表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/116

精霊魔法

「じゃあ転移任せていいかな」


「転移でございますか?」


 無事にというべきか僕は魔王軍の一員となった。そしてこれから城に行くというので転移を頼んだのだが、なぜか怪訝な顔をされた。


 ここから離れているであろう魔王の城に行くのに、最も適している方法は転移だと思う。


 僕は城がどこにあるのか知らないので転移できないが専属になったブルーメに頼んだのだが。


「何か問題が?」


「申し訳ございませんが、私は転移の魔法を行使できません。そして私に配布されている転移装置も一人しか使えません」


「じゃあ飛んでいこうか」


 とても申し訳なさそうに告げてくる。使えないならば仕方がない。流石に歩きは論外である。


 少々時間はかかるかもしれないが空を飛ぶのが最善だ。

 

「はい。では失礼して詠唱を。“風の精霊に願う” “我が身を大空に” “縛る者なき自由の風に”『精霊の飛翔(フェアリーフライト)』」


 周囲の風が渦巻いて、優しくブルーメを包み込んだように見えた。


 僕の使う飛翔とは違い、周囲の風を操作して飛んでいるようだ。


 急加速急上昇などにはあまり適さなそうな魔法だが、普通に飛ぶ分にはむしろ体に優しそうだ。


「“眼前の空を亡霊で満たせ” “暗雲それこそ我が覇道” 」


 どんどん上空に上がっていっているブルーメに置いてかれるわけにはいかないので、僕も飛翔のための詠唱を始める。


 この魔法は快適なフライトもクソもない。兎に角戦闘特化の高速飛行。


 主さまやヘノーとの訓練では役に立つ。しかし日常であまり使いたくはないのだが。


「『亡霊は迅速に(シュネール)』」







「……流石の速さでございますね。魔法行使から1秒もかからずこの高度。私には到底真似できません」


「まあ、そもそも使っている魔法が違うからね」


 そろそろ雲に到達しそうな程の高度になった。相変わらずブルーメの周囲に風が渦巻いている。


 今は二人で会話をしながら城に向かって飛んでいる。


「ちなみに今使っているそれはどういう魔法?」


「私の使っているのは精霊魔法と呼ばれるものの一種です」


「精霊魔法?」


 精霊魔法というのは初めて聞いた。


 詠唱の一部に「精霊」という単語があったが、それから来ているのだろうか。


「精霊魔法とは、元から自然界に存在するものを使用する。通常の魔法と違って何かを生み出す動作がない分、消費魔力量が少なくなっています」


 よくよく観察してみると、僕が消費している魔力量より遥かに少ない量で済んでいる。


 僕が使うものの中で最も魔力消費が少ないものも、今のブルーメよりは確実に魔力をくう。


 圧倒的な省エネ、精霊魔法というのの利点はそこにあるのか。


 この魔法は意外と便利そうだ。習得してみるのもいいかもしれない。


「その魔法はどうやって使っているの? 何かコツは?」


「そうですね、周囲の自然に自分の魔力を譲り渡していうことを聞いてもらう、といった感じです」


「なるほど」


「ですが、精霊魔法は感覚によるところが大きいので習得はかなり困難に…………」


 周囲に、この場合は風に魔力を譲りわたす。つまり対価払う代わりに思うように動いてもらう、という感覚なのか。


 自然を擬人化して捉えているのが面白いところだ。

 

「こんな感じか?……もう少し出力を、いやむしろ濃度を……」


 濃度や範囲、量を変えながら魔力の放出を何十パターンか試していく。


 比較的自然に馴染みやすいパターンを見つけ、そこからさらに改良。


 現在飛行のための魔法を使っている最中だが、並行していくつか作業を行うのは慣れている。


「……こんなものかな」


「ご主人様? 何をなさって…………それは!?」


 僕の右手から小さくつむじ風が起こる。そして同時にステータスが変わった、という感覚がした。


「ステータス」


____________


職業:『屍ニ生キル者』

   『悪魔』


技能:『技能継承』『虚無ノ塔』『蜃気楼』『封ジラレタ鏡』『魔魔法』『亡霊ノ風』『光吸ノ毒牙』『精霊魔法:風』


中位技能:『屍ニ生キル』


独自技能:『天骸』『災厄ヲ呼ブ剣(トイフェル)』『星夜奏』


祝福:『金霊獣ノ祝福』


____________



 しっかりと『技能(スキル)』の項目に『精霊魔法:風』が追加された。


 なかなかいいのが手に入った。流石に出力はブルーメほどではない。


 この精霊魔法で空を飛べるようになるにためにはひたすら使って鍛えるしかないか。


「ご主人様、まさか精霊魔法を……」


「ああ、教えてくれてありがとう。なかなかいいのが手に入ったよ」


 魔法というのは非常に奥が深い。


 僕が今使っている空間を曲げるものもあれば、自然物に魔力を与えて動かすものまである。


 完全に予想外の魔法だってあるかもしれない。


 『技能(スキル)』自体もなかなか面白いが、精霊魔法で言う精霊、が何を指しているのかというのも興味深い。


 今までの短時間で考えた限りだと、自然=精霊の気がするがもっと別の解釈だってあり得る。




「……私が10年かかったのを、一瞬で……」


 新たな『技能(スキル)』が手に入って考察を始めていた僕は気が付かなかった。


 隣でブルーメが何かを呟いていたのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ