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2日後までに

「どうやらお主は理解していないようだが、中位魂まで至った武人は一般的に見れば天才中の天才。決して常人にはたどり着けない」


「え?」


 中位如きで天才中の天才? 流石にそれは言い過ぎだろう。そのことばは目の前の魔王のような人にこそふさわしいだと僕は思う。


「はぁ……おい不死鳥。こやつは常識がないのか?」


『異世界の者に常識を求めるのは酷であろう』


「異世界だと……そうか、お主が愚王の命で殺されたという異世界人か」


「っ!」


 嘘だろ? なぜ魔王が知っているんだ。あそこは人間の国だ。どうして現在対立中の魔王にそんな情報が。


「なんだ。何を驚いている」


「なんで、知っているんですか?」


 魔人と戦うための召喚だとあの王は言っていた。


 それなのに召喚した人の情報が漏れてしまっている。それも魔王、という最終目標に。


 まずいなんてものじゃない。敵対相手に兵器の性能をバラしているようなものだ。


 あのクソ王は情報管理すらクソなのか? 流石にそこまでの無能ではないよな?


 いやいくら無能でも流石に周囲が……


「……情報は重要だ。それを私は知っている。故に私は情報を求める」


 そういって魔王は少し口角を上げる。


「まさか……?」


 言外に、間者がいる、と言っているのか?


 いやここは魔法のある世界だ。僕の考える間者とは少し違うかもしれない。


 それでも、この魔王は、戦争相手の国の重要情報を知れるほどの情報網を持っている。意図的に構築しているんだ。


「話は戻るが、自らの実力を把握していないのは危うい。中位魂というのは十分強い。それはしっかりと覚えておけ」


「……はい」


「そしてお主が我が軍に入った際には、独立官の地位を用意しよう」


「独立官?」


 そこまで軍隊の階級に精通しているわけではないが、地球ではある程度は知っていた。


 だが「独立官」というのは全く聞いたことがない階級だ。地球にはないものなのか、それともマイナーなのか。

 

「独立官というのはどの組織にも属しない、私直属の特殊な地位だ」


 つまりどこかの上司に従うでもなく、どこかの部隊にいるわけでもないということか。


 あの国王のようなのが上司になってということがない。クソ上司に当たることはないと考えると素晴らしい立ち位置かもしれない。


「私の配下の中ではかなり権限の大きい方だぞ。ちなみに機密情報に関しては第2種まで閲覧可能となっている」


 どうだ、入る気になったか、と聞いてくる。  


 だがそう説明されてもどれだけすごいのかわからない。機密情報の分類なんて知っているわけがない。


「独立官には3級幹部会への出席権もある。隠密部隊から専属もつく」


「……実務の内容を教えていただけるとありがたいです」


 3級幹部会だの第2種機密情報だのと言われてもさっぱりわからないので仕事の内容の方が聞きたい。


「敵軍への単独での遊撃。長期間にわたる特殊な潜入。軍の部隊では対処できない敵との戦闘。敵対勢力の壊滅。危険人物の抹消などだ」


「……」


 平和の欠片もない、ひたすら危険な戦闘が任務か。


「一つ言っておく。戦闘任務の対象には、中位魂以上を持つ相手が含まれる。つまり、完全な死のリスクがある」


 それを恐れるならばこの勧誘は無かったことにする、そう言いながら僕を見つめてくる。


 この人は、上に立つものとしての責任が強いのだろう。


 僕が主さまに攫われたと勘違いした時も、「戦う義務がある」と言っていた。今回だってそうだ。


 わざわざ死ぬかもしれないなんて言わずに誘うこともできたはずだ。


「……一つ聞いていいですか」


 一つ、どうしても聞いておかなければいけないことがある。


 正直今揺れている。このまま主さまのところて暮らすよりも、魔王の軍に入った方がいいようなきさえする。


 でも一年以上暮らしたところを離れる抵抗感は多少ある。そして何より、へノーと離れることになる。


 もしこれが叶えられないなら僕は配下になどなりたくない。でも叶えられるなら……


「いいだろう。なんだ」





「___僕は、僕を殺した『英雄』に復讐できますか?」




 

 魔王は笑って答える。


「止める理由などあるものか」


 と。








 2日後までに返事を。そう言って魔王は消えた。


 一切の魔力の無駄のない、恐ろしく静かな魔法の運用だった。

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