表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私が悪いの?・・・ひどいよ

作者: 紫葵

 10代前半の貴族令嬢エリーナは、豪奢な館で開かれた一族の集まりの席にいた。母親とは仲が良く、いつも寄り添っていたが、その一方で伯父、母親の兄であるフェルディナンドを心底嫌っていた。彼はいつも無神経で、他人の気持ちを考えないように感じていたからだ。


 その日、エリーナの心に深い傷を残す出来事が起きる。エリーナが抱えていた大切な秘密——彼女が密かに母親に打ち明けた、年頃の少女が抱える感情の揺らぎ。フェルディナンドはその秘密を、何の悪意もなく、一族の前で「お祝い」として暴露したのだ。


「さあ、皆さん、我が愛する姪エリーナに大きな拍手を!母から聞いた、彼女が大人の一歩を踏み出したという、素晴らしい知らせです!」


 その言葉が放たれると、会場は一瞬静まり返り、次の瞬間には祝福の声と拍手が響き渡った。しかし、エリーナの心は張り裂けそうだった。秘密を暴露された瞬間、彼女の全身が凍りつき、血が逆流するかのように感じた。フェルディナンドには悪意がなかったことはわかっている。しかし、好意とはいえ、それは常識を超えた無神経な行為だった。


「なぜ、なぜあの時、お母様は何も言わなかったの?」部屋に戻ったエリーナは、涙をこらえながら母親に詰め寄った。彼女はただ、母親が自分を守ってくれると信じていた。だが、母親は表情を曇らせながらも、「伯父さんには悪気がなかったのよ、エリーナ。あれはただの誤解だったの。彼もあなたを祝福したかっただけなの」と言った。


「でも、私の秘密だったの!あれは私が決めるべきことだったのに!」


 母親は肩をすくめ、困った顔で答えた。「私はただ、伯父さんが娘さん、あなたのいとこの参考になると思って、好意で話しただけなの。でも、あんな風に一族の前で言うとは思わなかったわ。本当にごめんなさい。」


 謝罪の言葉を聞いても、エリーナの怒りは収まらなかった。母親への不信感が募り、彼女はその後も母親と伯父を許すことができなかった。


 時が経っても、何年経っても、エリーナはあの日の屈辱を忘れられなかった。家族での集まりがあるたび、その出来事が頭をよぎり、怒りが胸の中で再燃した。


 ある日、再び母親との会話でその話題が持ち上がった。「もう昔のことだし、時効でしょ?謝ってるのに、いつまでそんなことを言ってるの?」と母親は呆れたように言った。エリーナは瞬間的に怒りが爆発した。


「時効?あの屈辱が消えるわけがない!私がどれだけ傷ついたか、お母様はわかってない!謝られても、私は許すつもりなんてない。あの謝罪だって、結局はお母様が自分を許してもらいたいだけでしょ?私の気持ちなんてどうでもいいんだ!」


 母親はため息をつき、再び「もういい加減にしなさい。過去に囚われ続けるのは、自分を傷つけるだけよ。」と説教したが、エリーナの心に響くことはなかった。それどころか、彼女の体には怒りとストレスによる病気の症状が現れ始めていた。


「私が悪いの?」エリーナは心の中で問いかける。「私は被害者なのに、謝られても許さなければ私が悪者になるの?私がどれだけ傷ついたか、誰も理解しようとしない。母も、伯父も、誰一人として。」


 エリーナは今でもその出来事を許せない。何年経っても、心の傷は癒えず、謝罪されるたびに怒りが増すだけだった。「本当に謝る気があるなら、どうすれば許せるのか聞くべきでしょ?それが無理なら、せめてもう二度と会わないとか、話題にもしないようにしてほしい。それがわがままなの?」


 彼女は最後にもう一度問いかける。「私だけがこの癒えない傷を抱えてるのに、いつまでも怒っている私の方が悪いの?私の気持ちはどうして誰も考えてくれないの?本当に、ひどいよ…。」


 エリーナの心には、今でもその傷が深く残り続けている。彼女は誰からも守られなかったと感じ、謝罪も形だけのものだと感じている。彼女の中で、あの日の屈辱と家族への不信感は決して消えることなく、今も彼女を苛んでいる。


「私が悪いの?・・・ひどいよ」と心の中で呟きながら、エリーナは再び過去の思い出に沈み込む。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 母親、自分が同じことを去れたらとか考える知能が無いのか・・・。  しかも謝罪も口先だけ、後には勝手に時効とか言ってるし。  自分が許されて楽になる事しか考えてない、最悪の相手ですね。 「はいはい、ご…
某有名マンガより抜粋 「人間いざとなれば頭などいくらでも下げる、その癖それが受け入れられなければ今度はこちらを非難、冷血漢呼ばわりしてくる。故に口だけの謝罪は無意味」 「本来できるはずなのだ……!本当…
オチはないのでしょうか? ただ主人公が辛い心の傷に苦しむ未来しかない事にモヤモヤが止まりません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ