忠誠か隷属か
浴場が全て破壊された後、仕方なく服を着て浴場の修復作業をした。
そして、これから『技能』を試すときは何もない空間でやるべきだということを理解させられた。
肝心の『滅流』の効果だが、これは的を意識して使えば何も問題がないことがわかった。
例えば、あそこの石像に当てるぞ!と思いながら『滅流』を使えば一直線に水が飛んでいって石像だけを破壊できる。
逆に何も考えずに使うと無差別攻撃になる。そしてこれは本当に無差別なので自爆攻撃とも言える。
「ああ……」
やっぱり『技能』の効果を教えてくれる人が欲しい。
現状誰も教えてくれないので自分だけで試行錯誤するしかない。だがこれは非常に危険だ。うっかり使って自爆攻撃でした、なんて笑えない。
「寝るか……」
もう、疲れた。ぼんやりとベットを想像して創造する。
そういえばここは『虚無ノ塔』。外はもう時間的に暗いだろうがここは明るいままだ。
「流石に寝るには眩しいな……」
あ、暗くなった。
明るさまで調整できるのか。
睡眠にちょうどいい環境が整ったわけだし、寝るか………
「ん………」
まだ暗いのになんとなく目覚めてしまった。
この暗さからするとまだ午前1時とかそこら辺だろうか。二度寝するか………
「んん……」
また起きてしまった。まだ真っ暗だ。おかしいなぁ。二度寝したのにまだ大して変わらない………
「あっ!」
しまった、ここは『虚無ノ塔』のなか、つまり、
「いつまで経っても暗いままじゃん!」
そう、僕が明るくしない限り、ずっと同じ暗さのままだ。
「外は今何時くらいだ?」
とりえず服を着て、靴を履いて外に出る。
「外へ!………眩しい」
いきなり日光を浴びたせいで普段より眩しく感じる。
真上から降ってくる太陽光が寝起きの僕を叩き起こしているようだ。………ん?
「太陽が、真上にある………」
つまり、今はもう、昼だ。
「やっちゃった」
二度寝を繰り返しているうちにもう昼だなんて。
『虚無ノ塔』に時間を知らせる機能を持つ何かを作らないとまた同じことをしてしまいそうだ。
「っ!」
また悪寒が走り抜けた。慌てて嫌な感じのする方向を見ると、昨日の鳥がいた。それも、大軍で。
「カアァァァ!」
「「「「「カッカ!」」」」」
やばい、またあの水の攻撃をしてくる気か?
「だったら今度は、こっちからやってやる! 『滅流』!」
的を一際大きいカラスもどきに合わせ、発射する。おそらくリーダーであろう大きな個体に攻撃がとど……
「ギャッ!」
「……は?」
結果から言おう。リーダーに対して攻撃は届かなかった。
そのリーダーの周囲にいたカラスもどきが射線上に食い込んで、肉壁を作り出した。
つまり、一羽の犠牲のもと、リーダーは生き残っている。
なぜそんな行動をする? それほどまでに親玉が大切か? それとも恐怖による支配か?
何らかの手段を持って隷属を強制しているのか?
「………まあ、関係ないか」




