と話したいんで」
目的、さらっと言うな。
エレベーターのドアが閉まり、俺の絶望だけが社内に残された。
あとがき小話
作者『本日のあとがきは~~~ッ!!限界突破の!!俺の!!愛と偏見の自己満ステージ!!』
潤『開幕から情報過多すぎんだよ。あと“偏見”って言っちゃってんじゃねぇか』
作者『でも今回は違うの!真面目に!ガチで!
読たん推しの“ときめきゲージ”を限界までブチ上げる祭りだから!!』
潤『その言い回しがいちいち怖いんだよ。俺また被害者になるパターンだろ?』
作者『当然!──ということで!ヒロインズ、いっくよーっ!!
“もし今、推しが目の前に現れたら……?”
どんな言葉で“ドキッ♡”とさせちゃいますか〜!?』
潤『お前、完全に番組MCのテンションじゃねぇか……』
ノア(すっと横に立ち、落ち着いた声で)
「……あなたが誰を見ていても、気になります。でも……私だけを見てくれるなら、私は──全部、捧げます」
ミリー(両手を組んで小さくジャンプ、きらきらした瞳で)
「ねぇねぇ♪ ミリーのことずっと好きでいてくれたら──今よりももっともっと甘えちゃうからねっ!」
カエデ(背後から抱きついて耳元で)
「なぁなぁ、他の子ばっか見てたら……ウチ、ヤキモチやいてまうやろ……?
……せやから、ウチだけ見てて?」
ユズハ(上目遣い+指を唇にあてて、ひそひそ声)
「ねぇねぇ? わたしのこと……可愛いって思っちゃいました?
……うそ、言わなくていいですよ。表情で、もうバレてますから♡」
エンリ(静かに手を握って、優しく微笑み)
「誰にも言えないことがあったら、私にだけは話してくださいね?
……あなたの全部を、受け止めたいんです」
リア(背を向けたまま、ふと振り返りながら)
「選択肢は、常に複数あって当然です。
……でもあなたが“私を選ぶ未来”は、案外、悪くないかもしれませんね」
⸻
潤『……おい……これ、読たん向けってわかってるのに、なぜか俺が照れてんだけど……』
作者『よし、じゃあ潤!お前もやって!潤推しの読たん向けに!』
潤『おいちょっと待てよ……』
作者『せっかくの読たん企画だよ!?
潤が言ってくれたら、読たんたち、全員正座して待ってるよ!?』
潤『そんなプレッシャーあるか!?くそ……わかったよ、やりゃいいんだろ……』
(顔を赤くしつつ、言葉を選ぶようにそっと)
潤『……お前が俺のこと、応援してくれてるなら……
俺、もうちょっとだけ、情けない自分でも前に進んでみようって思えるんだ。
……ありがとな。ちゃんと届いてるよ』
作者『ブフォッ!!!キモッッ!!出た!キモ潤出たーーー!!』
潤『お前が言わせたんだろうがああああ!!』
作者『でも!最後は俺も俺で!“作者推し”のために──』
潤『おまえの推しなんかいねーよ!!!』
作者『俺は諦めないッ!!“作者推し0人説”を覆すまでッ!!』
潤『やめろ!!貴様の執念が1番怖ぇよ!!!』
作者:pyoco(次はにゃん語でやります!自己満です)