第85話『俺、山神に祈る』
いつも読んでくださって本当にありがとうございます!
なろうではコメント欄がちょっと静かめですが、
感想じゃなくても「日常のこと」「アニメの話」「つぶやき」など、
どんな話題でも気軽にコメントしてもらえたら嬉しいです。
いただいたコメントには、ヒロインズや潤が反応することもあります(笑)
一緒に作品の外でも、ちょっとした会話を楽しめたら嬉しいです!
「潤さん、少し……ご相談してもいいですか?」
エンリの言葉には、いつも少し余白がある。
優しさと遠慮、その奥にある小さな葛藤を、俺はもう聞き分けられるようになっていた。
「……どうした、何か困ってるな」
「……実は、友人が管理している山があるんですけど……そこに最近、無断でキャンプをする人が増えていて……」
「無断キャンプ?」
「はい。看板も出しているんです。でも、注意しても“ちょっとだけなら”って言われてしまって……」
「で、エンリが直接注意しに行っても、聞いてくれないと」
「……申し訳ないんです。でも、放っておくわけにもいかなくて……」
申し訳ないなんて言葉、エンリに似合わねえよ。
でも、頼ってくれるのは悪くない。
俺は静かに頷いた。
「わかった。その山、ちょっと見てくるわ」
──翌日。
山は思っていたよりもきれいだった。ちゃんと整備されてる。
それが逆に、目を引いたのかもしれない。
入り口にはしっかりと看板が立っている。
『この山は私有地です。キャンプ・焚き火禁止』
けれどそのすぐ先。
木々の合間には──テントがいくつも張られていた。
焚き火のあと。ビール缶の山。
ポータブルスピーカーから漏れる微かな音楽。
エンリはそのひとつひとつに頭を下げて回った。
「すみません。ここは個人の所有地でして……キャンプはちょっと……」
だが、帰ってくるのは笑いながらの返答だった。
「えー? でも昨日も誰かいたよ?」
「山って公共じゃないんすか〜?」
「てかさ、今どき細かくね?」
言葉を選びながら下がってくるエンリに、俺は小さく肩を叩いた。
「もういい。お前の優しさは十分伝わった」
「潤さん……?」
「ここからは、俺の仕事だ」
──そして夜。
俺は山にひとり残った。
星が雲をかすめ、月が冴え冴えと光を放つ。
静かだった。
あまりにも、静かだった。
だがその奥に、テントの明かりがゆらゆらと灯っている。
音楽も鳴っていた。小さく、だが確実に。
俺は葉っぱを腰に巻いた。
上半身は裸。
頭には、特製の蝋燭ヘッドギアを装着。
炭で描いた“意味のない模様”を顔に走らせる。
そして、テントの中心。
広場のようになっている空間で、俺は火を起こす。
パチパチと爆ぜる炎の音。
立ち上る煙。
「チョリソードゥルドゥル……チョチョケレケェ……ピョーーーー……!」
静寂を割る第一声。
それは、意味があるようで、一切意味がない。
「ビァァァァァヴ……マイィィィイィ……チガミ・ボォォラァ……!」
俺は火の周囲をぐるぐると回る。
手を天に突き上げ、腰を揺らし、奇怪に、クネる。
「ヤマノチカラァァ……トワノメグミィィ……ミズドモドキ・トモエノチヘド!!」
一歩前進、三歩後退。
全身をブルブルと震わせながら、地面を這い回る。
「グワオオォォ……チョカパァァァァァン!!」
テントの中から、誰かが顔を出す。
「……なにあれ?」
「やっべ……マジでヤバい奴……?」
「……火ぃ囲ってるよ……踊ってるよ……なにあれ? 頭、蝋燭だよ!?」
やがて何人かのキャンパーが出てきて、俺の周囲に集まり始める。
「おい……ちょっとアンタ、何やって……」
「ビァァァァァヴマイィィィィィィィィィィィ!!!!!」
俺は叫ぶ。
「カンミョォォォオオオ……ヒャグラビィィッッ!!
セッタイ・コォリュ・ナムサラバ……サァァダァァァアアッ!!」
言葉が意味を成さなくなる。
それでも、俺は止まらない。
地面を叩き、葉っぱを投げ、火の周りを高速でぐるぐる回る。
誰かが石を拾おうとして、やめた。
誰もが言葉を失い、
「こいつヤバくね……?」
「なんか萎えたわ……」
違法にキャンプしてる彼らは、俺に強く出られない。
「チョリソーッ……チョリソーッ……チョリソォォオ……」
反復が、恐怖を呼ぶ。
言葉にならない言葉が、じわじわと彼らを侵す。
そして一人がつぶやいた。
「……帰ろう」
その言葉が引き金だった。
テントが畳まれ、焚き火が消される。
足音が、ぱたぱたと、山を下っていく。
俺は最後に一度、天を見上げて──
「……浄化、完了」
蝋燭の炎を消した。
──翌朝。
山の入口に戻ると、エンリが静かに佇んでいた。
俺は満面の笑みで、両手を上げる。
「エンリー! やったよー!」
「ふふ……ありがとうございます、潤さん。おかげで、山も静かになりました」
柔らかい笑顔。拍手。完璧な感謝の流れ。
……が、そこでエンリの目線が、ふと俺の腰元で止まる。
「で……でも、その格好は……」
俺は、はっと自分の姿を見下ろす。
上半身裸。顔に炭の紋様。
そして──
腰には、葉っぱ一枚。
「……まだ脱げてねぇだけマシじゃね?」
「……あの、通報されなかったのが奇跡です」
俺はそっと葉っぱを手で押さえた。
エンリは微笑んだまま、半歩だけ距離を取った。
山の神、撤収。
お尻に秋風が吹く朝だった。
【あとがき小話:読ちゃんはシャイ】
作者『うちの読ちゃんシャイ~(=^▽^)σ』
潤『……お前さ、どんだけポジティブなんだよ。
毎回このテンションで騒いでたら、そりゃ読者も話しかけ辛いだろ……』
作者『えぇ~?なんでぇ~?
作者わかんな~い☆(´꒳`)☆』
潤『その“☆”の感じだよ。むしろなんで話しかけられると思ったんだよ……』
作者『でもさ?でもさ?
読ちゃん達、いつも見てくれてるよ?そっと、優しく、静かに、あたたかく……』
潤『……言い方だけ見るとめちゃくちゃ感謝っぽいのに、
顔は完全にテンションの狂気だからな。』
作者『えー、でもでもでもぉ?
コメントとか……くれたら……嬉しすぎて泣いちゃうかもぉ……(←うざボイス)』
潤『……絶対今、画面の向こうで鳥肌立ったぞ?』
──読者はシャイ。
それは、作者が眩しすぎるからかもしれない(ノリ的な意味で)
作者:pyoco(好きです、でも話しかけるの怖いと思わせてる自覚はあります)




